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聖手のマッサージ師13-24話

聖手のマッサージ師13-24話です。

# ================================================================================

    『癒しの手、貴族の心』

    ~未亡人サロンのマッサージ師~

    アニメ全24話 完全台本 Vol.3(第13話〜第18話)


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      第 13 話

 「サロン・フルールを、守れ」


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【シーン①:院長室 朝 (廃業の噂)】

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朝。ライアンとギャスパールが院長室に呼ばれている。

ソランジュが静かに、でも緊張した様子で二人に向かい合っている。


ソランジュ:

「二人に、正直に話します。

 このサロン・フルールは、現在、存続の危機にあります」


ライアン:(驚いて)

「え……!?」


ソランジュ:

「このサロンの運営は、王国貴族後援協会からの資金援助に支えられていました。

 しかし……協会の新しい理事長が就任し、方針が変わった。

 『未亡人貴族のためのサロンは不要』という意見が出始めて……

 来月中に存続の審査があります。

 審査をパスできなければ、閉鎖です」


ギャスパール:(顔色が変わって)

「……どういう審査ですか?」


ソランジュ:

「サロンの社会的価値の証明です。

 お客様の心身の改善状況、地域への貢献、継続利用者の満足度……

 それらを書類と、審査員の視察で判断されます」


ライアン:(静かに、でも力強く)

「……僕たちに、できることはありますか?」


ソランジュ:(ライアンを見て、少し目を和らげて)

「ライアン。あなたには、お客様との信頼関係を深め続けてほしい。

 それが、このサロンの一番の証明になります。

 あなたの施術を受けた方々の声が……何よりの根拠になる」


ライアン:(きゅっと拳を握って)

「……わかりました。やります」


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【シーン②:廊下 (ヒロインたちに伝わる噂)】

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その日の午後。ヒロインたちの間にも噂が伝わってくる。

待合室でアデライド、マドレーヌ、イザベルが集まっている。


マドレーヌ:(静かに)

「……サロンが閉まる可能性があるの?」


イザベル:(腕を組んで)

「そんなことになったら……承知しないぞ。

 ここのおかげで、どれだけ助けられたと……」


アデライド:(静かに、でも目に力が入って)

「……協会の理事長に、話を通せる伝手はあります。

 ただ……それだけでは不十分かもしれない。

 お客様全員が声を上げることが、一番の力になる」


マドレーヌ:

「では……みんなに話しましょう。

 このサロンを守るために、私たちができることをしましょう」


イザベル:(立ち上がって)

「よし! 俺が他のやつらに声をかけてくる!」


アデライド:(少し間があって、ぽつりと)

「……ライアンには、言わないでおきましょう。

 あの子に余計な心配をかけたくない」


マドレーヌ:(穏やかに微笑んで)

「……あなたらしくない言い方ですね、アデライド」


アデライド:(すっとそっぽを向いて)

「……何が、ですか」


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【シーン③:施術室 (ライアン、全力施術)】

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翌日から、ライアんは全力で施術に臨む。

一人ひとりとの時間を、今まで以上に丁寧に。


セレスティアの施術では——

セレスティア:(施術を受けながら、ぽーっとして)

「……ライアン……最近、なんかいつもより真剣な顔してる?」


ライアン:(苦笑いして)

「そうですか? いつも真剣ですよ」


セレスティア:(じっと見て)

「……なんか……頑張ってるって、体から伝わってくる気がする」


ライアン:(少し驚いて)

「……夫人も、体で感じ取るんですね」


セレスティア:(にこっとして)

「……だって、ライアンの手があたたかくて……

 今日は特に、その温かさが伝わってきて……(ぽわっと顔を赤くして)

 ……なんか、守られてる気がして……」


ライアン:(胸に刻むように)

「……守ります。ちゃんと」


セレスティア:(ぽーっとしたまま)

「……うん……(うとうとしながら)守って……ね……zzzz」


ライアン:(また寝てしまったセレスティアを見て、くすっと笑う)


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【シーン④:ラッキースケベ⑪ 審査前夜の大混乱】

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審査の前日。サロンでは大掃除と準備が行われている。

ライアンが資料を抱えて走っていると——


廊下の向こうから、大きな花瓶を両手に抱えたセレスティアとソフィーが同時に走ってくる。


ライアン:「あ、二人とも前——!」


セレスティア:「あっ!」 ソフィー:「あっ!」


三人、廊下の中央で大玉突き衝突。

花瓶は奇跡的に割れないが、水がどばーっと廊下に広がり、

ライアンが資料を守ろうとして床に滑って——


ずるっ!


ライアン:「わあっ!!」


アデライドが廊下の角から現れて、滑ってくるライアんを見て——

反射的に手を伸ばし、受け止める。


二人、そのまま壁に寄りかかった状態になる。

ライアんの手がアデライドの腕をつかんでいる。

アデライドの手がライアんの肩を支えている。


距離、ほぼゼロ。


セレスティア:(水浸しの廊下から)

「……お二人、大丈夫?」(ぽーっと二人を見ている)


ソフィー:(花瓶を抱えたまま、にやにやして)

「……なんか……いい感じ……」


ライアン:(アデライドと目が合ったまま、固まって)

「……す、すみません……!」(慌てて離れる)


アデライド:(顔を赤くして、でもツンとして)

「……掃除の最中に走らない。基本です」


ライアン:「はい……!!」


アデライド:(去りながら、ほんの小声で)

「……怪我はない?」


ライアン:(聞こえて、また赤くなって)

「……ないです。ありがとうございます……!」


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【シーン⑤:審査当日 (感動のクライマックス)】

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審査の日。協会から二名の審査員がサロンにやってくる。

厳しい表情の中年男性二人組。

サロン内を見回り、書類を確認し、施術室を視察する。


審査員A:(冷たく)

「未亡人の憩い場、ということで登録されていますが……

 実際のところ、施術と雑談を提供しているだけでは?

 社会的価値の証明としては不十分では」


ソランジュ:(静かに、でも堂々と)

「私どものサロンが提供するのは、施術という形を通じた、

 心身の統合的ケアです。

 技術だけではなく……ここに来られる方々の心に、安全な場を作ること。

 それが我々の役割です」


審査員B:(書類をめくりながら)

「実績は? 数字で示せますか?」


ソランジュ:(少し間があって)


その時——扉が開いて、アデライドが入室してくる。


アデライド:(審査員たちの前に立って、凛と)

「審査員の方々。一つ、発言をお許しいただけますか。

 私はヴァルモン公爵夫人。このサロンの利用者の一人です」


審査員A:(驚いて)

「公爵夫人……これは」


アデライド:(淡々と、でも確かな言葉で)

「半年前の私は、外に出ることも、人と話すことも、

 呼吸することさえ重たかった。

 夫を亡くし、感情を封じることで生きていた。

 ……このサロンに来て、一人の施術師と出会って、

 その状態が変わりました。

 数字では測れないものを、数字で測ることの愚かさを、

 私はここで学びました」


審査員たちが押し黙る。


そこに——マドレーヌが入ってきて、

「私も話させてください」と続き、次にイザベル、レティシア、セレスティア——

次々に利用者たちが部屋に入ってくる。


全員で、それぞれの言葉でサロンを語る。

エルミーヌが小さな声で「……ここに来るまで、ちゃんと話せる場所が、なかった……」と言い、

ヴィオレットが「私の詩集は、ここで取り戻した言葉から生まれました」と言い、

フランシーヌが「弱いところを見せても、受け止めてもらえる場所は、ここしかない」と言う——


室内の空気が変わっていく。


ライアン:(廊下から扉の外で聞いていて、目に熱いものが込み上げてくる)


審査員A:(しばらく沈黙して)

「……わかりました。私どもの判断を、改めます」


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「審査が終わって、サロンは存続が決まりました。

 でも……それよりも。

 みなさんが、あんなふうに話してくれたことが……

 正直、涙が出そうになりました。

 アデライド夫人が最初に立ち上がってくれたこと。

 それを見た時に……なんか……もう、気持ちを誤魔化せなくなってきた気がします」


次回予告:

「第14話! クロエ夫人からの意外な告白!?

