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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第九章:異世界と狭間編
1/77

一話

今俺がいる大陸は、故郷であるレーム大陸の半分ほどの面積で、二つの国がある。


この世界には、この大陸よりかなり大きな大陸が存在する。


だが、その大陸に人はほとんど住んでいない。


理由は簡単で、有り得ないほど強いモンスターがうじゃうじゃいるからだそうだ。


大昔から、冒険者と呼ばれる物好き達がその大陸へ幾度も渡ったそうだが、五年間での生存率は約五パーセント。


まぁ……。


好んで行く奴なんて、そうはいない。


人間は今俺がいる大陸のみで、平和に暮らしてきたそうだ。


しかし、この十年でそうも言っていられない状況がきた。


資源土地食料の枯渇だ。


これだけ狭い土地に、億単位で人間がいるんだから……。


当然だろうよ。


国が発表した先行きの見通しとしては、後十五年ほどで餓死者が出るほどになるんだとか……。


二つしかない国で資源の奪い合いによる戦争を避ける為に、共同での国家プロジェクトが始まった。


冒険者育成計画……。


まんまですよ。


国の援助で、冒険者を育てる学園が多数設立され、卒業生はもれなく国公認の冒険者となり、隣の大陸へと旅立つ。


国公認の冒険者になれば、軍に在籍扱いになり、固定給に生命保険、年金まで支給されるそうだ。


無謀に思えたこのプロジェクトも、国のバックアップによりかなりの成果を上げているらしく、毎日のように冒険者達が持ち帰った資源や情報でニュースが席巻されている。


もちろん、犠牲者も無視できるレベルではないようだけど……。


俺は今、そんな学園の一つであるこのバージィ学園にいます。


****


「おはようございま~す……」


今日も、駄目駄目だな。


寝ぼけ眼で教員に挨拶して登校してきたのが、アルトくん十六歳。


学園に訓練用に設置されたダンジョンで、大失敗をした所謂落ちこぼれってやつだ。


訓練用のダンジョンは、すごくレベルの低いモンスターしかいない上に、常に学生の安全を教員が監視している。


にもかかわらず、アルト君は教員の許可なしに幼馴染を無理やり連れて訓練と言う名目で中に侵入し、瀕死の怪我をして入院した。


ルールくらい守ればいいのに……。


さらに、幼馴染で優等生でもある友達以上恋人未満のミュンちゃんにも怪我をさせてしまい、停学処分。


そして、それ以降ミュンちゃんとの関係も……。


自分を見てるようで泣けてくる。


そんなこんなで、只今幼馴染を守れるくらいに強くなる為に奮起している、思春期の男の子だ。


「あっ! そっちじゃないです! この荷物は、庭園の奥にある倉庫へお願いします」


この荷物を運ぶように指示している女性教員は、アイナ先生。


美人で口調は丁寧だが、高圧的であまり好きにはなれないタイプだ。


てか、俺は女性教員にいいイメージないからね!


階段踏み外して足でも挫け! クソビッチ!


「じゃあ! 頼みましたからね!」


用務員にそう指示……命令をすると、アイナ先生は校舎へと戻っていく。


あのクソビッチは何故か……。


見てるだけで気分がよくないな。


まぁ、それはさておき……。


この学園は……。


『まだ続けるのか!』


なんだよ?


『昔から一人で妄想するのが癖なのは分かっておるが……』


じゃあ、黙っとけよ。


『黙っておられんわ! 毎日毎日!』


いいじゃん! 別に~!


【今回もあれですよね?】


何?


【美人と出会って、向こうから告白されてって、ストーリーですよね?】


なっ!?


なんでわかった!?


【毎日シチュエーションが違うだけの妄想を、聞かされてるからですよ……】


馬鹿な!?


毎回、出会う女性は変えてあるのに!


『同じじゃろうが! 毎日お前の与太話に付き合わされる、わしらの身にもなれ! 馬鹿者!』


馬鹿って言うほうが馬鹿だ! クソジジィ!


【しかし……。さすがにちょっと飽きてきましたよ……】


『そうじゃ! お前が、美人に言い寄られるなど、絶対無い!』


おまっ!


絶対って!


……。


ああ……分かってるさ!


でも、女の人に襲いかかる訳にいかないじゃん!


妄想で我慢してるんじゃん!


妄想ぐらい!


妄想でくらい……。


『……わしが泣きそうじゃ』


泣きそうなのは俺だ! この野郎!


