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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十章:銀河と相棒編
20/77

七話

ああああああああああああ!


こぉぉぉぉぉぉろぉぉぉぉぉぉぉぉぉさぁぁぁぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇるぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅ!


俺の頭によぎったのは、走馬燈ではなく後悔先に立たずと言う言葉だった。


どうやら俺は、毎度ながら……。


選択を間違えたらしい。


もう、勘弁して下さいよ!


もう、馬鹿って言っていいから!


助けてよ!


あああ!


もう!


やってらんね~……。


最初の選択間違いは、今から十五分ほど前……。


「えっ? 船に乗らないの?」


「補給ステーションからそっちに乗ります。今は、ブルーの性能チェックと俺が慣れたいんで、練習を兼ねてブルーに乗って移動します」


「そう。まあ、そうした方がいいわよね!」


「うぃっす」


船の修理が完了するまで、散々質問されたが戦闘については超能力で押し切った。


そして、マイクロ酸素ボンベを多めに受け取った俺は、ブルーと会った星からブルーに乗って出発した。


まず、これが間違いの始まり。


(しかし、異世界人とは驚かせてくれるな)


俺からすると、お前の世界で滅びた魔法科学文明のが驚きだけどね。


(魔法があろうが無かろうが、科学が発展する事は普通の出来事と考えるが?)


う~ん……。


『ブルーの言う通りじゃ。わし等の世界にも、魔道兵機と言う立派な魔法科学があったじゃろうが』


ジジィの作った、あれ?


『そうじゃ。まあ、後進を育てる事は上手くいかなかったがな』


そう言えば……。


ちゃんと破棄しとけよ! ジジィ!


あれのせいで、一回死にかけたんだからな!


『お前! 今更それを言うか!』


こっちは死にかけたんだ! 何回でも言うわ!


『このクソガキ!』


【また、始まった……】


(なんだ? 何時もこうなのか?)


【まあ、最低一日二時間ほどは……】


(難儀な主だな……)


難儀って、なんだよ!


『難儀じゃ! お前は、酷く面倒じゃ!』


俺は、お前らより面倒じゃない!


『何じゃと!?』


(お前……ら?)


そうだよ!


ジジィは人間レベルなら、チートを堪能できるけども!


今戦ってるのは、Sランク以上で魔力の足かせがでかいんだよ!


そして、何よりもブルー!


何でコクピットに乗れねぇぇんだよ!


(説明しただろう! 我は、人ではコントロールが出来ないことから、コックピットに我の本体であるAIシステムをのせているのだ!)


乗れるようにしとけや!


てか、どけろ!


(我の本体だと言っている! 何より、人では十分に機体性能を引き出せん!)


『そうじゃ! 馬鹿! まあ、宇宙用戦闘機の上に立って戦う方が、人間には無理じゃがなっ!』


人を人間じゃないみたいに言うの、止めなさいよぉぉぉって!


【止めましょうよ~。性能テスト……】


うっさい!



そう、この付近でも間違えた。



大体! 俺は、生身がある分お前らより人間だからな!


『このクソガキは!』


うっさい! この魔剣のいらない付録が!


『こ……の……』


(今のは訂正するべきではないのか?)


お前も、さっきなかなか助けてくれなかった事、覚えてるからな! このクソ機械!



一応、言い訳しておくと、散々無視されたから……。


ちょっと熱くなってたんです。



(我を愚弄するか……主よ)


【あの……テスト】


(よし! テストを開始する)


え?


目の前に張られていたフィールドが消えた。


さらに、先程まである程度まで稼働していた足のロックが、完全に固定された。


『うむ! テストじゃ!』


いや……。


え?


ちょ。


(では、行くぞ!)


ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


うんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



この世界の宇宙にも空気はないが、魔力が満ちており、俺の特殊な体はその影響を受けてしまう。


つまり、フィールドなしで速度を上げ過ぎると、圧で死にます。



千切れる! 足首が!


千切れる!


『よし! ならば強化してやろう!』


え! マジで?


『お前の膝……手前までな』


ちょ! おま!


