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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十二章:闇の深淵と神々編
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十一話

うわ~……。


化け物だらけ……。


【味方ですし、頼もしいじゃないですか】


本当に全員、主神クラスになってるよ。


こんな裏技あったのか。


『一時的と言っておったが……。この世界では可能なのかも知れんな』


まあ、師匠達が他の世界に入るのは面倒そうだったもんね。


う~ん……。


やっぱり、元が人間の神は少し弱いか?


『他に比べて、五~八割と言ったところか?』


意思の力に限界があるんだろうな。


【多分、皆さん完全には魔力を制御できないでしょうね】


それでも、戦わないといけないんだな。


『命をかけて戦う同士。これは、強い神を探すよりも大変じゃろうからな』


ふ~……。


命を賭けてか……。


死んでくれるなよ?


寝ざめが悪くなる。


【なら、やる事は……】


ああ、守りきるさ。


誰も死なせない。


あいつらは、頑張ってきたんだ。


死んでいいわけが無い。


『そうじゃな』


しかし……。


『この世界は、魔力が濃いな』


ああ……。


魔力感知範囲が、かなり限定される。


【狭間と違って、思念もありませんね】


ああ、浄化でもされたのか?


たく……。


味方の拠点が、これかよ。


やってらんね~……。


『やるしかあるまい』


当然だ。


不利な条件は、元々覚悟してたしな。


ここまで連れて来てくれただけで、十分だ。


後は、この命を燃やすだけだ。


「あの……ユーノ様?」


「な~に~?」


「こうなって分かった事が……」


「私達の魔力が、弱いって事~?」


あ、そう言えば……。


俺は、建物の陰から聞き耳を立てる。


【貴方の隠れるのは、癖ですかね?】


条件反射?


「私達は、二人で一人の双子神。あの男を除けば……レイは神じゃないから、最強なのよ」


うん?


師匠の様に、自分より強い敵を倒せるのか?


「あの……どういうことでしょう?」


「そうね。信頼も必要よね。なら、教えてあげるわ。私達は、世界になり損ねた出来損ないだったの」


えっ?


エリート感バリバリだったのに?


「私達は、世界になるには魔力が強過ぎたのよ~。だから、分裂しちゃったの。そのせいで、一つ一つが世界になるには魔力が不足しちゃったわけよ」


「それを憐れんでくれたあの方に、こうして人型にして貰ったのが私達」


へ~……。


まあ、普通の神よりは強いよね。


「私達が生まれた時には、既にここで破壊神は働いていたわ~……。力を制御できずに、もがいてたけど」


師匠にもそんな時代があったのか……。


【意外ですね】


「でも、仕事から帰るたびに強くなっていったの」


「私達は、あの男を振り向かせたくて、毎日訓練を続けたわ~」


「ちょ! ユーノ!」


はい?


「そして、手に入れたのが魔力の共振。二人で、共振させる事で魔力効果を普通の三倍まで引き上げられるのよ。そして、最強と呼ばれる様になったわ」


へ~……。


「でもね~……。あいつは、それよりも自力で強くなっちゃうし。挙句に、一途に死んだ恋人を想い続けてたのよ。初恋なんて、ろくなもんじゃないわよ」


何? その設定!?


「あの、今でも破壊神様は……」


「あの方が、何故かその死んだ恋人の魂を保管してたのよ」


「で~、この間復活しちゃったの!」


五億年頑張った報酬なら、安いもんだよね。


「あの師弟には、本当に……」


なんで、俺?


文句は、師匠に言ってよ。


「どうなの~? 定着した?」


「はい!」


ふ~……。


「じゃあ、行こうか?」


「レイ」


「レイさん!」


「ちょっとタイミング良過ぎない~?」


はい! 聞こえまてん!


そして、世界に中心へと向かう。


本当の中心へ……。


全く波打っていない、静かな湖?


【大きいですが、底はかなり浅いですね】


でっかい水たまり? の方がしっくりくるかな?