 そしてライアンが初めて、ある人に気持ちを打ち明けそうになる……!

 『策士の涙と、言いかけた言葉』!」


                   【第13話 了】


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      第 14 話

 「策士の涙と、言いかけた言葉」


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【シーン①:施術室E (クロエとの深い施術)】

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施術室。クロエが横になっている。

いつもの妖艶な雰囲気が今日は少し違う。どこか静かで、疲れた顔をしている。


ライアン:(肩に手を当てて)

「……今日は、いつもより硬いですね」


クロエ:(少し間があって)

「……ええ。昨日、少し疲れることがあって」


ライアン:(施術しながら、静かに待つ)


クロエ:(しばらくして)

「……審査の日、みんなが話しているのを見て……

 私は結局、何も言えなかったの」


ライアン:(少し驚いて)

「え? でも夫人は廊下から——」


クロエ:

「部屋に入れなかった。

 ……ああいう場で、本音を話すことが……私にはできない。

 みんなが堂々と話しているのを、廊下で一人聴いていた」


ライアン:(施術を続けながら)


クロエ:(静かに、計算ではなく本音で)

「……ずっと計算して生きてきたから。

 素直に何かを言うことが……怖くなっていた。

 感情を出すと、利用される。そう学んできたから。

 でも……あの場面を見て、みんなの言葉を聴いて……

 私だけが、何かを失ったままだと思った」


ライアン:(手を止めずに、穏やかに)

「……でも、夫人はここに来続けてくれていますよ。

 それも、一つの言葉だと思います」


クロエ:(少し間があって)

「……施術師らしくない慰め方ね」


ライアン:

「そうですか?」


クロエ:(くすっと笑って、でも目が少し潤んで)

「……ライアン。一つだけ、正直に言っていい?」


ライアン:

「はい、どうぞ」


クロエ:(ゆっくりと、はっきりと)

「……あなたのことが、好きよ」


ライアン:(手が一瞬だけ止まる)


クロエ:(続けて、淡々と)

「ただ……これは告白ではないわ。

 確認。私がこういう感情を持てるようになったということの、確認。

 あなたは答えなくていい。

 ただ……聞いてほしかっただけ」


ライアン:(しばらく静かに施術を続けて、それから穏やかに)

「……聞きました。ちゃんと」


クロエ:(目を閉じて、ほうっと息をついて)

「……ありがとう。それだけで十分よ」


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【シーン②:ラッキースケベ⑫ 図書室の逢瀬(?)】

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施術後。夕方のサロン図書室。

ライアンが一人でヴィオレットの詩集を読んでいる。


そこへクロエが入ってくる。

クロエは気づかずに奥の棚へ。

ライアンが本の陰から声をかけようとした時——


クロエが背伸びして棚の本を取ろうとして、

バランスを崩してライアんの方に倒れかかってくる。


ライアン:(咄嗟に立ち上がって支えたが)

「きゃっ」という声とともにクロエがライアんの胸に収まる形になってしまう。


しばしの沈黙。


クロエ:(ライアんの胸元から、扇で口元を隠しながら)

「……あら。計算外だったわ」


ライアン:(真っ赤で固まって)

「だ、大丈夫ですか……!?」


クロエ:(ゆっくりと体を起こしながら)

「……ええ。おかげさまで」(扇の向こうで少し笑っている)


ライアン:(離れながら、顔が茹で上がっている)


クロエ:(そっと本を取ってライアんを見て)

「……さっきの話は忘れていいわよ」


ライアン:(まっすぐに)

「……忘れません」


クロエ:(少し驚いた顔で、でも微笑んで)

「……あなた、本当に嘘が下手ね」


ライアン:「よく言われます」


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【シーン③:屋上テラス 夜 (ギャスパールへの打ち明け話)】

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夜の屋上。ライアんがぼーっと星を見ている。

ギャスパールが缶に入ったミルクティーを二つ持って現れる。


ギャスパール:(一つ渡しながら)

「顔に書いてあるぞ」


ライアン:

「何がですか」


ギャスパール:

「『悩んでいます』って。

 ……誰かに気持ちが傾いてるのか?」


ライアン:(飲みながら、少し間があって)

「……施術師として、感情を持ち込んではいけないって、わかってるんです。

 でも……気づいたら……」


ギャスパール:

「誰だ?」


ライアン:(しばらく黙って空を見て)

「……全員、なんです」


ギャスパール:(少し目を丸くして)

「全員……?」


ライアン:(困ったように笑って)

「みんなそれぞれに、大切だと思う気持ちがあって……

 誰か一人、というわけじゃなくて……

 でも……その中で……ある人のことが、少しだけ……

 違う形で、頭から離れなくて……」


ギャスパール:(にやりとして)

「で、その人は?」


ライアン:(言いかけて、止まって、また言いかけて——首を振って)

「……まだ、言えない気がします」


ギャスパール:(肩をすくめて)

「まあいい。でも……お前が悩むのは、お前がちゃんと人間だからだぞ。

 施術師だからって、感情を消す必要はない。

 ただ……正直に向き合い続けることが大事だ」


ライアン:(静かに受け取って)

「……はい」


ギャスパール:(立ち上がりながら)

「ちなみに……俺の目には、誰かわかってるけどな」


ライアン:(驚いて)

「え!? わかるんですか!?」


ギャスパール:(にやにやしながら去りながら)

「お前、その人の話をする時だけ、声のトーンが変わるんだよ」


ライアン:(一人残されて、星を見て)

「……声のトーン……」


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【シーン④:深夜の廊下 (ライアンとアデライドの偶然の出会い)】

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深夜。眠れないライアンが水を飲みに厨房へ向かう廊下で——

同じく眠れないアデライドと鉢合わせる。

二人とも私服(寝間着に近い格好。アデライドはシンプルなワンピース)。


アデライド:(ライアんを見て、少し驚いて)

「……眠れないの?」


ライアン:(同じく驚いて)

「は、はい……。夫人も?」


アデライド:(少し間があって)

「……ええ」


二人、廊下の窓のそばに自然と立つ。

月明かりが廊下に差し込んでいる。


アデライド:(窓の外を見ながら)

「……今日のことを考えていた」


ライアン:

「審査のことですか?」


アデライド:(少し間があって)

「……あなたに、なぜ話したのか……考えていた。

 あの場所に立った時、伝えたいことが口から出てきた。

 私がああいう形で感情を人前で話したのは……初めてだったから」


ライアン:(静かに聴いている)


アデライド:

「……あなたが来てから、私は変わった。

 それが……怖いのと……嬉しいのと……両方、ある」


ライアン:(月明かりの中のアデライドを見て、胸がいっぱいになって)

「……僕も、です」


アデライド:(少し驚いて、ライアんを見て)

「……何が?」


ライアン:(一瞬迷って、でも正直に)

「……夫人に会うたびに、嬉しくなります。

 施術師として以上に……嬉しい。

 それが……正しいのかどうか、まだわからなくて」


アデライド:(ゆっくりと、月明かりの中で)

「……わからないままでいいと思います。

 私も……わからないから」


二人、しばらく月を見る。


アデライド:(静かに)

「……おやすみなさい、ライアン」


ライアン:(胸がいっぱいのまま)

「……おやすみなさい」


アデライドが去っていく。

ライアンが一人、月明かりの廊下に立って——


「……やばい。本格的にやばい」


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「クロエ夫人が正直に話してくれたこと。

 ギャスパールさんの言葉。

 そして……深夜の廊下でのアデライド夫人との会話。

 全部が、頭の中でぐるぐる回っています。

 施術師として感情を整理しないといけない——そう思えば思うほど、

 心が勝手に動いていく。

 ……僕、どうしたらいいんだろう」


次回予告:

「第15話! ソフィー夫人との2度目のデートで告白未遂!?

