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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十二章:闇の深淵と神々編
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六話

「えっ!? 本当ですか!? メーヴェル様!」


マジでか!?


おいおいおい!


「はい。本当ですよ」


俺以外の三人も、驚きながらも喜んでいる。


「先行部隊に、運命を操作できる神がいたそうで、長達も最初から介入できます」


「やったよ! ローズ!」


「うん!」


「レイさん!」


「ああ……」


初めて、崩壊が確定していない世界への出撃。


「ミスは許されません。ですから、全部隊が出撃します」


うっし!


【これで……】


『うむ! 人が助けられる!』


ああ!


「作戦開始は、今から五時間後です。皆さん、可能な限り魔力を蓄積して下さい」


「はい!」


よっしゃ!


え~……。


何するかな?


『まあ、わし等は睡眠と食事以外はする事が無いからのぅ』


今から、修練なんかしたら本番で動けなくなるしな。


う~ん……。


「あっ、レイ君?」


「何? メーヴェルさん?」


「少しこちらへ」


メーヴェルさんに手招きされたので、目の前に立つ。


「何か……」


お……おおぅ!?


あの……えっ!?


えっと……ええ!?


何!? なんですか!?


おでこに口づけされた俺は……思考が止まる。


「なっ! メーヴェル様! 何を!?」


「これは……」


「駄目! 駄目です! レイさんは……あの! 駄目です!」


え~……あ~……う~……。


「エルミラさん、これは……」


「駄目なんですぅぅぅぅぅぅ!」


『防御フィールドじゃな』


【そうですね。念の為に、神のフィールドをかけてくれたんでしょうね】


あ~……。


『アホが、夢の世界に旅だったな』


【帰ってくるんでしょうか?】


「あの……このフィールドをですね」


「駄目なんです! えと!」


は~……ほ~……。


ゴシゴシ?


なんの音だ? まあ、いいや~……。


ほへ~……あ……あじじじじじ!


「熱い! 皮膚から火が出る! エルミラって!」


「だって!」


お前は馬鹿か!


あっつ!


痛っ!


俺のおでこは、エルミラのハンカチによりケロイド状に……。


何しやがる!


お前は、曲がりなりにも神なんだよ!


全力でこすれば、火が出るわ!


それどころか、頭蓋骨が粉々になるわ!


死ぬ! 人間は死ぬから!


『回復してやろう』


【メーヴェルさんのフィールドのお陰で、これで済んだんでしょうね~】


フィールド?


ああ……。


そう言えば、体に強力なフィールドが。


て事は……。


【まあ、そう言う事だ】


こっ! 殺されかけた!


こいつは、そんな事しないと思ったのに!


何が気に入らないんだ! 言ってみろ!


【気を抜き過ぎて、隙だらけな所と……】


『変態な下衆と言う所じゃな』


おい!


変な回答するな!


はぁ~……。


気を抜くと、殺そうとするの勘弁してくれよ。


やってらんね~……。


出撃前に集まった、二百の神に料理を出してる間中……。


エルミラに腕を鷲掴みにされていました。


うん!


『フィールドがなければ、骨が折れるのぅ』


【神ですからね。腕を引きちぎられるんじゃないですか?】


この娘も、危ない!


てか! 馬鹿だ!


がばっていったら、そのまま突き飛ばされて逝ける!


はぁ~……。


****


「では、出撃です」


「はい!」


「おう!」


大勢の神が編隊を組み、目的の世界へ向かう。


どれだけ生き残れるんだろう……。


【分かりませんが、死神さん達もくるそうですし、かなり生き残るんじゃないですか?】


そうだといいんだがな……。


『敵は奴らじゃ』


ああ、気なんて抜けばすぐに殺されちまう。


【ええ】


俺達が到着した世界は……。


とても、平和だった。


文明は、俺の世界と同じくらいだろうか?


暖かい太陽の光。


爽やかな風。


休日だろうか?


公園らしき場所で、子供達が遊び。


それをベンチに座る親が見守っている。


うん?


「ほれ」


「あいあとう!」


足元に転がってきたボールを、よちよちと歩いてきたガキに渡すと、お礼を言って笑う。


「ありがとうございます」


「ああ……」


姉だろうか?


少し大きな子供が、丁寧に頭を下げてくれた。


俺は、笑いながら公園へ戻る。


その姉妹を見守る。


はぁ~……。


いい世界じゃね~か。


「可愛い姉妹ですね、レイさん」


「ああ……」


たく……。


あのクソったれ共は、こんな世界を壊そうとしてるのかよ!


クズ共が!


「で? メーヴェルさん? どうするんだ?」


奴らを潰すなら、この世界になにも無いうちに。


誰も死なないうちに!


