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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第九章:異世界と狭間編
5/77

五話

ふはっ……。


「回りこめ!」


「ゴミクズが!」


ふははははっ!


「識別は!?」


「駄目です! 反応がありません!」


「ジャミングか!? くっそ! あの! こそ泥が!」


俺の速度について来られるもんなら、ついて来てみろ!


このファッ○ンポリス共が!


ふははははっ!


俺は只今、長く続く平屋の屋根を走ってます。


何故かって?


【はぁ~……】


もちろん、窃盗でポリスメンに追いかけられているからです。


『ふぅ~……』


何時も通り、濡れ衣?


はははっ……。


答えはもちろん……。


NOで!


今回は、自分の意思で盗みを働いています!


【情けない……】


『本物の犯罪者め』


五月蝿い!


生きるって事は、綺麗事じゃないんです~!


汚れ様が、恥かこうが、笑われ様が……。


ドブに浸かろうが、泥水啜ろうが生き抜くんだ!


『何か、格好のいい事を言いたいようじゃが……』


【泥棒は泥棒ですし、嬉々としてそれを行っているあなたは、最低です】


仕方ありませ~ん!


文句なら、今回のこの世界に言って下さ~い!


『お前は、あの時逝くべきじゃった……』


お前が死ね!


俺は、自分が悪くないなんて言ったりしないぞ?


【えっ? 意外に……】


悪くても生き抜く為には、喜んでやってやるんじゃい!


ふははははっ!


『人間のクズと、クズそのものの差しかないないのぉ……』


【人間として底辺……】


ふははははっ!


【『はぁ~……』】


うおっ!


強い光で、俺の目が一瞬白む。


「止まれ!」


また来たか……。


しかし、もう見慣れてきたけどさ~。


よくあんな鉄の箱が、扇風機みたいなので空飛べるよね?


『あれが、科学の力と言うものじゃろう』


「これ以上逃走を続ければ! 容赦なく発砲するぞ!」


はいはい。


お好きにどうぞ。


だって……。


「はっ!? 消えた?」


お前等が見てるの、俺の残像ですから!


<ミラージュ>


死神の技を舐めんな! バ~カ!


【怒られますよ?】


『あのお方に殴られてしまえばいいんじゃ』


気配を消した俺は、下水道から目的の場所へ走る。


最近、三日に一回はこんな感じです。


仕方がない!


仕方がないんだけど……。


ちょっと自分でも情けない。


なんだよ?


完全な管理社会って?


飯を買う為に、働くことすらできね~よ!


たく……。


やってらんね~……。


****


下水道から、処理施設をぬけて、川へと合流する場所には鉄格子がある。


もちろん、その鉄格子には人一人が通れる穴を開けています。


えっ?


見つかるんじゃないか?


まさか!


きちんと、木の枝で偽装しています。


河川敷から、橋の下……の! ブロックを外すと、俺の隠れ家があるんだ。


見つけられまい!


まさか、橋の支柱をくりぬいて生きてる奴がいるなんて、普通考えるはずがない!


ふははははっ!


「あっ! レイ兄! おかえり!」


「アニキ!」


「オカエリナサイ、レイ」


「おお」


俺に真っ先に抱きついてきたガキが、幸子さちこ


「これ、今日、品だ」


「流石、アニキ!」


そして、俺の大きな布袋に入った収穫物を受け取ったのが、一也かずや


「おい。これ、使える? あった、品、取ってきた」


「ハイ。イクツカハ、流用可能デス」


この首だけのマッシーンは、フィー。


正式な型番は……覚えてないけど、俺が拾ったアンドロイドだ。


拾った時は、アンドロイドの脳みそらしい金属の球体だけだったが、なんとか一カ月かけて顔を作りました。


まあ、まだ人間で言う皮膚の部分は出来てないから、金属骨格だけの若干グロテスクな見た目だけどね。


「アニキ~……。これ、自動クリーニング機の部品だよ?」


「そうか……」


分からね~……。


【珍しく、苦戦してますね】


一応、言い訳していい?


機械に関しては、そんなに苦手じゃなかったんだよ。これでも。


でもね!


この世界、科学発展し過ぎだから!