 レティシア夫人の本気の涙が溢れる感動回!

 『本音と涙、それから』!」


                   【第14話 了】


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      第 15 話

 「本音と涙、それから」


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【シーン①:王都 市場通り (ソフィーとの2度目のデート)】

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外気浴プログラム、ソフィーとのお出かけ。

市場の通りを並んで歩く。前回より二人の距離が自然に近い。


ソフィー:(串刺しフルーツを食べながら)

「ねえ、ライアン。最近なんか悩んでる顔してるよ」


ライアン:(少し驚いて)

「そんな顔してますか……」


ソフィー:(ずいっと顔を近づけて、じろじろ見て)

「してる! 目が少し遠いもん」


ライアン:(苦笑いして)

「……実は、少し複雑なことがあって」


ソフィー:(歩きながら、真剣に聴く顔になって)

「話して?」


ライアン:(言葉を選びながら)

「……担当の方々のことが、とても大切で。

 でも……施術師として、どこまで感情を持ち込んでいいのか……

 ちゃんとした距離感を保てているのか……」


ソフィー:(しばらく考えて、ぽつりと)

「……ライアンは、私に対してもそう思ってる?」


ライアン:(一瞬止まって)

「えっ……」


ソフィー:(立ち止まって、ライアんを見て)

「私、ライアンのこと……大好きだよ。

 担当さんとか関係なく。

 人として、ちゃんと、大好き」


ライアン:(胸を打たれて)

「……ソフィー夫人……」


ソフィー:(照れながらも、まっすぐに)

「でも……これが恋かどうかわからない。

 夫のことをちゃんと愛したこともないまま亡くして……

 恋ってどういうことか、まだよくわからなくて。

 ただ……ライアンと一緒にいると、ご飯が美味しくなるし、

 空がきれいに見える。……それって、何かなって」


ライアン:(静かに、でも温かく)

「……それで十分だと思います。

 名前をつけなくていい気持ちも、ある」


ソフィー:(少し目が潤んで、でもにこっと笑って)

「……そっか。じゃあこのままでいい?

 ライアンのそばにいること……許してもらえる?」


ライアン:(まっすぐに)

「……もちろんです。ずっといてください」


ソフィー:(わあっと元気に笑って)

「やった!! じゃあ今日のご飯は私が奢るよ!!

 あそこの屋台、全部制覇しようよ!!」


ライアン:(笑いながら)

「全部は無理ですよ!!」


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【シーン②:ラッキースケベ⑬ 市場の人混みで】

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市場の混んだ通りを歩く二人。

人込みの中でソフィーが人波に押されてよろけて——

ライアんの腕にしがみつく形になる。


ソフィー:(ライアんの腕にくっついたまま、きょとんとして)

「……腕、硬い」


ライアン:(真っ赤になって)

「施術師なので……!!」


ソフィー:(そのまま腕を組む形で歩き始めて)

「じゃあこのまま歩こ。人が多いから危ないし」


ライアン:(固まって)

「え……えっと……」


ソフィー:(にこにこして前を向いたまま)

「ライアン、硬直してる。ほぐしてあげようか?(冗談)」


ライアン:「ほぐさなくていいですぅ……!!」


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【シーン③:施術室G (レティシアの本気の涙)】

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夕方。レティシアの施術。

今日は珍しく、最初からずっと静かだ。


ライアン:(施術しながら、少し心配になって)

「……今日、静かですね」


レティシア:(少し間があって)

「……うるさいのが普通なの?」


ライアン:(苦笑いして)

「夫人はいつも元気なので……あ、どちらも好きですよ」


レティシア:(また黙って、施術が続く)


しばらくして——


レティシア:(ぼそっと)

「……ライアン」


ライアン:

「はい?」


レティシア:(ゆっくりと、言葉を絞り出すように)

「……夫のお墓に、行ってきたの。

 今日、初めて。

 ……なんて言えばいいのかわからなくて、ずっと立ってた。

 でも……立っていたら……急に、泣けた。

 大声で泣いた。初めて……」


ライアン:(施術の手は止めずに、静かに)


レティシア:(声がほんの少し震えて)

「……何で泣けたのかわからないけど……でも……泣いたら……

 少し、楽になった。

 あなたが言ってた通りだった。

 悲しんでもいいって……ちゃんと悲しんでいいんだって……」


ライアン:(穏やかに)

「……良かった」


レティシア:(声が小さくなって)

「……ありがとう。……あなたが言ってくれなかったら、

 ずっと、泣けないままだったと思う」


ライアン:(胸がいっぱいになって、でも平静に施術を続けながら)

「……レティシア夫人が、ちゃんと向き合ったからですよ。

 僕は何もしていない」


レティシア:(静かに、涙をそっと拭いながら)

「……もう、そういうこと言わないで。

 あなたのせいなの。あなたが変えたの。……だから……素直に受け取って」


ライアン:(少し間があって、静かに)

「……はい。受け取ります」


レティシア:(深呼吸して、少し肩の力が抜けて)

「……ばか」


ライアン:(くすっと笑って)

「……はい」


   〔BGM:静かなピアノ〕

   廊下の窓に、夕焼けが静かに広がっていた。


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【シーン④:夜 サロン談話室 (マドレーヌとの語らい)】

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夜の談話室。マドレーヌがハーブティーを二つ持って、ライアんを待っていた。


マドレーヌ:(一つ渡しながら)

「座って。少し話しましょう」


ライアン:(座りながら)

「何かありましたか?」


マドレーヌ:(穏やかに、でも真剣に)

「あなたのことが心配なの」


ライアン:

「……僕が?」


マドレーヌ:

「みんなの気持ちをずっと受け止め続けて……

 あなた自身は、誰かに気持ちを預けていますか?」


ライアン:(少し沈黙して)

「……ギャスパールさんには、少し話しています」


マドレーヌ:

「それは良かった。……でも、私にも話してほしい。

 ライアン、あなたは誰かが好きでしょう。気づいていますか?」


ライアン:(驚いて、顔が赤くなって)

「ま、マドレーヌ夫人……!」


マドレーヌ:(くすっと笑って)

「隠さなくていいわよ。私は……もう少し先にいる人間だから。

 夫を愛して、失って、また誰かを好きになることの怖さも、

 少しずつわかってきたから。

 ……あなたが誰かを好きになることは、正しいことよ」


ライアン:(少し目が潤んで、でも笑って)

「……マドレーヌ夫人って……お姉さんみたいですね」


マドレーヌ:(少し頬を染めて)

「……お姉さん。……そうね(ちょっとだけ複雑な顔で)」


ライアン:(気づかずに)

「尊敬してます、本当に。こんなに温かい人……」


マドレーヌ:(お姉さんとして終わることへの微妙な表情を笑顔で隠して)

「……ありがとう。……じゃあそのお姉さんとして言うけれど。

 好きな人には、ちゃんと向き合いなさい。

 後悔は……置いていったら重くなるから」


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「ソフィー夫人の言葉、レティシア夫人の涙、マドレーヌ夫人の真剣な顔。

 みんなが、それぞれの形で前へ進もうとしている。

 だから僕も……ちゃんと、自分の気持ちと向き合わないといけない気がする。

 でも……15人全員が大切で、その中でも……ある人への気持ちが特別で。

 それを認めることが、他の誰かを傷つけることになるのかって……

 そこが、まだ怖い」


次回予告:

「第16話! フランシーヌ夫人との再び雷雨の夜! 

