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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第九章:異世界と狭間編
4/77

四話

う~みは! ひろい~な!


『五月蝿い』


しょっぱいぃ~なぁぁぁぁぁ。


『気が散る』


つ~き~はもげる~し!


『イライラする……』


ひは……も~げ~る~。


『馬鹿か! お前は!』


違いま~す。


馬鹿はお前で~す。


【思いつかないなら、やめましょうよ。時間が長引きますよ?】


それは困る! 急ぎなさい!


『いちいち、腹の立つ言い方をするな! だいたい……』


ああ……。


海岸線から、朝日が顔を出したよ。


いい景色だな~。


『聞かんか!』


「海のばっきゃろぉぉぉぉぉぉぉ!」


『馬鹿はお前じゃぁぁぁぁぁぁぁ!』


【どうしたんですか? 急に?】


いや~。


俺って、海で酷い目にあう率高いじゃん?


【五割を超えて、苦しんでますよね】


海なんて爆発してしまえ! と言う気持ちを、声に出してみた。


『お前が、爆発してしまえばいいんじゃ……』


不吉な事言うな! クソジジィ!


今回も爆発したら、ジジィのせいだからな!


【今回こそは、穏便に過ごしたいですね】


まったくだ……。


俺って、どれくらい爆発してると思う?


【さぁ……。正確に計算はしていませんが……。六割を超えてるんじゃないですか?】


あはははは……。


「海の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


『五月蝿いわぁぁぁぁぁぁぁ!』


あ~あ……。


海やら、爆発やら……俺には鬼門が多過ぎるんだよ……。


やってらんね~……。


【でも、一番の鬼門はそれじゃないと思いますよ?】


ああ?


【どう考えても、女性でしょう】


『間違いない』


ジジィは、黙って働け!


『お前は~!』


てか! 若造!


【なんですか? 多少の罵詈雑言くらいは、甘んじて受けますが……。意見は変えませんよ】


分かってま~す……。


お前に言われなくても、死ぬほど身にしみてま~す。


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。


【あれ? 珍しく落ち込みましたね】


ふぅぅぅぅぅぅ……。


【あの……】


へぶぅぅぅぅぅ……。


【ちょっと言い過ぎましたかね】


『心配せんでも、五分で回復する』


ん? 後頭部がむず痒い?


このツンツンという感覚は……。


俺の後頭部を、何がつついてる?


えええい!


人が落ち込んでるのにぃぃぃぃぃ!


つつくな! くそ!


って……あれ?


首を左右に動かすが、相手の姿が見えない。


ええい! 真後ろか!


ん?


おお! フロントに回り込んでくれた。


質素な服を着た……ガキだな。


う~ん。


女の子……かな?


さて……運命の時間だ。


目の前のガキが、結んでいた口を開く。


「ねえ? お兄ちゃん何してるの?」


オォォォォォウ! イエッス!


この世界、言葉が通じるぅぅぅぅぅ!


やっふぅぅぅぅぅぅ!


「海を見てるんだ」


ガキが首を傾げる。


「それだけ?」


「ああ……」


「本当に?」


「嘘なんて言ってない」


しばらく俺を、しゃがんで眺めていたガキは走り去った。


たく、ガキはこれだから……。


【誰でも聞くんじゃないですか? むしろ、穏便に聞いてくれた方じゃないですか?】


そうなのかな?


【爆心地みたいになった砂浜の中心で、首だけ出してるんですよ? 不審者以外の何者でもないでしょう?】


不審者とか、止めてくださぁぁぁぁぁい!


ちょっとへこみます!


てか! 仕方がないじゃん!


ヘロヘロでこの世界に着た場所が、上空何十メートルだったんだよ!


勢いもついてるから、ブレーキングとして空中蹴っても効果薄かったし!


【まあ、今回は元々音速以上ではじき出されちゃいましたからね】


洒落にならん。


てか、ジジィまだ?


『今やっておる』


はぁ~……。


魔力が少ないと、回復遅いな~……。


【まあ、火傷に骨折その他諸々ですからね】


てか、最近このレベルの痛みが平気になった、自分が怖いよ。


【痛みは、脳への信号ですからね。痛みでショック死する事もあるくらいですから、耐性が出来ないと生きられないですよ】


俺は、どれだけ痛い思いをしてんだよ。


もう、こんな生活嫌だ……。


ああああああ!


誰か助けて下さぁぁぁぁぁぁぁい!


『よし! 何とかなったぞ!』


はぁ~。


やっと動ける。


無理矢理両腕を砂の中から出した俺は、体を引き摺り出す。


よっこい……お~や~?


【どうしました?】


腕も、足も……体の至る所も……ガンガン痛いままなんですが?


『仕方あるまい。今は、ギリギリ活動可能にするのが精一杯じゃ』


へいへい……。


取り敢えず、抜け出すか。


ういしょ!


