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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第九章:異世界と狭間編
11/77

十一話

えっ!?


【これは!?】


どう言う事だ!?


大量の魔力が、こちらに近づいてくる。


強さは、かなりばらつきがあるが……。


『かなりの数じゃな』


それに……。


『うむ。全くおらん。気配すら感じんな』


ここは、街のど真ん中なのに、人の気配がない。


何があったんだ?


何がおこってるんだ?


「これは!? 荒神!?」


泣いていた梓さんも、やっと気が付いた。


「こちらに、向かって来ておる。どうなっておる!?」


確実に、俺達に敵意……殺意が向いている。


どうなってるんだ?


「この! 狐火!」


あれ?


「馬鹿な!」


向かってくるでかい百足に向けた梓さんの炎は、いつもの半分以下の威力だった。


C……いやDランクくらいだから、焼き払えたけど。


『あれでは、Bランク以上の相手には効き目がない!』


「臨兵闘者皆陣列前行! 縛!」


「危ない!」


梓さんが出現させた格子状の光は、こちらに向かってくる蜘蛛にいともあっさり無効化された。


梓さんを抱えた俺は、向かってくる荒神達から距離をとる。


「力が! 何故じゃ!」


これは……。


仕方がないよな。


【そうですね】


『致し方あるまい』


呪いが怖くて、俺が務まるか!


でも……。


この大群は……。


きっと不幸になるんだろうな~……。


はぁ~。


嫌だな~。


やってらんね~……。


「梓さん……。力を全て、防御と回避に使って下さい」


「レイ! お前!」


「呪いは、後で祓って下さいね」


既に、俺の目線は梓さんから敵に向いている。


「駄目じゃ! 駄目じゃ! こんな数、全力のわしでも……」


「少しだけ、俺を信じてみて下さい……」


その言葉を口にする前に、俺は走り出していた。


蜘蛛に、百足……。


その後方からも、うじゃうじゃと。


そんなに、俺の大事な人を殺したいか……。


かかってこいよ。


クソったれの神様よぉぉぉぉぉぉ!


相手との距離を瞬時に無くすと、コアに向かい二本の剣をつきさす。


運よくなんだか、悪くなんだか、力の弱い荒神からこちらに向かってきている。


まだまだ、強い力を感知していからな。


お前らなんかに、手間取るわけにはいかないんだよ!


なんだ!?


さっきもそうだったけど……。


おい! ジジィ!


『うむ。魂の力が何処かへ、吸収され続けておる』


霧散したコアの魔力が、地面の中へ吸い込まれていってる。


なんだ?


【魔力の補充は?】


『若干少ないが、殺した相手からは吸収できておる』


どうなってやがるんだ?



「ぎゃあああ!」


何!?


ビルの中からフラフラと出てきた男が、叫びながら苦しそうに倒れ込んだ。


そして、一瞬で干からびてミイラになる。


これは……。


『魔力が……人間の魔力までもが、吸収されておる!』


うおっとぉ!


なっ!


敵の攻撃を回避して、目に映ったビルの一室。


そこでは、大勢の干からびた人間が見えた。


どうなってるんだ!?


今ここで、何がおこってるんだ!?



【駄目です!】


「レイ!」


しまった……。


気をとられた俺に、ビルの壁に張り付いたトカゲのしっぽが振り下ろされた。


骨が砕け、肉がすりつぶされる音が聞こえる。


俺は、地面にたたき落とされた。


やっちまった。


『気を抜きおって! 馬鹿者が!』


最近、ちょっと平和ボケしちまってたかな?


【すみません。私も、障壁展開出来ませんでした】


「レイ! この!」


粉塵のすき間から、梓さんの炎が見える。


力が弱体化してるのに、俺なんかの心配してる場合じゃないでしょ?


まったく……。


お人よしで……。


『お前が言うか?』


俺の大事な神様。


守って見せる!


「この! 退け! 狐火……。あ……」


梓さんに迫った黒い三匹の蜘蛛は、一瞬で塵へと変わる。


真っ黒い影が通り抜けると同時に。


殺意を……。


殺意を高めろ。


頭を殺意で埋め尽くせ。


「レイ……」


瞳の端に映った梓さんは、とても悲しい顔をしていた。


俺がそんなに怖いですか?