 イザベル夫人が男泣き(?)する感動シーン、そしてテレーズの大外れ予言が引き起こす騒動!

 『嵐の夜に、もう一度』!」


                   【第15話 了】


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      第 16 話

 「嵐の夜に、もう一度」


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【シーン①:テレーズの大外れ予言】

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朝。テレーズがライアんを廊下で呼び止める。


テレーズ:(神秘的な顔で)

「ライアン。今日の星は告げています。

 今日は一日、何も起きない穏やかな日になるでしょう」


ライアン:(少し意外で)

「珍しくシンプルな予言ですね」


テレーズ:(うなずいて)

「時に星は沈黙する。穏やかな日こそ、星の恵み」


ライアン:(わかったような顔で)

「……なるほど」


その2時間後——サロンのキッチンでナタリーが爆発的なシュークリーム製造事故を起こし、

廊下の大理石になぜかリス一匹が迷い込んで大騒ぎになり、

アンジェリカが「実験です!」と叫びながらそのリスを追いかけ、

イザベルが「捕まえてやる!」と走り回り、

リーゼが泣き笑いで記録を取り——


サロン全体が大混乱に陥る。


廊下の端でテレーズがその様子を見ながら、

静かにノートを取り出して「星の読み方 修正版」と書いている。


ライアン:(ぐったりしながらテレーズに近づいて)

「……穏やかな日では?」


テレーズ:(澄ました顔で)

「星が間違うことはありません。

 私の解釈が……少々ずれていただけです」


ライアン:「解釈が全てでは……!?」


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【シーン②:施術室 (イザベルの感動シーン)】

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午後の施術。イザベルが台に横になっている。


ライアン:(施術しながら)

「……最近、どうですか?」


イザベル:(少し間があって)

「……お墓に行ってきた」


ライアン:(手を止めずに、聴く)


イザベル:

「レティシアも行ったって聞いて……俺も、ちゃんと行かないとって思って。

 ……行ったら、何もうまく言えなかった。

 ただ、木剣を持ってったんだ。あいつが好きだったから。

 置いてきた」


ライアン:(穏やかに)

「……それで十分だと思います」


イザベル:(少し間があって、声がかすれて)

「……なあ。泣いていいって言ったよな、前に」


ライアン:

「はい」


イザベル:(くっと奥歯を噛んで、でも目から涙が流れて)

「……今……泣いていいか……?」


ライアン:(施術を止めて、そっとイザベルの肩に手を置いて)

「……はい。いくらでも」


イザベルが、声を上げずに泣いた。

涙が施術台に落ちる音だけが、静かな施術室に響いた。

ライアんは何も言わずに、ただそこにいた。


しばらくして——


イザベル:(鼻をすすって、むっとした顔に戻りながら)

「……見るなよ」


ライアン:(前を向いて、施術を再開しながら)

「……見ていません」


イザベル:(またしばらくして)

「……ありがとうな。相棒」


ライアン:(静かに微笑んで)

「……こちらこそ」


   〔BGM:静かなギターのアルペジオ〕


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【シーン③:夜 再び嵐 (フランシーヌとの再会)】

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夜。再び激しい雷雨がサロンを包む。

ライアんが廊下を歩いていると——第6話と同じ部屋から「ヒッ……!」という声。


ライアン:(止まって、少し笑いながら、ノックして)

「……フランシーヌ夫人。お茶でもしませんか」


しばらく沈黙。


フランシーヌ(扉の向こうから):

「……別に、怖くはないわよ」


ライアン:

「もちろんです」


フランシーヌ:

「……仕方ないから、付き合ってあげる」


がちゃっとドアが開く。

今回は、少し早かった。


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【シーン④:廊下のソファ (フランシーヌの本音)】

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廊下のソファ。お茶を持ってきたライアん。

前回と同じ場所、同じ光景——でも今回、フランシーヌは最初から少し素直だ。


ドーン!!(雷)


フランシーヌ:(今回は思いっきりライアんの腕にしがみついて)

「ッ……!!」(すぐに離れて)「……見た!?」


ライアン:(慌てて前を向いて)

「見ていません!」


フランシーヌ:(ふうっと深呼吸して、少し笑って)

「……前回より反応が速くなったわね、あなた」


ライアン:(苦笑いして)

「学習しました……」


フランシーヌ:(お茶を飲みながら、静かに)

「……実は、前回のことを覚えていたの。

 肩を借りて眠ってしまったこと。

 起きたら毛布がかかっていて……ちゃんと覚えている」


ライアン:(少し驚いて)

「……そうですか」


フランシーヌ:(目を細めて)

「……あの毛布、誰が?」


ライアン:(一瞬だけ止まって、まっすぐに)

「……院長が準備してくれていたやつを、お借りしました」


フランシーヌ:(少し間があって、くすっと笑って)

「……嘘が下手ね、あなた」


ライアン:(苦笑いして)

「……よく言われます」


フランシーヌ:(静かに、でも確かに)

「……ありがとう。あの夜も。今夜も」


ドーン!!(また雷。今度はフランシーヌが少しだけライアんの方に傾く——でも今回は離れない)


フランシーヌ:(ぽつりと)

「……このくらいなら許して」


ライアン:(固まりながら、でも静かに)

「……はい」


   〔BGM:雨音と、遠ざかる雷の音〕


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【ラッキースケベ⑭ 嵐の夜の珍事】

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しばらくして。廊下の明かりがふっと消える(嵐で停電)。


フランシーヌ:(真っ暗になって)

「っ!!」(反射的にライアんにしがみつく)


ライアン:(真っ暗の中で固まって)

「大丈夫です! すぐ復旧するはずで……」


フランシーヌ:(暗闇の中で、かなり密着した状態で、声だけ)

「……み、見えない。怖い」


ライアン:(声だけで)

「大丈夫ですよ……すぐ……」


数秒後、明かりが戻る。


二人の状況が明かりの中で判明。

フランシーヌがライアんの胸元に顔を埋め、腕にしがみついている。


フランシーヌ:(明かりが戻った瞬間、状況に気づいて猛スピードで離れて)

「み、見るな!! 停電のせいよ!! 停電!!」


ライアン:(顔が真っ赤で前を向きながら)

「はい!! 停電のせいです!!」


フランシーヌ:(顔を真っ赤にしたまま、毅然と立ち上がって)

「……お茶、美味しかったわ。おやすみ」(走って部屋に戻る)


ライアン:(廊下に一人残されて、真っ赤なまま)

「……おやすみなさい……」


廊下の窓に雨の雫が流れていく。


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「テレーズ夫人の予言がこれほど外れた日は初めてでした。

 ……いや、外れてないか。あの日のリス騒動も、嵐の夜の停電も、

 全部が大事な一日だったかもしれない。

 イザベル夫人の涙は、今でも胸に刺さっています。

 フランシーヌ夫人は……今日もきっと覚えていて、明日の朝また凛々しい顔をするんだろうな。

 ……好きだな。みんなが、本当に好きだ。

 その気持ちを、どう整理したらいいか。

 もうすぐ、決めないといけない気がしている」


次回予告:

「第17話! ヴィオレット、エヴリン、エルミーヌ——三人それぞれの転機!

