六話
あれは……。
あのたわわに実った、あれは!
「お! おっぱ……」
「おっぱ?」
あれ?
ここは……。
「アルマ? あれ?」
「船の中よ。気を失ったの覚えてる?」
え~っと……。
【酸欠……】
ああ! はいはい!
『何と言う夢を……』
さあ? 何のことかな?
「もう起き上がって大丈夫なの?」
「ああ。うん。問題なさそう」
****
俺は、アルマと一緒に操舵室へ向かう。
「凄かったわね。あれは……」
「ああ……超能力、超能力」
「本当に?」
「本当、本当」
全力で嘘をついてみた。
異世界から来たとかね……あの、めんどい!
説明が面倒くさい!
【いいんですか?】
ああ、もう、いいの! いいの!
「おお! 起きたか」
「もう、いいの?」
「大丈夫で~す」
痛い!
「いくら超能力があるからって、無茶し過ぎよ!」
殴るなよ、社長。
命懸けで頑張ったのに、これかよ……。
やってらんね~……。
あれ?
あいつは……。
『助けた男じゃな』
やっぱり生きてたか。
魔力は……。
【普通の人間ですね。特に変な魔力も感じませんし】
みたいだな。
「大手柄ゲロ!」
ああ?
「この方は、グスタフ様! 行方不明になった侯爵様の婚約者だ!」
へ~……。
ええええ!
二年前ですよ?
よく生きてたな!
「君がレイだね? ありがとう」
公子様は、握手を求めて手を差し出してきた。
男に触るの好きじゃないんだけどな~。
【女性だと、手以外も触ろうとする癖に】
そこは……。
否定しかねます。
「これで戦争を終わらせる事が出来る!」
五月蝿い……。
耳元で大声を出すな、ヨハン。
「あの……。公子様? 何があったか教えてくれますか?」
うんそうだ。
まず、それを聞こうよ。
「帝都から帰還中に僕の乗った護送艦が、謎の空間に飲み込まれたんだ」
謎の空間?
「ブラックホールとも違う……。本当に解析できない空間でね」
なんだろう?
『分からんな……』
【何らかの魔法の可能性は?】
まあ、否定は出来ないけど情報不足だ。
「無理やり入口を開いて入ってきた、これも正体不明の金属生命体に、乗組員達が体を乗っ取られ始めたんだ」
金属の虫の事か?
あの虫が取り付くと、メタルゾンビになるのかな?
「臣下の皆が、僕だけを休眠ポッドに入れて、ロックした。僕の記憶はそこまでだ……」
あの箱のお陰かな?
「休眠ポッドって、何?」
「肉体を仮死状態にして、長期間の宇宙移動を可能にする装置なんだ。まだ、試作機だったんだけど……」
へ~……。
漫画で見た、ワープとかはないのか。
『転移の魔法を、宇宙で使えば可能かもしれんな』
まあ、俺はどの道使えないけどね!
「ところで……僕以外には……」
「いなかった。みんな死体になって、あの金属の虫に操られてたよ」
「そうか……。急に侵入してきて……。逃げる暇もなかったんだ……」
落ち込むなよ。
自分が助かったのだけでも、凄い事なのに。
「さあ! 帝都に引き返そう!」
「そうゲロ!」
「うん! これで、戦争が終わるわ!」
うわ~……。
能天気なこって……。
【仕方がありませんよ。この方たちは、戦場に立ってないんですから】
そうだよな……。
『ほれ、お前の役目じゃ』
へいへい。
「このまま公子を連れ帰っても、戦争は終わらないと思うよ」
「は? 何でよ?」
「戦争ってのは、最初は小さな意見の違いとかが多いけど……」
「話せば分かるだろう?」
「人が死に過ぎてる。帝国で百五十万人、連合も少なくても百万人以上は死んでるんじゃないの?」
おっ、アルマとデンケルは気が付いたな。
「だから、早く終わらせるために、公子様を……」
「只の勘違いでした……で、済むとでも? 憎しみが、仕返しの連鎖を生む。それも、大人数で。それが戦争の怖い所じゃないのか?」
俺の指摘に、全員が口を閉じた。
開戦前ならいざ知らず……。
どっちかが負けるとか、お互いの被害がどうしようもなくなって妥協するとかにならないと戦争は終結しないって……。
共和国もかんでる連合から、降伏は絶対にないだろうし……。
帝国側も、降伏はしそうな感じじゃなかったもんね。
「じゃあ……じゃあ、どうすればいいの?」
自分の頭でも、少しは考えなさいよ!
