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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十一章:召喚の勇者達編
29/77

三話

「では、そなた等は武器を持っていないのだな?」


「はぁ」


痛い!


杖で叩くな! クソババァ!


「相手は、仮にも一国の王なんだよ?」


知るかそんなもん。


「ヨルダよ。よい」


「ほら! 王様もいいっていってるじゃん!」


痛っ!


おんなじとこ殴るなよ! 痛いだろうが!


「武器ももたずに来るなんて……。君は本当にどうしようもないねぇ」


おう?


ライ……こいつ……。


【どうどう】


「まあ、僕達の様に選ばれた武器は、元々もって無いだろうけど」


いちいちむかつく!


武器は持ってるんだよ!


ただ悪意がいる可能性があるから、気付かれない様に出さないようにするだけなんだよ!


『奴等は、記憶を共有しておるらしいからな』


ええい! もう!


【魔力の温存も出来るじゃないですか】


こいつ……殴りて~。


でも、昨日のソフィーとの事を、邪魔した負い目もあるから……。


くっそ!


やってらんね~……。


「その兵が案内をする」


「では、アルベルト様、ソフィー様、レイ様はこちらへ」


****


城の武器庫へ、案内してくれるらしい。


俺とソフィー以外に、アルベルトも急だったせいで銃以外持ってきて無いから、短剣が欲しいそうだ。


「あの……レイさん?」


「何?」


「昨日の……その……」


えっ!?


このタイミングでクレームですか?


悪かったって!


事故じゃん!


「レイ~?」


ああ?


「昨日のあれ……。貴方よね~?」


あれ? なんで姫さんまで付いて来てるの?


「隠しても無駄よ~? 分かってるんだから」


「さあ、何の事だか……」


「あら? いいの~? 賭けを放棄するなら、強制的に私の勝ちって事で~?」


お……おう。


「さ……さぁ」


「じゃあ、貴方は今日から私の奴隷ね~。一生よ?」


「待てよ! 何でもって言ったけど、限度があるだろうが!」


あ……。


『アホ……』


「ほら見なさい!」


ちっ……。


「はいはい、俺ですよ~」


「んふふっ……。まあ、どっちが勝つか楽しみね~」


あっ……。


それだけ言いに来たのかよ。


帰りやがった。


「どうぞ。ここです」


兵士に案内された部屋には、武器が大量に並んでいる。


【まあ、魔族と交戦中ですからね】


さて……。


二人は、普通の武器の中から質のいいのを選ぶのか……。


俺はどうしよう。


『わし等がおるとは言っても、並みの剣ではすぐに折れてしまうじゃろうな』


そうなんだよね~……。


あれ?


「あのさ~。あれは何?」


俺は壁にかかっている鎖で鞘が縛られた剣を指さし、案内をしてくれている兵士に問いかける。


「ああ、あれは、フレイ……呪われた炎の魔剣です」


魔力を感じるな……。


『そうじゃな。これくらいは必要かのぅ?』


「あ! 駄目です! その剣にはドワーフの呪いが!」


そい!


抜いた剣身から、炎が噴き出す……。


「早く捨てて下さい! その剣の呪いで、焼け死んでしまいます!」


呪いねぇ……。


お前の呪いは、神様のそれより強いのか?


『この剣に、意思や呪いは無い様じゃ』


じゃあ、この炎は?


『魔力を込めると、炎を出す仕組みじゃろう』


なんだ……。


じゃあ、前の使用者が魔力を込めてて、その残りが暴走してるだけか。


【どうします?】


こうする。


俺は剣を上下に振って、炎をかき消した。


天井と床を少し焦がしちゃったけど、まあいいでしょう。


「そんな……魔剣が従った? 流石は勇者様」


違うよ兵隊さん。


魔力が尽きるまで、高速で振りまくっただけだよ。


「俺は、これにするよ」


壁に鎖で縛られていた鞘を取り外して、腰に付けた。


そう言えば、剣を普通に装備するって……。


【ほとんど無かったですよね?】


何か気分が出るな!


ちょっとテンションが上がってきた。


ソフィーとアルベルトも装備を整え、出発の準備をすすめる。


****


ソフィーやライ達は、それぞれが馬に乗って行くそうだが……。


俺は面倒なので、四天王ギャレイのいる砦まで、馬車に乗せてもらう事にした。


「あのさ~……」


「なんだい?」


「何でババァもくるの? 最前線だよ? 危ないよ?」


「これでもあたしは、隣国一の魔道士と呼ばれてたんだよ!」


いやいや、お前がもし死んだら俺はいいとしても、ソフィーはどうやって帰ればいいの?


てか、なんで馬車がババァと二人だけなの?


はぁ~……。


「もうすぐ着くよ」


馬車の窓から、山の谷間らしき場所を利用して作った砦が見える。


あれは、攻めにくそうだな。


てか、敵に見えないように接近するんじゃなかったの?


これだけの大人数で来たら、もう土煙や魔力で勘付かれてんじゃないの?


その上、勇者共は砦に真っ向から挑もうとしてるし……。


作戦は? 馬鹿なの?


「では、ソフィーは僕の背中を守ってくれ」


ライとソフィーはラブラブだな。


「あの……どうしようか? レイさん?」


何で俺に聞くの?