痛い痛い痛い!


ジジィ……。


『なんじゃ?』


肋骨三本折れてる。


『死にはせん』


ジジィ……。


『なんじゃ?』


左腕が紫色にはれ上がってる。


『骨は無事じゃ』


ジジィ……。


『しつこい!』


仕方ないのは分かってるけど、これ本当にギリギリじゃん。


【魔力の自然回復だと、そこそこはかかりますねぇ】


仕方ないんだよな~。


まあ、こうしててもなんにもならないし、取り敢えず軽く探索するか。


『わしは、しばらく眠るぞ』


へいへい。


モンスターと戦う率が高かったから、ジジィが眠るの久し振りだな。


【それだけ、今回は消費したんでしょうね】


やっぱり、限界は一週間くらいか。


腹減った……。


探索より、食料確保を優先かな?


海に潜って魚?


【体力を回復させないと、まずいレベルですからね】


てか、この状態で海に入るの嫌だな。


物凄く、ヒリヒリしそうな気がする。


「お姉ちゃん! あれ! ほらほら!」


海に入ろうか、悩んでいた俺が振り返ると……。


お……おおおう!


女!


女の子ぉぉぉぉぉぉ!


【あの……】


何か、アウトドア系の日焼け美人!


【さっき……】


化粧気が少ないのも、素材のよさでカバーしてるね!


【自分が……】


眉毛が太いのは、御愛嬌だ! 質素な服装で……露出率が高い!


【どうして落ち込んだか覚えてます?】


記憶に御座いません。


「あの……もしかして、島の外から来た方ですか?」


島?


ここは島なの?


「うん! そうそう!」


「島外の人を、初めて見ました」


へっ?


そんな辺境なの? ここ?


「その服装……もしかして、襲われましたか?」


毎度ですが、俺の服はボロボロです。


ゾンビに襲われた人みたいだね。


【襲われたと言うより、この間の世界で見た映画の、ゾンビ自身が身に纏ったボロボロの服に見えますよ】


まぁ、話しを合わせておくか。


「そうなんだ。あれは、何?」


「よくご無事で……。あれは、大鰐オオワニです。あれのせいで、島から出る事も、入る事も出来ません」


ワニ?


ワニって、淡水に生息する肉食の爬虫類だよな?


図鑑には、そう書いてあったんだけど?


この世界は、海水に居るのか?


【う~ん……。あ! 確か、サメをさしてワニと呼ぶ事もあったはずですよ】


ああ、おっきいサメか。


サメに襲われて、島から出られないって事は、船の技術は知れてるんだろうな。


【まあ、そうでしょうね。異世界ごとに、文明はかなり違いますから】


「あの……よかったら、家に来ませんか?」


いいんですか?


「たいした物はありませんが、簡単な食事なら……」


「いえ! 助かります」


でも……。


出来れば、食事よりもあなたを食べたいです!


口には出しませんけどね!


【はぁ~……】


「お兄ちゃん! これ!」


ああ?


なんだ? この簾は?


「後で話すので、今はそれで姿を隠してついて来て下さい」


なんか、訳ありかな?


まぁ、従っとくか……。


****


二人について行くと、ボロボロの掘立小屋が……。


ここが家かな?


中に通された俺は、取り敢えず食事を待つ。


う~ん……。


見事なまでに綿が入ってない、ツギハギだらけの布団だな。


てか、これはもうボロ布だよね。


【暮らしは、裕福とは言えない様ですね】


服をくれって言えないな。


「お待たせしました」


「有難う御座います」


おっと……。


なんだろう? これは?


小さな焼き魚と……御椀に入った謎の汁。


「こんな物しかないですが、遠慮はしないでください」


「い……いただきます」


魚は……小さいから頭ごと食べられるな……。


この汁がもしかして、主食?


【少しの野菜と、穀物が入ってますから……。多分そうでしょうね】


うん!


不味い……。


贅沢は言えないが、不味い上に少ない……。


おや?


ガキが、じっと見てる……。


羨ましそうに……。


もしかして?


【これでも、豪華な食事だったかも知れませんね】


「美味しかった。有難う」


その言葉で、二人の顔が明るくなる。


言えねぇぇぇ……。


不味いし、足りないなんて……。


俺が愛想笑いを浮かべていると、体がドクンと脈動する。


うお!


くそ……。


「トイレある? ちょっと貸してくれますか?」


「はい。出て、右側に……」


俺は、急いでトイレにこもる。


ぐうううう……。


く……。


全身から、大量の冷や汗が吹き出してきた。


【大丈夫ですか?】


くっそ!


この発動のトリガーが分からん!


