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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十章:銀河と相棒編
23/77

十話

俺に向かって来ていた大きな岩が、粉々に砕ける。


おおう……。


すげぇぇな。


今の結構大きかったよな。


『うむ。これほど強力とはな……』


【敵に使われる事はあっても、使える事はなかったですからね】


お!


次のあれなんて……。


おお!


これだけ粉々になると、気持ちいいなぁ。


目の前で、フィールドにぶつかった岩が砕ける。


改めて見るとすげぇぇ。


(それは、こちらのセリフだ)


え?


何が?


(今、時速約一千万キロ……。何故、それを目で追えるのだ?)


そんな事聞かれても……。


何となく見えるんだよ。


『まあ、人間ではないからな』


ちょ!


人間です~!


(我も、馬鹿にするわけではなく、その能力は化け物じみている感じるが?)


本気で人の存在を、全否定するな!


【まあ、もう慣れましょうよ】


無理だから!


てか……。


俺への悪口が増えたのを、改めて実感するよ……。


はぁ~……。


やってらんね~……。


『しかし、この魔力推進とは凄まじい速度に達するものじゃな』


そうだよな~。


社長たちの船も、凄まじい速度だと思ったけど……。


十倍以上だもんな……。


『いくらこの世界の銀河が狭いとはいえ、このままならば本当に短時間で到着するな』


狭い?


狭いの?


『わし等の世界では、一つの銀河を抜ける為には何万年もかかると推測しておった』


マジで?


世界が変わると、色々違い過ぎて混乱しそうだ……。


【まあ、考え過ぎても仕方がありませんよ】


そうだな……。


宇宙旅行なんて、めったに出来ないんだし、楽しまないとな。


****


飽きた!


【言うと思ってました】


もう、修練も終わったし!


する事ない!


景色もほとんど変わらないし!


暇!


する事ない!


(もうすぐだ)


聞きあきた!


ふぅ~。


あ!


【なんですか?】


そう言えば、何でブルーを捜しに行くときに、敵が出てきたんだろう?


『たまたまではないか?』


その可能性もあるけど……。


なんかタイミング良過ぎじゃね?


追いかけて、ブルーの惑星まできたしな~。


『それは、撃退したからではないか?』


後、公子が襲われた時は、いきなり異空間へ取り込まれたって言ってたし……。


【それは、そうですよね】


何かひっかかるな……。


う~ん……。


なんだ?


俺は、何か見落としてるのか?


分かんね~……。


師匠なら……。


師匠なら、どうするんだろう?


俺は、俺の世界で戦った師匠を知っている。


俺のように、ただ敵を斬るだけじゃなくて、敵の目的や裏コードまで入手していた。


師匠ほどの実力があって、何故そこまでしたんだ?


そのまま敵を見つけて倒すのじゃ、駄目なのか?


『あの方は、水面下で調査しておったな……』


何故?


悪意……。


あ!


【どうしました?】


一つ気が付いた事がある。


少し話は変わるけど、悪意の倒し方なんだけどさ。


『なんじゃ?』


梓さんの世界では、悪意を倒せなかった。


でも、それ以外は完全じゃないかもしれないけど倒せてる。


【よく分かりませんが?】


魔力だよ! 魔力の量!


【あ! なるほど!】


そう、あの時俺は神を殺さない事で、魔力の補充が十分じゃなかった。


だから、コアの破壊方法が他の世界と違う。


コアを魔力の結晶みたいなもの……。


それに剣を突き刺せば、コアは結合していられない。


魔力の補充が十分じゃなかった俺は、自然に魔力を抑えて突き刺してコアを拡散させていただけだ。


それで、魔力の爆発もほとんど起きなかった。


それは、悪意にもダメージを与えられていなかったって事だ。


そうだよ!


十分な魔力で攻撃すれば、悪意は消滅させられるんだ!


『うむ。確定ではないが、可能性は高いのぅ』


なら、奴らを完全に殺す事も可能なんだよ。


逆に、魔力以外だと殺せないだ。


【その決め付けは、よくないのでは?】


ああ……。


そうだよな……。


でも、魔力なら奴らを殺せる可能性が高いって事だよな。


『そうじゃな』


少しだけ、光明が見えた。


やる事もない俺は、ブルーの上に座ったまま、悪意について色々な推論をぶつけ合う。


****


(到着だ)


これが、母星……。


【完全に星が死んでますね】


言ってた、観測所の場所は正確に分かるんだよな?


(ああ。これから、星に着陸する。備えてくれ)


ばちこい!


お!


お……おおぅ……・


なあ、ジジィ?