『まあ、そう意地悪をしてやるな』
「力ってのが何かは、分かんないですけど……。終りに出来る可能性があるんですよね?」
「そう……らしいけど」
「なら、それを手に入れて、戦争を強制的に一時停止してから、公子に取り持ってもらって交渉。これが、今俺が考える良策だと思います」
「そうね! そうしましょう!」
「ただし!」
何をビックリしてるんだ?
馬鹿なの?
「その力ってのが、手に入るか? とか、本当に戦争を終わらせられるか? ここが、ポイントで確実性は薄いです。他に、いい案がないか考えるのも手ですよ?」
【まあ、私達は基本的に力技での解決が多いですからね】
俺には、それしか出来ないの!
不器用でもなんとでも、言ってくれ!
『……変態』
ボソッとなんて言った!
関係ないじゃないか!
ここ結構真面目なシーンですよ!?
【……サディスト】
お前もか! この野郎!
「ここは、遺跡に向かおう!」
えっ?
公子様が決めるの?
「はい!」
えっ? いいの?
ちょっとは、自分で考えようよ~。
「しかし、公子様は安全な場所へ……」
「いや! 僕も行くよ! 僕のせいで戦争が始まったのなら……。僕もみんなを救いたい!」
いらね~……。
てか、何でみんな拍手してるの?
何? これがカリスマってやつ?
まあ、ここで帰れとは言えない感じだよね~……。
****
「ここで間違いないのよね?」
「う~ん……座標は間違えて無いはずゲロ」
さらに二日進み、遺跡ってのがある座標には来てみたものの……。
「何も無いね……。言い伝えはやはり言い伝えだったのか……」
まあ、普通は分からないよね。
『そうじゃな』
「社長?」
「何? あそこに向かって、魔道砲……フォトン何とかを撃って下さい」
「何で?」
「あそこに、不可視にカモフラージュする力を感じます」
「……分かった」
公子を助けた事で、意外に俺への信頼はアップしている。
「じゃあ! みんな! 衝撃に備えて!」
しか~し……。
【まあ、いいじゃないですか。どうせ貴方は、死にませんって】
なんで、公子の椅子は急造されて、いまだに俺は自分を縛る紐しかくれないの?
おかしくない!?
てか、公子の分があるなら、今までに出そうよ!
よくこれで、仲間とか言えるよね!
岩が浮かぶ、小惑星帯に魔道砲を打ち込むと、茶褐色の惑星が姿を見せた。
「おお! 当たりゲロ!」
う~ん……。
結界が無くなったら、魔力を感じなくなった。
『星自体に、魔力を感じんな。既に、星が死んでおるようじゃ』
くそ……。
この船の魔道砲は、古代の遺跡から発掘した技術らしい。
さらに、惑星が魔法の結界で守られている事から、力ってのが魔力で感知できるかもと思ったが……。
【思惑が外れましたね】
てか、魔力感じないのに、力なんてあるのか?
『封印されている場合や、結界で隠されていれば感知が出来んかもしれん』
まあ、そう願うしかないよね。
遺跡の最深部に、ここまでたどり着いた知恵と勇気が力だ!
なんて書いてあれば、俺は迷わず遺跡を壊すけど。
【まあ、穏便に】
「星の解析結果が出たぞ……。駄目だ。大気はない」
まあ、見た感じ砂漠だし、人間が住めそうな環境じゃないよね。
「じゃあ、船外作業服で行くしかないわね」
「それなら、これを使おう」
あん?
公子が、手のひらサイズの……端末? を出してきた。
何すんだそれ?
「これは、試作中だった携帯用宇宙服だ」
折りたたみの携帯にしか見えませんが?
これが宇宙服?
開いてみると……ボタン一つだけ?
なにこれ?
「既に、実験は終了している、マイクロ酸素ボンベは共通品が使えるし……」
「じゃあ! レイ! テスト!」
何で、迷いなく俺なんだよ!
まあ、やりますけどね~。
「じゃあ、このボタンを押して、閉じればいいだけだから」
「うぃっす」
ポチっと……。
うおおおお!
一瞬で、俺の体は動きやすい宇宙服に包まれた。
ヘルメットまで?
すっげ! これどうやったの?
