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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十一章:召喚の勇者達編
34/77

八話

「何でだよ」


おかしい!


絶対おかしいぃ!


【これも作戦ですよ】


うっさい! ボケ!


「ふん! これだから、頭の悪い人間は困るのよ」


ああ~?


「ちゃんと聞いてたの~? 私達は、結界を作る方がいいのよ。それとも、貴方が出来るの~?」


ああ!? ゴラッ!


やんのか!? ゴラァ!


「その不快な濁った目を、こっちに向けないで欲しいものね」


やってやんぞ? コラァ!


ああ~?


『やめんか! 女神になぶり殺されるぞ、人間よりもクズ』


えっ?


【作戦ですって、ゴミの中でもクズ】


ちょ!


人間ですらないっ!


てか、若造の方が何気に酷い!


「作戦を聞いてたのかい? レイ?」


「うっさい! ババッ……痛い! 叩くな!」


ああ! もう!


イラつく!


なんで、俺アルベルトエゴールイグナートが城攻めで、この最強の二人が結界なんて作るんだよ!


おかしいじゃん!


こいつ等二人だけで、魔族の城なんて幾らでも落とせるってんだ!


あ~あ!


やってらんね~……。


「お前が、そこまで明確に敵意を出すのは、珍しいな。あの美人二人と、知り合いなのか?」


黙ってろ! アルベ……ヒゲ!


「アナスタシア姫の予言は間違いない! ここは、わし等と行こうぞ!」


五月蝿い! エゴ……白ヒゲ!


「クズが……」


ああ?


「結界作成側に、姫様達が向かわれるのだ! そちらに、精鋭を揃えるのは当然だろうが!」


「ライの言う通りよ!」


ライにソフィー……。


もう、このバカップルは、いちいちいちいち……。


うっざいわ~……。


『相手をすれば……』


分かってるよ。


【無視ですよ。無視】


はいはい……。


「レイ殿。つまりこの作戦は……」


イグナート! 近い!


お前の距離感おかしい!


隣の席に座っていたイグナートは、肌が触れ合いそうなほど俺に近付いて説明をしようとしてきた。


「ふ~む……。なんともおかしいな人間関係になってきたな」


「エゴール殿も気が付いたか?」


「アルベルトよ。これでも、わしはお前の倍は生きておるんだぞ?」


「これは、失礼した。しかし、レイは……どうしても、人に影響を与えてしまうようだ」


「両国の姫に、使用人の娘からは好意。仲間の勇者二人からは敵意か」


「そう言えば、イグナートの視線が……」


「推測でしかないが、多分そうだろうな。それよりも、あのソフィーと言う娘は、嫌っておる様に見えるが……」


「視線は常にレイに向いているか? 多分な。だが、レイの方は気が無いようでな……」


「それで、こじれたか……。ふ~む、罪作りな奴じゃな」


「前しか見ない男だからな。それよりもあの二人に対して、レイが意識している事の方が驚きなんだが?」


「ユーノとアストレアか……。あの二人は、わし等もよく分からんのだ」


分かってるっての!


「今、イグナートが説明した通りよ~。この娘の作戦は、悔しいけど完璧なの~」


姫さんから、アナスタシア……姫様に目線を移す。


駄目だよ。


笑いかけようとしないでくれ。


ブローチには気付いてる。


でも、駄目なんだ。


俺は、目線をイグナートに戻……うおう!


近い! 顔近い!


「城の裏山に作ってる結界は、異世界の力を使った素晴らしいものなんだよ! 出発前に、見学でもするかい?」


「いや……遠慮する」


『しかし、世界中の人間と動物を召喚したうえで、強力な結界で囲い込むとは……』


【凄い魔法ですね】


まあ、使うときは最悪の場合だから、それは避けたいけどね。


「分かったら、お前は城を攻め落として来い! せいぜい、イグナート殿の足を引っ張らない様にな!」


ライは、俺に喧嘩を売らないと気が済まないのか?


「この世界中の生物を召喚する術式。私達が必要でしょう? 少しは、頭を使いなさい」


今……。


アストレアに馬鹿にされた!


殺して【落ちつきましょうね】


「魔族に~……。あれも、まぎれない様にするのって大変なのよ? 分かってる?」


『悪意を識別する術式を、組んでくれるんじゃろう』


分かってる!