『う~む。恐ろしく澄み切った水じゃな』


その水溜りに、光の球体が浮いている。


今の俺でも、完全に認識できないほどの魔力を秘めているのは分かる。


「あれが、世界の核よ」


「そして、創造主様自身なのよ~」


「思ってたよりは、小さいな」


「見た目はね~。でも、今いるこの空間と一緒であの内部も、何層にも異空間が広がっているわ」


「そして、それが結界の役割も果たしている。本来ならば、敵が侵入出来無いはずだったんだけどね」


「侵入する条件を満たしてきたのか。あいつ等は、狡猾だからな」


「じゃあ、準備はいい~?」


「ああ」


戦いだ。


最後の戦い。


もう、何も抑えないくていい。


俺の中にある、全てを解き放つんだ。


『一世一代の晴れ舞台じゃ!』


【戦いましょう】


双子神の誘導で、五層の結界を通り抜けた。


「次の層に……敵がいるようね~」


俺の目にも、既に真っ黒で薄汚い奴等の力がうつっていた。


「ああ」


「作戦はさっき言った通りよ。レイ、比重は大きいけど……」


「任せろ。俺が、全部殺してやる」


既に、俺の体からは灰色のオーラが滲みだしていた。


****


「さあ! 行くわよ!」


双子神の解錠と同時に、俺を先頭に光の球体へと飛び込む。


そこは、宇宙の様な空間だった。


敵だ。


『三体か』


すべて、主神級の黒い羽の天使。


「ぐぁ……があああああああぁぁぁぁ!」


敵を視界に捉えた瞬間、俺の中で感情が爆発した。


これは、俺が取り込んだ思念体の想いなんだろうか?


【障壁! 展開します!】


俺はその想いに、支配されたわけではない。


何よりも強い想いは、俺自身の……殺意。


今まで抑え込んでいた感情が、全ての想いを戦いへとけん引する。


もう我慢なんてしない。


誰も、失いたくない。


失わない為に……。


守るために、全てを出すんだ。


魂を……。


想いを……。


俺の全てを燃え上がらせろ!


爆発するほどに!


「ちょ! レイ!」


「きゃ!」


爆風の様に溢れ出した灰色のオーラを纏い、敵を見据える。


それと同時に、三枚の障壁が俺の周りに展開された。


その障壁は、いままでの白い色ではなく、灰色の障壁。


思念体からもたらされた知識と、合成魔力で作り出された俺の新しい盾。


これなら、主神クラスにも対抗できる。


融合された剣には、既に魔力の刃が灯っていた。


そして、障壁を全力で踏み込み敵に飛び掛かる。


『魔力制御と強化は、全てわしに任せろ!』


【障壁維持! コントロールは私が!】


敵が、俺に向かい拳を……。


遅いんだよ。


<シーザースラッシュ>


コアを中心に、敵の胴を両断した。


次……。


「この!」


「ゴミが! この神に……」


左右から向かってきた馬鹿を、袈裟斬りにする。


三つの悪意の消滅を確認した、悪意の大群がこちらに向かってくる。


殺す。


殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す!


灰色の魔力が、俺の残像を浮かび上がらせながら敵に向かって突き進んでいく。


敵を殺す為に。



「レイさん……凄い。主神クラスを……」


「見るのは後です! エルミラさん!」


「はっ! はい! メーヴェル様!」


「メーヴェル! さっきの説明通りに!」


「はい! ユーノ様!」


ユーノを中心に、空間をゆがめる術が組み上がられる。


「いいわね! 気を抜くんじゃないわよ!」


「はっ!」


そして戦闘に特化した神、約八十とアストレアが無防備になる術に取りかかった仲間を囲む。


その術の完成が、この戦いの全てを決める。


魂の故郷に満たされた魔力。


それは、全て生命になる為の魔力であり、神でも吸収する事は出来ない。


その為に、俺達の補給ラインを確保しないといけない。



「おおおおおお!」


<ドラゴンバスター>!