体にフィットしたそれは、今までの船外作業服のように動きを制限されない。
ヘルメットで多少視界は悪くなすが、前のに比べればよく見える。
「特殊な粒子をつかった宇宙服なんだ。強度も凄くつよくてね。ああ、あとそのスイッチは腰の右に……そう、そこに取りつけて。左のパックは救急キットになってるんだ」
おおお!
すっげ! すっげ!
変身したよ!
『興奮するな』
【これがあれば、宇宙空間で戦闘が可能ですね】
うん……。
あれ?
なんか、目の前が……。
てか!
「解……除……」
「どうしたの?」
「く……う……き……」
その場に倒れ込んだ俺の腰にあるスイッチを、公子が急いで押した。
「ひゅぅぅぅぅ! はぁはぁはぁ!」
死ぬ……。
「すまない……。酸素ボンベをつけて無かったね……」
死んでしまうわ!
アホォォォォォォ!
「このスイッチの裏に、ボンベをとりつけるんだ……」
しゃがみ込む俺を無視して、みんなは宇宙服の説明を聞いている。
「大丈夫?」
アルマは優しいね~。
一センチほどのマイクロボンベを五本つけて、十時間ももつらしい。
「それで、ボンベは……」
「任せて下さい! 本当に売るほどあります!」
デンケルは、箱いっぱいのボンベを持ってきた……。
何? 何週間いる気?
「見つけたゲロ! 遺跡を見つけたゲロ!」
「じゃあ、着陸と調査の準備だ!」
****
う~ん……。
全く魔力を感じない……。
大きな岩を積み上げて作ったような古い遺跡……。
よく分からない模様や像……。
古代文明は、古代文明っぽいね。
『しかし、わし等ではさっぱり解析できんな』
「駄目ね……。こんな文字見た事がない……」
物知りのアルマでも駄目って……。
どうするんだよ。
ドーム状の遺跡の中はそれなりに広く、部屋も無数にあったが……。
目的の物は、見つからない。
てか、力って何だろう?
【見当がつかないですね】
う~ん……。
「どうするんですか? 社長?」
「まだよ! まだ、三時間しか調べてない!」
三時間って、結構頑張ったと思うんだけど……。
「しかし、何もないな……」
「デンケル! 天井にも仕掛けがないかちゃんと見てよ?」
「分かってる」
「何か……隠し通路みたいな物はないかしら……」
さっぱりだな……。
砂埃を掻きだしながら、調査を続けるが全くそれらしいものがない。
はずれだったかな?
「レイ」
「なんですか?」
「船から、金属探知機とソナーのバッテリィ取ってきて。場所はハンスが知ってるから」
「へ~い」
俺は一度船に戻り、公子と船に待機しているハンスに手伝ってもらい、目的の物を肩に担ぐ。
「じゃあ、頼むゲロ!」
「うぃっす」
しかし、石でしか建物を作れなかった文明の力なんて、当てになるのかな?
『望みは薄そうじゃな』
えっ!?
うおおおお!
【障壁を!】
頭上にいきなり魔力を感じた俺が、見上げるよりも先に目の前が強い光に包まれた。
「がはっ……」
くっそ……。
俺が立っていた、遺跡の入り口付近にはクレーターが出来て煙が上がっている。
かなり強度がある宇宙服は、無事なようだが……。
骨と、内臓が……。
『動くな! 回復する!』
「社長! 社長! 無事ゲロか!?」
「いたた……。全員無事!?」
「こちらは、全員無事です。でも、入口が……」
「ハンス、何があったの?」
「遺跡上空に……識別不能艦が五隻ゲロ……」
「敵? なの?」
「連合……帝国の船が混在しているゲロ……」
「敵の攻撃で……レイが……」
「そんな!」
「ハンス君まずい! さっきの攻撃が来る!」
「社長! 逃げられないゲロか!?」
「ハンス! 公子様だけでも逃がすんだ!」
ヘルメットに取りつけた無線機から、状況が伝わってくる。
「公子様!? 何をするゲロ!?」
「ここで、命の恩人を見捨てられるほど、僕は人間が出来ていない!」
「公子様! 逃げて下さい!」
「断る!」
「操縦は、私がしますゲロ……」
「ありがとう、ハンス君」
くそったれ!
俺が見たのは、敵のエネルギー砲に魔道砲がはじかれ、撃墜される船……。
敵の攻撃は……。
【最悪です。魔力じゃないですね】
障壁でも……。
『もたんじゃろうな……。全魔力で障壁を展開しても、時間稼ぎにしかならん』
メタルゾンビから魔力は吸収できなかった……。
くそ!