分かってるけど……。


殺し【抑えましょうね】


うん?


「ちょっと! レイ!」


俺が、剣に手をかけた事で姫さんが焦り出す。


「ふっ!」


それを無視して、俺は空中に剣を振るう。


「ついに本性を出したか! ユーノ殿! 助太刀を……」


「流石と言っておこうかしら~?」


ライを無視したユーノが指を鳴らすと、俺が斬り捨てた蝿? が燃え上がる。


かすかに、悪意が……。


「まあ、これくらいは出来ないとね」


アストレアも、槍を握っていた手を放す。


後、武器に手をかけたのは、ヒゲーズ二人とイグナートか……。


やっぱり、この三人はかなりのレベルだな。


「レイ……殿は、敵の間者を斬り捨てただけですよ、カテリーナ様」


「ふ~……。そうみたいね~」


女神二人は別格として……。


【残りの四人で魔族の城を攻める作戦は、理にかなっていると思いますよ?】


『姫達は、守ってくれるそうじゃしな』


は~……。


わかったよ~……。


俺が、クソったれ女神に対する文句をおさめただけで、作戦会議はいともあっさり終わった。


たく……。


急がないといけない、ロンフェオールへの道には三つの砦がある。


今日中に、その二つを攻め落とすって作戦らしい。


因みに、その砦の二つには魔王がいるそうだ。


この世界の勇者が命懸けで倒した一匹、俺が倒した一匹、ユーノ達が倒した二匹……。


『残りは三匹じゃな』


まあ、本当の敵はそれじゃないけど……。


【悪意が紛れ込んでいる可能性もありますからね】


気は抜けないな。


『まあ、もう力を制限する事もあるまい』


そうだな。


てか、俺の努力返せぇぇぇぇぇぇぇぇ!


****


「本当によろしいのですか?」


「この四人なら大丈夫だ」


午前中に、俺達四人は城を出発する。


戦力として、兵士を同行させると大臣が言ってくれたが……。


足手まといなので、断った。


まあ、荷物持ち等、雑用の兵士十人だけは同行してもらうけどね。


全員が乗れる幌馬車で移動する事になった。


「御武運を」


アナスタシア姫様がわざわざ見送ってくれる……。


俺はイグナートのように、気軽には返事が出来そうにないよ。


さて……。


やる事もないし。


「寝る!」


俺は、馬車の床に寝ころんだ。


「相変わらず、緊張感の無い奴だ」


うっさい! ヒゲ!


「肝が据わっている! うん! 頼もしい!」


マジで五月蝿い! 白ひげ!


声がでかいんだよ!


****


「おい! 着いたぞ!」


ああ?


「あれが、砦だ」


ああ……。


魔力からすると……。


『この前よりも多いようじゃ』


【四……五千と言ったところでしょうか?】


まあ、余裕っしょ。


「で? 作戦はどうする?」


え~っと……。


「力技」


「門から真っ直ぐ攻め込みましょう」


「正面突破でいいだろう」


多数決により……。


「真っ向勝負だな」


「何故だろう……」


何? アルベルト?


「全員が同じ意見ではあるが、レイの言葉は……一番頭が悪く聞こえるな」


何?


殴っていいの?


それとも、殴れって事!?


【どうどう】


「アルベルトは武器の特性上少しだけ離れて、わし等のバックアップでいいだろう」


まあ、そうだろうね。


「では! 行きましょう!」


「おう!」


「うむ!」


「うぃ~……」


おお……。


凄いな!


『聖剣……いや、神剣かのぅ?』


イグナートの剣は、若造のように魔力の刃を出している。


「ああ……神剣グラム! 僕の愛剣です!」


白ひげの大剣も、強力な魔力を宿している。


「斬魔剣デュランダル! 長年の相棒じゃ」


こいつ等の剣も鎧も、凄い魔力だ。


きっとチート付きなんだろうな~……。


「では!」


「うむ! 行くぞ!」


真っ先に、白ひげが走り出す。


「ぬん!」


おお……。


巨大な門を両断したよ。


さて……。


俺もフレイを抜くと、二人の後に続く。


勇者三人+俺。


正直、魔族がかわいそう……。


だって、四人ともほぼ無敵状態だもん。


敵の攻撃は、一発も当たらない。


魔法攻撃なんて俺はかき消せるし、イグナートと白ひげの鎧に無効化されてるよ。


弓兵なんて矢をつがえる前に、アルベルトに撃ち殺されていくし……。


二十分も戦うと、敵が涙目で逃げていくよ。


蹂躙戦通り越して、ほぼ虐殺ですよ。


【まあ、屈指の強者四人ですから……】


この三人は……Aランクかな?