コアを消し飛ばされた馬鹿が、光となり消えていく。


今俺の魔力は、主神クラスより、少し低いぐらい。


いける!


これなら、主神クラスに引けは取らない!


障壁を蹴り、敵の遠隔攻撃を障壁で逸らし、魔力の刃で敵を斬り捨てる。


【右から三発!】


『上方から、二発じゃ!』


【はい!】


俺の周囲を、二枚の障壁が絶え間なくぐるぐると回っている。


足場となる障壁は、真下からの攻撃を防ぐと同時に、足場になる。


<メテオストライク>!


敵の攻撃を粉砕すると同時に、そのまま敵の急所を刃が通過する。


俺の視界全てに、気持ちの悪い黒い羽がうごめいている。


どれだけの世界を奪ったんだ。


くそったれが!


「おおっ! らああぁぁぁ!」


すれ違いざま、二体を斬り捨てる。


気を抜くな。


全てを把握するんだ。


俺の後ろには通さない。


皆殺しだ。



「ア……アストレア様?」


「何よ?」


「あの……レイは……食らっている!?」


「そうよ。あいつ等の力は、もともと世界だった力。支配していた敵の意識が途切れれば、自然とレイに取り込まれるの」


「あれが、魂の吸収」


「いいえ。吸収は、さっきの様に暴走しない限り、差し出された魔力にのみ作用される力よ」


「しかし……どんどん力を……」


「そうよ。敵から解放された魂たちが、望んでレイに取り込まれているの。救いの光へと向けて、進んでいるだけ……」



<ホークリング>!


魔力の輪で、仲間に向かうエネルギー砲を迎撃する。


来る!


【くっ! 障壁!】


『速い!』


世界を三つほど飲み込んだらしい馬鹿が、障壁を拳で突き破り迫ってくる。


さっき戦った完成した間もない奴とは違う。


見た目は人間だが、服を着ているし、速度も俺より速いらしい。


敵の拳が俺の腹部を貫通し、鈍い音が聞こえてきた。


「ぐっ!」


だが……。


『うむ! 液体金属は十分に機能しておる!』


敵の拳は、肘の部分で進行を止めた。


俺の体が、強化されてなければ粉々にされていただろう。


だが! そうはならなかった!


「おおおおお!」


腹部に手を突き刺したまま、こちらを見上げようとした馬鹿に、剣を振り下ろす。


「ごほっ……どうした? 来いよ、くそったれ」


俺の周りには、四体の馬鹿が浮いていた。


人間の姿が二体。


でかい鳥の姿に、虎の様な姿が一体ずつ。


全部、俺より強くて速いだろう……。


来いよ!


殺したいんだろう? 俺を。


『回復完了じゃ!』


「来いよ! くそったれ!」


俺に向かって、四体が真っ直ぐ向かってくる。



「行くわよ!」


「はい!」


ユーノが組みあげた術が、空間に穴を開き、魂の故郷が狭間と直結された。


「もう大丈夫よね!? 早く援護に……」


「駄目よ~、アストレア。作戦を守りなさい!」


「でも! 敵が!」


「信じなさい! レイを! なによりも、ここを保持するのが優先よ!」


「くっ……。レイ……」


「我慢なさい! 私も行きたいの山々なのよ~」


「ごめん……」


「でも、これの保持が最優先なのよ~。そして、これがレイを助けるのよ。アストレア」


「うん……」



<シーザー……>


目の前の障壁が、ガシャンと音を出して砕ける。


敵の牙が……くそ! 避けられん!


<スラッシュ>!


「くっ! このぉ!」


敵を斬り裂こうとした俺の剣は、足を食いちぎられ体勢を崩したせいで、軌道が逸れた。


コアに的確に魔力を撃ち込まないと、この化け物達は倒せない。


『回復が……間に合わん!』


くっ!