「長達からは、待機の指示が出ています。集合場所だけは、この付近らしいですが」


まあ、あいつ等は巧妙だ。


本当に気付かれない様に、浸食を進める。


『メーヴェルの神眼ですら、悪意は見えんらしいからな』


【アストレアさん達は、見えるように言っていましたよね?】


確かな……。


俺が感じとれるのは、なんでだろう?


『役に立つんじゃ。今は、いいじゃろう』


そうだな。


神達も、悪意が魔力さえ出せば分かるって言ってたし。


主神クラスの死神なら、きっとうまくやるだろう。


後は、奴らを滅ぼすだけだ。


【できれば、この世界の人には気付かれない様にしたいですね】


そうだな。


わざわざ、怖い思いなんてしなくてもいい。


『そうじゃな』


しかし、魔力らしい魔力は感じないな……。


【そうですね】


う~ん……。


えっ!?


あれ?


ちょっと待て!


この感じ!


ビックリするくらい分かり辛いが……。


『うむ! この感じには覚えがある』


どうなってるんだ?


【落ちついて下さい。敵がいるのは分かっている事です】


そうだけど……。


「メーヴェルさん。死神達は、どこに居るんだ?」


「あちらの方に居ると、聞いています」


メーヴェルさんが指差したのは、俺が違和感を覚えた場所の逆方向だった。


おいおい……。


この感じは、あいつ等が使った。


空間ごと透過させた、結界の感じだぞ!?


まずいんじゃないのか!?


どうする!?


『むう……』


解除は一度見たから、多分出来る。


でも……。


俺が単独で動いていいものか?


「メーヴェルさん! 敵がいる! すぐそこの建物だ!」


「えっ? それは……」


「奴らが使った、特殊な結界を感じるんだ! あれは、ユーノ達……双子の女神も騙した特殊な結界だ!」


「そう言えば……かすかに、違和感が……」


「あれは、神を欺く為の結界なんだよ! ヤバい予感がする!」


「しかし……」


メーヴェルさんは、考え込む。


分かってる。


かなり判断が難しい局面だ。


勝手な行動で、万が一があれば仲間が死ぬかもしれない。


でも、あいつ等の罠なら……。


全滅もあり得る!


「メーヴェル。私が行こう」


「ガイスト」


「レイと力を合わせれば、問題は無いはずだ。そのかわり、万が一の場合は私の部隊も指揮を頼む」


「……わかったわ」


よし!


「どっちだ?」


「ついて来てくれ!」


****


俺達は、数キロ離れた廃墟に見えるビルに到着した。


間違いない……。


ロンフェオール城と同じ結界だ。


「これは、結界なのか!?」


「ああ!」


やるぞ!


『よし!』


「はああぁぁぁ!」


力の起点となる部分に、魔力をぶつける。


魔力を感知できないが、あいつ等はこうしてた……。


いけるはずだ!


パシャっと音を立て、まるで水でできた膜が弾けるように、結界が消えた。


魔力!


悪意の魔力だ!


「この魔力は! 正解だな! レイ!」


「ああ! 気を抜くなよ!」


****


そのまま俺達は、魔力に向かいビルの中へ入った。


そこには……。


くそったれ!


勘弁してくれよ!


見たくもない魔方陣が光っていた。


「これは……NO.三にNO.四」


え?


黒い鎧を着た、男と女が一人ずつ……。


こいつ等が死神?


よく見ると、コアが強く光っている。


魔力も、間違いなく主神級だ。


え?


え~……。


「よう、ガイスト」


「よくここが分かったわね」


「はぁ……」


「なるほどな。そのイレギュラーのせいか」


うん!?


イレギュラー?


ジジィ! 若造!


『うむ! 魔力をまわすぞ!』


【はっ……はい!】


でも、コアからは悪意を感じない……。


どうなんだ?


「その魔方陣はなんだ?」


「うん? 人間……いきなりタメ口かよ」


「低能な人間に、期待するだけ無駄よ」


ああ!?


「あの……御二方。その魔方陣は?」


「ああ……あ~、こっちの戦いを有利にする物だ」


こいつ等!


「この魔方陣のお陰で、私達が最初から介入できるの。分かったら、早く持ち場に戻りなさい」


最悪だ!


こいつら、敵だ!


あれは、異世界から悪意が仲間を呼び寄せる魔方陣!


(ガイスト! あれは……)


俺は、急いで念話を使いガイストに説明をした。


くそったれ!


どうなってるんだよ!?


「おっ? ばれちまったな」


「あの人間は、元々これを知ってるみたいね。でも、すぐにばらす予定だったし、いいんじゃない?」


「それもそうだ」


俺の体から出たオーラを見て、向こうにも伝わったようだ。


「な……何故ですか! 貴方達も、奴等に……」


「未来が完全には見えないあんた達には、分からないのよ!」


未来?