なんであらゆる部分に、訳のわからない基盤があってプログラムとかがいるの?


訳が判んないんだよ!


「あっ! これこれ! これは、ヘルパー器具の部品だから使えるよ」


「そっち、任せる」


「任せてよ! アニキ!」


一也が、この手の事を得意で助かった。


俺達が、フィーの部品を漁っていると、ぐぅ~っと言う音が聞こえた。


幸子を見ると、少し申し訳なさそうにこちらを見ていた。


「飯、作る」


俺が、幸子の頭に手をのせてそう言うと、嬉しそうに頷いた。


さて、ベーコンを手に入れたし……。


野菜と一緒に煮込んでスープだな。


パンも盗ってきたから、三等分……。


『うむ! それだけは、上出来じゃ!』


して、明日食べよう!


『ちょ! お前!』


「ああ! パンだ!」


「幸子、パン好き……だね?」


「えへへっ……」


「カビもない」


「レイ兄! 大好き!」


幸子が可愛いんで、仕方なく食べます!


感謝しなさい! この、イースト菌中毒ジジィ!


『よかろう! 幸子にだけ感謝しよう!』


まず、俺じゃね?


『早く用意をせんか!』


ちっ……。


「「「いただきま~す!」」」


「召シ上ガレ」


フィー? お前が言うの!?


と言うのが、俺のこの一カ月の日常です。


因みに、この世界へは二カ月前に来ました。


****


「はぁ……はぁ……」


今回も、どうにかこうにか生き延びました~。


【今回は、まだ短い時間でしたね】


十分な拷問を受けたけどね。


「うぃ……しょ!」


疲労から、俺は目の前のソファーに体を横たえた。


きっ……つい。


『まあ、今回は魔力十分じゃ』


ああ。


それだけは、助かる。


しかし……。


この臭いって……。


俺の体からじゃないよね?


【服が少々焦げくさいですが、周辺からの臭いではないですか?】


かすかな月明かりしかないが、俺は周辺を見渡す。


少し距離はあるが、町だろうか?


大きな光源があるな。


あれ?


もしかして、ここって?


『お前に相応しい場所じゃな』


ほぅ……。


お前、マジでここに捨ててくぞ! コラ!


俺がたどり着いたのは、巨大なゴミの集積所らしい場所だった。


今寝そべっていたソファーも、汚れて穴があきスプリングが飛び出しているゴミだった。


疲労から、俺はそのまま眠ろうとしまおうとした。


が……。


その暗闇の中で、一つの不思議な光を見つけた。


淡い緑色の光が点滅している。


気になった俺が、重たい体を起して近づくと……。


直径十センチほどの金属で出来た球体が、転がっていた。


なんだこれ?


【さあ?】


なんか光ってるな?


【そうですね】


俺が触った瞬間、爆発したりしないよね?


『お前は、ある意味期待を裏切らんからのぉ』


ばっ!? 爆弾!?


でも、なんか暖かい光だな……。


若干の不安はあったが、俺はその金属の球体を手に取った。


そして……。


はい。


特に何もありませんが、何か?


しばらく、明滅をしていたがそれも数分で終わった。


『なんじゃろうな?』


結構手の込んだ物だよね?


【何かの部品でしょうかね? 差し込み口らしきものもあるようですが……】


まあ、いいや。


俺はそれをポケットに入れて、再びソファーで眠ろうと考えたん……だけどね。


少し離れた場所で、人の気配がしたんだ。


どうしよう……。


日が昇ってからするべき?


『お前の好きにせい。どうせ、そうは変わらん』


じゃあ、様子だけ見るかな?


****


人の気配は、明りのついていない倉庫が立ち並んだ場所から感じた。


建物の間にある、コンテナの裏から感じる気配。


それは、とても弱弱しい感じがした。


俺がそっとコンテナの裏を覗くと、息をひそめてしゃがんでいる、みすぼらしい衣服の兄妹がいた。


まぁ、俺もボロボロのズボンとシャツだから人の事は言えないけどね。


俺を見た二人は、本当に泣きだしそうな顔をした。


そして、妹を守ろうと手を広げて男のガキが立ちふさがった。


妹は、その兄の背中の服を必死で掴んでいる。


ボロボロのぬいぐるみを抱えて。


兄の足から、血が流れていた。


その怪我のせいで、走って逃げるわけにはいかないのだろう。


俺は、この感じを知っている。


恐怖に追い詰められた時の瞳だ。


妹を守る為には、命をかける覚悟の決まった瞳……。


怪我を治してやりたいが、下手に手を出せば咬みつかれそうだな。


さて……。


「おい、言葉は分かるか?」


俺のその問いかけに……。


訳のわからない言語が返ってきた。


はい! アウトゥォォ!


