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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十章:銀河と相棒編
17/77

四話

あのさ~……。


『なんじゃ?』


この世界って、特に敵はいないみたいだし……。


俺、いらないんじゃね?


『まあ、敵との遭遇が百発百中とはいかんじゃろう』


はぁ~……。


もう、面倒だし、毎回ラスボスの前にポンと移動できないかな?


【流石に、それは無理でしょう。何より、相手が敵かどうかすら判断できませんよ?】


ああ……。


毎回毎回。


死ぬほど面倒くさい!


もう、敵と戦うから……。


覚悟は決めたから……。


敵出せよ! コラ!


【毎回どちらかと言えば、生活におわれてますからね】


面倒! すんごく面倒!


ああ! もう!


やってらんね~……。


「こら! 折角教えてるんだから、集中しなさい!」


「うぃっす」


只今、社長に言葉を教わってます。


艦内の仕事?


終わらせましたよ!


料理や掃除は得意ですからね!


「で! この場合は、していました。いい? する、じゃなく、していました」


「彼女は、仕事の、していますか?」


「違う! 彼女は! 仕事を! していました!」


怒るなよ……。


「彼女は仕事のしていました!」


「を! の、じゃなくて、を!」


なるほどね……。


『これは、二つ前の世界と文法の使い方が、ほぼ同じじゃな』


ああ。


単語とその意味……後は、発音を覚えれば使えそうだ。


「でも、あんた……やっぱり記憶が無くなる前って、この共通言語喋れたんじゃない?」


「それは、何を、意味、ですか?」


「え~……どう言う意味って事よね? 三日っで、テレパシーの補助があっても普通はここまで覚えられないわよ?」


記憶が無いこと自体が嘘なんで、実際に覚えてますが、何か?


【勉強は出来るのに……】


『不憫なアホの子じゃ』


アホって何ですか?


お前等あ……。


「次は、ここね。彼は! 料理を! 食べて! います!」


ちぃ……。


「彼は、彼女を、料理して、食べました」


「食べられるか! 怖いよ!」


痛い。


「彼女なんて、何処にも書いてないでしょ? わざと? わざとなの?」


結構真面目にやってるのに……。


「はぁ。疲れた。ちょっと休憩」


社長が差し出してくれた、コーヒーを俺もすする。


「聞いてるのも、勉強になるだろうから……。ちょっと、私の話を聞いてなさい」


「はい」


「これから会う客は……恩人って言ったでしょ? その人に失礼が無い様に、話しておくわね」


話が長いし、早い。


俺は、仕方なく念話を繋ぐ。


****


「ね? 恩人なの。変な事しないでね?」


「はい」


「じゃあ、私はヨハンと相談があるから……」


「はい」


「サボるんじゃないわよ?」


「うぃっす」


社長は、部屋を出ていく。


なかなかハードな人生じゃないですか……。


『そうじゃな』


社長は、元々故郷の星で王族なんだそうだ。


社長や他の社員が住んでいた星は、いきなり襲ってきた大規模な宇宙海賊に占領されて、皆奴隷になったらしい。


それを救ってくれたのが、今から向かうレード帝国のドロテア侯爵。


社長の母星や他の星も、帝国の傘下に入る事で帝国の一部となり生き残った。


何でも、社長が今の会社を起業するのも、その侯爵にかなり助けられたらしい。


あれだけ危険な商談に挑んだのは、侯爵からの依頼であり……。


今、大変な事になっているらしい、帝国と連合国との戦争を左右する品物なんだそうだ。


おい!


『なんじゃ?』【なんですか?】


あの社長、頭がおかしい!


【なんですか? いきなり】


だって! 自分が奴隷になって苦労してるのに!


俺の事いきなり奴隷にしやがった!


馬鹿ですか!


『どうせ、奴隷制度が元々普通の星で育ったんじゃろう。悪意なく人を、傷付ける者もおる』


アホですかぁぁぁぁぁぁぁ!


【奴隷でも、面倒を見てくれたじゃないですか】


もう!


しかし、戦争ね~……。


『何かするつもりか?』


いや、人間同士の戦争なんてどうしようもないし……。


『まあ、宇宙船同士の戦争など、わし等では何もできんな』


宇宙空間で、宇宙戦艦に勝てる人間がいるとすれば、もうそいつは人間じゃありません!


てか! 無理!


何百メートルも、何キロもある金属の船なんて、剣で切れません!


勝てません!


勝てる気がしません!


さて、夕飯を作り始めるまで時間があるし……。


「私、の、戦い、を、彼女、で、食べる」


う~ん……。


違うな。


「私、の、戦い、は、彼女、を、食べる、事です!」


うん! これだ!