 そして……ライアンに、決定的なある出来事が訪れる。

 『静かな夜に落ちてくる、答え』!」


                   【第16話 了】


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      第 17 話

 「静かな夜に落ちてくる、答え」


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【シーン①:施術室F (ヴィオレットの変化)】

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施術室。ヴィオレットが横になっている。

今日は目を閉じている——初めて、自ら目を閉じている。


ライアン:(気づいて、嬉しくなりながら施術を始める)


しばらくして——


ヴィオレット:(目を閉じたまま、静かに)

「……詩集が、増刷になりました」


ライアン:(驚いて)

「え!? すごい!!」


ヴィオレット:(かすかに微笑んで)

「……ありがとう。

 本当は……誰かに言いたくて、来るのが早くなってしまった」


ライアン:(嬉しそうに)

「誰かに言いたくて——って、真っ先に来てくれたんですか?」


ヴィオレット:(少し頬を赤くして)

「……それだけではないけれど……」


ライアン:(施術しながら)

「詩、もう新しいのも書いていますか?」


ヴィオレット:(目を開けて、天井を見ながら)

「……書いています。最近は……特定の人のことを書いていて」


ライアン:(きょとんとして)

「どんな人ですか?」


ヴィオレット:(少し間があって、ライアんを横目で見て)

「……読めばわかります。次の詩集に載せますから」


ライアン:(素直に)

「楽しみです。絶対読みます」


ヴィオレット:(静かに微笑んで)

「……あなたはいつも、ちゃんと楽しみにしてくれる。

 それが……どれだけ嬉しいか、言葉にできないほど」


ライアン:(少しだけ、胸が跳ねる感覚があって)


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【シーン②:サロン中庭 (エヴリンが初めて外で歌う)】

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昼。サロンの中庭に、ふわっと歌声が流れてくる。

誰もいないと思っていた庭で、エヴリンが薔薇の前に立って歌っている。

今まで室内のみだったが——初めて、外で、空の下で歌っている。


ライアんが気づいて、離れた場所で足を止める。


透き通った歌声が空に向かって伸びていく。

薔薇が風に揺れる。


歌が終わって——


エヴリン:(振り返ってライアんに気づいて)

「……っ!! また……聞いてた!!」


ライアン:(今度は慌てずに、真剣に)

「……すみません。でも……止められなくて」


エヴリン:(顔が赤いけれど、怒れなくて)

「……外で……初めて歌えました。

 空の下で歌っていいんだって……思えたのは……あなたが言ってくれたから」


ライアン:(目が熱くなって)

「……良かったです。本当に、良かった」


エヴリン:(少しだけ大きな声で)

「……また……聞いてほしいです。外で歌う時。

 ライアンさんに聴かせたいです、一番に」


ライアン:(まっすぐに受け取って)

「……はい。いつでも呼んでください」


エヴリン:(ぱっと顔を輝かせて)

「……約束ですよ」


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【シーン③:施術室D (エルミーヌの成長)】

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エルミーヌの施術。

最初の頃とは全く違い——施術台に自分から横になっており、

緊張はあるが、笑顔がある。


エルミーヌ:(少し声が大きくなって)

「……今日ね、待合室でマドレーヌさんとお話ししました」


ライアン:(嬉しくなって)

「本当ですか! エルミーヌ夫人から話しかけたんですか?」


エルミーヌ:(少し誇らしそうに、でも恥ずかしそうに)

「……うん。勇気出して……。マドレーヌさん、すごく優しくて……

 なんか、うまく話せたかはわからないけど……でも、楽しかった」


ライアン:(心から)

「……すごいです。エルミーヌ夫人」


エルミーヌ:(ぽそっと)

「……あなたが「ここにいる」って言ってくれたから。

 ここに来るたびに、少しずつ……外に出られる気がしてきた」


ライアン:(施術しながら、穏やかに)

「エルミーヌ夫人が頑張ったんですよ、ちゃんと」


エルミーヌ:(少し考えて)

「……ライアンさん」


ライアン:

「はい?」


エルミーヌ:(ぼそっと、でも確かに)

「……すきです」


ライアン:(手が一瞬だけ止まって)

「え……?」


エルミーヌ:(顔が真っ赤になって、枕に顔を埋めながら)

「……ちゃんと言えた……もういい……(ぐっと丸くなる)」


ライアン:(顔が赤くなりながらも、穏やかに)

「……ありがとうございます。僕も、エルミーヌ夫人のことが大切です」


エルミーヌ:(枕の中から、ぽそっと)

「……それで、十分……(もごもご)」


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【シーン④:ラッキースケベ⑮ エルミーヌの大爆発】

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施術後の廊下。エルミーヌが一人でうきうきしながら歩いていると——

角からライアんが現れて鉢合わせ。


エルミーヌ:(驚いて、思いっきり後ずさり、背後の扉にぶつかって扉が開き——)


ドスン!!


扉の向こうは物置部屋で、洗濯籠やリネン類が山積みになっており、

エルミーヌが突入して雪崩が発生。

タオルやシーツがエルミーヌの頭の上に次々に降り積もる。


ライアン:(慌てて助けに入る)

「エルミーヌ夫人!!」


タオルの山を掘り進んだら——エルミーヌがシーツを被ったまま座って固まっている。


エルミーヌ:(シーツ被りながら、ぼそっと)

「……好き告白した30秒後に埋まりました……」


ライアン:(笑いを堪えきれず、ぷっと吹き出す)


エルミーヌ:(シーツの下から)

「……笑ってる」


ライアン:(笑いながら)

「……ごめんなさい。でも……可愛かったです」


エルミーヌ:(シーツの中で、ぽすっと顔を埋めて)

「……ふへへ……(小声)」


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【シーン⑤:夜 屋上 (ライアンに落ちてくる答え)】

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深夜の屋上テラス。

ライアんが一人、星を見ている。


ライアン:(独り言)

「……全員、大切だ。

 セレスティア夫人の無邪気さも、イザベル夫人の強さも、

 エルミーヌ夫人の小さな勇気も、ヴィオレット夫人の言葉も、

 エヴリン夫人の歌声も……全部、好きだ。

 でも……」


頭の中に、月明かりの廊下のアデライドが浮かぶ。

白薔薇を持っていた横顔。

「今日くらいは、ただのライアン・ソルベールとして」と言った声。

審査の場で真っ先に立ち上がった背中。


ライアン:(静かに、でも確かに)

「……アデライド夫人のことが……特別だ」


その言葉を、初めて声に出した。

夜風に混じって、空に溶けていく。


ライアン:(胸に手を当てて)

「……施術師として間違っているかもしれない。

 でも……認めないでいることの方が、ずっと間違っている気がする」


星が、静かに輝いている。


ライアン:(空を見上げて、少し笑って)

「……テレーズ夫人の言った『十五の運命の中の一つが決定的に変える』——

 それが、これか……」


   〔BGM:静かなバイオリンのソロ〕


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「声に出したら、不思議と……怖くなかった。

 でも、認めたからこそ、難しくなることもある。

 アデライド夫人への気持ちを自覚した。

 でも……他の14人も、全員大切だ。

 その全員に誠実でいるためには、どうすればいいんだろう。

 一人の人を好きになることが、他の誰かへの裏切りにならないために——

 ……まだ、その答えは出ていない」


次回予告:

「第18話! アデライド夫人と、初めての真剣な会話。

 そしてライアン、ソランジュ院長に相談する。

 心の問題に答えを出すことを、院長は何と言うのか——

 『院長の言葉と、踏み出す一歩』!」


                   【第17話 了】


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      第 18 話

 「院長の言葉と、踏み出す一歩」


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【シーン①:院長室 朝 (ソランジュへの相談)】

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ライアんが一人で院長室のドアをノックする。


ソランジュ:

「入りなさい」


ライアん、入室。ソランジュが静かにライアんを見る。


ライアン:(座って、少し間があって)

「……院長。施術師として、個人的な感情を抱くことは……やはり、間違いですか?」


ソランジュ:(しばらくライアんを見て、静かに)

「……続けなさい」


ライアン:(正直に)

「担当のお客様の一人に……施術師としてではなく、個人として、

 特別な気持ちを持ってしまっています。

 他の方々も全員大切で、誰かを特別扱いすることが、

 他の方への誠実さを欠くことにならないか……

 それが、怖くて」


ソランジュ:(長い沈黙の後)

「ライアン。一つ聞きます。

 その気持ちを自覚したことで、その方への施術の質が落ちましたか?