今は、助かるが……。


体を、内側から掻き毟られてるみたいだ……。


「はぁ……はぁ……」


俺の細胞と融合した液体金属から、魔力が逆流してきた。


この現象がおこるタイミングも分からないし、あまり気持ちのいい物ではない。


魔力が補充された俺の体から、煙が立ち上った。


『あのお方も解析しきれておらなんほどじゃ。不明瞭な点が多いのぉ』


【そうですね。命にかかわる事はない様ですが、発作も魔力を合成すれば発症しますしね】


まぁ……。


死なないなら、それでいい。


『回復完了じゃ』


この機能を理解して、コントロール出来れば色々助かるんだけどな~。


まあ、いいや。


家の中へ戻った俺は、二人からこの世界の話を島外から来たていで聞く。


この島の住人は約百人。


海流と地形のせいで、俺が埋まっていたあの海岸の先からしか外海に出ていけないそうだ。


その場所に、運悪く船を襲うサメが住み着いており、島から出る事が不可能らしい。


島から出られない住民は、大きな問題を抱えている。


食料の問題だ。


限られた土地での作物栽培には、限界がある。


島全体で飼育しているヤギも、増やしすぎると餌の問題でかえって負担になるらしい。


そして、限られた海域で採れる海産物……。


島には、一人の王がいるそうだ。


生き残るために、その王が住民の人数を百人程度に管理しているらしい。


限られた世界で、生き抜く為には仕方のない事かな?


住民は六十歳になると……。


必要ないとして、始末されるそうだ。


ギリギリの島だな……。


ただ……。


俺が注目したのはそこじゃない。


世界が残酷なのはよく知ってるし、綺麗事だけで生きられないのも当然だ。


ここの王が正しいとは思わないが、間違っているとも言い切れない。


「で? 生まれたら連れて行かれるの?」


「そうなんです。男は五歳になると、城での奉公に出ないといけなくて……」


おいおいおい。


これって……。


【確かに、完全な管理ですね】


『しかし、ちと惨いな』


俺にとっては大チャンス!


【また……】


この島には、女しかいないって!


ハーレムじゃないですか!


『お前が本能のままに行動すると、島の生態系を壊すぞ?』


知った事か!


【うわぁ。最低だ、この人】


『回復を……止めるべきじゃった』


くぅうぅぅぅぅぅぅぅ!


「それで、先程姿を隠して貰ったんです。王に知られれば、どうなるか分からなくて……」


もしかして!


目の前の美人は、俺の嫁?


「理解できたよ。ありがとう。とりあえず、様子を見る為に隠れておいた方がよさそうだよね?」


「不自由をかけます」


取り敢えず、この子と既成事実を。


ぐっへっへっへっ……。


『へっ! 変態じゃぁぁぁぁぁぁ!』


違いま~す。


【どう考えても、思考が悪人じゃないですか!】


それは、否めませ~ん。


男はみんな狼なんです!


【『最悪』】


てか!


「遅くなったけど、俺はレイ。君達は?」


「ああ! うっかりしてました。私は、麗華れいかでこっちが妹の桜華おうかです」


「宜しく~」


「はい。あの……レイ様は……」


「レイで」


「はい?」


「レイだけでいいよ」


「レイ……」


「うん。それで、宜しく」


ああ……そう言えば。


「男がいないのに、子供ってどうするの?」


「それは、王に認められた人が、城に一週間滞在して……その」


ああ、なるほど。


【城には、島中の男性がいるらしいですしね】


てか、その城の男って労働してないんだろ?


それで、一週間も……。


死んでしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!


『……不憫な奴じゃ。特に頭が……』


だって、収穫物の六割を献上するって。


麗華達より、いい暮らししてるんじゃないの?


それで、女の子もって……。


爆発しろぉぉぉぉぉぉぉぉ!


【止めましょうよ。人を呪わば穴二つですよ?】


「あの……日が暮れるまで、ここで大人しくしててもらえますか?」


「了解」


寝不足だから、助かる。


「私達は、海に漁に出ます」


「ああ。気をつけて」


二人が出ていくと、そのまま横になる……。


ん……眠れん!


興奮して眠れん!


【寝ましょうよ。この一週間、まともに眠ってないんですよ?】


だって! 俺の念願が……。


もしかすると念願が、今日成就するかも知れないんだぞ!?


テンションが上がると言うよりは……ドキドキが止まらない!


【はぁ~……。賢者様からも……あれ?】


くくくっ……。


疲れてジジィは寝てますよ!


神よ! 俺を祝福しろ!


あぁぁぁぁぁはっはは!


【これが、世界を救った人間とは思えません……。はぁ~……】


まあ、眠れないし島内を見物するかな。


【見つかると不味いじゃ……】


そんなへまするか!


もうすぐ、俺の物になるかも知れない女性の物色を!