【絶対間違ってますって】


「ふふふっ。女の子は食べ物じゃないわよ?」


開けっ放しになっていた扉の向こうには、シルバーボディの女性が立っている。


「アルマ……。おかしい? 言葉? 俺も?」


「本当に、片言はかなり喋れるようになったのね。凄い凄い」


「はい。聞く、少し、問題、ない。喋る、問題、ある」


「じゃあ! お姉さんが、付き合ってあげよう!」


本当にこの人が一番いい人だ。


これは、惚れるね。


マネキンにしか見えない事と。


ぶつかった時に分かった、その大きな胸が金属並みに堅くなければ……。


『童貞をこじらせると……ストライクゾーンが拡張するんじゃな』


【もはや、ブラックホール並みですよ】


俺の打率は、十割九分だ!


【百九パーセントって……百超えてるじゃないですか】


『惚れっぽさであって、女性と上手くいくかは別じゃがな』


ほっといて下さぁぁぁぁぁぁぁい!


****


アルマに言葉を教わりながら、目的地に着いたわけですが……。


はわわわわ……。


なっ……。


なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


【これは凄い。もう、凄いとしか言いようがないですね】


『これ……あの……夢じゃぁぁぁぁぁぁぁ! 目を覚ませぇぇぇぇぇぇ!』


落ちつけジジィ!


でも、俺も夢のような気がするぅぅぅぅぅぅ!


【おち! 落ちつきましょう! あの……現実です! 少なくても二割は!】


八割夢って、それもうほぼ夢じゃねぇぇlか!


なんですか?


ここまで来て夢オチですか?


てか、夢オチでいい様な気がします!


「何時もあまり表情を変えない貴方が、そこまでアタフタするなんて、面白いわね」


「アルマ! あれ! あの……何?」


「あれが、レード帝国の帝都……。人工惑星グラードよ」


人工?


人工で惑星作るって何ですか!?


『駄目じゃ……。わしもう寝る』


処理落ちするな!


「元々は、隕石の衝突で粉々になった星だったんだけど、見ての通り人工物で補強して惑星として機能するようにしたの」


星から、この前の軌道エレベーターが無数に生えていて、そのステーション同士が全部連結されている。


もう、オゾン層が金属で出来てるみたいだよ。


【星と直接つながっていないステーションらしき物も、埋め尽くすように浮いてますよ】


もう、宇宙船なんて何台いるか分からん。


『あそこは、検問所の様な所か? 宇宙船が蟻のように並んでおる……』


【うわ! あれ! 入口が!】


えっ? マジでか!?


あれって只の岩じゃないの?


「ああ、あれはさっき言った、惑星の破片を改造してステーションにしてあるの。あの中にも、結構立派な町が広がってるのよ」


田舎者が大都会に来たとかって、レベルじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!


もう、訳が分かりません!


【あわわわ……】


『あばばば』


お前等、胃がなくてよかったなぁぁぁぁぁ!


取り敢えず、俺の回復してくれよ!


もうすでに、口の中が鉄の味です!


「おーい! そろそろ、侯爵様の家に着艦するよ~」


社長が船内放送で、着艦を知らせてきた。


「さあ、レイも行きましょう」


俺は、アルマと一緒に操舵室へと向かう。


****


「衝撃に備えて」


既に、他の四人は自分の席でベルトを締め終わっていた。


地上への着陸では無いので、危険や衝撃は少ないらしいが、念のため何時も椅子に体を固定する。


でもね……。


『これは、何か意味があるのか?』


さあ。


この操舵室の席は、五つしかない。


俺は、壁に無理やりつけた金具と紐で立ったまま自分を縛る。


多分、本格的な着陸失敗で、最初に死ぬのは多分俺だ。


優しさって何でしょうね!


えっ! 社長!


言ってみろ!


【何処に行っても、この扱いは……。ある意味、奇跡ですね】


そんな奇跡いらん!


操舵席の床と計器などの場所以外に映し出された外の映像から、星の周りに浮いた一つの大きなステーションへと入って行く事が分かった。


低速で進んでいた船が、金属の大きなアームで固定されゴウンと船内に音を響かせる。


それと同時に、薄暗くなっていた操舵室が明るくなり……。


外の景色が消えて、只の金属板に変わる。


どんな仕組みだよ。


『さっぱりじゃ』


「さあ! 降りるわよ!」


「へ~い」


****


船を出て、金属でできた連絡通路を抜けると、巨大な扉が開き……。


執事らしき人が、誘導してくれる。


お……おおぅ。


これは……。


【素晴らしい! これは、凄い!】


映像?


いや! 手入れしてる人がいる! 本物かよ!


自動で動く床で進むその通路は、一面のバラに囲まれていた。


むせかえる様な甘いバラの香り……。


『見事な庭園じゃ』


宇宙でも植物って育つんだな……。


偽神の作ったステーションとは、生命力や活気が違うなぁ。


【そうですねぇ!】


てか……おぇ。


ここ臭いきつ過ぎ!


「いい香りね~」


「アルマ……。ここ、臭い、強い」


「何? レイは匂いに酔った?」


俺は口と鼻を押さえている……。


きっつい。


「ここは、我が主の自慢なのですが、お気に召しませんでしたか?」


「ごめん。ちょっと、臭い、強い」


「執事さん。こいつの事は気にしないでください」


社長!


俺の事勝手に決めるなよ!


