表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十三章:時空と真実編
57/77

五話

過去……なんだよな?


あれ?


何もない。


なんだこれ?


なんで俺は、半透明なんだ?


(あなたは見なければなりません)


はい!?


また、頭の中に文字が浮かぶ。


話しかけられたわけじゃない。


突然、言葉だけが脳に放り込まれたような感覚。


時間をさかのぼる流れは、ルーが作ったと言っていた。


なら、この言葉もルーなのか?


俺に何を見ろと?


何をしろっていうんだ!


……。


おい!


返事しろ! こら!


おいって!


(あなたが、世界の未来を望むなら……)


当然だろうがって!


俺の質問に答えろよ!


なあ!


(ここは、世界が出来る前の世界)


世界がない世界って……。


言葉おかしくね?


てか、何もないのに世界ってできたの?


なにそれ、怖い。


(あなたが望んだことで、すべてを知る権利が生まれました)


望んだから与えられる……権利ねぇ……。


(それは、同時に知らなければならない義務)


情報もただじゃないか……。


いいぜ。


それも背負ってやる。


みんなの未来が手に入るなら。


(故に、あなたはあなた自身で選択をしなければなりません。それが……それだけが、未来へとつながる唯一の可能性です)


なんだよ……。


結局、ヒントだけで答えは無しかよ。


俺の選択に、世界の未来が?


最悪だな、世界。


自爆スイッチを、芸を仕込んだだけの猿に拭き掃除させる並みの危うさだぞ?


なるほどな。


おっさんが、絶望的な数値っていうはずだ。


一パーセント以下。


小数点が必要な確率じゃんか……。


毎度毎度……。


やってくれるぜ。


神様よ~。


成功した暁には……。


へへっ。


ケツに全力でローキックを、三十発連続でぶち込んでやるよ。


絶対、泣かせてやる。


首じゃなくて、ケツでも洗って待ってろ。


俺がそんな事を考えていると……。


パチンと大きな破裂音が轟く。


「うおぅ! なんだ!?」


いきなり何もない場所で、光が弾けた。


これは……。


コア!?


うっすらと……でも、強い意思の力を感じる。


神のコア?


なんで、いきなりそんな物が?


「あれは……時空の……」


最初に光が弾けた場所に、時空の力が痕跡として残っている。


(それこそが、原初の因果。すべての罪の源です)


「マジかよ」


これから、何かがおこる。


俺は、なんとなく想像できてしまった。


俺には見えてしまうんだ。


感じ取れるんだ。


そのコアは、完全にではない。


しかし、明らかに悪意に浸食された神のコア。


もっと正確に言うと、コアの破片。


これが世界の始まり?


ここにはあるはずがないもの。


こんな例外で、世界は始まったのか?


再度確認するように、光が弾けた時空の動きを感じ取る。


間違いない……。


こんな偶然……奇跡?


これが、奇跡ってものなのか?


こんな危うい偶然の上に、俺たちの世界はあったのか?


時空を操作できる奴らだっている世界だぞ?


もしかしたら、俺ですら世界を消すことだって出来るかもしれない。


どこかで、世界はもともとあるがままにあり。


偶然なんかじゃなく、当然のように世界はできたと思っていた。


人間が生まれたのだって、奇跡的な確率の偶然。


それでも、世界には神がいて、もともと決められていたから人間が出来た。


世界もそうあるから、そうなのだと勝手に思い込んでいた。


「うおおお! なんだ!?」


巨大な光の渦が、コアの破片に近づいてくる。


魔力の塊!?


感知できる出来ないとかじゃない。


莫大な力そのもの。


「あ……そうか。あれが、創造主……」


意思の力を感じる。


魔力とは不釣り合いな、弱く儚い意志の力。


今にも消えそうな神のコアと、惹かれあったのか?


創造主から伸びた二本の光の帯が、やさしく包み込むようにコアの破片を飲み込んだ。


何かの偶然が重なって……。


未来から流れ着いた神のコアを。


自分が、半透明でこの場所に干渉できない理由が理解できた。


当然だ。


ここに俺が干渉できてしまうと、世界が変わってしまう。


そうなれば、俺は存在しなくなる。


顕聖から教えられた、時空の法則。


過去への干渉は、本来不可能。


それを行うには、莫大な魔力が必要らしい。


時間を戻れば戻るほどその量は増していく。


この世界に干渉するとすれば、創造主が命を懸けるほど魔力が必要じゃないのかな?