あああああああああああ!


(時速二千五百キロまで耐えるとは、さすがになかなかの強度だ、主よ)


お前!


それ、音速の二倍以上じゃねぇぇぇぇぇか!


ちぎ……千切れるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!


両膝が、ブチって!


あのブチってなる!


『ふむ……。では、次の段階じゃな』


おま!


いいかげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!


あああああああああ!


(時速三千……三千五百……四千……)


『目標は、第一宇宙速度(約時速二万八千四百キロ)じゃ』


ああああああああああああああああ!


【音速の二十三倍は……流石に……】


もう十分死ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


若造ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


強化ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


ああああああああああああ!


【賢者様が、魔力を流してくれません】


ジジィィィィィィィィィィィィィィ!


(六千……六千五百……)


ブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!


ああああああああああああ!


こぉぉぉぉぉぉろぉぉぉぉぉぉぉぉぉさぁぁぁぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇるぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅ!


その拷問は、約時速八千キロ……。


俺の膝が、本当に軽く引きちぎれるまで続きました。


え?


そうですよ?


仲間に殺されそうになりましたが、何か?


もう嫌だ!


こんな生活!


ただ、フィールドなしでも性能テストになったのは……。


不幸中の……。


【不幸でしょうね。死にかけてましたよ?】


不幸中の不幸って……。


それもう只の、凄い不幸だからね……。


****


「レイ? 疲れて無い?」


アルマ……。


船の格納庫へブルーを入れた俺に、アルマが寄ってくる。


「まあ、ちょっと……」


「えっ!? ズボンが血で真っ赤じゃない! どうしたのよ!?」


クソジジィとクソ機械に殺されかけた……。


「傷はもう治ってるから大丈夫。ズボン交換するよ……」


「う……うん」


アルマの優しさで、泣きそうだ。


『泣いてしまえ、クソガキ』


今日絶対パン食わないからな! このクソジジィ!


『なっ!』


「私達以外は、休息と船の整備なの。どう? ステーション内に、食事に行かない?」


「でも、俺お金持ってないよ?」


「大丈夫よ! お姉さんに任せなさい! それに、買い出しも必要だしね」


「じゃあ、行こう」


「じゃあ、五分後にここで! 着替えて来てよ?」


「う~い」


俺は服を着替え、アルマも余所行きの格好になっていた。


因みに、船内では毛が生えない種族なので、頭はつるつるだが……。


余所行きの時は、かつらをかぶる。


スタイルもいいし、肌が銀色で、目が真っ赤な水晶みたいという所に目を瞑れば、只の美人です。


「そう言えば、レイっていくつなの?」


え~……。


「多分……二十……三~五ぐらいだと思う」


【世界を飛び越え過ぎて、ほとんど推測不能ですよね】


そうなんだよな~。


「それも、記憶がないの?」


「ハイ。アリマテン」


そう言えば……。


「アルマはいくつ?」


「女性にそれを聞く?」


はい。聞きますけど、何か?


「貴方よりは、年上よ」


年齢が全くよめんな。


まあ! 俺に上限はないけどね!


「あ! あそこにしましょう!」


俺は、アルマに引かれて店に入る。


そして、運ばれた料理を食べる……。


うっめ!


【いけますね!】


『パン……』


「ねえ? レイって本当に記憶がないの?」


おう!


「無いよ?」


「……遺跡で言ってたよね」


おおぅ?


「魂が死ぬって……」


「さあ……」


どうする?


喋るか?


「それに、喋り方も変わったし……」


【これは、喋った方が早いかも知れませんね】


『パン……』


「もちろん! 嫌って事じゃないのよ? 逆に格好よかったくらいだけど……」


うわ~……。


どうすっかな。


「今のレイより、あの時の方がなんだかしっくりくるって言うか……」


【恐るべし、女性の勘ですね】


『パン……』


ええい! もう!


仕方ない!


「今から話す事は……嘘みたいだけど本当の話なんだ……」


「うん!」


食いついてきた……。


【負けてしまいましたね】


『パン……』


死ね! クソジジィ!