【あった! ありました!】


情報を探っていた若造が、障壁の術式を組みかえる。


人型の馬鹿を、その障壁は弾き返してくれた。


ヒビは入ったが、主神級の三倍の攻撃に一度は耐えられるほど強固になったのだ。


『よし!』


体を捻り、残像を使う事で敵の攻撃をギリギリ回避する。


俺の耳に再びガラスが砕けたような音が届く。


「グルオオオ!」


二回直撃を受けた障壁が砕けると同時に、敵の牙が体勢の崩れた俺に向かってくる。


くっ!


速度が……。


(剣を左後方に振るうんだ。その勢いで、体をずらせ)


えっ?


俺は、声に従って剣を振るう。


(そうだ。気を抜くな! 次が来る)


ああ。


お前等も来てくれたんだな。


「あ……あああ……。メーヴェル様……彼らが……」


「ええ! 来てくれたんです! 思念体となって……」


(お前から貰った、最後の至福。神ならば、返さねばなるまい)


(貴方の食事。美味しかったわ)


(さあ! 行こう!)


(私達の想いを!)


ああ……。


ああ!


分かってる! 行こう!


俺の纏うオーラがさらに、膨れ上がる。


想いの力を、剣を乗せるんだ。


敵の動きが、よりはっきりと認識できる。


今の俺なら、余波でダメージはほとんどない。


ギリギリで避けるんだ。


避けた瞬間に、反撃の体勢をとれ。


障壁に角度をつけろ。


攻撃をいなすんだ。


『来るぞ!』


恐れるな!


踏み込むんだ!


俺の命を使って……。


恐怖の……絶望の先にあるものを掴みとるんだ!


「速度が増していく!? 今のレベルアップした魔眼で追いきれないなんて……」


「私の神眼でも……」


「ほら~! 気を抜かない!」


「そうよ! 死神達もくるかも知れないのよ! ここを守るの!」


「はっ! はい!」


敵の軌道が、全て浮かび上がる。


俺の全てをつぎ込めば、もっとも理想の動きへ到達できる。


敵を殺せる。


敵は、どんどん増援されるが、関係ない。


ただ、敵を殺すんだ。


余計な思考を消すんだ。


魔力の流れに逆らうな。


最大限の攻撃を……。


心を、殺意で一色に。


「速度も魔力も、どんどん上昇している」


「凄い! 凄い! レイさん凄い!」


「うん! レイ君がいれば、僕達勝てるよ!」


「はいはい。気を抜かないの~! 何度も言わせないでよね」


「す……すみません。ユーノ様」


『ぐうう!魔力維持を……』


【処理を加速……この……】


行かせない。


お前達を、大事な仲間の所へは……。


速度を引き上げろ。


まだだ……。


まだ、無駄がある。


剣に魂を込めろ。


軌道を理想の先へ……。


一撃を必殺へ……。


大量の魔力により、残像が無数に出現し、敵の混乱を誘う。


本体を見極め損ねれば、その瞬間光へと変わっていく。


衝撃で、俺を見失えば命が尽きる。


死んでいけ。


ここが、俺とお前等の墓場だ。


その尽きない欲望を抱えて、消えていけ。


この世界にお前等は必要ない。


俺が、お前等を否定してやる。


存在そのものを!


『魔力が……さらに高まっていく。意思の力か!?』


【これなら! 思考を加速させられる! いけます! いけますよ!】


『うむ! 遅れをとるな!』


俺の命ならくれてやる!


だから、死んでいけ!