「どうしたんですか? そんなに眉間にしわをよせて?」


俺に話しかけてきたのは、眼鏡が可愛いルーシー先生。


今日もかわいいな~。


見てるだけで癒される。


「理事長先生から、昼休みに来て下さいとのことです」


「了解しました」


ルーシー先生は、俺に笑顔で軽く手を振るとその場を立ち去る。


彼女は俺のオアシスだ。


【既に妄想で、彼女に四回は告白されてますよね】


妄想ですけどね!


一仕事終えた俺は、庭園のベンチに座り手拭いで汗をふく。


初夏の日差しが、眩しいな……。


あっ……俺?


用務員をやっていますが、何か?


もういい大人ですから、生徒にはなりませんよ。


当然でしょう。


何で?


おまんまを食べる為です!


仕事に綺麗も汚いも無いんだよ!


『お前の頭の中だけに存在する読者だか、プレイヤーだかに話しかけるのは、どうにかならんのか?』


なりませ~ん!


これもライフワークですから!


『もうこいつ嫌じゃ……』


俺のが嫌じゃい!


【今日も暑くなりそうですね】


『そうじゃな』


さて!


購買に練習用の木剣を運ぶか……面倒くせぇぇ。


【仕事ですよ】


あ~あ……。


やってらんね~……。


****


昼休みになってから、俺はコンコンっと理事長室の扉をノックする。


「失礼しま~す……」


「来たかい」


理事長室を訪れた俺を、ババァは老眼鏡をはずして見据えてくる。


「ご用件は何ですか? バ……理事長?」


「まあ、そこに座りな」


なんだろう?


今日は雰囲気が違うような。


「まずは……」


おっふぅ!


ババァの投げた分厚い辞書が、俺の額を直撃した。


何してくれるんだ! このクソババァ!


「ババァじゃない! 私の事は、理事長と呼びな!」


「ちっ……へ~い」


「まったく……恩人を何だと思ってるんだか」


【確かに、拾ってもらった恩人へババァはどうでしょう?】


いいじゃん。


実際ババァだし。


『そのババァに拾ってもらえねば、今頃浮浪者だったんじゃぞ?』


まあ、感謝はしてるよ……。


「さて、来て貰ったのは問題児についてだよ。心辺りがあるだろう?」


「サア、マッタクアリマテン」


実は、アルトくんがどうしてもと言うので、深夜に訓練施設を秘密で使わせている。


あいつも必死なんだろうと言う事と、俺の修練を見られたので黙っていて貰う為に……。


「深夜、施設に明りが付いていると、アイナ先生から報告を受けたんだがね」


あっのっ……クソアマがぁぁぁぁぁぁぁぁ!


教員用ロッカーを、接着剤で開かないようにしてやろうか!


マジで!


『小さい男じゃ……』


うっさい! ボケ!


「まあ、あの問題児も最近メキメキと力をつけていると聞いている。それに、あの事件で隠れて訓練をしたいと言う気持ちも分かる」


じゃあ、黙っとけや。


「だが、未成年が深夜にと言うのはいただけないね」


どっちなんだよ?


「そこで、ダンジョンを使いな」


「えっ? あの……」


「あのダンジョンの一階部分は、モンスターを配備していない。そして、許可なくダンジョンに近づく教員も生徒もいない……」


ああ。


「もっと早い時間に、ダンジョンを使えと?」


「そう言う事だね」


なんだ。


話せるじゃん! バババァ!


「その代わり! 何かあった場合は、あんたが責任をとるんだよ!」


責任……。


嫌な言葉だ。


『……ダメ人間』


ボソッと悪口言うな!


「万が一モンスターがはい出した場合でも、あんたが体を張って守るんだよ?」


ああ。


そう言う責任ね。


オッケー、オッケー。


「分かりました。じゃあ、アルトくんにはそう伝えます」


「ああ。これが、ダンジョンの非常用キーだ」


俺はババババァが投げ渡した鍵を受け取り、部屋を出た。


【その呼び方は、逆に呼びにくくないですか?】


何が?


【……はぁ~……何でもありません】


****


俺は学食でポツンと一人で食事をとっているアルト君に、その事を説明して仕事に戻る。


見れば見るほど……。


『お前の学生時代そっくりじゃな』


この世界は、強さがもてる基準じゃないはずなのに。


【学生の判断基準には、少なからず成績が入るんじゃないですか?】


そうだろうね~。


でも、俺が剣を教えてるから、少しはレベルアップしてると思うんだけど……。


『誰かと一緒で、きっと不器用なんじゃろう』


誰かって……誰っ!?


『……』


まさかの無視ですか!?


「シモンズさん!」


俺が振り向くと、そこには……クソビッチ!