「俺は、別の世界から来たんだ」


「はっ!?」


言ってみた!


けど……。


「あ~あ! 真面目に聞いて損した!」


信じて貰えませんでした!


本当にありがとうございます。


【まあ、仕方がないですよ】


『パン……』


「ご飯冷めちゃったね。早く食べよ」


無言で食事を済ませて、店をでる。


「ねえ、レイ?」


「何?」


「本当の事言ってくれる気になったら、また話して」


本当なんだけどな~。


「さっきのじゃ、信じられないよ」


まあ、バリバリ電波ですよね!


「だって、それ信じちゃうと……。貴方がもうすぐいなくなるって事じゃない……」


えっ!?


あの……。


「私! 信じないから!」


お~い……。


アルマは走って船に向かってしまった。


あ~……。


【信じて……いるようですね】


あ~……。


『パン……』


お前! 空気読めよ! クソジジィ!


『パンを食べるんじゃ!』


うっさいボケ!


それから、帝都へと向かう道中……。


アルマとは何となく気まずい雰囲気が……。


あばばば……。


****


くそ!


くそ!


くそ!


なんで……。


「何でだよ!」


格納庫で手製の木剣を振るう俺の体には、汗が噴き出していた。


ええい! もう!


嫌な事を忘れようと、さらに一時間ほど剣を振るう……。


そして、水溜りのようになった汗をモップでふき取った。


ふぅ~……。


(かなりの負荷をかけているようだが?)


【はい。魔力を使っていますので、普通よりもかなり効率はいいはずです】


『こ奴には、普通の訓練などほぼ意味がないからな』


敵の動きを妨げる魔法。


それは、自身を強化する魔法よりもかなり高度で、俺には使えない。


だが、自分の体に負荷をかけるなら、魔力の流れをわざと止めたり、障壁を使ったりと色々出来る。


てか、障壁を使ったりするのは、魔力を無駄に消費してしまうから、ブルーの魔力を流用できる今しか出来ないけど。


(やはり、人間のレベルを超えているとしか思えんな)


お前、いい加減口悪いよね。


(主に言われる筋合いはないが……。通常はここまで、接続が進まないはずなんだが)


通常は?


(ああ。何よりも、光子力を自分の体に取り込んで戦うなど、想定外だった)


コックピットにしてもそうだけど……。


逆に、なんで足の固定が出来るの?


(装甲が、特殊な金属で出来ているのでな。光子力と電気信号で、自由に形状を変化させられる)


えっ!


まさか、ロボットに変形できる!?


(装甲だけと言っている。本体は、形を変える事はできん)


なんだよ……。


『普通に考えろ。戦闘中に、装甲の厚さや強度を変えたり、傷ついた外装を自己修復できると言う事じゃろうが』


あ……。


(そう言う事だ。我は、永久に戦う力を損なわない様に設計されたのだ)


ふ~ん……。


でも、何で封印されてたんだ?


それも、魔り……光子力に反応して目覚めるなんて。


(我を作った古代人は、光子力を自在に使えた。我が敵の力で破壊されようとするか、建物の石板に光子力を流せば、我は半覚せい状態となる)


えっ?


書いてあったの?


そう言えば、アルマが読めないって言ってたような……。


(そうだ。そして、我が主として認めた相手がいる場合に、こうして目覚めるのだ)


敵しかいなかったら?


(その場合も、一時的に起動するが、敵殲滅後眠りにつくようになっている)


なにがなんでも、永久保存しようとしたのか……。


てか、だから何で?


(我を生み出した文明は、進み過ぎた魔法科学によって滅んだ。我は、その罪を清算する為に作られたのだ)


さっぱり分からんわ!


『さっぱりじゃ』


【流石に、もう少し説明をお願いします】


(まあ、本来我と契約を結ぶ際に行うはずだった事だ。見せよう……。我等の呪われた歴史を)


えっ!?


うお!


俺は、宇宙空間に浮いていた……。


これは……。


『アカシックレコードの時と酷似しておるな』


うお! リアルジジィ! アンド、リアル若造!


