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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十章:銀河と相棒編
16/77

三話

「で? どうなの?」


いきなりなんだよ。


「返事は?」


(まあ、そこそこは)


「デンケルが来てくれれば、一番安心なんだけどね」


何をしようって言うんだ?


『まあ、何かの危険が伴うんじゃろうな』


ですよね~。


「あんたは、顔に似合わずいい体してるし……。荷物もそこそこ持てるわよね?」


(まあ、そこそこは……)


てか、顔?


顔って何だ?


なんだよ! 言ってみろよ!


お前基準で不細工ってか!?


【また……】


言ってみろ!


【きっと逆ですって……】


暴れるから!


もう、後先とかどうでもいいから!


『お前は、コンプレックスをどうにか出来んか?』


ん、無理!


顔が悪い相手に、不細工って……。


虐めですか!?


止めなさいよ~って!


【もう少し、自信を持ちましょうよ。悪くないですって……】


ははっ……。


ここまでもてないんだから、自身なんて持てるわけもない……。


本で読んだけど……。


限りなく標準的な顔が、美男美女なんだって。


『そうらしいな……』


今まで見てきた顔……親や友達を判断基準にするらしいよ。


【なるほど……】


自分の顔って毎日見る事が出来るから、それを標準と勘違いし易いんだって……。


【ああ、そうなっちゃいます?】


不細工で、ナルシストって最悪じゃん!


もう、俺の自信なんて欠片も残ってないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!


ああああ!


【本当に悪くないのに……】


『自分が美形じゃとは……思えんじゃろうな』


【女性との縁が、ことごとく消えますからね……】


ああああああ!


整形ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!


したい……。


やってらんね~……。


痛!


「聞いてるの?」


なんでここの奴等は、いちいち頭殴るんだよ! くそ!


(すみません。なんですか? 社長?)


「聞きなさいよ! だから……デンケルは整備をするから、船に残るの。で、ヨハンと私とあんたで、商談に行くの! いいわね!」


(はい……。で? 何で、喧嘩の強い弱いが関係するんですか?)


「ちょっと、訳ありの商品を仕入れるの」


ああ、それでか。


あれ?


これって、逃げるチャンスじゃね?


てか、ここしかないんじゃね?


『今回は任せる。好きにせい』


よし!


状況を見て逃げよう!


【まあ、流石に奴隷はちょっと嫌ですよね】


うん!


もう、宇宙空間なんてクソ食らえ!


****


三時間後、なんだかすごい場所に来ました。


なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「ここは、星に固定された宇宙ステーションよ。で、あの軌道エレベーターで、地上まで降りるのよ」


必死で、窓から外を見ていた俺に、アルマが説明をしてくれる。


(直接、地上に降りたりはしないんですか?)


「出来るけど、今回は必要ないからね」


何で?


首を傾げてる俺に、さらに説明してくれる……。


アルマがこの船で、一番いい人だ。


外見が普通なら、惚れてるよ。


「ふふっ。地上への降下も、地上からの大気圏離脱も、リスクが大きいし燃料や機材諸々を消費するの」


(へ~……)


「だから、人が降りるだけでいい場合、普通そうするわ。何より一般人は宇宙船なんて、個人所有してないのよ」


(まあ、お金かかりますよね)


「ええ。ここは、他の星への定期便を使う為にくる人が、一番多いわね」


(なるほど)


「因みに、あの軌道エレベーターはかなりの積載が可能だから、他の星から運送された荷物なんかも地上に降ろしてるのよ」


(なるほどね~……。よくできてますね~)


「ふふふっ。レイは本当に、頭が空っぽになってるのね」


(すんません)


近づいて分かったが、デッカイ円盤状のステーションには、いくつも出入り口らしきものがあり……。


絶え間なく、宇宙船らしきものが出入りしている。


近づくにつれ、その入口の一つ一つがとんでもなく大きい事が分かった。


『想像を絶するとは、まさにこの事じゃな』


すっげぇぇぇ……。


うん?


社長?


「ほら! 行くわよ!」


(へ~い)


手招きされて近付いた俺の首に、社長が手を伸ばす。


おおう?


(社長……あの、これは?)


「見ての通り、特殊合金製の首輪よ」


(えっと……)


「あんたはまだ、借金が残ってるの! そのまま行くわけないでしょ!」


読まれた……。


でもまあ、これくらいなら逃げるけどね!