【言葉が通じないようですね。念話を使いますか?】


それしかないだろうな……。


うん?


俺の背後から、五人ほどの変な服を着た男達が走ってきた。


この二人は、こいつ等に追いかけられてたんだろうな。


『そうじゃな。どうするんじゃ?』


事情が分からないしな……。


巻き込まれるかも知れないし……。


男達は、子供相手にジャキンと音を出して伸びた、金属製棒を構えた。


構えたので……。


俺の行動はきまった。


俺の射程範囲にはいった、二人の男は重力を無視した様に跳ね上がる。


ああ……。


もちろん、自発的にジャンプしたんじゃないよ。


「子供に向かって……何構えてるんだ! このクズ共!」


残った三人は、訳のわからない言葉を叫ぶ俺に驚き、身構える。


まあ、ここで身構えるんだから、相手はそれなりに訓練してるんでしょう。


だから……。


ちょっとだけ強く殴りま~す。


くくくっ。


【どっちが悪者なんだか……】


因みに!


相手の鼻を殴るのは、お勧めしません!


特に、力が強い人は……相手がピクピクって、なります!


みぞおちも……相手が動けなくなります。


腕も……どうでしょうか?


グシャリと言う感触から、吹っ飛んで壁に頭をぶつけた相手が泡をふきます。


けけけけっ……。


『やめんか、Sの塊』


あの……塊とかって止めて下さい。


【そんな事より……】


(何もしないから、こっち来い)


(えっ? 頭の中から声!?)


(いいから、こっち来い)


困惑しながらも、俺に近づいたガキの怪我を確認する。


おいおい。


【銃創ですね。傷は浅い様ですが】


子供にむかって銃って……。


やべ……。


この世界ちょっとやばそうだ。


【弾は貫通したようですね。復元します】


俺が手をかざした場所から、白い光が出ている光景を、二人は不思議そうに眺めていた。


(じゃあな)


ガキの怪我を復元した俺は、その場を立ち去……。


うおぅ!


振り向いて歩き出そうとした俺の右足に、妹が全力で抱きついていた。


なんですか~?


月明かりの中……。


涙を溜めた少女は、訴える様に俺の目を真っ直ぐ見ていた。


大事に抱えていたぬいぐるみを手放し、必死に俺の脚を掴んでいる。


行かないでなんだか、助けてなんだか……。


ガキ二人を小脇に抱えた俺は、ソファーがあった場所へ歩き出した。


そして、ソファーに二人を落とすと、そのままソファーに体を預けて眠る。


まあ、寝不足でしたから。


朝日で目を覚ますと……。


俺の両脇にガキが眠っていた。


折角ソファーを譲ってやったのに……。


俺は、二か月前のその日……。


幼い兄妹と、よく分からない球体を拾った訳だ。


****


「水かけた、だぞ」


「アニキ、それはお湯をかけるだよ」


「お湯、かける」


一也に言葉を教わりながら、風呂に入っている俺は、幸子の頭にお湯をかける。


この一カ月で、かなり喋れるようになってきた。


念話は、想像以上に魔力を消費するんで、最低限必要な時以外は節約してます。


だって! この世界モンスターいないんだもん!


「ゆっくり浸かる、だ」


俺は幸子と一緒に、一也が入っている湯船につかる。


この世界の化学は、本当に信じられないくらい発展している。


水と電気を確保すれば、風呂でも料理でも簡単に用意出来る。


まあ、ボタンひとつでお湯がわくこの湯船を持ってくるのは、結構面倒だったけどね。


【あなたの妄想、回想および、誰かに話しかけるのは癖なんでしょうが……】


ライフワークです。


【妄想、回想をしながら、言葉を覚えつつ、子供を入浴させるとは……。器用ですね】


はい! 意外にオールマイティです。


【人とのコミュニケーション以外は】


おふぅ!