****


俺は、気配を消して家を出た。


そして、島を見て回る。


麗華達の家は少し離れているが、集落の一部だった。


本当に全員女性が、農耕作業をしている。


海には、カヌーの様な小舟が浮かんで釣りをしている。


網を使ったり、潜ったりしないのは魚をとり過ぎないようにかな?


これだと、餓死者も出ているんだろうなぁ。


しかし……。


【もともと、文明は進んでいたのでしょうか? これは、コンクリートですよね?】


そうだな……。


屋根もトタンで出来てる。


壊れているが、ガスコンロまであるよ。


サメのせいで閉じ込められただけで、外はそこそこの文明があるのか?


【しかし、島外からサメだけで、助けが来ないのはどう言う事でしょうか?】


俺の世界みたいに、空飛ぶ機械が無いのかな?


まあ、そのおかげで、この島の女性が俺の物に……。


【違いますよ……】


年上に年下……。


綺麗系に可愛い系……。


よりどりみどりぃぃぃぃぃぃぃぃ!


【はぁ~……】


崖の上の草むらに身を伏せた俺は、仕事をする女性達を一人一人確認していく。


みんな化粧はしてないけど、なかなかいいじゃないですか!


あの子かわいいな!


それにあの子も!


ああ! あの子も捨てがたい!


あんな子もいい!


【全員じゃないですか】


全部俺のもんじゃぁぁぁぁぁぁい!


【……前から思っていましたが、好みはないんですか?】


ああ?


【明らかに、タイプが違う女性も多いですし……。失礼ですが、美人と言えない方もそこそこ……】


馬鹿か!


女性は、女性と言うだけで美しいんだ!


【立派な博愛主義で……。なら逆に、嫌いなタイプは?】


性格が悪い奴……。


俺を、生理的に嫌いって言う奴……。


後、殺そうとして来る奴……。


【博愛主義の聞こえはいいですが、もてなさ過ぎて自分を受け入れてくれるなら、誰でもいいのでは?】


面白い事言うな、お前。


はははっ……。


【図星ですね】


あ……目から鼻水がこぼれそうだ……。


すごく粘り気のない鼻水が……。


【人はそれを、涙って言うんです】


涙?


何それ、食えるの?


【はぁ~。しかし、中身を含めてですが、一人を選ぶのも大事な事ですよ?】


選別なんて残酷な事は出来ません!


みんな大好きです!


【あなたのそれは、只の下心です】


よし!


お前とは、一生分かりあえん!


それは、それとして……。


お前の好みはどれだ?


【……そうですねぇ。あの、今Uターンした船に乗った女性が……】


おお! 美人系が好きか!


うん!


いいね~!


おや?


なんで、あの地点でみんな引き返してるんだ?


【あの場所に近づくと、船の動きが早くなってますね】


ああ……海流か……。


そう言えば、海流が強くて島から出られないとか言ってたな。


う~ん……。


てか、さっきから気になってたんだけどさぁ。


なんで、鳥を見かけないんだろう?


なんか引っかかるなぁ。


ちっと、調べるか。


****


俺は、人がいない場所へ移動して海の状況を確認した。


これは……。


問題ないんじゃね?


【まあ、カヌーではなく普通の船であれば】


なんだろう? 引っかかるな。


まあ、いいや。


俺は、海流に向かって飛び込み……。


お魚ゲット!


海流に乗ってる大きな魚なので、聖剣で直接殴り倒します。


俺に殴られた魚が、二十匹ほど海面に浮かんだ。


さあ! お食事の時間です!


****


「……ふぅ~」


【久し振りに満腹ですね】


新鮮な魚はいけるね~。


魚を二匹ほど持って帰り、姉妹の帰りを待つ。


「外に出たんですか!?」


「大丈夫。誰にも見つかってないよ」


「でも……」


「まあまあ、取り敢えず食べてよ」


「いいの? お兄ちゃん!」


俺が、親指を立てると同時に桜華が、俺の調理した魚を食べ始める。


それを見た麗華も、ゆっくりと食べ始めてくれた。


日頃から、量を食べていないせいだろうか?


食べるのが遅いな。


「ですから……親衛隊と言う人達がいまして……」


「はいはい」


食事の間中、麗華に外に出た事の文句を言われた。


ちょっとイラッとしたので……。


後で、エロい事をします!


もちろん!全力で!


食事が終わると、桜華はすぐに眠りについた。


日が昇る頃に起きて、日が沈むと眠る。


原始的だが、いい暮らしだ。


「今日は、月が綺麗ですね……」


俺が窓から月を眺めていると、隣に麗華が座った。


「そうだな。そう言えば、ロープとか丈夫な紐ってある? 出来るだけ長いの」


「有りますけど」


「明日、あの魚の取り方教えるよ」


「助かります」


それから、少しだけ二人で月を眺める。


おおおう!


頭!


頭が俺の肩に!


「男の人って……こんな香りがするんですね」


うん!?