「頼んでおいた資料が、まだ届いていませんが?」


「はぁ……これから運びます」


「急いで下さい! 午後の授業で使うんですから!」


そう言いすてるとクソアマは、プリプリと怒りながら学食を後にする。


事あるごとに嫌みを……。


死ねばいいのに……。


【確かによく話しかけられますね……。ほぼ、用事か嫌みですが】


ロッカーだけじゃなく、あいつの使ってるティーカップも皿とドッキングさせよう。


金属用の強力接着剤でな!


【相変わらず陰湿ですね……】


『……クズ』


若造の言葉は聞き流そう……。


ジジィ!


謝って下さい!


とても不愉快です!


俺に謝って下さい! コンチクショー!


「また、眉間にしわが寄ってますよ?」


「ルーシー先生……」


あれ?


なんか笑ってる?


何で?


「あっ……、ごめんなさい。アイナさんを見ていると可笑しくて」


何が?


「彼女の事、誤解しないであげて下さいね?」


「はぁ」


「何時も今度の用務員さんはよく働くし、気がきくって褒めてるんですよ?」


はぁ!?


「でも、不器用だから」


不器用ってレベルじゃないんですが?


ほとんど嫌がらせのレベルで、文句を言われてますが?


「昔からなんです。私達は、学生時代からの友達なんですけど、私に対しても文句ばっかりで……。私も昔は、彼女に嫌われてるのかと思ってました」


それは、ルーシー先生の時であって、俺は嫌われてると思うんですが?


「これ以上、お引き留めしてはまた彼女に怒られちゃいますね?」


時計を見ると……。


やべっ!


後、七分しかない!


「すみません! じゃあ!」


「はい。頑張って下さいね」


倉庫から、資料の入った段ボールを担いで走る俺は、考える。


あのクソビッチが……。


実は俺をよく思ってる?


ははっ……。


ない!


うん! ない!


『それでいいのか?』


考える時間すら無駄じゃい!


【毎度毎度……】


『アホの子じゃ……』


ちょっ! お前等酷くない?


****


うん!?


ちょ!


やばっ!


何とか時間以内に資料を届けた俺は……。


大変な現場に遭遇してしまった。


アルト君の幼馴染が、別の男子から告白されてる。


とっさに俺は物陰に隠れた。


【失礼ですよ。立ち去りましょうよ】


嫌です。


どうなるか見たい!


【あなたと言う人は……】


おっ!


おお~う……。


告白失敗か。


「なんで? まさか、まだあの落ちこぼれの事を……」


「そんな言い方しないで! アルトは……」


か~……。


いい子だねぇ~。


俺のまわりにも、あんな子がいればなぁ~。


【いたんじゃないんですか?】


『もちろんじゃ。ただ、馬鹿は気がつかんかったようじゃがな』


五月蝿い!


カーラもリリーナお嬢様も、なんか違うじゃん!


俺は、ああいう、いい子がいいの!


優しい感じが欲しかったの!


【また、そんな我がままを】


我がままじゃない!


結構、普通の願望ですよ!


自分を殺そうとしたり、虐めない相手が欲しいって!


てか、最低限の条件でしょうが!


【はいはい……】


最近、態度悪過ぎるぞ! 若造!


はぁ~……。


しかし、アルトくんは何とかしてやりたいな。


『そうじゃな。あの娘が失望しない程度には……』


分かってるよ。


まだまだだけど、ドラゴンバスターくらいまでは教えといてやるか。


【大丈夫なんですか? 死神様の剣は、使った本人に後遺症が出る可能性も……】


確かに、限界まで体を酷使するからね~。


でも、潜在したポテンシャルはかなり高いから、完全じゃなければ使えるようになると思うよ。


『そうじゃな。この世界には回復の魔法もあるし、問題あるまい』


わざわざ、俺の修練を削ってまで教えてるんだ。


何とかなってもらうさ。


****


「はっ! ふんっ!」


俺はババァの指示通り、ダンジョンの一階でいつもより早い時間に、アルトくんに剣を教えていた。


アルトくんの素振りを見る俺の目が、かなり細くなっていく。


何でだろう……。


こいつを見てると殴りたくなる……。


『この小僧の才能が憎いか?』


はい、その通り。


こいつ怠けてただけで、きっちり才能あるじゃん。


てか、高々三週間でこのレベルって……。


木剣でちょっと殴ろうかな……。


【やめてください! 物騒な!】


『お前の天才嫌いは、既に病気じゃな……』


天才なんて大嫌いだぁぁぁぁぁぁ!


死んでしまえ!


【曲りなりにも教え子ですよ?】


うん?


俺に剣を打ち込んでいたアルトくんが、息を切らしてその場にしゃがみ込む。


おいおい。


まだ、一時間もたってないぞ?


俺なら、二十日くらい続けられるぞ?