見ることも来ることも出来るが、干渉できない。


それが過去か……。


創造主は、神のコアに優しく優しく……。


慈しむように魔力を注ぐ。


完全な球体にコアが戻ったな……。


てか、創造主には法則もクソもないな。


自分の三分の一近く、魔力を注ぎ込みやがった。


コアってそんなに魔力補充できないはずなのにな……。


そこから、何もなかったその場所に世界が構築されていく。


創造主は……。


深く傷つき眠るコアのために、ゆりかごとして世界を作ったんだ。


時間の流れ、物理法則、魔力の特性……。


全ては、未来からの記憶で形成されていく。


あのコアが……。


なるほど、あれがルーか……。


あれ?


でも、あいつから悪意は感じなかったのにな?


「おお! は……ははっ。出鱈目な……」


創造主は、法則と次元の狭間を作り終わると、いともあっさり最初の世界を作り出してしまった。


これが俺たち人間の世界が、始まった瞬間か……。


これが、世界で……人間なんだな。


力は、意志の弱いもが持つべきものではない。


こころざしなき力は暴力でしかない。


正義大義こそが力を持つ正しい理由だ。


創造主……いや、神様。


弱い人間は、そんなことを必死で訴えてるんですよ。


さらに、そんな事言ってる奴に限って、弱いものを虐げる。


力は力でしかない。


目の前の神様は、俺にそれを教えてくれる。


あれだけあっさりと世界を作った神様は……。


四苦八苦しながら、必死に生き物を……人間を作る。


純粋に、力を使うってこういう事かな?


試行錯誤の末、結局二つも惑星を作ったよ……。


優しくて、全知全能とは程遠い神様?


何故、あんたは魂の故郷に引きこもったんだ?


人間に絶望でもしたかい?


世界が嫌になったのかい?


そんなことを考えながら、俺は世界の始まりを見守る。


そのにいるけど、いない存在として。


平等なやさしさって……。


存在するものなんだろうか?


全てに平等。


人間のいないほうの星。


人間以外の生物たちが、楽園として暮らせるように創造された星。


大変なことになっていた。


生物は、エネルギーを吸収しないと生きていけない。


最初から直接魔力を吸収できるようにすれば、何の問題もなかったかもしれない。


もちろん、生物の進化は望めないだろうけど。


でも、未来からのそうならなかった知識から作られた生物たちは……。


弱肉強食の生存競争を始める。


異種族だけでなく、同族すら食らって力をつけ始める個体が現れた。


強くなり、弱いものを食らう生物。


平等は残酷と言えるのかもしれない。


強気なったものも、神の力で排除することを神様は選ばなかった。


只見守ることしかできない。


その星は、楽園とはかけ離れた凶暴な世界へと変わっていく。


極めつけは、その世界に作った世界の意思……。


目的を与えられていなかった神は、世界に渦巻く悪意の影響をダイレクトに受け、戦闘狂の壊れた神になった。


これが世界。


弱肉強食こそ真理。


分かってるけど……。


神様泣きそうになってるじゃん。


目覚めないコアを何回も見て……。


凶暴でも、自分の作ったものを壊せない神様って……。


ん?


うわ~……。


もう一つの人間の星。


その星も、一つの波紋が発生した。


少しだけ腕力が強い人間。


その人間が、力で食料を弱い人間から奪った。


本当に俺には当たり前のことで、なんでもない日常。


しかし、それがすべての始まりになっていた。


人よりもいい思いをしたい。


ただただ、そんなことで未熟で弱い人間は進化する。


それと同時に、狂っていく。


俺は、これをよく知っている。


これこそが、人間が逃れることの出来ない罪。


欲望。


悪意なんだ。


仕方がない……。


世界の全ては、最初から悪意を内包して作られてしまったのだから……。


俺が戦っている悪意とは……。


世界であり、人間自身なんだ。


俺自身も、殺意という黒い感情を高めることでより力を発揮できる。


喜びなんかの白い感情は、戦うことを限定すれば力としては弱い。


どう言い訳したり、理由をつけても人間は両方から成り立っているんだ。


悪意を消すなんて、人間を……。


世界を消さなきゃ無理なんだ。


俺の選択の一つは、もしかすると世界を俺自身が消すことも含まれているのか?