『なんじゃ?』


大気圏突入、前はあれだけ死ぬかとと思ったけど……。


強力なフィールがあると、こんなもんなんだな。


『そうじゃな。苦にもならん』


(これでも、重力までは完全に遮断できないのだがな……)


たかだか、数倍のGだろ?


へでもない。


腕を組んだまま大気圏を抜けた俺は、そのまま目的の場所へ向かう。


そこは、生命が息絶えている死の惑星になっていた。


砂漠と荒野以外に、人間が作ったらしい建物跡が、点在しているくらいだが……。


それも、風化してボロボロだ。


これ、観測所も駄目なんじゃないの?


(あれだ)


えっ!?


嘘……。


【ほぼ完ぺきな状態で残っていますね】


どうなってるの?


あ……。


魔力だ。


(あの建物には、当時の最高技術が使われていた)


え?


魔法科学の?


(そうだ)


もしかして、お前の半永久光子力機関と同じ物が?


(ああ)


この星の止めは、間違いなくあの建物がさしたな。


『そうじゃろうな』


****


建物の周りには、結界があった。


ブルーが着陸し、俺が入口らしき場所に近づくと、それに自動で穴が発生した。


すごいなこれは……。


あ!


ブルー?


(なんだ?)


俺の視角情報は、お前に流れるのか?


(いや、可能なのは会話だけだ)


じゃあ、中の状況を念話で伝えろと?


(その必要はない)


ブルーのコックピットが開き、中から何かが飛び出してきた。


空飛ぶビデオカメラ?


(それで、情報を発信し本体が受け取る)


なるほどね……。


じゃあ、まあ。行きますか。


不思議な金属でできた建物内も、かなり綺麗に残っている。


もちろん、紙等は風化寸前だったりするけど……。


この金属って、ミスリルなのか?


『いや……。初めて見るな』


ふ~ん……。


オリハルコンでもないし……。


(主よ。その部屋だ)


巨大なモニターと、複数の計器がついた机がたくさんある部屋に入った。


(操作は、我が指示させてもらう)


おう。


さて、動……いた!


凄いな……。


一番手前にあった机の、真っ暗になっていた画面を触ると情報が表示された。


(馬鹿な……)


ん?


何が?


(既に起動している)


え?


そうなの?


点けっ放しで、出て行ったんじゃないの?


(それはないはずなのだが……)


まあ、いいじゃん……。


あれ?


この画面……。


(そこだ。その上から三番目、左から十五番目のボタンを押せ)


部屋の奥にある、巨大モニターが表示された。


なんだよこれ……。


おい! これって!


(異空間との穴をあける方法と、それに必要なエネルギーが計算された後だ……)


奴ら、自力でこっちに戻ってきたんじゃない。


誰かが、戻しやがったんだ!


くっそ!


(今から、言う通りに操作してくれ!)


分かった!


ブルーの指示通り操作をする。


そして、表示されたのは、この部屋の使用履歴。


(我は、軍に所属している事になっていた。故に、パスワードも持っている)


ね……年号が分からん。


これ、いつの情報?


(我の体内時計で確認すると……約二年半前だ)


誰だよ!


これを調べた奴が、黒幕確定じゃねぇぇか!


(よし! 転送完了だ。アーカイブから、その日のこの部屋の映像をとりだした)


えっと……。


これをOKすればいいのか?


(ああ)


大きなモニターに、二年半前の映像が映し出された。


そこには、メタルゾンビに似た気持ちの悪い男が映し出される。


「げへっ……げへっ……。ついにたどり着いた」


うん?


こいつ喋れるのか?


「これで、全てが取り戻せる。そして、全てを手に入れられる! げっげっげっ!」


男は、今俺の触っている装置を操作しながら、気持ち悪く笑っていた。


こいつ、知恵がある……。


「これで! 金が! 女が! 男が! 権力が手に入る!」


え?


このキモいの両刀?


「二千年! 二千年で、やっと……」


『もしや、敵の残党か?』


「全てだ! この世界の全てを手に入れる! 俺達が! 私が! 俺が! 思うままだ!」


聞いたか?


【はい……。声質が明らかに変わりましたね。少なくても三種類以上……】


悪意……。


もしかして、悪意って複数意識の集合体か?


『そう考えるのが、正しいじゃろうな』


あ!


こいつ、指が多い!


それに、足も三本生えてるぞ!


これって……もしかして。


ブルー!


(なんだ?)


世界が滅びる前って、敵を攻撃する戦艦は魔……光子力だけを使って攻撃を?


(いや。光子力が主要武器だが、それ以外にも反物質を使った兵器等も使用していた)


それだ!


【どう言う事です?】


こいつは、二千年前の残党なんだよ!


多分、通常兵器でコアを壊しきれなかった奴らが集まったんだ。


ほとんどが、異世界に送られたけど、中途半端に破壊されたこいつ等が寄り集まってこうなったんだよ! 多分!