「お前達も知ってるだろうが、俺達のボスは時間と空間の神だ」


時間と空間!?


「お前達に見える、変動する未来じゃない。完全な未来だ。そこは、奴等の世界なんだよ」


「それ以外は、全てが混沌の未来しかないのよ。どうしようもないの!」


ふざけるなよ!


「それで、お前等は諦めたのか!?」


「当然の選択だ。最高神だとしても、変えられない未来だぞ?」


大事なのは、そこじゃないだろうが! くそが!


「お前等は! 諦めた上に、裏切ったのかって聞いてるんだよ!」


この魔方陣を、こいつ等が守ろうとした。


それは、そういうことだ。


【まさか、最初から?】


『それとも、寝返ったか?』


くそったれ!


「さっきから言ってるでしょ? どうしようも無いの」


「ならば、選択肢は一つだろうが! 生き残るために、奴等に付くしかないんだよ!」


「さ! 最初から、そのつもりだったと言うのか! 死神よ!」


流石に状況が飲み込めたらしい、ガイストが叫んでいた。


「違うわよ……。最初は本当に……。世界を守ろうとしたのよ」


「では!」


「どうしようもないんだよ! 確定した未来は変わらない!」


「だから、私たち五人は選択したのよ! 生き残る為に!」


こいつ等……。


こいつ等ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


『最高の力を持っておると言うのに……』


【だからこそ、ですかね……】


悪意の絶望に負けやがった!


神のくせしやがって!


くそったれが!


あ……。


待てよ……。


「なんで……ここに全ての仲間を?」


「ただの馬鹿じゃあないようだな」


「運命から解放されたイレギュラー……。そうよ! 貴方の想像通り!」


最悪だ!


くそったれが!


「私達が生き残る最低条件は、仲間全てを奴等の餌にする事よ!」


「このクズが!」


全部……。


死んでいった仲間達の想いを……。


こいつ等全部、踏みにじりやがった!


「仕方が無いんだ! 俺達が生き残れば、未来が繋がるんだ!」


この……。


「そうよ! これ以外の選択は、私達の全滅のみなの! 私達さえ生き残れば……」


自分達の……。


命の保身の為に、仲間を売りやがったのかよ!


この!


お前等……神様じゃないのかよ……。


「くそったれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


俺は、自分の全速力で男に飛び掛かる。


「許せよ。これも、神の未来の為だ」


くそ……。


動きが、全く見えない。


槍を持った男が、いつの間にか俺の背後に回っていた。


反応すら出来ないガイストの隣には、女が移動している。


くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


「そう、私達は正しいのよ。神なのだから……」


俺の体に大きな衝撃が突き抜け、体が吹き飛ばされた。


視界の隅には、同じように壁にぶつかったガイストが見える。


「がっ!」


「ぐうう……」


俺達は、殺される事なく結界で壁に貼り付けられた。


「お前達も、贄なんでな」


「まあ、すぐに彼らが吸収して私達の仲間になるわ」


「よし、魔方陣は完了だ」


「じゃあ、行きましょう」


くそ!


くそ!


くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


「じゃあな、人間」


「今度は、同士として会いましょう」


クズ二人が、ビルを出る。


そして、窓から差し込んでいた光が弱まる。


これは……。


日食……。


『何と言うことじゃ』


【ぐうう! 奴らがしたたかなのは、分かっていたのに!】


「駄目だ! レイ!」


動けないガイストが、俺に叫ぶ……。


情けないが、俺も動けない。


主神クラスの結界。


人間なんかで抜け出せるわけがない……。


くそ……。


このまま……。


このままじゃあ、皆が……。


エルミラが、メーヴェルさんが、ローズが、ヤニが……。


仲間が!


この世界が殺される!


くそったれ! ふざけるなよ!


もう……もう二度と……。


失いたくないんだよ!


「レ……イ……?」


もう二度と!


『来た! 来たぞ!』


【はい!】


魂を……。


想いを力に変えろ!


守って見せる!


敵を……。


敵を殺す力を!


「ぐぐがああああぁぁぁぁぁ!」


純粋な殺意が、俺に力を与えてくれる。


肉体、魂、想いを犠牲にした。


灰色の力を!



ビル中に大量のガラスの砕ける様な音が、響き渡る。


俺は自分を封じていた結界を砕き、魔方陣を無理やり破壊した。


「それが……お前の力」


ガイストの結界を壊し、ビルを出る。


****


辺りには、悪意の魔力が満ちていた。


そして、周囲にいる人間達が、呼吸困難の様に喉を押さえて苦しんでいる。


『何と言う事じゃ……』


【既に、魔力を吸収され始めています! 急ぎましょう!】


くそが!


また、出し抜かれた!


何で俺は……。


くそったれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

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