『……不憫な』


ああ?


「ねえ? レイさん?」


「いいんじゃないの? 初めての実践だし、それくらいがちょうどいいと思うよ」


なんだ? ライ?


なんで、勝ち誇ったような顔してるんだ?


「では、ユリウス様と私が、左右から来る敵の相手をしますね」


勇者が最前衛で、その後方を軍の兵が付いて行くか……。


力押しが得意な俺が言うのもなんだけど……。


なんの捻りも無いねぇ。


「俺は、遠距離からの狙撃が戦闘スタイルだ。悪いが後方から狙撃させてもらう」


アルベルトは……。


【魔力はこもっていますが、確かに服と帽子しか装備していませんね】


まあ、遠距離からの強力な攻撃があれば、身軽に移動できる方がいいよな。


「おい! レイ! お前は俺のフォローを頼む」


え?


「ああ、いいよ」


「まあ、君には期待していない。後方で僕の活躍を見てればいいさ」


こいつ! マジで!


どさくさに紛れて斬りに行くぞ? ゴラァ!


「おい! 行くぞ?」


「へいへい……」


****


アルベルトと俺は、砦の近くに小高い場所を見つけて、そこへ向かう。


しかし……。


「なんで、勇者でも無い俺をお供に?」


「あまり俺を見くびるな」


はい?


「確かに、お前からは魔力をほとんど感じない。だが、戦場の臭いがする」


戦場の臭い?


え? 俺臭い?


「さっきの、魔剣から出る炎を消した時に確信した。お前は、あのガキ共よりリアルな戦場に居たんだろう?」


ああ……。


こいつ、完全に戦闘のプロだな。


「正々堂々の勇者らしい勝負。大いに結構だが、まずは勝つ事が重要だと、あのガキ共は分かっていない」


確かに……。


「俺も魔王を倒して、国では勇者と祭り上げられた。だが、その前に一介の傭兵だ。戦場を渡り歩いてきた」


なるほどね。


【意外な理解者が出来ましたね】


「どうだ? 俺の鼻も、捨てたもんじゃないだろう?」


ここは、無理に誤魔化す理由もないな。


「まあ、ガキ共のフォローをしていきますか」


お?


魔力……。


砦の前に広がる平原から、ゾンビやスケルトンが大量に生えてきた。


あ? あれかな?


『Bランクと言ったところか?』


砦の門壁の上に、魔力を帯びた奴がいる。


砦の中にそれらしい魔力は無いし、あれだな。


「ここからでは門楼が邪魔で、狙撃が出来んな」


「じゃあ、あいつを見える位置まで移動させれば倒せるか?」


「距離は問題ない。それに、威力も十分だ」


なるほど……。


「じゃあ、俺が移動させてくるよ」


「出来るのか?」


「おう。任せとけ」


****


俺は気配を殺して、戦場の端を砦に向けて走る。


少し、ソフィー達に目を向けると……。


流石、勇者共。


アンデッドをフルボッコですね。


あいつ等を中心に、軍がどんどん前進してる。


でも、あの方法だと何時間かかるんだろう?


【敵のアンデッドも、どんどん補充されてるようですしね】


さてと……。


砦の壁に到着した俺は、壁を駆け上がる。


へ~……。


この世界のオークは、モンスターなんだな。


『コアがあるな』


あ! あれはトロルかな?


アンデッド以外も、そこそこいるじゃん。


『まあ、これくらいは当然じゃろう』


さてと、抜き足差し足……。


俺は誰にも気づかれる事なく、ローブを纏った馬鹿の後ろに到着。


さてと……。


こんな場合は、やっぱりあれかな?


ん……。


「ドロップキィィィィィィィィック!」


え?


ああ……。


四天王を背後から思いっきり蹴りつけて、門の上から落としましたけど、何か?


広い平原に届くほど大きな銃声が、遠くから聞こえた。


おお!


アルベルトすげぇぇぇ!


落下してる敵を、撃ち抜いたよ。


すっげ!


「嘘……レイさん?」


「な……何をしているんだ!?」


「そんな馬鹿な……」


あれ? でも、かすかに生きてるな……。


【アンデッド達が消えませんね】


どうしよかな?


コアに悪意は感知できないし、普通に倒すか。


『まあ、そうじゃな』


あ……そおい!


目の前を飛び降りた俺は、両足をそろえてそのまま……。


「ストンピング!」


踏みつけました。


ズドンという、いい音が聞こえましたよ。


簡単にいうと、四天王とやらが、俺の足元で息を引き取った訳ですなぁ。


はい!


終り!


アンデッド達が、土にかえって行く。


よしっと!


アルベルトに、親指を立てて合図を送る……。


あれ?


頭を掻いてる?


『何と言うか……』


【この人に勇者は無理なんですよ】


えっ?


何で?


敵を倒したよ?


『結果を見ると、効率的ではあるんじゃがな……』


【何と言えばいいか……】


なんだよ?


【『姑息過ぎる!』】


ええ~……。


だって……。


兵士や、勇者達まで呆然としてる。


俺頑張ったのに~……。


なんだよ。


やってらんね~……。

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