『他人をお前と一緒にするな』


人を人間じゃないみたいに言うの止めて下さ~い。


「だっ……駄目です……。師匠に、一撃なんて俺には無理です」


はぁ~……。


「いいかい? 俺も俺の師匠の受け売りだけど、諦めは時間の無駄だよ」


「でも……」


「諦めてる時間があるなら、剣を振るべきだ。諦めても事態は好転なんかしない」


「しかし、勝てない相手に対峙した時は……」


「そう言う場合も、諦めずに生き残る方法を考えるんだ。全力で逃げるのも立派な作戦だよ」


「あっ……」


理解したか。


「勝つ事を諦めるなって事じゃない。アルトくんの諦めは、全てに対する諦めだ。絶望してしゃがみ込む時間があるなら、格好悪くてもいいから生き残る事を諦めちゃ駄目だよ?」


『偉そうに……。自分は、死んでも勝つ事しか考えん癖に』


五月蝿い!


俺は、負けるの嫌いなの!


「分かりました! 有難う御座います! 師匠!」


おっと……。


「前も言ったけど師匠はやめてくないかな。むず痒い」


「いえ! 俺にとってレイさんは師匠です!」


「俺は師匠みたいに、剣を極めた訳じゃないから……」


「そこは引きません!」


頑固~。


『ますます、どっかの誰かの様じゃな』


俺もこいつみたいな才能があれば……。


てか!


全然息切れがおさまらんな。


スタミナなさすぎ~。


「ちょっと休憩だね。はい」


俺は、スポーツドリンクをアルトくんへ手渡す。


「すみません。あの……一つ聞いてもいいですか?」


「何?」


「師匠の師匠って、さぞ名のある冒険者だったんですよね? 聞く限り、尋常じゃないほど強いようですし……」



ああ、そうなっちゃいます?


「まあ……」


「お名前は?」


それ聞いちゃいます?


「いや、まあ……」


言えね~!


異世界の神様なんて言っても、絶対頭がおかしいと思われる!


「それは……企業秘密です」


「企業? でも……」


「修行が終わったら教えるよ」


「はぁ……」


「さあ! 練習再開だ!」


「はっ! はい!」


修行終わっても教えないけどね!


しかし……。


やっぱり、殴りて~……。


才能あり過ぎだよ、こいつ。


セシルさん程じゃ無いにしても、魔剣なしの同い年だった俺より上にいくんじゃね~の?


【そうなんですか?】


『いや。この馬鹿は自覚してないが、わしの力なしでもこの小僧の数段上じゃったよ。弟子を贔屓目に見過ぎじゃ』


【ですって】


う~ん……。


まあ、いいや!


これなら、来週には技を教えてよさそうだな。


****


「マジで?」


「マジだよ」


夏休みの一週間前に、再び理事長室に呼び出された俺は、バババババァにある事実を告げられる。


何と、この学園では夏休みでもほぼ毎日生徒が登校する為に、俺の休みは無いそうだ。


「どう言う事!? ババ……いだっ! り……理事長先生?」


何時ものように辞書を額にくらいながらも、質問をする。


【避ければいいのに……】


「この学園は、勉学だけではなく、剣術や魔法にも単位がある。特に魔法の単位は、取得に時間がかかるんだよ」


ああ……。


俺の夏休み……。


てか、あれ?


よく考えると……。


俺……夏休みほとんど関係なくね?


『やっと気が付いたか』


どの道、行く所もないし……。


毎日、庭園の世話や、プールを使いに来る生徒の為に働くんだし……。


アルトくんの訓練もするし……。


『ただ、生徒が来るか来ないかの差しかないじゃろうが』


ああ……。


紛らわしいわ!


わざわざ、そんな事で呼び出すな!


「ただ、休みは教員が少ないから、生徒達が危なくない様に注意しておくれ」


「ああ、へいへい」


「話は以上だ。後、これが今月の給金だよ」


「へい、毎度~」


****


給料を受け取った俺は、部屋を後にする。


有難いが、あんまり嬉しくない。


だって!


この金も、結局この世界でしか使えないんだもん!


パーっと使うって、ほどもないし!


だからって、貯めても意味が無い!


ちょっと食事が豪華なくらいですよ!


ええ! 文句はありませんよ!


でもな~……。


大人の店に通うお金……。


『おい、煩悩』


人の名前は、きちんと覚えなさいよ! クソジジィ!


『なんじゃ? 今、ルーシーと言う娘が、お前に声をかけたのを教えてやろうと……』


「すみません! 何でしょうか!?」


音速……。


まではいかないが、かなりの高速で引き返した俺に、ルーシー先生が目を丸くしている。


ちょっと、やり過ぎた……。


『アホ……』


アホじゃありませ~ん!