【やめて下さい。それじゃあまるで、日頃の私達が偽物みたいじゃないですか】


人間の姿に戻ったジジィと、若造も浮かんでいた。


(今から約二千三百年前。私を作った文明は、滅びたのだ)


俺達の頭に、情報が流れ込んでくる。


念話に近いが少し違う……。


ブルーの戦い方がすぐに理解できたのは、これのせいか……。


(人類は……触れてはいけない神の領域に足を踏み入れ、神の怒りを受けたのだ)


魔法と科学が融合された世界……。


銀河内を自由に移動し、惑星をテラフォーミングしていった。


さらに、外の銀河にまで迎えるほどの技術。


なるほどな……。


魔力を最初に光から見つけたから、光子力って呼ばれてんのか。


『わし等の世界にも光子力はあるが、別物じゃな』


【滅ぶ前のこの技術……。これがもとになっていれば、私達の世界より技術が進むはずです】


人間の考える幸福……。


永遠の幸せ……。


病気やけがに強く、長寿で若く過ごせる事。


人間は、遺伝子操作へと手を伸ばした。


優れた科学力と、魔法の力を使って……。


人は、その姿を変えるほどに進化を続けた。


ある者は、体を大きくし、ある者は、他種族の長所をその身に宿す。


うっそ……。


『宇宙人ではなく、あれは全て人類の進化した姿なのか……』


その急激な進化は、人類の外宇宙への進出により、最終段階に至る。


各国や企業が争いながら模索された進化は、人類共通の外宇宙へ進出と言う目的の為に、一つになった。


各々が秘密にしていた情報や技術。


そして、膨大な予算で作られた人間……。


メタルマネキン……。


アルマってもしかして……。


【子孫でしょうね。一世代での急激な進化……】


『お前はそれになれても、あちらは戻れない……。これが、今でも種族が残っている理由じゃろうな』


一回なったら、戻れないのか……。


そう言えば、メタリックな巨人もいたな……。


外宇宙への進出、そして移住が進むにつれ、メタル……正式名称ネオヒューマンは数を増やした。


しかし、外宇宙での劣悪な環境に、人類はさらに進化を求めた。


これが、滅びの始まり。


遺伝子を操作するだけではなく……。


遺伝子を特殊な魔法金属で作り出し、人間のそれと掛け合わせてしまった。


さらに、人間側の遺伝子も人工的に作成した……出来てしまった。


人類はそこまでするべきではないってことかな?


最初の異変は、外宇宙の惑星にある研究所でおこった。


その星で生まれたネオヒューマンの赤子……三十人は突然変異を起こした。


理由は、宇宙の磁場とかいろいろ推測されたが、分かってないらしい。


凶暴になり、人を襲うだけではなく、その体がどんどん変異していく。


昆虫や爬虫類などの特徴はあるが、それとは違う新種。


質の悪い事に、それは有機物、無機物関係なく浸食し、乗っ取りどんどん凶暴になっていく。


さらに、研究所自体を侵食した個体が、マザーとなり増殖を続けた。


俺も既に見ているが、宇宙船すら乗っ取るそいつらは、惑星をどんどん侵略する。


このやり方……。


『悪意の魔力……そのものじゃな』


もしかすると、突然変異は悪意の魔力が原因?


そうだよ。


だから、敵にあの気持ち悪さを感じるんだ。


悪意は、おおよそ世界の意思を乗っ取ろうとする。


世界の意思とは、星であり宇宙そのもの……。


【星……宇宙や銀河は、その一部である人間に認識されて初めてその存在を確立する】


『この世界では、宇宙そのもの……もしくは銀河規模が世界の意思なんじゃろうな』


宇宙を乗っ取るか……。


外宇宙をほぼ制圧された所で、ブルーに内蔵されている半永久光子力機関を開発した。


何の事はない……。


科学の半永久動力とは、魔力を強制的に周囲から集めて蓄積するシステム。


(私の出力が高いのは、約二千年間光子力を蓄積したからだ)


なるほど……。


お前のせいで、星の魔力が無くなったのか。


え?