俺は、散歩中の犬のように首輪の鎖を引かれながら、迷宮のようなステーションを進む。


【これは、凄い】


亜人……宇宙人がわんさかいるよ。


【ここでは、私達の言う人間も一種族に過ぎないのかも知れませんね】


おおう?


デッカイナメクジが、服を着ている……。


えっ?


魚! 魚が歩いてる!


『あれは……虫? 人? なんじゃ?』


【あれ! 五メートルはありますよ……】


なんだ? この魔窟は!?


ぐえ!


「ほら! キョロキョロしない! 行くわよ!」


首輪引っ張るな!


苦しいんだよ!


俺達は、何かのチケットを何かの機械に入れて、軌道エレベーターと言うものに乗った。


『何か、あれじゃな。列車と言う乗り物のようじゃな』


ああ、似てるね……。


****


乗り物を変えて、地上の見た事もない近代的な都市を抜け。


なんだか、俺が見慣れた雰囲気の街へとたどり着いた。


【これは……スラムでしょうか?】


建物のグレードが急激に下がり、歩いている人間もなんかチンピラみたいに見える。


露店も……あやしい物売ってるな。


『まあ、何かは分からんがな』


え~……。


こんな場所?


何の商談だよ。


社長が進んでいくのは、スラムの怪しい建物……。


それも、酒場の裏口を抜けてさらに地下へと降りていく。


もう完全に、違法な物を買う気だよ、この人。


おおう……。


厳つい宇宙人が守る扉を抜けて、ソファーに座った社長とヨハンの前には、緑色のキモイ宇宙人。


あ? 俺は、後ろで立ってます。


ソファーが二人がけだし、喋れないなら交渉の手伝いは出来ないからね。


うん?


社長の雰囲気が……。


ちょっと繋げるか。


「値段が約束と違うし、これは本物じゃないね」


見たまんま、胡散臭い宇宙人じゃん。


てか、後ろに銃らしきものを構えた厳ついのが三人いる時点で……。


騙そうとしてるんじゃない?


言葉分からないから、俺はよく分かんないけど。


「私を舐めるんじゃないよ!」


うん?


社長が眼帯をめくる。


中から、真っ赤な瞳が……。


右目は、ブラウンなのに……。


何? オッドアイを隠してたの?


【にしても、眼帯で隠すのは変ですよねぇ】


魔力は、感じない。


「私のこの目は審美眼って言う、嘘を見抜く目なんだ! せめて、商品は本物を用意しな!」


審美眼?


『絵や彫刻を、見極める能力の事じゃったか? まあ、鑑定する力じゃな』


何? そんな特殊能力持ってるの?


おおぅ?


今! あの!


ずれた!


【カラーコンタクトレンズってやつですね……。多分はったりでは?】


『まあ、商談には多少のはったりも必要じゃろう』


まあ、よく考えるこって……。


あ……でも、騙されたっぽい。


緑の宇宙人が指を鳴らすと、奥から形のよく似た金属の筒を持った……虫? が出てきた。


なんだ?


社長、まだ怒ってるよ。


「約束の十倍じゃないか! 他の商談相手? こっちが先だろうが! ふざけるなよ!」


なんだか、空気がピリピリと……。


今のうちに逃げようかな?


「約束の二倍! これが、限界だ! これ以上は……」


うおお!


ヨハンすげぇぇぇ!


後ろの三人が銃を構えた瞬間、ヨハンの銃が火を吹いた。


【一瞬で、三人の腕にそれも、正確に当ててますね。凄い】


俺、銃は使えないから、素直にすごいと思うよ。


『そう言えば、以前撃った時全弾当たらないだけではなく、味方に誤射をしたな』


自分……。


不器用なんで……。


てか! いいじゃん!


その後、復元させて敵は全部斬ったじゃん。


「さあ! どうする?」


お!


交渉成立か?


奥の部屋に通されてって……。


えっと。


え? いいの?


そんなに素直に付いて行って……。


****


あぁぁ、やっぱりか。


これって……。


『騙された様じゃな』


奥の部屋は、地下にしてはかなり大きなものだった。


その中に居たのは、四メートル強のメタリックな肌をした巨人が待っていた。


ヨハンの撃った銃は、その皮膚ではじかれましたよ。


あ~あ。


さっきの部屋に居れば、こいつ出てこなかったのに。


社長は、歯ぎしりねぇぇ……。


この場合は、俺を盾にして逃げ出すかな?