「あっ……えっと……。今日の夜なんですが……」


えっ?


ええええええ!


まさか!?


デートのお誘いですか!?


マジですか!?


【おおっ! 意外な!】


頭の中で、二三六回シミュレーションしたこの瞬間がぁぁぁぁぁぁ!


【まだ早いです! まだです!】


「何かご予定は?」


キタキタキタ!


『どうせ何時もの、肩すかしじゃろう……』


不吉な事言うな! 折るぞ!こらっ!


「何も無いです」


よっし!


受けごたえも完璧!


来い来い来い来い!


「じゃあ、近くのレストランでお食事でもいかがですか? 二人で?」


キタァァァァァァァ!


オォォォォォォォォウゥ! イエス!


イエス! イエス! イエス! イエス! イエス!


『そんな馬鹿な……』


お前が馬鹿だ! クソジジィ!


【おめでとうございます! 奇跡ってあるんですね!】


ありがとう!


でも、お前も死ね! 若造!


「喜んで」


「では、七時に校門の前で」


「はい!」


****


あはは!


うふふふふふっ!


「あの……師匠?」


『おい! 脳みそお花畑?』


えへへへへ!


ぐへへへへっ!


「師匠?」


ぐふふふふっ!


うけけけけっ!


『話しを聞かんか! このいろんな意味で犯罪者!』


ちょっ!


人がいい気分なのに、不名誉なあだ名をつけるな!


てか! 犯罪なんてしてない!


【お弟子さんがさっきから呼んでますよ?】


ああ……。


「どうした?」


「何か嫌な事でもあったんですか? 師匠?」


えっ?


その反対なんだが……。


「いや。どうしてだ?」


「さっきから目を瞑って、眉間にしわが……」


にやけない様に、気を付けてただけ……なんだけどね……。


「何でも無い。それよりも、素振りは?」


「終わりました」


【もう、かなり前に終わってましたよ】


楽しい時間は、過ぎるのが早いね……。


【もっ……妄想が!?】


『へっ! 変態じゃぁぁぁ! 変態がおる!』


五月蝿いわ!


「さっき言った通り、今日は七時から予定がある。これから、教えた技の自習をしてくれる?」


「はい!」


基本のシーザースラッシュとドラゴンバスターを教えた。


実は、この二つは只の横なぎと、打ち落とし……。


極意は、瞬発的に身体能力を限界付近まで高めるのと、剣を大気と大地の流れに合わせる事なんだけど……。


まあ、使いこなすには少し時間が必要だろうな。


さてと……。


シャワーを浴びて! お着替えだぁぁぁぁぁぁぁ!


フゥヒヤッホォォォォォォォォ!



俺はアルトくんに鍵を渡し、そそくさと用務員用の宿直室へと引き上げる。


体! キレイキレイ!


【特におかしな事はしていないのに……】


『なんじゃろうな? この気分の悪さは……』


体のいろんな所を! キレイキレイ!


『生理的に怖気が……』


二人とも……。


叩き折るぞ! ゴラァッ!


俺のいい気分を邪魔するな!


これで俺にもついに春が!


****


「えっ? あの……」


はいはいはいはい……。


レストランで食事をする万全を期した俺に、ルーシー先生から投げかけられた言葉は……。


余りにも、想定の範囲外の言葉だった。


いや。


正確に言うと、分かってたんですけどね……。


ああ……。


分かってたよ! 分かってたんだよ! こんちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!


「不躾ですが……。アイナさんを悪く思っていないのでしたら、何とかシモンズさんの方からアプローチをしていただけないでしょうか?」


オワタ……。


俺……オワタ……。


『まぁ、ドンマイじゃ』


【毎度ですね~】


軽っ!


お前等軽っ!


「シモンズさんは、私から見ても優しそうで、真面目で、誠実だと思えます」


『勘違いじゃな。体の成分のほとんどが煩悩じゃ』


酷くない?


泣きっ面に蜂って言葉知ってます? クソジジィ?


「あのアイナさんが、男性の方について話しをするなんて初めてなんです。出来れば、奥手な彼女をなんとか……」


こ……心の汗が……。


【ルーシーさんに好意は……】


『まあ、無いじゃろうな。せいぜい、なれてもよき友人と言ったところか?』


【ですよね。自分が好きな相手と、友人の仲を取り持とうなんて考えませんよね】


止めとか、いらないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


ああ、そうだ。


今日は、お酒を買って帰ろう。


火が点くほど強い酒を……。


【そうしましょう……】


泣かないんだ……。


辛いときは……。


笑うんだ!


悲しくなんかないやい!


「あらっ? そのお顔は、シモンズさんもまんざらではなかったのでしょうか?」


えっ!?


