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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十一章:召喚の勇者達編
30/77

四話

なんだよ? この空気は?


ユリウスとライが、めっちゃ睨んできやがる。


ああ?


やんのか? こら!


『止めろ、人間の底辺』


え?


俺って、人間の最下層なの?


だって!


睨まれたら、むかつくじゃん!


【相手からすれば、美味しい所を持って行かれた! と、思ってるんじゃないですか?】


だって~。


こいつ等はいいけど、一般兵が犠牲になりそうだったじゃん。


「レイさん! 凄いで……」


俺に歩み寄ろうとしたソフィーを、ライが手で制止した。


「君は、最低限のルールも守れないのか?」


ああ?


戦いに、ルールもクソもあるか!


「こんな恥ずかしい勝ち方は初めてだ! やっている事が、魔王軍以下だ!」


いちいち、いちいち……。


もうこいつ、殴っていいよね?


いいんだよね?


【止めましょうよ】


『ここで手を出せば、完全な悪者じゃ』


ああ! もう!


こいつ嫌い!


なんで、頑張って責められるの?


訳が分かんないんですけど?


はぁ~……。


やってらんね~……。


うん?


ライがソフィーの手を引いて、自分ごと後ろに下がって……。


ああ……。


【向こうも嫌いなようですよ】


いっそ、これで死ねと思ってるんじゃないか?


「今だ!」


門の陰で息を潜めていたオーク達が、俺に向かって走り出した。


教えないだけじゃなくて、ソフィーごと安全圏に移動しやがったよ。


はぁ~……。


とことんやな奴だな。


ふん!


「プギィィィィィ!」


勿論、俺を殺そうとしたオークの斧を避けて、本気の拳骨です。


俺に殴られた豚が、錐揉み状に回転し、地面を弾んでいきます。


『首の骨……以外にも折れたじゃろうな』


本気で殺そうとする奴なんて、手加減しないからな。


ふん!


おら!


んなろぉぉ!


勇者達は、全く助けてくれないので、向かってくるアンデッド以外のモンスター達を……。


殴って! 殴って! 蹴り倒します!


あ……。


こ~れ! た~のし~!


【出ましたよ……】


気晴らしになるなぁ! おい!


おら!


俺のローキックで、オークの両膝から先が千切れ飛ぶ。


まだ生きてるので、軸足を変えてそのまま一回転してます。


結果として、踵が頭に直撃しました。


え? はいはい。


地面にめり込んで塵に変わりましたけど、何か?


視界に入ったアルベルトが……。


構えた銃をおろしたよ……。


え? 助けてくれないの?


『助けなど不要じゃろうが』


まあね。


おらぁぁぁ!


あはは!


おっと……。


接近戦を止めて、弓矢での攻撃に切り替えたか。


なら……。


「うぼっ!?」


一番近くにいた、トロルの腕を掴み……。


「必殺! FFフレンドリーファイア!」


【意味が違いますよ】


敵に投げつけました。


おら!


もう一発!


俺に投げられた敵は、仲間を巻き込んで……塵にになりました。


死ねや! おらぁぁぁぁ!


『なんじゃろうな……』


【戦い方が、褒められないと言うか……】


勝てばいいんだよ! 勝てば!


『セリフは、ほぼ悪人じゃな』


あ!


逃げ出しやがった!


待て!


逃げるオークの背後から、首を目がけて……。


ジャンプ!


「フランケン……」


両膝で頭を挟み込み、自分の体をそらせてオークを引っこ抜く。


「シュタイナー!」


頭が地面と同化したオークが……。


まあ、死ぬよね。


【かわいそうに……】


この間いった世界で見た、この技やってみたかったんだよね~。


『おい、馬鹿』


なんだよ? クソジジィ?


『その隙だらけの技のせいで、敵が全員逃げたぞ?』


あああああ!


うん?


なんだ? あれ?


気球ってやつか?