『前の二人はSランク……じゃろうな』


俺の世界に居た、英雄王子より強いな。


【あの方もAランクでしたから、人間では群を抜いていましたがね】


そうだよな……。


聖剣を持った使徒共もSランク……。


敵を斬り捨てながら、俺はある事に気が付く。


俺の世界は、少し異常ではないか?


億や京を超えた、無限とも思える世界……。


その世界にも、それぞれで特出した人間はいる。


目の前の三人もそうだが……。


それでも、殆どの世界でBランクを超える人間は存在していない。


全ての世界で一番とは言い切れないが、イグナートはかなり上に居る。


それは分かるが、それはピラミッドの頂上。


俺の世界には、世界中の勇者に混じっても遜色がない人間や、亜人種が……。


多過ぎる。


それも、異常と言えるレベルでだ。


ほぼ、有り得ないと言っていいほどだ。


伝説の武器防具なしで、Aランクに人間が到達すること自体が、有り得ない事じゃないのか?


この三人は、通常の武器でゴルバと渡り合えるのだろうか?


亜人種も、魔力で変わってしまったが人間には違いない。


「おい! レイ! 危な……くないな」


「ふ~、粗方終わったな。どうした? アルベルト?」


「エゴール殿……あんたは、ああやって目を瞑ったまま背後の敵を斬れるか?」


「考え事をしているようだな……。わしには無理じゃな」


「イグナートも強い。別格だ。だが、レイの底も見えんな……」


「異質の天才二人と言ったところか?」


「ああ……」


【相変わらず器用ですね】


何が?


【気配や魔力で、敵の位置は丸わかりですけど……】


分かってるなら、斬るだけでいいんだから誰でもできるよ。


『これほど変態的な強さは、お前だけじゃ』


変態って言うな!


てか、変態関係ないじゃん!


「これで、最後のようだね」


イグナートが、最後の敵を斬り伏せた。


「じゃあ、俺が馬車を誘導してくる」


おう! 行って来い! ヒゲ!


「やはりレイ殿は、お強いですね」


近い!


お前、近いんだよ! イグナート!


寄ってくるな!


お前は、あれか!


「少し場違いですが、ここで告白させていただきます」


告白……だと?


ガチホモですね?


分かります。



ああああああああああああああ!



「私は、アナスタシア姫様に好意を持っています。いえ、既に愛しているといってもいい」


ああ……。


ああ?


あ……焦った~……。


「しかし、姫様は貴方が気にかかるご様子」


「気のせいだ」


「まさか、誤魔化せるとでも?」


ふ~……。


「私は、あれほど魅力的な心を持った方に初めて会いました。ですから……」


「じゃあ、お前が幸せにしてやれよ」


「何を言っているのです?」


「どの道、俺はこの世界に長居は出来ないし、あいつを連れていく事も出来ないんだ。だから……」


「決めるのは、私達ではなく姫様御自身です。私達はただ、アピールをするだけです」


「なら、俺に言う必要もないだろう?」


「私は騎士の家系に生まれたもので、正々堂々が好きなんですよ。戦闘ではそうも言っていられませんが」


爽やかなイケメンが、照れ臭そうに笑っている。


もてるんだろうね~……。


死ね!