ちがっ!


言い訳をしようとした俺の言葉をさえぎる様に、ルーシー先生の携帯電話が鳴動する。


「あら? 家から? ちょっと、すみません」


はぁ~……。


「えっ!? そんな……」


なんだ?


ルーシー先生が青ざめてない?


【そうですね。何かあったんでしょうか?】


まぁ、どうでもいいや。


かんけ~ね~……。


【一気にやる気が無くなってますね】


はははっ……。


当然だろうが!


もう、ルーシー先生で妄想するだけで虚しくなるよ。


うん?


ババァから連絡用に渡されていた、学園の携帯電話が鳴り始めた。


なんだ?


「タダイマ、俺ハ気分ガ悪イノデ電話ニデタクアリマセン。御用ノ方ハ、ピーットイウ発信音ノ後ニ速ヤカニ電話ヲ切ッテ下サイ」


【ええ~……】


「ふざけてる場合じゃないんだよ!」


怒らりた。


「なんですか?」


「ルーシー教諭と一緒に居るね?」


「何故それを!?」


「一緒に学園を出るのを見てたんだよ! それよりも、電話が通じない」


そりゃ、今電話中ですからね~っと。


「緊急で伝えて欲しい事がある! いいかい!」


「どうぞ」


ここまで来て、邪魔するなとかって状況じゃないしね~。


「ルーシー教諭の受け持っている生徒が、今補導された。その生徒の両親と連絡がつかない。すまないが、警察へ……」


そこから、電話中のルーシー先生を目で追いながら詳細を聞いた。


酔っ払いのおっさんから、友達を助けようとして喧嘩か……。


喧嘩に、魔法なんて使うから面倒な事になるんだよ……。


馬鹿が……。


「こっちも、準備が済み次第向かう」


「了解」


さて……。


「それで! さくらは!?」


う~ん……。


こっちも嬉しくない状態のようだよなぁ。


『そのようじゃな』


【飼っているペットが、死にそうなんでしょうね?】


まあ、聞こえてくる話からはそうらしいな。


警察までは、徒歩五分。


前に聞いたルーシー先生の家は、モノレールで三十分か……。


『町外れじゃから、確か便が一~二時間に一本じゃったな……』


さて……。


どうすっかなぁ。


【この前の世界のように、車と言う物か転移の魔法があればいいんですが……】


ああ……あの、タクシ? かバスって奴か……。


無い物は仕方ない。


『この場合は、警察側を……』


ババァも来るはずだから、黙って俺だけで行ってもいいんだがな……。


でも……。


『そうじゃな。お前がそう思うなら』


【十中八九その選択は】


間違いなんだろうな。


仕方ない……。


「そう……ですか」


電話の終わったルーシー先生に、生徒が補導された事を説明して店を出る。


さて、どうするかな?


「警察に行きましょう!」


「いいんですか?」


「はい! 私は……教師です!」


警察までの道中、ルーシー先生の教師になった理由を聞いた。


てか、勝手に喋り始めた。


ルーシー先生は、ババァの教え子なんだそうだ。


そして、トラブルに巻き込まれた時にババァが真っ先に助けにきてくれた。


まぁ、よくある話だが……。


【冒険者だった息子さんの、葬式の日にですか……】


『何が正解などと、言うつもりはないが……。生徒側からすれば、尊敬に値する教師だったんじゃろうな』


泣きそうになりながら、必死になってるよ……。


『この話は、お前に聞かせると言うよりは、自分に言い聞かせているんじゃろう』


自分もババァみたいな教師にってか?


あ~あ。


女の涙ってのは、嫌いなんだよな~。


【方法は思いつきましたか?】


どうにもならんかもしれんが、やらずに後悔するよりは……。


『まあ、何時も通りじゃな』


【はい】


****


する事のない俺は、警察署で遅れてきたババァから、ルーシー先生の家の場所を聞く。


そして、学園へかけ戻る。


まあ、生徒の方は俺がいなくても大丈夫だろうしね。


目的の物を持つと、警察署へととんぼ返り。


もちろん、本当の俺の全速力で。


俺が着いた時には生徒の両親も来ており、先生方の弁護のかいあって、厳重注意と言う事で釈放された。


俺が電話を受けてから、三時間後の話しだ。


挨拶もそこそこに走り出すルーシー先生について、モノレール停車地点へと向かった。


次の便までは後、一時間半……。


「さくら……」


その場でしゃがみ込むルーシー先生に、目隠しを渡す。


あっ! そういう趣味じゃないですからね!


「あの……。これは?」


「少しだけ、俺を信じて頂ければ……とびきりの手品をご覧致します」


俺の少々不適切な言葉に首を傾げながらも、ルーシー先生は眠るときに使用する目隠しをしてくれた。


そんなルーシー先生を……縛ります!