「えっ? 臭い? 俺、臭い?」


「ううん。海とお日様のいい香り」


まあ、泳いだ上に服を乾かそうと干してたからね。


あの……これぇぇぇぇぇぇぇ!


やべ!


心臓が!


通常の三十倍(当社比)で、ドキドキいってる!


心臓が破裂する!


いや……まだだ!


毎回これでへましてるんだ!


何のために、日々精神修行をしてるんだ!


戦う為?


違います!


この場面で頑張る為です!


頑張れ! 頑張るんだ! 俺ぇぇぇぇぇぇ!


何か!


何か雰囲気を壊さない事を言うんだ!


そして……。


「王は……この十年女性を選ばなくなりました。桜華がこの島で、一番若いんです」


そうなの?


何でだろ?


てか! そんな事はどうでもいいです!


「もう、私には子供を宿す機会はないかもしれません」


おおおおお!


この展開!


神様が本当に祝福してくれてる!?


俺にもやっと御褒美がぁぁぁぁぁぁぁ!


「あの……私に……」


麗華は頭を上げて、真っ直ぐ俺を見てます!


せっ……積極的。


助かります!


何よりも助かります!


ああ!


いかん! 落ち着け!


興奮し過ぎて、目の前がホワイトアウトしかけてる!


駄目だ!


このチャンスを生かすんだ!


今度こそ! 今度こはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


次の瞬間、小さな小屋の中にゴトンっという音が響く。


【あ~あ……】


『まあ、この一週間まともに睡眠をとっておらんからな』


【昼間睡眠をとっておけば……】


『不憫な奴じゃ』


えっ!?


そうですよ。


俺が頭から床に倒れ込んだ音です。


寝落ちましたけど、何か?


ははははっ……。


笑えよ! 笑えばいいさぁぁぁぁぁぁぁ!


ああ! ちくしょう!


久し振りに眠って、気持ちよかったですよぉぉぉぉぉぉぉぉ!


はぁ~……。


****


翌朝、日の出とともに目を覚ました俺は……。


薪を割りました。


素手で……。


無念を拳に乗せて……。


薪ですか?


もちろん、山積みです。


数カ月はもつと言われましたよ。


ついでに、木で銛も作りました。


これで、二人に素潜り漁を教えよう。


釣りなんかよりは、はるかに効率的だ。


****


人のいない場所に、三人で移動して海岸の岩、海面に浮かべたカヌー、自分の腰をロープでつなぐ。


午前中で、素潜りを身につけてもらい、午後は魚を直接銛でしとめた。


「凄い! こんな方法があったんですね!」


「お兄ちゃん! 見て見て!」


逆に思いつかなかったお前等が、変なんだよ。


てか、釣りを知ってて、何で素潜りをしようとは考えなかったんだ?


なんだかな?


『新しい事を考える余裕が無く、日々の生活に追われたっと言ったところか?』


原住民が、生活に追われるって……。


まるで……。


うん?


【そうですね。まるで、都会の人間を突然島に連れてきたようです】


う~ん……。


調べ……。


でも、何かに巻き込まれる可能性も……。


う~ん……。


『どうするんじゃ?』


せめて、今日の夜を堪能してから……。


【まあ、今回は無理やりじゃないですから止めません】


ええ~。


何時も無理やり女性を……みたいな言い方止めてくれます?


【覗きや痴漢は……】


『立派な犯罪じゃ!』


そんな場面で、息を合わせるな!


でもまあ……。


今夜こそ!


『夢がかなった瞬間、生きる気力を失い、死ななければいいがのぉ』


怖い事言うな!


「あの!」


ん?


「まずいです! 引き返しましょう!」


「何で?」


「ここは、海流の外! あれがきます!」


ああ、サメね……。


え?


ちょ! これ!


「二人ともカヌーに乗れ!急げ!」


「レイは!?」


「いいから! 早く!」


俺の下に、馬鹿デカイ影が……。


急いで、二人をカヌーに乗せた俺は、カヌーを岸に向かった力いっぱい突き飛ばした。


次に俺が見たのは……。


海面から空に向かってそびえたつ、ワニの上あごと下あごでした。


ワニィィィィィィ!


サメじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!


この世界のワニは、海水でも生きられるんだ。


何て、考えているうちに俺は……。


十人は人間を丸呑みできそうなでっかい口に、ゴックン! ってされました。


****


ゴウン、ゴウンとワニの口内には、低い音が響いていた。


おい。


『なんじゃ?』


ワニってこんな仕組みなの? 普通。


『普通は、違う。れっきとした、生物じゃからな』


ただ今俺は、ワニの口の中に魔剣を刺して掴まっている状態です。


その俺の目の前では、入ってきたものをすり潰す為であろう……。


ミキサーだか歯車だかが、回ってます。


完全に金属です。


【魔力を感じなかったのは、普通の生物だからかと思いましたが……。明らかに人工物ですね】


何かあるとは、思ったけど。


これは、調べた方がいいかな?


