表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十章:銀河と相棒編
26/77

十三話

真っ暗な宇宙空間……。


その中で、十センチほどの赤く丸い光が点滅している。


それは、その世界で元最強の機体と呼ばれていた……。


戦闘用宇宙船のコントロールを司っていた、AIだ。


俺に関わると、その相手はろくなことが無い。


俺の不幸に巻き込まれちまうんだ。


はぁ~……。


やってらんね~……。


「見つけた! 見つけました!」


「ハンス! 通信!」


「社長……通信は繋いだままゲロ」


「そうだったわね……」


船外作業服を着たデンケルが、それを回収する。


その光景を、母艦で見つめているのはアーデルハイト皇帝陛下。


「回収完了です! 陛下!」


「御苦労。応急処置を施した後、こちらへ持ち込むのだ」


「はい!」


古代の魔法文明が作ったAIは、自身の危機に自動で救難信号を出していた。


ブルー自身は助かりたい、助かろうとは考えていないかもしれない。


しかし、プログラムされたAIであるブルーは、供給されていたエネルギー源が途絶える事で、一時的な自己保存休眠状態に入っていた。


****


応急処置完了との報告を、社長達から聞いた皇帝は、通信を終えた。


それと同時に、ドロテアが皇帝のいる私室へ入ってくる。


目を真っ赤にはらして、くまが出来ていた。


眠れていないのだろう……。


「ドロテア……大丈夫?」


二人しかいない部屋で、アーデルハイトは素顔の自分を出す。


「泣くだけ泣きました……。立ち止まり、殻にこもってもグスタフは悲しむと思うんです。優しい人でしたから……」


「そう……。休みが必要なら、何時でも言ってね」


「ありがとうございます、お姉様。それで……」


「ブルーの頭脳と推測できる機器は、回収出来たわ」


「レイ様は……」


皇帝は、首を左右に振った。


「……あの方は、きっと死んでいないと思うんです。お姉様も、そう思っているんじゃないですか?」


「実はそうなの……。あんな爆発の中で、人間が生きていられるはずがないのに……」


顔を伏せていた皇帝陛下は、少し哀愁漂う笑顔をドロテアに向ける。


「きっと、次の世界に向かわれたんでしょう。レイは、また泣いている人々を助けているはずです。今も……」


なるほど……。


俺が生きているか……。


女の勘は恐ろしいね。


【ずいぶん余裕がありますね……】


え!?


そうですよ。


俺は超能力者じゃないんで、見てもいない光景を知る事なんて出来ません。


実は……。


『電波と会話するな! 死ぬぞ! 馬鹿!』


馬鹿って言うな! クソジジィ!


え~と……。


そう!


只今俺は……。


爆発で吹っ飛ばされて、炎と衝撃でボロボロの宇宙服を何とか換装し……。


皇帝陛下の部屋にある、窓!


その窓枠に外から掴まってます。


【ちょ! 速度上がってきましたよ?】


因みに、魔力もないし、合成魔力の副作用で右ひじから上しか動きません。


今、掴まっているのが精一杯です!


誰か助けて下さい!


空気が無くなって、死んでしまいます!


こんな死にかた嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


『流石に、無理をし過ぎて全く体が動かんな……』


きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


え?


あれ?


船の速度上がってね?


ちょ……。


【さっきからそう言ってるでしょうが!】


『全く、電波だか妖精だかと、喋る余裕などないと言うのに……』


読者もしくは、プレイヤーに喋りかけてたんです!


『おらんわ! そんな者!』


うっさい!


てか……。


マジで……。


速度が……。


「さあ、キール商会の皆さんを迎えに行きましょう」


「そうね」


ちょ! 待って!


俺は、ここに居ます!


母船と、それを護衛する艦が加速を開始した。


あ……。


あああああああああ!


もちろん、俺の指は振りほどかれました。


****


宇宙空間に、一人で取り残される……。


あ~あ……。


やって……。


俺が溜息を吐き出した瞬間、ドボッっと鈍い音が全身を駆け巡った。



う……げ……。



ヘルメットのシールドが、真っ赤に染まった。


もちろん、内側から俺の血で……。


『宇宙服は無事じゃが、背骨が粉々じゃ……』


【内臓も、複数破裂しましたね……】


え~……。


俺が掴まっていた母艦と同時に、加速を始めた護衛艦に……。


ひき逃げされました。


船首が、俺の背中に凄い速さで直撃です。


ちょ!


なにしてくれてんのぉぉぉぉぉぉぉ!


やべ……。


痛いとかじゃなくて……。


意識が……。


【あの……魔力は……】


『う……うむ。全く無い。これは、ちょっと洒落では済まんぞ……』


あの……えと……。


時空の狭間に、吸い込まれそうな感覚まで来たんですけど……。


あの、これ……。


【最悪です……】


『どうしようもないぞ……』


二人の声に、いつもの冗談の雰囲気は……全くありません。


これって……。


死ぬんじゃね?


『【………………】』


ちょ!


死にたくないって言ったら、事態が悪化した!


馬鹿かぁぁぁぁ!


馬鹿……な……の……意識が……。


ちょ……。


マジで、勘……弁……してく……だ……さい。


あの……。


やってらんね~……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