ぐさっときた!


「レイ兄……もう出ていい?」


「もっと、浸かる」


「う~……」


体をしっかり温めないと、風邪をひく。


病院に行けないんだし、ここは我慢させないと。


「レイハ、イイ父親ニナリマスネ」


その前に、卒業しないといけない物を卒業していませんが?


「やっと半分ってところかな?」


(次は、どれをとってくればいいんだ?)


「えっと……駆動系の部品だから……。こんな形の機械があるから……」


風呂を出て、幸子を寝かしつけた後、一也と二人でフィーを組み立てる。


俺が部品を調達し、一也が作業をして、足りない部品に当たりをつけていく。


急いでこいつを完成させないと……。


【そうですね……。この子達には、必要になるでしょうから……】


今の隠れ家を作るまで、一度大変なことがあった。


この世界は、完全な管理社会……。


ある企業が、この国を治めている。


企業が? と、思うかもしれないが財政的に破綻した国自体を、支配企業である[ロンド]が買い取ったらしい。


細かい事は、俺にはよく分からない。


この世界には、そんな企業国家がいくつもあるんだとか。


管理社会……企業の経営陣による独裁国家だ。


子供が生まれると、バイオチップとか言うのを埋め込んで管理される。


先代の社長は、ワンマンではあるが人の事を考えられる人物だったらしいが……。


二年前に、その弟が後を継いでからは、人を恐怖で支配するようになったらしい。


その弟に都合の悪い無実の人間が、どんどん処刑されたそうだ。


このガキ共の親は、先代に可愛がられた技術者だったらしいが、無実の罪をきせられて、掴まる前に子供達だけを逃がしたらしい。


正直、生きている可能性は……。


バイオチップはあるが、管理から外れたこの二人は[警備部]という警察に当たる奴等から必死に逃げながら生きてきたそうだ。


十二歳と七歳のガキが……。


二人でゴミをあさりながら、必死で生き延びたんだ。


泣けてくるね。


当初、この二人からこの話を聞いた俺は、今いる場所から数キロ離れた場所に小屋を作って生活する事にした。


食料は、今のように俺が調達していたんだが……。


正直、俺はこの国の軍隊兼警察である警備部を舐めていた。


この世界に来て、十日ほどたった日に、俺が食料調達で二人から離れた。


帰ってきた俺が見たのは、幸子を守る様に抱えて警備部のクソどもから、ボコボコに蹴られている一也だった。


そのクソどもは、多分もう海に流れ着いてると思う。


その為、このかなり見つかり難いであろう隠れ家を用意した。


その後、簡易のディスプレイとキーボードを繋いだだけだったフィーを、完全な形にすることにした。


もちろん、二人の警護をして貰う為だ。


アンドロイドの廃品だろうフィーは、名前(型番)以外何も覚えていなかった。


このフィーが、二人の役に立ってくれるだろう。


俺は、この二人とずっと一緒にはいてやれそうにないから……。


****


翌日、警備部が用意した俺を捉える為のアインドロイド……。


それを破壊して持ち帰ったお陰で、フィーは何とか動く体を手に入れた。


それも、警備部の使っていたアンドロイドを流用したから、重装甲の戦闘力がそこそこある物に仕上がった。


正直、ラッキー。


この国自体を、潰すわけにもいかない俺は……。


これで、出来ることは全てだと思った。


異世界から来た事も既に説明しいる。


なので、近い将来いなくなる事をレイ兄のお嫁さんになる! と、言ってくれる幸子に説明するのが苦しい。


程度の問題しかないと考えていた。


俺の時間が来るまで、この三人と一体でのんびり出来ると……。


まあ、そんなに都合のいい事は俺には起こらないらしい。


神様のクソったれ……。


えっ?


そうです。


あなたの予想通りですよ?


そうですよ。


巻き込まれますよ?


もう、慣れてきました!


そして慣れた自分に、泣きそうです。


はぁ~……。


やってらんね~……。

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