もうひとつの扉をくぐると、臭いは薄くなって……。


おおおおおおお!


『なんじゃ? これは? こういう生物か?』


空中に魚が泳いどる!


てか、この空間自体が水中みたい!


「あの! 社長! 魚! 空! 泳いです!」


「恥ずかしいからやめて……。後、泳いでるね」


だって!


そんなに顔真っ赤にする事ないじゃん!


「これは、立体映像です。本当の魚では御座いませんよ」


立体映像?


駄目だ……。


もう、驚き過ぎて……正直疲れてきた。


『わしもじゃ』


【私も……】


それからも、よく分からない物が並ぶ通路を進んだ。


おい。


【はい……】


若造も疲れてるな。


ここって、大きな金属の箱みたいな中だったよね?


【そうですよ】


最終的に、広い庭の真ん中に大きな館があるよ。


俺達は、何時の間に地上に降りたんだ?


庭の端が見えませんが?


「あんた本当に、何も知らないのね~」


社長! 俺は、そう言ったでしょうが!


「あんたが考えてる事は大体分かるから説明しておくと、庭の端が立体映像になってて、先まで続いてるように見えてるだけよ」


はははっ……。


何でもありかよ。


****


「待っていましたよ! キール!」


ゴンっと頭を突き抜けるような、衝撃が走る。


痛いわ!


建物の奥で、侯爵? らしき女に会った俺は、ぼ~っと眺めてました。


因みに俺以外の全員は、跪いて頭を下げている。


つまり俺は、デンケルにおでこと床をぶつけられたわけですよ。


頭下げるっていうか、押し潰されたカエルみたいになりました。


「頭をあげて下さい!」


「御無沙汰をしております、ドロテア様」


「あら? その方は?」


「うちの新入社員のレイです」


あれ? 美人じゃなくて、美少女?


ガキじゃね?


【かなり若いですね】


ん! ジジィ!


疲れてても、返事くらいしなさい!


『わしはもう眠りたい』


ええい! もう!


「あ! い! さ! つ!」


痛い痛い。


俺が、再びぼ~っとしていると、社長に首を絞められました。


「あ、俺、レイ。よろしく、お願い、した」


「はい。宜しくお願いします」


「すみません。こいつ、言葉が不自由なもので」


「構いません。それよりも、あれは?」


「はい! ここに!」


社長が先日の商談で買った、金属の筒をガキにうやうやしく持っていく。


「これで、揃いました。ただ……」


うん?


社長とガキが……。


ひそひそと、何喋ってるんだ?


「任せて下さい! ドロテア様!」


「危険が伴います。いいのですか?」


「はい!」


「ここにいる全員、貴方に命を救われた者達です!」


おやおやおや?


俺は、救われた記憶なんて無いぞ?


「だから、貴方様の為なら命を惜しむ者なんていません!」


いますよ!


ここに!


『またじゃ』


【巻き込まれるのは、戦えても戦えなくても一緒なんですね】


なんじゃそれ!


「なあ! みんな!」


俺以外の全員が、笑って頷く。


いやいやいや!


「私達は、ご存知の通り、連合との戦争をしています」


ご存じじゃありません!


「この遺跡には、平和をもたらす力があると言い伝えられています。こうしている今も、私達は多くの同胞の命を失っています」


自分で行けよ。


「私達は、残念な事に戦争の為に自由には遺跡へは迎えません。ですから……」


あ……。


そう言えば……。


【商船は、戦争や領土に関係なく移動できるんでしたよね?】


そうでした~。


「分かっています! 侯爵様! 私達が、必ずその力を持ち帰ります!」


俺以外の五人が、侯爵の前で手を重ねる……。


えっ?


俺も行かないと駄目?


今回俺は、役立たずですよ?


宇宙船が爆散すれば、流石に俺でも死にますよ?


うわ~……。


みんなが、空気読め的な目で俺を見てるよ。


逃げ道なしかよ。


仕方なく俺が手を重ねると、みんなが……。


「よし! やるぞ!」


「おぉぉぉぉぉぉぉぉ! 」


もう! 勘弁して下さいよ!


あんな宇宙船一台で、戦場を駆け抜けて!


危険かもしれない遺跡に行って!


なんだかよく分からない力を、持って帰ってくるって!


何の会社だよ!


どんなトレジャーハントだよ!


馬鹿か!


いや……。


馬鹿だお前等! コンチクショウ!


勝手に、人の命までかけるなよ!


何? その目は?


使命感に燃える目ですか?


俺! 完全に関係ないからね!


【あ~あ】


『ここで死ぬのは……流石に嫌じゃな』


何をどう取っても嫌だ!


馬鹿か!


馬鹿なんですか!?


【でも、あなたはそれを口に……】


はいはい!


出せませんよ!


『チキンが』


俺の根性無しぃぃぃぃぃぃぃぃ!


『何時もは空気を読めんくせに……』


【こんな時だけ……】


もう! 自分で自分が嫌になる!


あ~あ……。


やってらんね~……。

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