しかし、どうやって出よう。


穴をあけても、海の中だよね?


口をもう一回あけるの待つか?


『生物ではないから、食事の為に口は開かんじゃろうな』


誰かが、襲われるまで待つわけにもいかないしな。


俺が頭を悩ませていると、ガチャっという音がどこかから聞こえてきた。


はっ!?


回転した金属の刃が!


迫ってくる!


きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!


この時、もう少し冷静に動けば……。


魔力のよる攻撃ではないので、無効化は出来ない。


焦った俺がした事は……。


聖剣を出しての、<ホークスラッシュ>による衝撃波の乱れうち……。


結果は……。


「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


爆発、吹っ飛ぶ、砂浜に突き刺さる。


あら? なんだろう?


この光景一日ぶり。


『今回は、怪我しておらんじゃろうが。早く抜け出せ』


【住民に見つかりますよ?】


そうだ……な?


住人Aが現れた!

住人Bが現れた!

住人Cが現れた!

住人Dが現れた!

住人Eが現れた!

住人Fが現れた!

住人Gが現れた!

住人Hが現れた!

住人Iが現れた!


以下略。


取り囲まれたぁぁぁぁぁぁぁ!


女の人に取り囲まれるって、ある意味嬉しいけど!


ミスったぁぁぁぁぁぁぁ!


****


「あの……レイ?」


「何?」


「あれは、本当に死んだの? もういなくなったの?」


「多分……一匹しかいなければだけど」


「でも、よかった……」


俺は、別の意味でよかったけどね。


住民に取り囲まれたが、状況を認識している俺は……。


『お前のあだ名は今日から、詐欺師じゃ』


島の外からその時来た事にしました! てへっ!


そして、運よく一番近かった、麗華の家に泊めてもらうと言う事で解放されました。


【なんで、ああいった場面では口がよく回るんでしょうね?】


分かりません!


中の人……は、俺だから。


外の人に聞いて下さい!


もしくは、俺を操作してるプレイヤーに!


麗華より年上の女の人に、明日城に一緒に行くように言われたけど、まあいい。


今日この時間だけあれば!


『わしは、眠る。まぁ、せいぜいしくじらんようにな』


早く寝ろ。


さて!


「お姉ちゃん、お兄ちゃん、お休み」


「お休み、桜華」


ガキが眠って……。


ソワソワと、貧乏ゆすりをする俺は今日も月を眺めます。


今日こそは決める!


こんなチャンスは二度とない!


「あの……レイ?」


「何?」


「昨日は、その……。嫌だったりする?」


「違う! 違う! 本当に寝不足だったんだよ!」


「じゃあ!」


今だ!


今こそ、シミュレーション生かすんだ!


今日は、体も綺麗に洗ったし!


頭の中で、何万回も訓練したこの瞬間を!


お……おおう?


えっ?


何?


どう言う事?


「レイ? どうしたの?」


この家が取り囲まれている!?


でも、敵意や殺気はない?


はぁ?


引き戸である、家の扉が開かれた。


「やっぱりこうなったのね……」


「峰子さん!? あの……」


「麗華! 抜け駆けは無しだよ!」


「純ちゃん……」


狭い家は、女性で鮨詰めになった……。


「王を待ってたら、あたし等に機会は無くなる!」


「私は、三十路を越えてしまいました……。どうか、お慈悲を……」


大勢の女性が、俺に頭を下げていた……。


【よかったですね。ハーレムじゃないですか】


その場で、服を脱ぎ始めた女性達は、そのまま俺に手を伸ばしてきた。


おそ……。


【はい?】


襲われるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!


【望んでませんでした?】


こんなの嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!


そおい!


「ああ! レイ!」


「待って下さい!」



窓から脱出した俺は……。


上半身裸の女性達に追いかけられました。


嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!


こんなの嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!


初めてなのに!


俺!


初めてなのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!


ママン!


みんなが僕を虐めるよ!


助けてママン!


こんなの嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!


せめて一人ずつ来てよぉぉぉぉぉぉぉぉ!


あああ!


元々ボロボロだったシャツをはぎ取られた俺は、真っ暗闇を走りました。


力の限り。


****


『それで、へこんでおるのか……』


【はい……】


『不憫……。いや! このチキンが!』


傷口に塩を塗るな!


高望はしないけども!


こんなの嫌じゃい!


森の木の上で、松明を持った住民達から今も姿を隠しています。



なんかこうね……。


【なんですか?】


経験を重ねてさ……。


【はい?】


そう上で、ここに来たかったぁぁぁぁぁぁぁ!


『アホ……』


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。


あれ?


あの場所だけ、明りがついてる。


なんだろう?