「飛行船だな」


アルベルト……ようはでっかい風船的な物か?


なら!


おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


魔剣フレイを抜いて……。


投げました。


届け! 届……。


うわ~……。


ブーメランみたいに戻ってくるよ。


【横向きに投げるからですよ】


仕方無い。


『駄目じゃ、馬鹿』


反射的に、魔剣を呼び出そうとしたが拒否された。


うおう!


何とかスウェーバックで、躱したが……。


戻ってきたフレイのかすめた前髪が、チリチリに……。


うおい! ジジィ!


『アホか! お前は! 折角、隠しておるんじゃろうが! 気軽に出すな!』


あ……ごめんごめん。


ドガンっと耳元で、大きな銃声がする。


でっかい風船は、アルベルトの銃で見事に撃ち落とされた。


おお~。


こいつ、すげ~な。


「お前は、あれか?」


「何?」


「剣士ではなく、格闘家なのか?」


「いえ、剣士ですが?」


なんで、頭を掻くんだよ!


『剣士は普通、剣を使うし……』


【剣を考えなく投げたりはしません】


だって~……。


うん?


相変わらず、ユリウスとライは俺の事が気に入らないらしいな。


【もう、気にしない! で、どうです?】


あの二人を殴るわけにいかないし、それしかないよね~……。


因みに、帰りの馬車内で、アルベルトと同じ質問をババァにもされました。


うぜっ。


****


「おお! よくぞ! 報告は受けておるぞ!」


城に戻った俺達に、王様が駆け寄ってきた。


何?


そんなに嬉しかったの?


「まさか、半日で四天王の一角を倒すとは! 流石だ!」


興奮するな!


そして、手を握るな!


男に触られて喜ぶ趣味は、無い!


「この!」


痛い!


「王を敬わんか!」


王様の手を振りほどいたら、ババァに殴られた。


「痛いだろうが! ババァ!」


「この!」


ふふん!


ババァの杖を回避! え……あれ?


目の前に、折りたたまれた扇子が迫って?


二段攻撃……だと?


「ぐがっ!」


人中……人中に扇子が直撃した。


それも……これ!


あの! これ!


「金属製の扇子じゃねぇぇぇか! 死んでしまう!」


「あら~? 勇者なら、これくらい避けてよね~」


お前か! クソ姫!


【いちいち気を抜くから……】


うっさい! ボケ!


「で~? レイ?」


「なんだよ?」


「貴方は、格闘家なの~? それとも、剣士~?」


また、それかよ。


「剣士だよ」


「剣を使わない剣士なんて、聞いた事ないんだけど~?」


「じゃあ、次は使うよ。それでいいだろ?」


何? その含みのある笑顔は?


「剣士のくせに、素手で魔族の四天王を倒すって~……。貴方の事が、気になるんだけど~?」


おおう……。


『お前が普通に戦わんせいじゃ』


だって~……。


「ねえ~? どうなの~?」


後ずさる俺以上の速度で、姫さんが近づいてくる。


あわ……あわわわわ!


えっと……えっとぉぉぉ!


ああ!


「あれだよ! 四天王を倒したのは、アルベルトだよ。俺は、補助しただけだって!」


全力の営業スマイルで、言ってみた!


「あら~? そうなの?」


姫さんの目が、アルベルトに向いた。


今だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「あ! こら~!」


ベランダから、庭に向かって、そおい!


****


「きゃ! レ……レイ……様?」


あ! 昨日のメイドさん!


「あの……今三階から……」


「ああ……。気のせい、気のせい」


「そう言えば、砦の魔族を倒されたんですよね! レイ様が!」


「それ、間違いだ。倒したのはアルベルトで、俺はその補助。後、レイ様じゃなくて、レイでいい」


「でも……」


「昨日言った通り、俺は勇者じゃないんでね」


この子は……着やせするとみた!


E!


【Dカップ!】


『アホ……』


はい! ジジィの負け~!