「あれを……あれを人間と言っていいのか?」


「神を超えた……人間」


「あんた達ね~……」


「仕方ないわ、ユーノ。あれは、私達以外では視界に事すら出来ないわよ」


「でもね~……。限界ギリギリの一歩先まで、踏み込んでるレイが……」


「限界の先!? ユーノ様!? それは、一体?」


「見えないから、まるで余裕を持って倒している様に見えるんじゃない~? メーヴェル?」


「はい……。違うのですか?」


「敵は、レイの速度域について行っているわ。だから、敵の攻撃をわざと受けて、さらに一歩踏み込みながら倒してるのよ~」


「そんな……」


「高速で回復しているけど、完全な捨て身の戦法よ」


「何故!? 何故ですか!? アストレア様?」


「一歩踏み込む事で、一撃で敵を討つ事が出来るのよ」


「そんな……なんでそんな戦法を……レイさんは……」


「今の、これが結果よ~」


「最速で倒す事で、敵がこちらにこない」


「あ……私達を……守るために……」


「馬鹿よ……。馬鹿」


「も~! 何やってるのよ! まだなの!?」


くそったれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


『ぬう!』


【まだです!まだ……】


「がああああ!」


目の前にいた敵を斬ると同時に、二体が仲間に向けて突進している事が分かった。


やらせるか!


若造!


【はい!】


「おおおおお!」


上方へ飛び上がり、馬型の敵へ剣を振るう。


腹部ごとコアを消滅させた。


もう一体が……。


鮫型の敵が、仲間達に向かって大きな顎を開いている。


【いけぇぇぇ!】


飛び上がる前に分離しておいた障壁を、敵の前に移動させる。


超高速で移動する化け物に、障壁はいともあっさり噛み砕かれた。


そして、敵は俺がいるはずの場所へちらりと目線をうつす。


敵の視界にうつったのは、灰色のオーラが作り出した俺の残像。


こっちだ。


クソ野郎!


<シャイニングアロー>!


壊された障壁の裏で、再展開した障壁を蹴り……。


開かれた口の先にある、敵のコアへ真っ直ぐ剣を突き出す。


「ああああああああああ!」


俺が口の中に半身を入れた所で、下半身からブチブチと何かが千切れる音が聞こえてくる。


「ぐっ……ごぼっ!」


コアは消滅させたが……。


まだ、敵の速度が上……か。


俺が口の中に飛び込むと同時に、口を閉じられた。


凶暴な牙で噛みつかれた部分が、俺自身の進む力で引きちぎれたようだ。


下半身が、皮と少しの筋肉だけで繋がっている。


『くっ! 間に合わん!』


【復元に回ります!】


ああ!


「おらああぁぁああ!」


左拳で、空中を殴りつけ……。


敵のコアへ向けて剣を振るう。


やらせない!


やらせてたまるか! くそったれ!


「レイさんが……」


「エルミラさん! レイ君の為にも、集中しなさい!」


「もう! もう! なによ!」


「ユーノ……落ちついてよ……」


「アストレアこそ、それ以上噛むと爪がなくなるわよ?」


「五月蝿いわね!」


くっ!


このぉ!


太股を骨ごと食いちぎられ、バランスを崩した俺の首に、蛇型の敵が噛みついてくる。


振りあげた剣で、敵を切り裂いたが……。


後ろから迫ってくる敵に……。


くそ。溜めの時間が……。


(体を鞭だと考えろ!)


おおおおお!


<ドラゴンウィップ>!