 あるいは、他の方々への施術の質が落ちましたか?」


ライアン:(考えて)

「……落ちていない、と思います。

 むしろ……皆さんへの気持ちが、より丁寧になっている気がします」


ソランジュ:(静かに微笑んで)

「……ならば、問題はない」


ライアン:(驚いて)

「え……?」


ソランジュ:

「人を好きになることは、人として正しいことです。

 施術師だからといって、感情を封じることが正しいわけではない。

 ただし——誠実であること。これは絶対の条件。

 あなたが今抱えている迷いは、誠実さの裏返しです。

 誠実に悩んでいる限り、あなたは正しい道にいる」


ライアン:(少し目が潤んで)

「……院長」


ソランジュ:(厳しく、でも温かく)

「ただし。焦らないように。

 ここに来るお客様は、まだ心が繊細な方々です。

 あなたの気持ちが、その方を焦らせることがないよう——

 ゆっくり、丁寧に。それはあなたの施術と同じことです」


ライアン:(うなずいて、しっかりと)

「……はい」


ソランジュ:(付け加えるように、少し柔らかく笑って)

「……それから、ライアン。

 あなたが来てから、このサロンが変わったことは、私が一番よく知っています。

 あなたを採用して、正解でした」


ライアン:(きゅっと唇を噛んで、頭を下げて)

「……ありがとうございます、院長」


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【シーン②:施術室A (アデライドとの真剣な会話)】

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午後。アデライドの施術。

今日は施術が終わった後も、二人してしばらく部屋にいる。


アデライド:(少し考えてから)

「……ライアン。今日、少し顔が違います」


ライアン:(驚いて)

「顔が、ですか?」


アデライド:(静かに見て)

「……何か、決めた顔です」


ライアン:(少し間があって、アデライドをまっすぐ見て)

「……院長に相談しました。自分の気持ちについて」


アデライド:(少し目が揺れて)

「……そうですか」


ライアン:

「はっきり決まったわけじゃないです。

 まだ……どう伝えていいかも、伝えていいのかも、わからない。

 でも……少し、正直になろうと思って」


アデライド:(静かに待っている)


ライアン:(深呼吸して)

「……夫人のことが、特別に大切です。

 施術師として、ではなく——ライアン・ソルベールとして。

 それを、ちゃんと伝えたかった」


アデライド:(しばらく、長い沈黙)


ライアン:(待っている)


アデライド:(ゆっくりと、窓の外を見ながら)

「……怖いです、やはり」


ライアン:

「はい」


アデライド:

「でも……あなたにそう言ってもらえると……

 怖さより先に、何か違うものが来る」


ライアン:(静かに)

「……何ですか?」


アデライド:(長い沈黙の後、ほんの小さな声で)

「……嬉しい、です」


ライアン:(胸がいっぱいになって、でも笑って)

「……ありがとうございます」


アデライド:(また静かに)

「……答えを急かさないでください。まだ……怖いから」


ライアン:(はっきりと)

「急かしません。ゆっくりでいいです。

 僕はここにいますから」


アデライド:(ほんの少しだけ、唇が緩んで)

「……約束、ですね」


ライアン:

「約束です」


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【シーン③:ラッキースケベ⑯ サロン庭の薔薇棚の前で】

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感動的な場面の直後——


ライアんがアデライドと別れて廊下を歩いていると、

アンジェリカがノートを抱えて飛び出してきて激突。


アンジェリカ:

「あっ!!」


ライアン:

「うわっ!!」


またもや床に散乱するノート。

拾おうとした二人の頭がゴン!とぶつかる。


アンジェリカ:(頭を押さえながら目を回して)

「……いたた……」


ライアン:(同じく頭を押さえながら)

「……すみません……大丈夫ですか……」


アンジェリカ:(ふらふらしながらライアんを見て、目がハートになって)

「……ライアンくん……今、すごく良い顔してるよ……

 なんか……ふわふわしてる……(メモを取り出す)」


ライアン:(顔を赤くして)

「ノートに書かないでください!!」


アンジェリカ:(書きながら)

「『恋をした人間の顔面成分——』」


ライアン:「書かないでえ!!!」


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【シーン④:夕方 サロン中庭 (オリアンヌとセレスティアとの会話)】

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中庭でオリアンヌが植物の記録を取っている。

そこへセレスティアがぽわぽわ歩いてきて隣に座る。


セレスティア:(空を見ながら)

「ねえオリアンヌさん。ライアンのこと……好きですか?」


オリアンヌ:(植物図鑑から目を上げて)

「……好きですよ。

 植物の話を最後まで聴いてくれる人って、ほとんどいないから」


セレスティア:(ぽーっとして)

「……それが好きの理由になるの、すごいね」


オリアンヌ:(また図鑑を見ながら、でも少しだけ頬を赤くして)

「……それだけじゃないかもしれないですけど」


セレスティア:(うんうんとうなずいて)

「私もね……よくわかんないんだけど。

 ライアンと一緒にいると、なんか……食べ物が美味しくなるんだよね。

 それって……すきってことかな?」


オリアンヌ:(少し考えて)

「……食べ物が美味しくなるなら……たぶんそうだと思います」


セレスティア:(ぽわっと)

「そっかー……(うとうとし始める)」


オリアンヌ:(セレスティアを見て、くすっと笑って、また植物に視線を戻して)

「……複雑ですね、心というのは」


薔薇が静かに風に揺れていた。


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「院長に相談して、アデライド夫人に正直に話して……

 少し、楽になりました。

 答えは出ていない。アデライド夫人も、まだ怖いと言っていた。

 でも……お互いに正直でいることが、今できる一番のことだと思えた。

 他の15人——いや、全員のことも、ちゃんと大切にしたい。

 その気持ちは、本物だから。

 もうすぐ……何かが動き出す気がしています」


次回予告:

「いよいよ佳境!

 第19話! ヒロイン全員がライアンへの気持ちを自覚する!

 そして……ライアンの過去が明かされる回!