****


「しかし、ヨルダ殿……。変わった男を召喚したもんだな」


ベランダから庭を見下ろすアルベルトが、ババァに喋りかける。


「そうだねぇ。不思議と人を引き付ける……」


「まあ、それ以上に嫌われる事もあるようだが」


「変わってるってのだけは、認めるわ~……」


二人の会話に、姫さんも加わる。


「しかし、気にかかる男だ」


俺を見ていた姫さんの眉間に、深いしわが刻まれた。


「な~に? あいつ? 私には嘘の笑顔なのに、使用人には本当に笑いかけてるじゃな~い!」


「姫様……お抑え下さい」


「ふん!」


鼻から強く息を噴き出した姫さんは、自室へと不機嫌そうに引き上げていった。



しかし、答えが分からんな。


【Dですって】


Eだって!


触らせてくれないかな~?


『全く……。若造もアホに合わせるな!』


【いえ……先日負けたので、今度こそはと……】


「レイ……様?」


「様はいらないって」


「でも……」


「で? 何?」


「昨日のお料理を、王様と姫様も気に入られたそうなんです。で……厨房担当の者が、お時間がある時で構わないので……その……」


使用人さん達を教育すれば……。


【私達の食生活も……】


『満足いくものになるじゃろうな』


うん! 決まり!


「じゃあ! 行ってくる!」


「えっ? でも、今日はお疲れに……」


「あっ! 全然! じゃあ、またね!」


俺は、厨房に向かって走る。


俺達の明日は、俺の教育にかかってる!


『よし行け! 馬鹿!』


【パァァァァァァァスタァァァァァァァァァ!】


よし! 今日はパン食べない!


『なっ!』


****


「違う、違う」


「すみません!」


そんなに、頭下げないでよ。


「食材を炒める前に、油をひかずに火にかけるんだ。これは、空焚きって言って……」


何!?


魔力だ!


この感じは……。


『魔族じゃな』


「悪い! 敵が来た! 続きは、今度!」


俺は、魔力を感知して厨房を飛び出した。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


さっきの庭からだ!


そこに向かう途中の通路で、魔力を奪われたのかミイラ化した兵士が倒れていた。


くっそ!



「まさか、ギャレイがやられるとはな……」


「だが! ギャレイは我ら四天王の中で、最弱の存在」


さっき俺が飛び降りたベランダに、三人の魔族。


『全員Bランクじゃな』


その中の体が岩でできた様な化け物の手には、メイドさんが握られている。


この!


「まあ、そう構えるな、異界の勇者達よ。今日は挨拶にきたのだ」


「そう我等は、仲間を殺された腹いせに、少し挑発に来ただけ」


「くくくっ……この小娘は美味そうだ」


メイドさんに、化け物がかぶりつきそうだ!


やらせるか!


「やめ……。えっ?」


「おらぁぁぁぁぁぁ!」


壁を駆け上がった俺は、化け物のアゴにとび蹴りをかました。


その衝撃で緩んだ手から、メイドさんを救出して部屋の隅へ移動する。


ふ~……。


「レイさん!」


「ふん! 僕だけでも助けられたものを……」


メイドさんは……。


「大丈夫か?」


「はい……はい……」


俺の腕の中で、震えて涙を流している。


それも、必死に鳴き声を両手で押さえて……。


やってくれたな、クソ野郎。


「おい……ゴルガン? そのダメージは……」


俺が蹴りつけた敵の頬は、岩の様な皮膚が剥がれて大量出血している。


でもね……。


そんなもんで許すか!


殺す! 女を泣かす奴も、殺そうとする奴も殺す!


「ぐがああ! いてええ! あの人間! 殺す!」


『あっちもやる気じゃな』


後悔させてやるよ!


「この! ゴミ以下の人間が……あん?」


馬鹿は、視界から消えた俺をキョロキョロと捜す。


気配を消して、死角から動く俺は……。


既に背後に居ます!