今の俺は……。


もちろん! こんなことで立ち止まったりしない!


前に進んで見せる。


それでも、考えないといけないんだよな。


悪意が具現化して、世界を飲み込む。


それを防ぎたい。


成功しても、未来には同じことが起こるかもしれない。


無駄だと……。


もしかすれば、今を生きる俺には今を守ることが重要だけど。


永遠を生きる神様の心を折るには、もしかしたら十分だったのかもな。


今俺に降りかかる悪意だけを倒す。


これも、俺の答えの一つだな。


でも、考えるんだ。


俺はまだ答えを出しちゃいけない。


なんとなくそう感じる。


そして、ある違和感も……。


この過去への流れは……。


俺に絶望しろとでも言いたいのか?


諦めさせたいのか?


それとも、その逆?


意図が、まだわからない。


考えるんだ。


人間の星が、宇宙船まで使った戦争を始めた時、俺はあることに気が付いた。


俺は、この世界を知っている。


爆発した母性から、宇宙船に乗って逃げ出す人間。


人間は宇宙じゃ生きられない。


神様が仕方なく導いたのは、狂った神が支配する凶暴な世界。


ここは……。


師匠の生まれた世界。


そうなんだ。


別に不思議なことじゃない。


師匠の世界が最初の世界だったんだ。


「うわぁぁ!」


人間の船が、その星につくと同時に、俺は時間の流れに引き戻されていた。


俺の終点は、ここじゃなかったんだな。


そうだよな。


これを見て答えを出すだけじゃ意味がないよね。


俺は、どこに向かってどこにたどり着くんだ?


俺は何をすればいい?


返事がないのもわかってるよ。


****


先ほどまでとは、たぶん逆向きの時間の流れに乗った俺は……。


走り……。


来た!


追いつかれた。


三つの悪意が俺に向かってきていた。


反射的に、両刃の刀を抜いた。


神様を見たせいか?


それとも、世界の始まりを知ることで法則でも理解できたのか?


感知する力がさらに増している。


時間の流れの中だっていうのに、俺は普通にその場に立ち構えることが出来た。


全く、何をさせたいんだか……。


「おおお!」


左腕に、若干の違和感が残るせいだろうか?


俺は、二本の刃を抜かずに、そのまま敵に走り出していた。


敵は……。


まだ俺よりも速い。


それでも、さっきよりはましな戦いができる。


俺の肉をそぎ落とし、骨を砕いていた攻撃を、皮の部分でとどめる。


敵の手数が多いせいで、攻撃がクリーンヒット……できない!


焦るな!


見極めるんだ。


足を止めれば直撃を食らう。


流れの中で、立体的な円……。


球体のように動きながら、敵の攻撃を回避し刃をふるう。


<ホークスラッシュ>!


くそ! ダメか!


この流れの中では、流石に衝撃波は使えないらしい。


出した瞬間、霧散した。


敵の攻撃……。


とがったゲル状の剣を斬っても、ほとんどダメージはないか……。


うっすらとコアらしきものが見えているが……。


遠い。


攻撃が届かない。


距離だけではなく、俺の技量がまだ遠い。


フィールドも、敵の攻撃にはほとんど効果がない。


障壁も時間操作も無理だ。


まともに機能しているのは、身体強化と回復だけ。


これで、あの散弾みたいのをもう一度食らえば……。


懐に飛び込みきれない。


それどころか、敵の速度が増してきている。


それだけじゃなく、連携するような動きまで……。


反則だぞ! ちくしょう!


回復も強化も……。


動きだって、さっきより速くしたはずなのに……。


「げはっ! く……そっ!」


立体的な円の動きに、ついてくる。


致命傷は何とか避け続けてるけど……。


敵の攻撃だけが、俺に届きやがる!