「駄目だ、ヨハン! ここは、三人で逃げる方法を考えるんだ!」


へ~……クズではないのか……。


「駄目だと言ってるでしょ! あんたもレイも……私の仲間だ!」


奴隷に向かって仲間ね~……。


はぁ~……。


【まぁまぁ、何時もの事じゃないですか】


また、何時ものセリフだよ。


仕方ない。


ブチンと何かが引きちぎれる音が、社長の耳に届く。


「はっ!?」


鎖を引きちぎった俺に、社長は目を丸くしている。


まあ、俺は説明も面倒なんで、そのままデカイのに向かいます。


何かを喋りかけて来てるが、全く分かりません。


なので……。


俺流の交渉を……。


ローキック!


おお、血は赤いんだ。


思い切り蹴りつけた、巨人の左すねは凄い音を立てて、骨が飛び出ました。


どうも、構造は普通の人間と変わらないっぽい。


こっちは……踵落とし!


巨人が倒れて、いい位置にあった右ひざがグシャっと……。


うん! ぺっちゃんこ!


けけけっ……。


『また、出たわい。悪い癖が』


ええい、もう!


ソバァァァァァット!


足を押さえて、転げまわるのが目ざわりなので、胸部を蹴り飛ばして巨人を壁にぶつけます。


よし!


動きが鈍くなった!


【足が、膝まで埋まってましたよ?】


知らんな~……くくくっ。


お……。


ふん! ふん! ふん! ふん! ふん!


涙を流してる癖に、生意気にもまだ右腕を俺に伸ばしてくるので……。


指を一本一本空に向けて、アッパーで突き上げてみました。


【どう見ても、ギブアップだったんじゃ……。指の付け根が、全部グチャグチャじゃないですか】


さて! そろそろ、本格的に交渉開始だ!


【え!?】


『お前のそれは、交渉ではなく恐喝と言う』


喋れなくなると困るから、取り敢えず……。


鼻ぁぁぁぁぁぁぁぁ!


俺の拳が肘まで埋まった所で、いったん引きぬく。


おお!


この鼻なら、後三発は殴っても交渉出来るな。


『この悪魔め』


うけけけ……あん?


(なんですか? 社長?)


「もういい! やり過ぎだ!」


社長と、ヨハンに羽交い絞めされました。


仕方ない、今日の交し【力技】はここまでだ。


……。


若造! 変なセリフを挟み込むな!


【私は、間違えてません】


お!


今日は、まだまだいけそうだ。


その後、銃を持って押し寄せてきた宇宙人を三十人ほど……交渉しました。


『お前の言葉は、根本的におかしい!』


くっくっくっ……。


で、スムーズに商品が買えました。


ただ、社長に少し文句を言われたが、奴隷から下働きに格上げしてもらえました。


毎度だけど、俺の力は超能力って事で。


『この嘘付き悪魔の変態め』


おい!


変態はおかしいだろうが!


せめて、変態はやめろよ!


【じゃあ、変態ドS魔人】


おい!


肝心の変態が残ってる!


まずは、そこを消せ!


後、俺はノーマルだ!


【『はぁ?』】


ちょ! お前等感じ悪!


****


「これは、恩人から頼まれた大事な商品だったんだ! 少々やり過ぎだけど、よくやった!」


(はぁ……)


宇宙船に戻ってから、俺は社長からかなり褒められた。


後、やり過ぎだと再度怒られた。


「これであんたも、正式にうちの社員だ! これからも頼んだわよ!」


(そりゃ、どうも……)


こうして、俺は有限会社キール商会の正式社員になった……。


身分は一番下だけど、デンケルに殴られる回数は減ったよ。


『まあ、そこは身分ではあるまい』


あのメタリック巨人は、デンケルより強い種族だったらしい。


まあ、所詮宇宙人でも人間ですから。


負けませ~ん。


さて! 今日のご飯は何を作ろうかな~。


『おい、馬鹿』


なんだよ!


てか、馬鹿って言うな! クソジジィ!


【当初の予定を忘れてまん?】


当初?


え~……。


あああああ!


逃げるの忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


やってもうたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


【はぁ~……】


『アホの子……』


ああああああああ!


もう、ステーションから出港しちまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!


あ……。


俺の自由が……。


やってらんね~……。

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