馬鹿の腰を両手で掴み……。


「スープレックスゥゥゥゥゥゥゥゥ!」


手加減抜きで、頭から床にたたきつけたせいで、フロア全体が揺れる。


手には、何かが折れる感触が……。


ちっ! まだ生きてる!


大の字でピクピクしている馬鹿を、マウントから死ぬまで殴りつけた。


「この! お……おい! 退却……えっ?」



「ホーリーシャイン!」

「天雷斬……三式」

「ショット!」


ライの白く光る斬撃と、雷撃を帯びたユリウスの斬撃が敵を切り裂き、アルベルトの銃が止めを刺した。


四天王を瞬殺。


【腐っても勇者達です】


「くっ!」


最後に残った羽の生えた一人が、飛び去ろうと……。


誰が逃がすか!


「死ね! おらぁぁぁぁぁぁ!」


俺は、敵のコアに向かってフレイを投げる。


今度は切っ先から、真っ直ぐ飛ぶように!


うし!


室内に銃声が響く。


俺の剣が刺さり、動きを止めた敵の頭をアルベルトが撃ち抜いた。


やっぱり、勇者の中でこいつかなりレベル高いな。


『戦い方は、かなり独特じゃがな』


他の二人も、学生時代の俺より格段に強いけど、アルベルトはさらに上だ。


【そうなんですか?】


『今回は、その通りじゃな』


ふん!


敵の城に来て、逃げられるとでも思ったのか?


馬鹿なの?


「大丈夫か?」


「あり……がとうご……ざいます……」


メイドさんは、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、何回も頭を下げてくれる。


この世界の魔族は、同情の余地ないな。


『亜人種ではないし。人間を、食料としてしか考えておらんからな』


これで、心おきなく殴れる。


【既に十分殴ってますけどね】


「さあ、顔洗ってこいよ。お前、顔が大変な事になってるぞ?」


「あの……すみません」


「いいから、行って来いって」


「はい……ありがとうございます。レイ様」


「様はいらないぞ~……っと」


走り去るメイドさんに、一応言ってみた。


さて……厨房に戻るか。


「ちょっと~……」


姫さん?


「なんで、私よりあのメイドに優しいの~?」


はい?


え~……。


あっちのが俺の好みで、メイドさんだから、フラグが立つと思うから。


【空気を読みましょうね】


だから、諭すな!


分かってるよ!


えっと……。


ええっと!


う~んっと!


え~……。


「別に……」


『お前、さんざん考えてそれか?』


「何? レイは、あんなのが好みなの~? それとも、私が嫌いとか~?」


「いや……別に嫌いじゃないよ……」


「じゃあなんで~? ちゃんと、訳を説明しなさいよ」


こいつ……。


【あ~あ、目をつけられた】


うぜっ!


ものっそい、うぜっ!


ええい! もう!


『結局それか、チキン』


チキンって言うな!


折るぞ! クソジジィ!


「まあ……色々ですよ~っと!」


うげっ!


「げほっ! げほっ! おえ!」


営業スマイルで、誤魔化して走り去ろうとした俺。


その俺は営業スマイルをしている間に襟を、姫さんに掴まれてました。


逃げようと必死で、気付かなかった。


てか! 首がぐきっ! ってなるわ!


さっきの人中といい!


「死んでしまうわ!」


「あら~? 因果応報って言葉……ご存知ぃ?」


目が据わってらっしゃる。


あれ~?


俺って、そんなに悪いことした?


「は~い……正座!」


俺は、反射的に従ってしまう。


俺って奴は……。


それから、扇子で頭をペチペチ叩かれながら、色々聞かれました。


二時間ほどはぐらかしたら、最後にちょっと強めに蹴られて釈放されました。


『お前の強い女への恐怖症は、治る見込みがないな』


えっ?


一生治らないの?


【多分……】


マジでか!?


あ~……。


やってらんね~……。

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