捻転させた体を、鞭のようにしならせて敵のコアへと撃ち抜く。


これは……。


俺がガキの頃に、骨格を狂わせるから師匠から止められていた技……。


『もう、使ってもいいと言う事じゃろう』


本当に……。



仲間が保持していた穴から、黒い影が飛び込んでくる。


「待たせた」


「おっそい~! ってちょっと~……」


「大丈夫なの?」


左上半身が鎧で包まれている状態で、飛び込んできた師匠は、傷だらけで血を大量に流していた。


そして、黒い雷が体に纏わりつき、バチバチとまわりの神を威嚇しているようにさえ見える。


「大丈夫だ。行こう!」


「でも~」


「皆さん! 破壊神様に魔力を! 急いで!」


「はい!」


「助かる……ぐっ……」


魔力の注入により、加速する苦痛を伴う回復で、師匠は顔をしかめる。


俺は知っている。


それは、人間では気が狂うほどの苦痛。


「大丈夫じゃないじゃない! 魔力も半分以下に……」


「大丈夫だ! すぐに回復する!」


「ここに向かってたあの大群を一人で、殲滅したんでしょ~? 少しは休みなさいよ~」


「そうよ! 仲間達も……全員無事じゃない! どれだけ自分一人で戦ったのよ!」


三割の主神達が、穴を通ってこちらへと入ってきた。


だが、外にも七百以上の神を感知している。


師匠は、仲間を一人も失わずにここへたどり着いたんだ。


かなわね~な……。


「よし……。魔力も回復した!行こう!」


「でも……」


「あそこで……あそこで、俺の大事な大事な馬鹿弟子が、血を流しているんだ! 俺が休憩なんて出来るか!」


「破壊神様……」


「あいつは、たった十年程で俺と肩を並べているんだ! それは俺の五億年に匹敵する、苦痛を味わった証拠なんだよ!」


「ふ~……。行くわよ! アストレア!」


「ええ! ユーノ!」


「俺は、俺の大事な馬鹿弟子を全てをかけて死なせない!」


(行くぞ! アリス!)


(はい! マスター!)


「ぐう……おおおおおおおおお!」


師匠の瞳が赤から金色に変色する。


それと同時に、魔力が膨れ上がった。


持っていた刀は、真っ黒に染まる。


最後に、真っ黒な光の羽を背負う。


「何!? この魔力は……主神クラスを超えているわ……」


「さあ! 今こそ! 我等の核となる魂よ!」


「原初の結びつきを! そして、我等に力を!」


「「共振!」」


双子神の着用していたローブが、青と赤に光り輝く鎧へと変化する。


そして、ユーノの背中には、レッドメタリックに光り輝く巨大な魔方陣が……。


アストレアの手には、ブルーメタリックに輝く槍が出現した。


「メーヴェル様……双子神様達も……魔力が」


「ええ……。これが最強の神……」


「さっきの指示通りに頼んだわよ!」


アストレアの指示で、穴に悪意をはじく魔法障壁が展開される。


魔力の補給部隊、穴を外と内で守る部隊が、自分の魔力を最大まで高める。


「よし! 俺にリンクしろ!」


(これでいい~?)


「ああ……だが、レイとリンクするときは気をつけろ」


(分かってる! 精神防壁をはってあるわ!)


(当然よ~。あの意思の力は、レイ意外に受けとめる事なんて無理よ)


「よし! 行くぞ!」


「「ええ!」」


黒と赤と青……。


光り輝く、最強が戦場に飛び出す。


(合わせろ!)


師匠……。


(はい!)


えっ!?


(もしもの時は、俺が……)


(死なせない! あの四人だけは……)


(盾になら、私でもなれる……いえ! なるのよ!)


(何があっても、この穴を守る! あの人たちの役に立てるなら!)


思念がダイレクトに読めるようになった俺に、千二百も神の心が伝わってくる。


「おおおおお!」


<ドラゴンバスター>!


馬鹿だよ……。


馬鹿ばっかりだ……。


全員から、嘘の無い気持ちが……。


世界を守りたい。


俺達を死なせたくないと言う、気持ちが伝わってくる。


その思念は、俺を前へと進めさせてくれる。


弱いくせしやがって……。


人間の俺なんかを本気で信頼しやがって……。


馬鹿どもが!


余計に負けられなくなるじゃんか……。


『勝たねばなるまい!』


【この想いに応えてこその、貴方です!】


ああ!


「次元流奥義! 弧月乱舞(こげつらんぶ+フレアノヴァ)!」


<ホークリングレイン>!


「穿て! 神槍ゲイボルグ!」


「消し去れ! ビッグバンエターナル!」


背中合わせになった俺達は、それぞれが広範囲の攻撃を繰り出した。


世界一つ分……主神クラスのエセ天使どもが一掃されていく。


まだ、一面を埋め尽くすほどのくそったれ共がいるが……。


思念体となっても戦い続ける人々が……。


千を超える神々が……。


世界の裁定をしている二人の女神が……。


最強の師匠がついているんだ!


負ける気がしない!


俺は、一人じゃない!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

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