魔力があれば……。
【まずいです! さっきのエネルギー砲をチャージしています!】
「社長! 何処かに、逃げる事は出来ませんか? 敵の攻撃がきます! 遺跡がもたないです!」
「レイ! よかった……」
「逃げ道は!?」
「……お前だけでも逃げろ」
駄目……なのかよ!
クソったれ!
「レイ……こんな事に付き合わせてごめんね。有難う」
社長……。
「お前の料理、美味かったぜ……」
ヨハン……。
「お前を、本当の弟子のように感じていた」
デンケル……。
「レイ……。次に好きな人が出来るまででいいから……私の事覚えてて」
アルマ……。
クソったれ!
クソったれ! クソったれ! クソったれ! クソったれ! クソったれ!
こいつ等は、戦争を止めようとしたんだぞ!
馬鹿だけど……。
いい奴らなんだぞ!
こんな理不尽に……負けてたまるか!
クソったれ!
「あんたにはテレポートがあるだろう? さあ、行ってちょうだい……」
「断ります」
「レイ! お願いよ! 逃げて!」
アルマ……。
「生憎……ここで逃げると死んじまう」
「レイ?」
「女を見殺しにすると、俺の魂が死んじまうんだよ!」
負けるかよ! 負けてやるかよ!
『残った魔力の三分の二をそちらに送る。配分は、任せるぞ』
【はい】
さあ……行くぞ!
『うむ!』【はい!】
障壁を、三枚展開し……。
<ホークスラッシュ>!
魔力を流した剣で、衝撃波を連射する。
魔力でも、力が釣り合えば相殺できるはずだ。
正直、今の魔力では……。
三日月状の形をぎりぎり維持できる程度の力しか、衝撃波にこめられない。
それでも……。
「おおおおおおおお!」
俺の後ろには、大事な……。
「があああああああ!」
負けられないんだよ!
魔力の少ない障壁が壊れるのに、時間はかからなかった。
【魔力が薄いだけではなく、エネルギー砲に合わせて薄く引き延ばしてあるので……】
分かってる!
俺は、人間では本来見えないほどの時間の流れにいるだろう。
超高速状態になっている俺は、向かってくるエネルギー砲に衝撃波をぶつけ続ける。
「おおおおお!」
魔力不足を補う為か、徐々に三日月状の衝撃波が変化し始める。
『これは!? 技が発展した!?』
三日月が回転を始め、輪となる。
<スラッシュリング>!
真っ直ぐな進む力だけではなく、回転の力を加えた衝撃波は消し飛ばされるまでに、先程までよりも時間を稼ぐようになった。
「おおおおおおおおおおお!」
【ふ~……。貴方の才能の限界は、まだ先のようですね】
『技のレベル自体を、引き上がりおった』
俺が放ち続ける輪は、重なり……。
球へと変わる。
<ファルコンスフィア>!
複雑な回転を始めた球体は、確実にエネルギー砲の力を削ぎ落す。
俺と、敵艦の間に閃光が広がった。
空気がないせいだろうが、音は伝わってこない。
「はぁ! はぁ! はぁ!」
『肘と肩が砕けた……。回復する』
くそ……。
『回復はした。じゃが……』
分かってる。
三秒に満たない時間……。
それで俺の魔力は尽きた……。
秘言で、魂は?
『魔力も魂の気配もない……』
宇宙も鬼門かよ……。
【敵がエネルギーを再充填しています……】
ああ……。
魔力は尽きた……。
でも、まだ魔力が尽きただけだ。
『体の回復は済んでおる』
ああ……。
【酸素も十分です】
ああ……。
まだ俺は死んでない!
足掻いてやるよ!
この魂が燃え尽きるまでな!
(小さき者よ……。力を求めるか?)
えっ!?
誰だ!?
敵艦を見据えていた俺の頭の中に、直接聞いた事もない声が届く。
(我はブルー。力を求めるか?)
ああ!
(ならば、契約だ。さあ、主よ! 我を求めよ!)
俺の命でも、何でも持っていけ!
だから……。
力を……力をよこせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
「えっ!? 何?」
「遺跡が開いていく!?」
「見て! 外に出られる!」
俺の立っていた地面が、バキバキと左右に割れ……。
なんだ? これ?
飛行機ってのか?
(いや! 我は戦闘用宇宙船だ!)
へへ……。
まあ、力をくれるなら何でもいい!