「まてっ! こ……この!」


俺の射程範囲から、瞬間的に離脱する敵に、俺の口をついたのは待て……。


「くっそぉぉぉぉ!」


敵の攻撃を受け止めた俺に待っているのは、敵の魔道砲。


皮膚を焼かれているだけ……。


確かにそこまでは避けられるが、そのせいで流れの動きが阻害される。


かなり自由に動けるようになったといっても、少しでもミスをすれば流れに自由を奪われる。


敵の攻撃をいなせなければ、流れ自体に体をぶつけられ、ダメージを受けてしまう。


強い!


今までのどんな敵よりも……。


技量として、俺が全くかなわない。


虚をついても、間合いを外しても……。


全て対応される。


その上、速くて射程も長い。


糸口がつかめない!


俺の力が増すよりも早く、敵が強くなっている。


さっきまで躱せていた攻撃を、防がないといけない。


かすり傷だった攻撃が、肉をえぐり始めた。


すでに、俺は自分の刃を防御以外に使えなくなっていた。


敵が強くなっていく……。


死の恐怖に、飲み込まれるつもりはない。


それでも、勝ちへの算段が全く……。


「ぐっ! がはっ!」


すでに、敵の攻撃が俺の急所をかすめ始めていた。


同時に攻撃を受ける回数も、二回や三回じゃなくなってきた。


可能な限り防いで避けているのに、俺はサンドバック状態と言える。


気を緩めれば、すぐにでも殺される。


何も選ぶ前に……。


まだ! まだだ!


まだ、負けられない!


こんなところで!


「こんな雑魚に負けるために! くぉのぉ! 無様に生き残ったつもりはない!」


一ケタほど速度を増すことで、敵の直撃するはずだった攻撃から体をずらした。


灰色の魔力。


知識を生かすんだ。


学んで、理解して、応用する。


白と黒の魔力は、本来相反するもの。


接触しただけで、爆発してしまうものだ。


俺の魔力が高まる理由は、その爆発する手前の状態を定着させることが出来るから。


ジジィと若造に強化を任せていたときは、その爆発寸前の魔力では強化していなかった。


正確には、無理して使えないはずの魔力まで使ってはくれていたけど、灰色ではなくマーブルの力だった。


液体金属のおかげで、俺の体は灰色の魔力に耐えられる。


基本性能を向上させるだけじゃない。


爆発的な強化を!


さらに、灰色の力を時間操作に使い自身の処理速度を引き上げる。


時間遅延を引き起こしたうえで、亜光速に動いて……。


やっと、敵の動きにぎりぎり対応可能になった。


それでも、ぎりぎりだ。


動きが速すぎる。


それも、まだ進化するのかよ!


こっちは、二段とばしで階段を駆け上がってるつもりなのに!


敵はエレベーターですか!?


チートすぎるんだよ! くそったれが!


(よく見なさい!)


は?


「うおおおぅ! よっと! この!」


突然頭の中に聞こえた女性の声に、危うく直撃を食らいそうになった。


なんだ!?


ルーじゃない。


誰だ!?


でも、どこかで聞いたことがある声だったような……。


よく見ろ?


敵を……。


俺は何かを見落としているのか?


何を!?


あれ?


敵と同じ速度領域の中で、攻撃をいなすことが出来てきた。


そこで、俺はあることに気が付いた。


敵の手数が減っている。


敵の攻撃に、明らかなパターンが見て取れる。


もう、敵の体から触手を伸ばすような攻撃は来ていない。


斬撃に近い攻撃と、エネルギー砲のみ……。


それに……これは……。


最高速度が上がってるんじゃない。


最高速度自体は、俺が上!?


三体だから苦戦しているのか?