木の上にいる俺は、森の中に火ではないだろうと思われる明かりを見つけた。


【あれが、城でしょうか?】


『かも知れんな』


する事ないし、行ってみようか……。


****


これが城?


只の二階建てのビルじゃん。


明りは……二階だけだな。


てか、人の気配がしないんだけど?


『そうじゃなぁ……』


そのビルに、俺は気配を消してそっと忍びこむ。


あれ?


地下から気配がする?


『王は、地下で眠っているのかも知れんな』


まぁ、二階から様子を見るか。


あれ?


簾のかかってる玉座に人影?


でも、気配しないな。



少し気を抜いた俺が、その玉座に歩み寄る。


その時、体が意思とは関係なく反射的にしゃがみ込んだ。


俺の首があった場所を、高速で何かが横切っていく。


敵!?


なんだ一体!?


しゃがんでいる俺は、月の光を頼りに、攻撃をしてきた影へ蹴りを放つ。


かなり大きな衝撃音を出して、その影は壁に激突した。


ん?


ん~?


壁に激突したそれは……。


メイドさんだった。


はい?


バチバチと火花を散らしたメイドさんは、全く動かない。


なんだこれ?


『これは……』


【こんな物があるなんて……】


『動力は分からんが、機械人形じゃな』


それで、気配も魔力も感じなかったのか。


まあ、偽神も似た様なものだったし、これくらいは……。


うん?


もしかして!


王ってのも機械か!?


俺は、簾を……。


お~う。


玉座に座っていたのは、ミイラだった。


やたらと高価そうな装飾品を纏ったミイラ。


『どう言う事じゃ?』


全く見当もつかん。


【どうします?】


仕方ない、地下に行こう。


【そうですね……】


****


地下は、バイオポッドらしきものがおかれた研究施設らしき場所だった。


やはり、それなりに発展した文明があったんだな。


動力室と思われる部屋。


そして、牢屋と寝室らしき場所があった。


「あ……ああう」


「おお! あう!」


牢屋には、裸の男達が……。


なんだ?


男は、こんな扱いなの?


『まるで、奴隷か、動物扱いじゃな』


食事が欲しいのか、男達は俺に向かって何かを訴えている。


【喋れないようだな】


寝室に、何かないかな?


えっ!?


マジかよ!


明りのついた寝室で、俺は信じられない物を見た。


この文字って。


『レーム大陸と同じ文字じゃ……』


おいおいおい!


もしかして、この世界って元の世界に近いのか?


【可能性はありますね】


もしかして、次は戻れる?


『分からんが、そうかも知れんな』


元の世界に戻れば!


こんな漂流生活とはおさらば出来る!


この世界ってもしかして、頑張った俺への御褒美の世界?


『それは後じゃ。それより……』


分かってるよ……。


寝室の奥にある、大きなモニターに近づくと……。


コンピューターが自動で起動し、日記と書かれたファイルを俺は開く。


そこには、この島の全てが書いてあった。


凄いなこいつ……。


『そうじゃな……』


凄いアホだ。


【ちょっと頂けないですね】


――――――――


くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ!


なんで、この優秀な俺がこんな思いをしないといけないんだ!


馬鹿にしやがって!


俺は、お前達を生かしてやってるだけだ!


何が、生理的に無理だ! キモイだ!


折角この俺が、話しかけてやったのに!


俺は、お前等の何百倍も! 何千倍も優秀なんだ!


今に見ていろ! クソ女ども!


そうだ……。


この世のすべてを俺基準にすればいいんだ!


この俺様が、支配者になるんだ!


俺以外の選択肢を無くしてやる!


――――――――


っと、日記には書いてあった。


『なんじゃ? お前の同類か?』


違うわ!


俺も流石に、ここまでは歪んでない!


『しかし、優秀なのは確かだったようじゃな』


星の核から魔力を吸い出して、電力を作るシステムはこいつが作った……のか?


『さあ、自意識に問題があるようじゃから、管理する仕事についていただけかも知れんが……。過剰に自分を持ち上げて書いてあるだけかもなぁ』


まあ、金と知識はあったみたいだな。


この島を買い取って、住めるようにした。


『魔力炉の暴走事故を起こし、女性のみを避難させるふりをして誘拐した』


【そして、出られない様にあのワニの形をした警備ロボを放って、身の回りの世話をメイド型アンドロイドにさせる】


自分はクローンを作って、脳だけの移植を続けて長生き……。


馬鹿だこいつ!


『病気じゃな』


【変質者ですね】


まあ、いろいろ辻褄は合うけど……。


この島の住民ってもしかして……。


『この馬鹿の子供ばかりじゃろうな……』


ちょ!


頭がおかしい!