でも……。


たとえあなたに嫌われたとしても、守れないよりは何億倍もましなんでね。


これも、俺なんですよ。


黒い影となった俺は、巨大で黒い獣達の群れをすり抜ける。


俺の通り抜けた後には、何も残らない。


『来るぞ』


ああ、分かってる。


上空から、力が迫ってきている。


数は、三……。


俺に向かってくる、その魔力砲に向かい上空へ飛び上がる。


目指すは、その先にいる大きな鳥。


跳び上がる勢いで鳥を切り裂くが、飛行型の荒神に取り囲まれていた。


若造。


【お任せを】


空を蹴り、二体……三体と切り裂いた所で、予想通り全方位から衝撃波が俺に降り注ぐ。


流石は、神……。


俺も、音速は超えてるんだがな……。


そのまま、空を蹴り加速すると眼前の空間をゆがめ、真っ直ぐ敵に向かう。


目的の巨大な蝿を切り裂き、その先に展開された障壁を蹴り移動する方向を急転回する。


何も無い空間を蹴るよりも加速出来た俺は、俺のイメージに合わせて若造が展開した障壁を蹴りながら空中を移動する。


空中でピンボールの球のようになった俺の体は、加速を続ける。


障壁を四度蹴りつけた所で、どうやら俺は敵の視界から消えたようだ。


俺に向けられた衝撃波や攻撃は、俺が少しだけ前に居た場所にしか向かわない。


遅いんだよ。


人間の街だった今いる場所は、どんどん瓦礫の積もった荒野へと変わって行く。


うん!?


凄まじい力が宿った光線が、俺のいる方向へ広範囲で飛んでくる。


光速……。


空間をゆがめ、障壁を盾に地面へと退避する。


なっ!


まずい!


若造!


【はい!】


地面に到達するすれすれに張った障壁を蹴り、着地点を変える。


俺が着地する予定だった場所には、地中から巨大な牙が伸びていた。


完璧な連携。


そして、こいつ等に個々の意思はないようだ。


恐れだけでなく感情を、何も感じない。



うん? なんだ!?


「レイ! そ奴は!」


マンホールのふたが吹き飛び、水が噴き上がる。


そして、その水は魚の形をなす。


こいつは……。


『操っているコアは、小さいな』


巨大な水の魚は、本体じゃない。


水の中を泳ぐ、小さな魚から魔力を感じ取れた。


あれが本体!


コンクリートを難なく切り裂く水流を回避して、魔力を込めた聖剣を本体に目がけて突き立てる。


本体を失った水が、バシャリと重力に従って地面に広がる。


うお! 次から次にぃ!


地面に広がる水が凍りつく?


シュルシュルと舌を出し入れする蛇が、瓦礫から鎌首を持ち上げる。


上空には、さっきの光線を放った巨大な鳥。


さらに失速した俺へ、連携されたとんでもない速度の黒い影が迫ってくる。


狼? いや……イタチか?


大きさは、通常の犬と変わらないが、速度が尋常じゃない。


ジジィ!


『魔力は、十分じゃ!』


合成金属も、上手く発動している。


行くぞ!


『うむ!』【はい!】


思考と、感覚を全て戦闘へと向けた俺の視界が変わって行く。


全ての魔力を感じ取り、敵の攻撃を全て予測する。


俺の命と、てめぇぇらの命。


どっちが先に消えるか、勝負だ……。


あの人を守れるなら、この命くれてやるよ!


「何と言う事じゃ……。こんな……こんな」


遅い……。


遅いんだよ!


「お前は、どれほどの戦場を潜り抜けてきたのじゃ? どれほど、命をかけてきた?」


いくら目で追えても……。


反応できなきゃ意味がないんだよ!


「何故、笑っていられる? お前は……」


「はぁはぁ……」


敵を全て斬り伏せた俺は、思い出したように呼吸をする。


****


「そんな……」


戦闘が終わったばかりの俺は、梓さんが俺から隠すように腕を隠した事を気付かない。


俺は、馬鹿だからさ……。


だから、優しさってやつが理解出来ない。


「梓さん」


「狐火!」


俺に向かってくる、火球を反射的に回避する。


「何を!?」


「今すぐこの世界より立ち去れ!」


そんな……。


何で?


「お前は、わしの大事な奏出を殺した!」


嘘ってのは……。


「それだけでなく、大勢の同胞もだ!」


嘘ってのは、素直に騙された方が幸せなのかも知れない。


「一度は、つがうと約束したが……。許せぬ事もある!」


優しい嘘ってのには……。


「早々に、この世界より立ち去れ!」


きっと騙されるべきなんだろう……。


真実ってのは、おおよそ残酷なもんだ。


俺って……。


はぁ~……。


嫌になる。


やってらんね~……。

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