それもある。


でも、それ以上に……敵の動きが洗練されている。


連携の精度が上がっている。


俺の動きを読むように先回りする動きが、より明確になっている。


技術がましている……。


二体が目まぐるしく体の位置を入れ替えて、波状攻撃を仕掛けてきている。


そして、最後の一体が虚を突いたトリッキーな動きで、俺を的確にとらえてくる。


こんなの……。


こんなのって……。


戦闘に向けている部分は、今まで遜色なく動いてくれていた。


本当に俺には、もったいないほどの高性能な体だ。


それがなければ、俺は死んでいた。


敵の分析に向けていた思考が、停止した。


考えることを拒否している。


だって、こんなのありえない。


こんなのないよ……。


手遅れだったのか?


ああ……。


ちくしょう……。


ちくしょう……。


なんだよこれ……。


「あああああ!」


俺の久しぶりな攻撃は、トリッキーな動きをしていた一体に弾き返された。


まったく……。


全く同じ技で……。


俺は、この動きを知っている。


よく知っている。


だって、肩を並べて悪意と戦ったのだから……。


ずっと追いかけていた背中なのだから……。


嫌だ……。


こんなの……。


ありかよ! ちくしょう!


嘘であってほしい。


俺のそんな願いをあざ笑うかのうように、敵はたぶん完全体になった。


一体は、刀のような腕から伸びた黒い刃物を……。


一体は、槍の様に伸びた鋭い武器を……。


一体は、背中に真っ黒な魔方陣を背負っている。


グシュッとヘドロが、気持ち悪くうごめく。


三つの真っ黒なヘドロから、ユミルのような真っ白な仮面のような顔が浮き出してきた。


俺は、こいつらを知っている。


知っているとも……。


だって、仲間なんだよ。


俺を助けてくれた人達なんだよ。


俺の……。


俺の!


師なんだよぉぉぉぉぉぉ!


「師匠……アストレア……ユーノ……」


こんなの……。


こんなのないよ……。


こんなのって……。


ちく……しょう……。



(馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 動きなさい!)


頭の中から聞こえた声に、反射的に反応した俺は……。


いや、俺の体は敵の攻撃をうまく回避してくれた。


(動きなさい! 諦めるんじゃない!)


分かってる!


「うおおお!」


今、俺は立ち止っちゃいけない!


無駄な思考を捨てろ!


戦いに集中するんだ。


相手が、三人である事が認識できた。


それは、皮肉にも俺の記憶にある三人のパターンに動きを、照らし合わせることが出来た。


俺は、より効率的に攻撃を回避する。


まだ……。


まだ、反撃までは追いつかないが、それでもダメージを軽減できる。


(そう! そうよ……。諦めないで……。あなたが、最後の希望なんだから……)


声の主を、俺は知っている。


以前にもこうやって……。


師匠を通してリンクした時に、声を聴いている。


アリスさん……。


師匠の相棒で、恋人の魔道生命体。


どうやっているかは、わからない。


でも、アリスさんが俺に語りかけているんだ。


最後の希望……。


その言葉が、あの戦いの敗北だったとのだと理解できた。


俺が最初に負けて……。


そのあと、師匠達も負けたんだ。


そして、取り込まれた。


信じたくない……。


でも、目の前に現実がある。


ちくしょう……。


敵が分身体を、三人で作ったんだ。


そりゃそうだ。


だって、三人は最強なんだ。


俺なんかより強かったんだ。


ちくしょう……。


ちくしょう……。


ちくしょう……。


****


「ぐがああ!」


ドガン! っという音が、俺の頭の中で再生された。


たぶん本当には音はしなかっただろう。


しかし、体が何かにぶつかった。


見えないが固い壁のようなものに、激突した。


亜光速で、そんなものに人間がぶつかったんだ。


只で済むはずがない。


体が粉々……ミンチになりそうだ。


痛みすら知覚できない。


オリハルコンと同等の強度。


本当にこれに助けられた。


後、痛みになれすぎた俺の意識は切断されずに済んでいる。


これは、いったいなんだ!?


時間流の中に、いきなり出現しやがった。


時間の流れから、墜落する鳥のようにふっとばされていく。


この意味を、俺はまだ知らない。


すぐにわかるけど……。


それでも……。


これの心は、三人のことで引き裂かれるほど痛みを発していた。


体のダメージ……。


そんなものより……。


これは、キツイよ。


ありえないって……。


勘弁してくれよ……。


ちくしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