こいつの魔力って、惑星一個分!?


ブルーと同系機を含めた、大艦隊。


この間戦場でみた艦隊の何倍もある様な大艦隊で、敵の殲滅にあたった。


結果は、艦隊の十分の一にまで減らした上に、銀河を五つほぼ壊滅状態にしながらも、勝利。


だが、悪意はそう簡単には死なない。


浸食と増殖……。


大艦隊との戦闘後、一年で敵は惑星一個分になり、再び浸食を再開した。


戦後一年。


混乱した生活側の回復に重点を置いていた人類の戦力は、以前の三分の一ほど。


この戦いにも、何とか勝利。


さらに一年後、敵の出現……。


最悪のループ状態が五年続いた。


兵器の補充は何とか出来るが、兵士……人間はそうはいかない。


ブルーのようなAIや、遺伝子をいじって急成長させた人間を送り込んだりもしたようだが、上手くいかなかったようだ。


人類が生存可能な領域が、どんどん少なくなっていく。


最終手段として、その時発見された異空間に閉じ込める作戦が決行された。


光子力に引き寄せられる性質がある敵を、超大型半永久光子力装置で全て引きよせ、それごと異空間へ吹き飛ばした。


これ以降、敵の存在は確認さえていない。


しかし、ほぼすべての文明が壊滅状態となり、宇宙船すらほぼ無くなっていた。


残った大型輸送艦で、元の銀河から今いる銀河へと移住した。


各惑星が、光子力……魔力を使った通信で最後に決めた事。


それは、光子力の破棄。


科学力だけでは、ネオヒューマンまでが限界らしい。


特に、金属で遺伝子を作るなんて魔法なしでは不可能。


二度と不幸が起こらないように、この世界から魔法が無くなった。


で、今に至るか……。


ブルー?


(なんだ?)


お前何で生きてるの?


破棄されたんじゃないのかよ?


(我は、その大型輸送船を防衛する為に、最後に作られたのだ。しかし、我が出撃する前に戦争は終結した)


で?


(我を建造していた大輸送船が移住した惑星は、元々人類が生き抜くには最悪の環境だった。その為、他の惑星のように光子力を破棄出来なかったのだ)


それで?


(あの惑星で最後の女性が死んだ時、その星の責任者が我を敵への切り札として封印した)


う~ん……。


(その封印の情報は、人類が住んでいるはずの惑星へと打ち上げられたのだ)


それから、お前はあの星で魔……光子力を蓄え続けたと?


(その通り)


あの星壊滅させたの、こいつじゃね?


【そうでしょうが……】


『今は、助かるんじゃ。それに、今更星を復活など無理な話じゃぞ?』


まあ、そうだよね。


てか、敵を追放した空間って何だ?


次元の狭間じゃないよね?


『分からん』


あれ?


次元の狭間から、この世界の戻ってきたの?


あれ~?


てか、どうやって戻ってきたの?


(それは分からん)


ですよね~。


(ただ、かつての母星にいけば、異世界の観測機も残っているかも知れん)


二千年前の機械だろ?


動くのかよそれ?


(分からん)


敵の正体は分かったけど……。


どうすっかな~?


本体を倒すって言っても、こっちの世界に帰ってきてるの?


それとも、異次元とやらに居るの?


『さっぱりじゃ』


ジジィ?


『なんじゃ?』


お前最近そればっかじゃねぇぇか!


ちょっとは考えろ! えせ賢者!


『こんな事分かるか! 推測も付くレベルではないじゃろうが!』


この役立たず!


【また~……】


(本当に、数時間に一度はこうなるのだな)


【そうですよ。だから、付き合うのはお勧めしません】


(覚えておこう)


このクソジジィ!


『クソガキが!』


明日もパン無しだ!