【さっきのミイラは、この方でしょうか?】


『いくら技術が優れていても、延命には限界がある。この記録が途絶えた十年ほど前に、人生を閉じたのじゃろう』


童貞をこじらせると、こうなるのか……。


『未来のお前じゃ』


マジで!?


【容姿はどうか分かりませんが……。人に好かれる嫌われるの大きな要因は、内面にあると思うんですがね】


まあ、これだけ性格が悪かったら、イケメンでも嫌われるって。


てか、金持ってて女性が寄りつかないって……。


性格が、そうとうヤバかったんじゃないの?


自分の欲の為に、魔力を暴走させるような馬鹿だし。


【人の振り見てわがふり直せ、ですね】


俺、こんなに馬鹿じゃない!


人にここまで迷惑かけない!


『なるほど……。この十年は、あのアンドロイドが勝手に王の代わりをしていたようじゃな』


どうなるかは分からないけど。


このままなら、島民が全滅する。


このバカの呪縛から解き放たないと……。


『そうじゃな』


【あのアンドロイドを壊してしまった以上、男性達の世話をする人も必要ですしね】


****


日が昇ると同時に、島民を集めて事情を説明した。


島民達にとって、このまま自分達は王に見殺しにされるのでは? と言う事が、一番恐怖の対象だったようで……。


意外にすんなり全てを受け入れてくれた。


男性達の面倒は、喜んで見てくれるらしい。


さて……。


ハーレムじゃないけど、俺は麗華とこのまま時間が来るまで過ごせそうだ。


これで……。


俺の夢が叶う。


「行くの? 危なくない?」


「さっき言った通り、俺は異世界から来たんだ。色々出来るから、大丈夫だよ。日が沈むまでには帰る」


俺は、阿呆の部屋で見つけた地図を元に、魔力炉の暴走した場所へ向かう事にした。


もちろん確認のためだ。


文明が残っているなら、状況を島民に報告する。


人がいなくなっていても、環境として問題が無いなら島民を誘導する。


万が一、危険なら極力近づかない様に注意を促す。


ってところかな?


****


小舟を借りた俺は、水面を思い切り蹴って高速で移動し、目的の陸地へと到着した。


馬鹿が、あの島を孤立させてどれくらいたったのかな?


人の町だったであろう場所は、ジャングルと化していた。


近代的な建物を、植物が覆っている。


そして、見た事もない生物達がうごめいていた。


人間は、多分……。


全滅したか、この場所からは避難したんだろうな。


モンスターではないが、動物達が近い生物に変わっていた。


俺を狙ってきた、虫や爬虫類や飛ばないでっかい鳥は……。


面倒なので、斬りました。


てか! 襲ってくんな馬鹿!


****


俺が、大きな魔力を感知して魔力炉だったらしい場所に行くと……。


景色がゆがむほどの魔力が、いまだに湧き出していた。


『これはまずいのぉ』


そうだな……。


最悪、師匠の世界みたいに魔力が枯渇して、星が死ぬ。


【しかし、これだけ強力な魔力に下手に手出しは出来ませんね】


制御できそうな物じゃないし……。


困った俺は、その場に立ち尽くした。


それが、よくなかった。


毎度毎度、俺が気を抜くとろくな事はない。


運命に勝ったつもりでいたが、俺の不幸は原因が別にあるのだろうか?


「うっ!」


急に目の前が回転を初め、俺はその場で吐いてしまった。


『しまった! 魔力にあたった!』


俺の魔力は特殊で、体内は常にその特殊な魔力で満たされている。


なので、常人よりも魔力の影響は受けにくい。


だが……。


受け難いであって、受けないではない。


【まずいです! 離脱を!】


その場を動こうとするが、足が言う事を聞いてくれない。


意識が……。


くっそぉぉぉぉぉ!


その場で意識を失えば、間違いなく命はないと感じた俺に出来たのは……。


魔力炉に向かい、残った力全てで衝撃波を放つ事だけだ。


情けないが、それ以外の選択肢が残っていないほど魔力の影響を受けてしまっていた。


たぶん、あまりにも影響を受けなさすぎて、俺は魔力にあてられる事に関しては鈍感になっていたんだ。


そこまで酷い状況になって、やっと危ないと分かった。


****


俺の不運と同時に、悪運も健在だ。


俺の放った衝撃波は、魔力を吸い出していた装置を壊す事に成功し、魔力の流出が止まった。


しかし、所詮は悪運。


爆発と共に、俺はその世界を約三日ではじき出された。


自由に世界を行き来出来ない以上、俺はもうこの世界へは来る事がないだろう。


あ~あ……。


日が暮れるまでに帰るって言ったのに……。


俺は、また嘘付きだ。


今回は嘘をつくつもりもなかったのに……。


てか!


俺の初めてがぁぁぁぁぁぁぁ!


『結局そこか、煩悩の塊め』


あああああ!


ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!


やってらんね~……。

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