だから! 趣味に走ってるわけじゃありませんって!


【また、架空のプレイヤーですか……】


背負えるように改良した椅子に先生を固定すると、手品開始!


『手品でも何でもない、力技じゃがな』


手品ってのは、タネがあるんだよ!


【タネって言うより、ただ走ってるだけじゃないですか……】


今回は、これがベストじゃん!


これが早いじゃん!


「え……えっ? えっ?」


ふわりと浮くような感覚に、先生が背中で困惑している。


【今回は、わざわざ隠さなくてもいいのでは?】


面倒事に巻き込まれたくないんだよ。


『まあ、只でさえ巻き込まれるしのぉ』


****


空中を走ったおかげで、俺達は短時間で先生の家らしき場所に着いた。


てか……デカッ!


家デカッ!


ババァが行けばすぐ分かるって言ってた意味は、これか!


物凄く金持なのか?


「えっ!? あの……えっ!?」


目隠しをとったルーシー先生が、目を白黒させている。


「まあ、説明は後ほど……。今は急ぎませんか?」


「はっ! はい!」


説明なんかしませんけどね。


****


ええ~……。


ちょ! ええ~……。


何あれ?


『ドラゴンかのぉ?』

【オオトカゲですか?】


はい!


トカゲを採用します!


豪邸内に入った俺の目の前で、ルーシー先生はでっかい爬虫類に抱きついた。


これ、さくら?


ええ~……。


どんな趣味!?


こいつ、百パー人を捕食するって……。


飼っていい動物じゃないって。


「さくら! さくら! さくら! さくら! お願い! しっかり!」


獣医らしいおっさんが、残念ですがと言っている。


【餌を吐き戻して、一カ月近くまともに食事をしてないですか……】


流石に変温動物は、餌なしでも長生きするな……。


目立たない様に、さくらの腹部に手を当てた俺は……。


衝撃と魔力をソナーの様に反響させる。


うん?


これってもしかして……。


『多分……間違いないじゃろう』


方法は……。


あれしかないよね~……。


【まあ、復元も魔力を温存させるべきですから】


『お前、得意じゃろう?』


そうだけどさ~。


先生の見てる前でするのがちょっと……。


『なんじゃ? 見殺しか?』


はいはい。


やりますよ~。



大きなトカゲに俺が行った事……。


それは……。


ひっ……さ~つ!


『殺すな、アホ』


ボディィィィィブロォォォォォォォォ!


俺の拳が、数百キロはあるトカゲの体を浮かせた。


もちろん、その光景を周りのみんなが有り得ないものでも見た様にみている。


「シモンズさん……あなた……あなたは一体!」



「ビチャ……ドボドボッ!」


セェェェェェェェェフ!


俺が、ルーシー先生に怒鳴りつけられる一歩手前で、トカゲノドンが目的の物を吐きだしてくれた。


そして、ゆっくりと用意されていた餌を食べ始めた。


【今は、食べる事が必要と本能が反応したんでしょうね】


野生の生存本能ってのは、すごいね~。


吐しゃ物の一番上に、ボロボロになったデカイぬいぐるみが見える。


胃と腸の間に一か月もいたんだ、もう見れたもんじゃないけどね……。


『化学合成素材と言う、材質かのう?』


胃液でも、全く腐食してないな。


【あんなものが詰まってれば、食事は無理でしょうね】


『胃の内容物が、腐敗しておるな。あんなものが腹にたまれば、体調も悪くなるじゃろう』


この俺達の会話を聞いているかのような説明を、ヤブ医者がルーシー先生と家族らしき人達に説明している。


使用人さんらしき人達は、吐しゃ物の掃除をテキパキと……。


てか……。


使用人どれだけ雇ってるんだよ。


ルーシー先生の両親は、悪い事でもしてる人なのか?


【資産が多い人は、別に犯罪者だけではありませんよ】


トカゲノサウルスが、一息ついて眠り始めた。


一件落着! っと!


さて、引き上げるか……。


****


「あっ! 待って下さい! シモンズさん! 待って!」


見つかった!


怒られ……。


「有難う御座います! 何か……お礼を……」


なかった!


それどころか、お礼……。


貴女を……貴女の体を下さい……。


流石に無理だよね。


『当り前じゃ! 煩悩の塊が!』


じゃあ……。


裸を見たい?


う~ん……。


胸を揉ませて……。


【素直に帰りませんか? 人間の底辺さん?】


なっ!?


『そうするべきじゃぞ? クズ?』


酷っ!