 『遠い記憶と、今ここにいる理由』!」


                   【第18話 了】


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          【Vol.3(第13話〜第18話) 完】

    続きはVol.4(第19話〜第24話・最終話)に収録されています

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    『癒しの手、貴族の心』

    ~未亡人サロンのマッサージ師~

    アニメ全24話 完全台本 Vol.4(第19話〜第24話・完結)


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      第 19 話

 「遠い記憶と、今ここにいる理由」


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【シーン①:サロン談話室 朝 (ライアンの過去が語られる)】

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朝のサロン。珍しく全員が揃っている時間。

マドレーヌが「ライアンさんのことをもっと知りたい」という話を切り出す。


マドレーヌ:(穏やかに、でも少し真剣に)

「ライアンさん、実は……皆さん、あなたのことをほとんど知らないわよ」


ライアン:(きょとんとして)

「え、そうですか? いつも話してますよね」


イザベル:(腕を組んで)

「聴くのは上手だが……お前が話すことは少ない。気づいてなかったのか?」


ライアン:(少し驚いて周りを見ると、全員がうなずいている)


アンジェリカ:(ノートを構えて)

「リサーチ不足でした! 今日は観察対象から聴取に切り替えます!」


ライアン:(苦笑いして)

「……わかりました。何を聞きたいですか?」


全員:「「「何でも!」」」


ライアン:(少し考えて、静かに話し始める)


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【シーン②:ライアンの過去(回想シーン)】

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〔回想:柔らかなセピア色の映像〕


ライアン:(静かに、でも穏やかに語る)

「……母は、僕が六歳の頃から体が弱くて。

 父は早くに亡くなっていたから、二人きりで暮らしていました。

 貧しかったけど……母はいつも笑っていた。

 でも体が辛そうで……何かしてあげたくて」


幼いライアンが、寝込む母の傍らでそっと手を握っている回想。


ライアン:

「ある日、偶然に……手で背中を押したら、母が楽になったって言ってくれて。

 それから独学で勉強しました。

 本屋で立ち読みして、市場の薬草師さんに教えてもらって……

 母を楽にしたくて、ただそれだけで。

 ……母は今も王都の外の村で元気にしています。

 先月、手紙が来て……野菜が豊作だって」


くすくすと笑いが起きる。


ライアン:(照れながら)

「……そんな感じで、施術師になりました。

 だから……難しい動機とかじゃなくて、ただ、誰かが楽になる顔が好きで。

 それだけなんです、本当に」


しばらく沈黙。


エルミーヌ:(ぽそっと、でもはっきりと)

「……それだけって言うけど……それが一番、すごいと思う」


テレーズ:(静かに)

「星は……あなたをここへ導いたのね。ちゃんと」


レティシア:(顔を赤くしながら、横を向いて)

「……なんで泣けるんだ、こんな話で……(こっそり目を拭く)」


フランシーヌ:(凛とした顔で、耳だけ赤くなって)

「……立派な動機じゃない。それの何が謙遜することがあるの」


アデライド:(静かに、でも確かな目でライアンを見て)

「……知れて、良かったです」


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【シーン③:ラッキースケベ⑰ 全員からのリアクションの嵐】

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ライアンの話が終わった後、談話室で各自がライアンに話しかけようとして——

全員が一斉に立ち上がり、一斉にライアんの方へ動いた結果。


大混雑。


ソフィー:(ライアんの腕にしがみついて)「ライアン! お母さんに会ってみたい!!」

アンジェリカ:(反対側の腕に)「実家訪問! 観察したい!!」

セレスティア:(後ろから抱きつく形になって)「ライアン……ありがとう……(ぽわ)」

イザベル:(肩をがっちり掴んで)「今度一緒に村まで行こうぜ!!」

エルミーヌ:(足元にそっとくっついて)「……すき……(小声)」


ライアン:(全方向から囲まれて)

「え!? え!? みなさん……!? ちょ……!!」


ギャスパール:(遠くから見て)

「……大変なことになっとる……」


マドレーヌ:(優雅に紅茶を飲みながら)

「みんな、落ち着きなさい(笑顔)」


クロエ:(扇で顔を隠しながら、心の中で)

「……私も近づきたかったけど、このカオスには入れない……(歯がゆそう)」


アデライド:(端の席で、ただ静かに微笑んで)

「(心の中:……私は、もう十分に知っています)」


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【シーン④:施術室A (アデライドとの深い時間)】

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夕方。静かな施術室。

アデライドの施術が始まる。今日はいつもと違う静けさがある。


アデライド:(施術を受けながら、しばらくして静かに)

「……ライアン。今日の話……本当に、聴けて良かった」


ライアン:(施術しながら)

「そうですか? 大した話じゃなくて、恥ずかしかったんですが」


アデライド:

「あなたがここにいる理由が……ちゃんとわかった気がした。

 あなたの手の温かさが、なぜ特別なのかも」


ライアン:(少し黙って)


アデライド:(続けて、静かに)

「……私も、少し話してもいいですか?」


ライアン:

「はい、もちろんです」


アデライド:(目を閉じながら)

「……夫と過ごした三ヶ月間。

 あまり会話もなくて……でも彼は優しかった。

 毎朝、私の部屋に花を一輪置いていった。

 言葉はなかったけれど……それだけが、彼の気持ちだと思っていた」


ライアン:(静かに聴いている)


アデライド:

「……戦地から最後に届いた手紙に、『花を、忘れないでください』と書いてあった。

 意味がわからなくて……ずっと、そのまま心の奥に置いていた。

 でも最近……やっと、わかった気がした。

 彼は、私に花のように生きてほしかったのかもしれない、って」


ライアン:(胸に染みて)

「……きれいな人だったんですね、旦那様も」


アデライド:(少し沈黙して、涙を静かに流しながら)

「……ええ。きれいな人でした。

 ……だから……やっと、ちゃんとお礼が言えた気がした。

 あなたのおかげで」


ライアン:(施術の手を、そっとアデライドの肩に置いたまま、静かにそこにいる)


   〔BGM:バイオリンとピアノの優しい二重奏〕


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「みんなに自分のことを話した日。

 恥ずかしかったけど……話してよかった。

 アデライド夫人の旦那様の話を聴いて——

 その人が残した言葉の重さと、アデライド夫人がそれをやっと受け取れた瞬間を、

 一緒にいられたことが……施術師として以上に、嬉しかった。

 ……少しずつ、前に進んでいる。みんながそれぞれ。

 そして、僕も」


次回予告:

「第20話! ナタリー、テレーズ、オリアンヌ——それぞれの告白と決断!

 ライアンは全員に、誠実に向き合う。

 『三人の言葉、三つの答え』!」


                   【第19話 了】


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      第 20 話

 「三人の言葉、三つの答え」


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【シーン①:サロン厨房 (ナタリーの告白)】

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朝の厨房。ナタリーとライアんが二人で次のお菓子を作っている。

いつも通りの時間——だったが、ナタリーが途中で手を止める。


ナタリー:(生地をこねながら、横を向いたまま)

「……ライアンさん」


ライアン:

「はい?」


ナタリー:(少し間があって、くるっと向き直って、まっすぐに)

「……好きです。

 ちゃんと、好きです。

 一緒に料理すると楽しくて、差し入れを持っていくと嬉しそうな顔をして……

 そういうのが全部、好きで。

 クロエさんみたいに計算で言ってるわけじゃなくて——

 (あっ、クロエさんに失礼だった)——ただ、好きで。

 それだけ言いたかった」


ライアン:(少し驚いて、でも真剣に向き合って)

「……ありがとうございます。

 ナタリー夫人のことも、大切です。

 ただ……正直に言うと、今……別の人への気持ちが先にあって。

 でもそれは、夫人への気持ちを軽くするものじゃない。

 ちゃんと、大切に思っています」


ナタリー:(少し間があって、ぽすっと生地をこねながら)

「……そっか。正直に言ってくれてありがとうございます。

 ……でも、好きってことは変わらないし、差し入れも変わらないです。

 それだけ言っておきます!」


ライアン:(胸がいっぱいになって)

「……ありがとうございます。ナタリー夫人の料理は、これからも世界一だと思っています」


ナタリー:(ぱっと顔が輝いて)

「言ったね!? 世界一って言ったね!?(べしっとライアんの腕を叩いて)」


ライアン:「痛い!!」


ナタリー:(笑いながら、でも目が少しだけ赤い)


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【シーン②:施術室K (テレーズの告白)】

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施術室。テレーズが横になっている。

今日は星占いの話をしない。静かな施術が続く。


しばらくして——


テレーズ:(目を閉じたまま、静かに)

