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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第九章:異世界と狭間編
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十三話

クソったれの女神が俺に施したフィールドは、次元の狭間を抜け新しい世界に入ると共に消える。


多分、そう仕掛けてあったんだろう。


空中に投げ出された俺は、何事もなく着地した。


はぁ~……。


疲れた。


新しい世界に入るまで、精一杯抜けだそうと力を込めてみたが無駄だった。


相手の思い通りに、解除されただけ。


降り立った場所から、人の気配がする方向へ歩く。


カッポカッポと聞こえてくるのは、蹄の音。


レンガ造りの道を、馬車が走っている。


見た感じの文明は、あまり発展していない様だ。


行き交う人の言葉は、残念な事に分からない。


少しだけ、その通りを歩く……。


言葉は分からないが、女性達がこちらを見てヒソヒソと何かを話ている。


自分の姿を見ると、服がボロボロになっていた。


あ~あ……。


久し振りに、新品の服で……。


大事な人からの……。


プレゼントだったんだけどな。


大事にも出来なかった。


やってらんね~……。


****


うん?


うっ!


冷たっ!


パラパラと、雨が降り始めた。


通りを歩いていた人たちは、傘をさすか、雨宿りに建物内へと入って行く。


はぁ~……。


【……雨宿りをしませんか?】


そうだな。


『体を冷やすな』


ああ……。


あそこで休もう。


公園だろうか?


街中にいきなり開けた場所があった。


あれがいい……。


雨宿り出来る。


『そうじゃな……』


屋根の付いたベンチに座る。


疲れた……。


少し眠るわ……。


【はい】


お休み。


『うむ』


本当に疲れていた俺は、目を瞑るとすぐに深い眠りへと落ちた。


****


【やはり、こうなってしまいますか】


真っ暗な空間で、人の姿へと戻った聖剣が魔剣の賢者へ話しかける。


『仕方あるまい。これほどのストレスは……。もう二度と味わう事もないと思っておったが』


【深層意識があふれ出していますね】


二人は、膝を抱えて座り顔を伏せる俺の頭上から見下ろしている。



俺のせいで、また優しい人が死んだ……。


俺に関わると、俺の背負った闇にのみ込まれてしまう……。


俺は、なんて馬鹿なんだ。


何故期待した?


くそっ! くそっ! くそっ!


偽神を倒したから、解放されたんじゃないかなんて……。


希望をもっちまった。


そんな事決してあるはずがないのに……。


『こ奴に、お前のせいではない……と、言うだけ無駄じゃろうな』


【この方が、本当の馬鹿であれば……。もう少しだけ……無責任であってくれたら……】


全部俺のせいだ。


上手くいっていると……。


運命から解放されたと思っちまった。


最悪だ。


また、大事な人を……。


俺が……。


殺した!


『くっ! 何故じゃ! 何故、神はこ奴を解放して下さらんのじゃ! もう、十分苦しめたじゃろうが……』


【もし、運命が本当にあるならば……。この方は、何を背負って生まれたのでしょうか?】


俺のせいで……。


俺が生きようと……。


幸せを望んでしまったから……。


『そんな物、おろせばいいものを……』


【裏切られても、裏切られても、自分は裏切らない……。涙が出るほど……】


『不器用な男じゃ』


俺は殺すことしか出来ない……。


俺は、人の魂を喰らって生きてるのか?


何故、死ねない?


こんなに、誰も救えないのに……。


ただ、周りを不幸にするだけだ……。


死にたいのに、死ねない……。


多くの命を奪ってきた俺は、苦しまないといけない。


苦しい……。


でも、一人で歩くんだ。


近づけると、みんな死んでいく……。


『うん!? なんじゃ!?』


【あれは……カーラさん!? メアリーさんにリリスさんも……】


『幻か……』


「貴方のせいで、私達は苦しんだ」


「貴方に関わって、死ぬよりも苦しい拷問を味わった」


「貴方なんて、殺しておけばよかった」


【なっ!】


俺のせいで、聖剣の贄となった三人の女性は、怨みを口にする。


その目、鼻、口、耳からは、血が滴り落ちている。


『これは……。この馬鹿が、勝手に作った幻じゃ』


【そうですね。三人はたとえ死んでも、怨みは口にしないでしょう】


「レイ……。痛かったわ。生きたまま、貴方も食べられてしまえばいいのよ」


「俺が築いた一座は、お前がいたせいでみんな死んでしまった。お前がいたせいで……」


「貴方なんて、生むんじゃなかった」


「お前など、助けるんじゃなかった」


両親の幻は、激しい怒りを顔に出している。


【くっ! 精神操作を受け付けない!】


『苦しみを和らげてやれんか……』


【貴方は! ……貴方はみんなを救ったんですよ……。なのに……】


「くくくっ! そうだ! お前は死ぬべきだった!」


【あれは! 偽神! お前はまだ!】


『落ちつけ、若造。これも、幻影じゃ』


「だが……。死ぬわけがない! お前は、命を奪い過ぎたんだよ! お前はもっと苦しまないといけないんだ!」


【幻影とわかっていても……この!】


殴りかかった若造の拳は、偽神をすり抜ける。


「くくっ! あはははははっ!」


『不快じゃな』


「レイ……」


【あれは……】


『オリビアじゃ……』


「見て……この胸の穴。貴方が私を殺したの」


オリビア……。


ふさぎこんでいた俺が、顔を上げる。


俺は、やっぱりお前に会いにいけないや……。


「苦しかったわ。痛かった。悲しかった」


俺の近くに居ると、神様でも死んじまったよ。


俺が、殺したんだ。


「もう、私は苦しみたくないの」


俺は、やっぱりそっちの世界へは……。


帰るべきじゃないんだよな。


「だから……死んでよ、レイ」


ああ……。


勝手にこの地獄で、野たれ死ぬよ。


一人で……。


『こんな……こんな事誰も思っておらんわ! 馬鹿者が!』


【賢者様……】


『分かっておるが……。この馬鹿孫は……』


ああ……。


ちくしょう。


苦しいな……。


だから……。


だから、笑わないとな……。


この地獄は、自分が望んだ結果なんだから……。


「レイ……」


梓さん……。


もしあの世であったら、謝ります。


許してくれなくても……。


ただ、謝りたいんです。


俺は我がままなんです……。


「全く……この大馬鹿者が」


はい。


この世で一番馬鹿なんです。


だから、笑うんです。


『…………』


【…………】


貴方が、あの世で少しだけ……。


ほんの少しだけ笑ってくれるように、戦います。


この広い世界で、本当に一握りしか助けられないだろうけど……。


それでも! 俺は!


戦ってやる!


一人でも、笑顔になる人がいるなら!


【全く……】


『難儀な馬鹿じゃ』


もっと力を!


誰にも負けない力を!


もう、泣かない!


立ち止まらない!


歯を食いしばるんだ!


もう、二度と負けてやらない!


殺す事しか出来ないなら!


神も運命も……女を泣かす奴は皆殺しだ!


ちんけな俺が、消えてなくなるまで!


【これは……】


『わし等も、覚悟を決めねばなるまい』


【はい】


『目的を、元の世界への帰還から、変更じゃな!』


【ですね】


****


『これはまた、苦労しそうじゃ』


何が?


【起きましたか?】


ああ。


何が苦労するの?


『お前の人生じゃ!』


はぁ!?


なんだ!?


まだ苦しめってか!?


『うむ』【はい】


ちょ! お前ら! 人が寝てる間に、何を喋ってやがったんだ!


【まあ、色々です】


はぁ~……。


もう、こいつ等嫌だ……。


やってらんね~……。

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