まあ、そうしますよ~……。


「結構ですよ。飯も済ませましたしね」


「でも……」


「今日は遅いんで、もう引き上げます。ではでは……」


「あっ! お……お父様! お見送りしてきます!」


ついてきやがった~……。


モノレールなんて面倒だから、走って帰ろうと思ったのに。


【まあ、素直にモノレールの乗り場へ向かいましょう】


面倒だな……。


「私が小さい時に、自分で卵から孵したんです……」


ああ?


「それから、さくらとは姉妹のように過ごしてきました」


よく食べられませんでしたね……。


おいおい……。


勘弁してくれよ……。


女に泣かれるのは苦手なんだよ……。


俺の隣を歩いていたルーシー先生は、勝手にトカゲプトルの思い出を喋り出すと同時に、涙をこぼし始めやがった。


そんなに俺を困らせたいか?


****


喋るだけ喋った所で、ルーシー先生が泣き止んで俺に微笑みかける。


「すみません……。私はここで引き上げますね」


降りていた山道は、目的の乗り場までまだ半分も来ていない。


ただ単に、勝手に喋りたかっただけかよ……。


我がままじゃね?


「シモンズさんには、モノレールなんて不要ですよね?」


おおぅ?


「すみません。さっき、少しだけ目隠しを上げてしまいました」


ばれた。

『ばれたのぅ』

【ばれましたね】


「あっ! 大丈夫です。何か理由があるんですよね? 誰にも口外はしません」


セーフ。


『まあ、どの道困る事も無かったじゃろうし……』


【万事解決ですね】


「あの! あと……その……」


「なんですか?」


「先程……お食事の最中にお願いした事なんですが……」


ああ、クソビッチの件ですね。


「やっぱり無しにして下さい! じゃ! じゃあ! お休みなさい!」


そう言うと、先生は家へと走り出していた。


もともと、クソアマに興味はないけど……。


『意外な展開かのぉ』


友達にも紹介できないほど、怪しまれたぁぁぁぁぁぁぁぁ!


【ええ!? そう取りますか?】


やっちまったぁぁぁぁぁぁぁ!


『目隠しして縛った上に、空を走ってペットを殴りつける男じゃからな』


【賢者様! 悪意を感じますよ!】


『黙れ! 若造!』


ド……チクショォォォォォォォ!


酒だ!


強い酒ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!


学園の二百メートル先にある酒屋に……。


数分で着きました。


『こんなしょうもない場面で、亀裂骨折寸前まで走るな!』


****


酒を買い、学園へと戻る……。


時間は、もう日が変わる寸前だ。


あれ?


ダンジョンに明りが……。


マジか!?


まだやってたのか?


流石にオーバーワークだ。


「……うん……ぐすっ……ありがとう」


わおっ!


【青春の一ページですね~】


羨ましい……てか! 妬ましい!


怪我をして、膝をついているアルトくん。


その背中で泣いている、幼馴染の女の子。


転がっている、この前の告白失敗男とその他。


知らない間に、ドラマがあったんだろうな~。


やったね……アルトくん。


でも……。


『なんじゃ? 心狭男?』


俺が、こんな時じゃなくてもいいじゃん!


明日にしろよ!


気っ……分! 悪い!


【しかし、流石はあなたのお弟子さん。木剣で、真剣に勝ったんでしょうね】


当然だ。


あぁぁあっ、折角買ったのに。


【お酒はやめですね】


「えっ? 師匠」


アルトくんの怪我を復元し、馬鹿三人を担ぐ。


馬鹿共の怪我を見れば、技の練度がよく分かる。


『合格点じゃな』


今のアルトくんの状態から考えて、筋力の五割超を使えたんだろうな。


「師匠! あの!」


「鍵を閉めます。早く出て下さい」


ダンジョンの鍵を閉めた俺は、アルトくんに耳打ちをする。


「遅いですから、彼女をしっかり送って行ってあげて下さいね」


「はい……あの!」


「合格です、アルトくん。よくやりました」


ガキ二人を見送った俺は、馬鹿三人の家に電話をして……。


宿直室で、尋問後……。


うけけけっ……。


三人は、二度と馬鹿な事はしないと約束してくれたので解放した。


そして、少しだけ修練をしてその日は眠りました。


いい……気晴らしが出来たよ。


『クズ』【底辺】


****


翌日も、庭園の水やりから一日が始まる。


今日も、いい天気だ。


うん!


今回は、時間がくるまで平和に過ごせそうだ。


平和っていいな~。


そして、俺の用務員ライフは何事もなく続く。



なんて俺の都合がいい事なんて、この世には無いらしい。


ああああああ!


こぉぉぉんちぃぃくしょぉぉぉぉぉ!


はぁ……。


やってらんね~……。

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