【なるほど、複数意識ですか……】


『この異空間……。あの方が作られた様な、狭間のさらに隙間に偶々できた空間のようじゃな』


穴の広げ方は……。


これだと、かなりエネルギーが必要みたいだな。


でも、不可能じゃない。


【確かに、魔力以外でも可能のようですね】


でも、魔力以外だとかなりの力が……。


離れた銀河で、ブルーを使って穴をあけて倒すのがいいのか?


(完全に破壊が可能であれば、それがいいだろうな)


しかし……。


このキモイのは、どっからこんなエネルギーを……。


うん!?


魔力!


(主よ! 敵の襲来だ!)


****


急いで外に出た俺は、敵の艦隊を目撃した。


俺が空を見上げると、敵艦ではないらしい輸送船が攻撃されている。


うん?


魔力を感じない、目の前に墜落したその輸送船から……。


気配がする……。


中に人がいるのか!?


くっそ! ブルー!


迎撃頼む!


こっちは、人命救助してから、戦う!


(了解した!)


「うわああああ!」


ドアを蹴破って入った輸送船内では、金属の虫に銃を乱射するおっさん。


多分、それじゃ死なない。


俺は、銃弾を躱して虫を斬り捨てた。


もちろん、魔力もちゃんと込めている。


「た……助かった」


この宇宙船、もう飛べそうにないな……。


「おい! おっさん一人か?」


「あ……ああ! 助かった! ありがとう!」


半泣きになっているおっさんが、頭を下げてきた。


「取り敢えず、外に出ろ。まだ、あの虫がいるかもしれん」


「わかった」


迎えを来させるようにしないと、ブルーには乗れないしな……。


俺は出口へ向かう為に、おっさんへ背を向ける。


その瞬間、突然魔力が背後から出現した。


なっ!?


魔力を感知した俺は、反射的に剣を振るった。


「ぐがああああ!」


メタルゾンビのように変化したおっさんの腕を、俺は斬り落としていた。


コア!?


こいつ……。


敵!


「はぁ!」


俺は、そのままおっさんを斬り捨てた……。


くそっ! 芝居だったのかよ!


あれ? 敵は魔力を隠せる……。


あ……。


――巧妙に、人の心のすき間に入り込む――


俺は、師匠の言葉を思い出した。


その事で、俺の中にあった疑問が連鎖的に繋がって、答えを出していく。


敵は俺がこの星へ来るのを、知っていた。


そうでなければ、こんな罠は仕掛けられない。


となると……。


最悪だ……。


くそっ! そうだよ!


敵は、巧妙……知恵があるんだ!


それも、巧妙に罠をはり計略を巡らせるほどの!


――あの宇宙空間で足場にした白い円も超能力なのかい? ――


俺が、障壁を使ったのはグスタフを助けた時と、ブルーの惑星で戦った時の二回。


一回目は百パー無理だし、二回目は操縦していたハンスが見ていないのだから、奴には無理なはずなんだ!


もちろん、連合の艦隊無力化になんて、使う必要すらなかった。


知ってるはずがないんだ……。


『敵は、戦艦すら侵食する……』


あんな金属の箱なんかじゃ、防げるはず無いんだ!


やられた……。


くそったれ!


狙いは……。


【コロナ砲……。あれならば、異空間への扉を開けます!】


俺達の船を襲ったのは、たまたまかもしれないが……。


俺とブルーが潰せなかった場合に備えて、公子の死体を利用しやがったんだ!


くっそ!


魔力が感知できないって、何だよ!


『戦争を引き起こし、コロナ砲を引っ張り出した』


この宇宙服の改造と、スペア用意が早かったのも、俺達を遠ざけたかったんだ!


異空間から本体を呼べば、俺達を倒せるって事かよ。


くっそ!


【そう言えば、皇帝がのる輸送船を襲われた時には、グスタフさんは連合の輸送船へ乗り換えていましたね……】


俺は、まんまとはめられたのかよ。


これが、師匠がひそかに動く理由か!


俺は、馬鹿だ!


『コロナ砲の準備は、整ったと言っておったな……』


まずい!


急いで戻らないと!


クソったれ!


って……。


おいおいおい……。


輸送船から出た俺は、空一面の敵艦隊を見た。


確か、敵も魔力推進を使うから、ブルーと同等の速度が出るって言ってたし……。


最悪だ!


空を蹴り、ブルーと合流した俺は、星から離脱しつつ敵を倒す。


その間に、俺の考えた推測をブルーに伝えた。


クソったれ! クソったれ! クソったれ!


俺は、とことん選択を間違える!


勘弁してくれよ!


本当に……。


やってらんね~……。

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