『二度と回復せんぞ!』


この日も、何時も通りレクリエーションを済ませて眠ります。


しかし、馬鹿な俺は大事な事をまた見落とす。


誰かに導かれる様なヒントなのに。


力の意味を考える事をしない……。


力の本当の意味を理解しなければ、真理へはたどり着けないのに。


俺は、馬鹿だから……。


****


「通信は……」


「前にも言ったが、危険ゲロ。万が一連合に受信されれば、この船が沈められてしまうゲロよ」


「で? どうするの?」


「戦場を避けると……。帝国領空まで、二日はかかる」


領空でも、領土でもどっちでもいいんだな~……。


「二日……その間にも……」


死者がどんどん増えるな。


『そうじゃな』


しかし、このタイミングで戦場が激化するなよ……。


「ハンスでも、抜けられない?」


「不可能とは言わないが、公子様を乗せては危険過ぎる」


仕方ない……。


「俺が、道を開くってのはどう?」


「レイ君……。大丈夫なのかい?」


「連合を含めて撃墜せずに……。難しいと思うけど、俺が戦場に道を作るのは無理じゃないと思う」


「でも! 危ないわよ!」


アルマは本気で心配してくれてる。


いい子だなぁ。


「もし、ヤバかったら逃げるよ。その俺を囮にして良いと思うし、ブルーに追いつける船は連合にも帝国にも無いはずだ」


第三宇宙速度……音速の約五十倍近くまで速度が上がるらしいからな。


「分かったわ! 任せたわよ!」


「へ~い」


戦争なんてとっとと終わらせて、敵を捜したいんでね。


公子を届けて、ブルーの力を使えば、早期解決も可能なはず!


****


こうしてブルーに乗った俺は、戦場へと飛び込んだ。


よっ!


ほっ!


おらっ!


帝国連合両方の攻撃を回避しながら、 ブルーに乗った俺が駆け抜ける。


連合の戦艦に関しては、公子から情報を貰って、運航に支障がない程度に搭載兵器を壊しながら進む。


うおお!


(大丈夫だ。この程度で、フィールドはびくともしない)


反物質ミサイルってヤバくね?


もちろん、フィールドで無傷だけど……。


爆発が派手で、スンゲー怖いんだけど。


『爆発ぐらい慣れろ』


【確かに……】


慣れるか!


本能的に、反応しちまうんだよ!


(来たぞ)


おおう!


基本的には、エネルギー砲とミサイル。


何とかなるか……。


(通信だ)


なんだよ?


そんなもん、無視無視。


(公子からだ)


え?


繋げる?


(いや、まず主との双方向通信は無理だ。何より、今入ってる通信は、一方的な情報の広域発信のようだ)


よく分からん。


俺は、その通信聞けるの?


(我と主は、機械的ではなく光子力で繋がっているのでな。私は受信できても、主には繋がらん)


じゃあ、それを伝えて、俺にどうしろと?


おっとっと!


あれ?


連合が、動きを止めた?


(公子が、大規模通信で戦闘の中止を呼び掛けているようだ)


はぁ~……。


また、考えなしに……。


(真の敵がいる事と、我の力が全軍以上であると言っている。只の馬鹿ではないようだぞ?)


『まあ、この力を見せたのを効率的に使うくらいは出来る様じゃ』


まあ、最低限それはやって貰わないと……。


(まずいな……)


何が?


(連合側の官僚らしき者から、公子は偽物で帝国の罠だとこれも大規模通信が)


ほれみろ!


うわ……。


連合の一部が、進軍を再開しやがった。


【どうしますか?】


いつも通り……。


『巨大な戦艦……あれが旗艦じゃろうな』


はぁ~……。


(主はいつもこんな事を?)


そうですよ~っと。


じゃあ、まあ……。


行きますか~……。


おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


****


はいはい。


三時間かかったけど……。


旗艦および、めぼしい連合の戦艦を航行不能にしました。


力技でね!


【ま……まあ、これで力は示せましたよ】


もうね……。


手加減とか苦手なの。


『仕方あるまい。下手に穴でも開ければ、人が死ぬ』


分かってますよ~……。


力技だけど……。


すんげぇぇぇぇストレスたまる!


もう!


敵斬る方が楽!


はぁ~……。


やってらんね~……。

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