『お前は……』


「それにふられるにしても、やるだけやってならば、諦めもつきます」


「そんなもんかね~……」


俺は、やるだけやってもムカつくし、上手くいった事がないからな。


分かんね~よ。


「これから、私達はライバルです! 改めて、宜しくお願いします!」


差し出されたイグナートの手を無視して、俺は馬車に乗り込む。


そして、床に座り眠りにつく。


お前なら、あいつを守り抜いて幸せに出来るだろうな……。


俺には出来ない。


だから、俺はお前を応援するよ。


それくらいしか出来ないからな……。


あいつが幸せに……不幸にならないならそれでいい。


それで……。


「三角関係?」


「いや、アルベルトよ。もう一人の姫に、使用人の娘、ソフィーもおるぞ」


「そうなると、ライもか? え~……」


「七角!?」


「わし等は、関わるだけ損だな。見ている分には、楽しめるだろうが」


「ま……まあ、そうだな」


****


「アルティメットブレイク!」

「グラビトンスラッシュ!」


「ショットシェル!」

「バックドロップ!」


イグナートとエゴールの斬撃に続いて、アルベルトが魔力のこもった強力な散弾で魔王を打ち抜く。


『いや……あのな』


「カイザー……トラスト!」


「グラビティインフェルノ!」


「ライトニングスペルバレット!」


勇者三人の攻撃は、魔王に反撃の隙を与えない。



俺も……。



片膝をついた魔王の、膝を使い……。




「シャイニングウィザード!」



『うん! お前だけおかしい!』


何が?


【明らかに肉弾戦じゃないですか】


戦いってそんなものじゃないか!


てか、かなりダメージを与えてるじゃん!


【まあ、そうですが……】


「おい! レイ気を抜くな!」


ああ?


魔王の魔力が膨れ上がり……。


「真の姿になるんだろうな……」


よし! 今だ!


【えっ? ちょ?】


寝る間を惜しんで、暇な時にぼ~っと考えた!


『考えておらん! それは、考えておらんぞ! 馬鹿!』


ひっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!


「えっ?」


「あの……レイ殿は何時も?」


「まあ、大体あんな感じだな」


四の字固め!


か~ら~の~……。


スコーピオンデスロック(サソリ固め)!


おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


【また~……】


前回の魔王との戦いは失敗だった!


今回は、その失敗を生かす!


【え? 何処が?】


これだと、戦ってますよ! 感が出るはずだ!


あんなに引かれない!


ふん!


ブチブチと……。


魔王の足首が取れました。


いらね。


「これはもう、私達は必要ない様ですね」


「そうだな」


「全く……」


死ね! おらぁぁぁぁぁぁぁ!


****


『何処の世界に、エルボードロップで魔王を殺す人間がおるんじゃ?』


え?


ここに居ますけど、何か?


「完全に魔力が消えましたね」


「これで、今日の目的は完了だな」


「お前を……」


「何だ? アルベルト?」


「お前を剣士と認めると、本当の剣士に申し訳が……」


剣士ですよぉぉぉぉぉぉ!


俺、こう見えてもバリバリの剣士ですよぉぉぉぉぉぉぉぉ!


【答えはノーで】


余計な事言うな!


「いいではないか! 勝ってしまえば、同じだ!」


「エゴール殿……」


「アルベルトよ! そう青い事を言うな!」


「まあ、怪我人もなく勝つことこそが、最優先ですからね」


おう! イグナートとエゴールの方が、話が分かるじゃん!


「さて……いったん城に戻りますか?」


「そうだな。食事は移動しながらでいいだろう」


うん!?


「なっ!?」


建物を出た瞬間、砦の屋根に魔力……悪意を感知した俺は、反射的に剣を抜き跳び上がる。


アルベルトには、俺が消えた様に見えただろう。


<サザンクロス>!


フレイに魔力を込めて、悪意を相殺する。


十字に切り裂かれた敵は、フレイの魔力により燃えながら塵へと変わる。


しかし……。


「やはり、生粋の剣士ですね」


「うんうん、見事だ!」


イグナートとエゴールは、俺の動きについてきた。


【ここ高さは……十メートルでしょうか?】


『まあ、お前を除けば最強の二人じゃ』


俺の反射速度に付いてくる人間なんて、始めてだ。


その上、重い鎧と剣を装備して十メートルの跳躍も可能って……。


はぁ~……。


【どうしたんですか?】


イグナートって、まだ十九歳だってさ。


【どうかしました?】


イケメンで天才……。


勇者で最強……。


『なんじゃ?いつもの病気か?』


いい奴過ぎて、嫌いきれん……。


この手の天才は、ろくに苦労してないから……。


大体、調子に乗ってるものなのに。


なんでいい奴なの?


俺と友達になってくれた勇者……。


セシルさんと、イグナートのイメージが重なる。


『真の勇者なんじゃろう』


ああ! もう!


嫌がらせしたら、俺が悪者じゃん!


【止めましょうね】


諭すな!


あ~あ……。


やってらんね~……。

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