俺の足元には、真っ青な宇宙の刃が姿を現した。
コックピットらしき場所の上に立つ俺をのせたまま……。
それは、ゆっくりと浮き上がっていく。
全長六メートル、全幅十一メートルのそれは、ブーメランを思わせる独特な形をしていた。
(さあ! 主よ! 戦闘準備だ!)
ああ!
ブルーの装甲が変形して、俺の足を外装に固定する。
まるでデカイスケボーだな。
しかし、俺って奴は……。
『悪運なら……』【宇宙……いえ! 全ての世界一です!】
(我に合わせるんだ)
えっ!?
自分の体が……血管? 神経のように足元のブルーと、魔力で繋がった事を感じる。
この魔力は……。
(これこそ、我の命! 半永久光子力機関!)
うおおお!
とんでもない量の魔力が、ブルーから俺に流れ込んできた。
『何という魔力じゃ!』
足の固定が!?
【固定されているのに、可動ギミックなしに自由に動くようですね】
ははっ……。
おあつらえ向きだ。
(主の戦闘は見せて貰ったのでな。これが一番力を発揮できるだろう?)
合わせてくれるってか。
よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!
行こう!
おいおいおい!
ブルーは、自身を覆う強力なフィールドを発生させて、敵に真っ直ぐ進む。
うおっ! すげぇ!
さっきのエネルギー砲をはじいてる!
よし! これなら!
(攻撃の際には、フィールドは消える)
フィールドを展開したまま敵に突撃も可能だが、リスクが大きい。
何故か、ブルーの知識が、俺の頭に流れ込んでくる。
そして、作戦は俺の頭の中で完成した。
「フォトンホーミングレーザー!」
翼についた、六つの丸い鏡面から、真っ青な魔力のレーザー砲が発射される。
その光は、直角に幾度も軌道を変えながら敵に直撃した。
二隻撃墜!
来たな……。
俺の立つさらに上部から、敵艦が向かってくる。
変形……。
そうだ。
敵は変形する!
敵艦が、巨大な金属の百足に姿を変えた。
おおおお!
ブルーから流れ込んだ魔力で、魔剣と聖剣が大きな魔力の刃をともした。
それは、戦艦を切り裂けるほど大きな光の刃だ。
「ふん!」
俺の進みたい方向に加速したブルーの力に合わせ、敵を三枚おろしに切り裂いた。
残り、二隻!
同時に、向かってくる……。
合わせろ!
『うむ!』【はい!】(了解!)
足のロックを外し、俺はブルーを蹴って敵に向かって跳ぶ。
(フォトンレーザー!)
ブルーは、すれ違いざまに敵艦一機にレーザーを直撃させて、撃墜する。
俺の頭へ流れ込んだ、宇宙の知識……。
それによりもっとも効率よく足場の障壁を展開させ、変形を開始した敵艦の裏へぬける事が出来た。
<バーストトライデントプラス>!
俺は高速回転する球体状になり、敵艦を貫通する。
そして、俺の動きに合わせて待っていたブルーに、再び足を固定する。
すべて、俺がイメージした通りに戦闘が終了した。
****
ふぅ。
なんとかなった~……。
あ!
撃墜された船が、ホバリングして遺跡に戻ってきている。
煙はふいてるけど……魔力も二つ。
セーフ……。
(ふふふっ……。まさか、剣で我と共に闘うとは……)
え?
(本来ならば、主は我に指示を出すだけと想定して、設計されている)
はい?
『そう言えば、戦艦に勝てる人間は人間ではなかったな』
いや……。
【言ってました。言ってました】
ちょ!
(三つの意識に、宇宙を跳ねる力……。変わった主と巡り会ったものだ)
変わったって……。
【ほぼ人間じゃないですからね】
お前なぁぁぁぁ!
『その上、変態じゃ』
この野ろ……。
(ほう、変態か)
いや、信じるな……。
【度し難いSです】
あ……。
『ドSじゃ』
え……。
(Sとは……)
い……。
【加虐癖の変態です】
え……。
(なるほど……)
あれ?
俺、喋れない。
【それで……】
(なるほど、つまり……)
『さらにじゃな!』
味方じゃなくて……。
敵が増えたぁぁぁぁぁぁぁ!
ちょ! 勘弁しろよ!
【また、大声を】
(騒がしいな、主よ)
『黙れ、馬鹿』
おっふうぅ!
マジで……。
やってらんね~……。