「……ライアン。一つ、予言をしてもいいかしら」


ライアン:(苦笑いして)

「……どうぞ」


テレーズ:

「今日の星は告げています。

 あなたの心はもう、決まっている——と」


ライアン:(少し驚いて)

「……それは……」


テレーズ:(目を開けて、静かに、でも確かに)

「……私はね、ライアン。あなたのことが好きです。

 でも星が告げているのは——私への答えではなく、

 あなたの心の向かう先のことです。

 だから……教えなくていい。

 ただ……この気持ちだけ、受け取ってほしかった」


ライアン:(まっすぐ向き合って)

「……ちゃんと受け取りました。

 テレーズ夫人のことは、これからも大切にします」


テレーズ:(優しく微笑んで)

「……ええ。それで十分。

 ……それにしても、今日の星の読みは正確だったでしょう?」


ライアン:(くすっと笑って)

「……今日は当たっていましたね」


テレーズ:(少し得意げに)

「星は常に正しいのよ。解釈次第で」


ライアン:(笑いながら)

「……解釈次第は変わっていない……」


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【シーン③:サロン近郊の森 (オリアンヌの告白)】

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二度目の植物採集。あの泥濘の近くを慎重に歩きながら。


オリアンヌ:(採集袋を持ちながら、唐突に)

「……ライアンさん。私、あなたのことが好きです」


ライアン:(足を止めて)

「……オリアンヌ夫人」


オリアンヌ:(図鑑を抱えながら、まっすぐに、でもどこか学者っぽく)

「植物で言うと——共生関係に近い感覚です。

 あなたがいると、私の研究が輝いて見える。

 話を聴いてもらえると、言葉が整理されていく。

 ……それって、好きということだと思って」


ライアン:(真剣に受け取って)

「……ありがとうございます。

 オリアンヌ夫人の研究の話、僕はいつも楽しいですよ。本当に。

 ただ……正直に言うと、別の人への気持ちが先にあります。

 でも、夫人への大切さは変わらない」


オリアンヌ:(少し考えて、うんうんとうなずいて)

「……わかりました。正直に言ってくれてありがとうございます。

 ……あ、ではこちらの苔の分布について聴いてもらってもいいですか?」


ライアン:(少し拍子抜けして、でも笑って)

「……はい、もちろんです」


オリアンヌ:(またキラキラした目で植物を指して)

「ここのシダ類なんですけど……」


ライアン:(歩きながら、じわっと温かくなって——心の中で)

「(……オリアンヌ夫人らしい。……本当に、みんなそれぞれだ)」


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【シーン④:ラッキースケベ⑱ 森の帰り道】

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帰り道。細い木の橋を渡る二人。

オリアンヌが珍しい葉っぱを見つけて採集しようと身を乗り出した瞬間——


ぐらっとバランスを崩す。


ライアン:(腕を掴んで支えるが、二人ともバランスを崩して——)


ドポン!


川に落ちるほどではないが、橋のたもとの浅い水場にずぼっとはまる。


ライアン:(膝まで水に浸かって)

「……また……」


オリアンヌ:(ずぼっとはまったまま、手に葉っぱを掴んで)

「取れました!! 希少種です!!」


ライアン:(呆然として)

「……採集は成功したんですね……」


オリアンヌ:(ライアんを見て、水の中にいる二人の状況に気づいて)

「……あ。また濡れましたね、ライアンさん」(少し申し訳なさそうに、でも葉っぱを大事に持っている)


ライアン:(笑いながら)

「……毎回のことなので、もう慣れました」


オリアンヌ:(くすっと笑って)

「……いつも付き合ってくれてありがとうございます」


ライアン:(水の中で、でも笑顔で)

「……こちらこそ。楽しいので」


オリアンヌ:(少し頬を染めて、また葉っぱを見る)

「……次は泥になりませんでした。進歩ですね」


ライアン:「進歩の基準が低い!!」


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「三人が正直に話してくれた。

 僕も正直に答えた。

 ……傷つけてしまったかもしれない、とは思う。

 でも……みんなの反応が、それぞれで、みんなが前を向いていて。

 ナタリー夫人は差し入れをまた持ってきたし、

 テレーズ夫人は翌日また予言をしていたし、

 オリアンヌ夫人はまた植物の話をしてくれた。

 ……みんなが強くて、やさしくて、心から尊敬します」


次回予告:

「第21話! フランシーヌ、イザベル、マドレーヌ——それぞれが前へ踏み出す!

 感動と笑いの交差する回!

 そしてギャスパールの意外な一言がライアんを動かす……!

 『それぞれの春へ』!」


                   【第20話 了】


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      第 21 話

 「それぞれの春へ」


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【シーン①:施術室 (フランシーヌの告白と決断)】

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フランシーヌの施術。

今日は入室した瞬間から、いつもより背筋が一段と張っている。


フランシーヌ:(台に横になってから、すぐに)

「……ライアン。話があります」


ライアン:(施術を始めながら)

「はい」


フランシーヌ:(天井を見ながら、武人のような口調のまま、でも言葉が真剣で)

「……あなたのことが、好きです。

 雷の夜に肩を借りて、それが……ずっと頭から離れなくて。

 武人の家の娘として、こういうことを言うのは恥かもしれないけれど——

 言わないままでいることの方が、もっと恥だと思って」


ライアン:(施術を続けながら、真剣に)

「……フランシーヌ夫人。

 気持ち、受け取りました。

 正直に言います——今、別の人への気持ちが先にある。

 でも、夫人のことは心から大切で、その気持ちに嘘はないです」


フランシーヌ:(少し間があって、静かに)

「……正直に言ってくれてありがとう。

 ……聞く前から、なんとなくわかっていた。

 それでも言わないと、自分が恥ずかしかった」


ライアン:(穏やかに)

「……言ってくれて、嬉しかったです」


フランシーヌ:(少し間があって、小さく笑って)

「……次に雷が来ても、自分で毛布を持っていきます」


ライアン:(苦笑いして)

「……夫人が強くなりましたね」


フランシーヌ:(凛々しい顔で)

「武人の家の娘ですから」


ライアン:(心の中:(……かっこいいな、本当に……))


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【シーン②:王都の剣術練習場付近 (イザベルの決断)】

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外気浴プログラム。イザベルとの散歩。

剣術練習場の前を通りかかる。


イザベル:(立ち止まって、練習場の看板を見て)

「……ここで初めてお前と来たな」


ライアン:

「はい。特訓されましたね」


イザベル:(少し笑って、それから真剣な顔で)

「……相棒。一つだけ言う」


ライアン:

「はい」


イザベル:(腕組みしたまま、正面を向いて)

「……お前のこと、好きだ。

 まあ……お前に好きな人がいることも、なんとなくわかってる。

 だから答えは要らない。ただ言いたかった。

 ……あたしはあたしで、ちゃんと前に進む。

 夫のことも、やっと整理がついてきた気がするから。

 だから……心配するな」


ライアン:(胸がいっぱいになって)

「……イザベル夫人……」


イザベル:(振り返って、ちょっとだけ照れた顔で)

「泣くなよ」


ライアン:(目が赤くなりながら)

「……泣いてないです」


イザベル:(豪快に笑って)

「嘘つけ! 顔が真っ赤だぞ!

 ……ほら、行くぞ。今日は市場で肉まんでも食おう」


ライアン:(笑いながら、ぐっとこみ上げるものを堪えて)

「……はい!」


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【シーン③:中庭 薔薇の前 (マドレーヌの言葉)】

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夕方。マドレーヌが薔薇の前のベンチに座っている。

ライアんが通りかかると、手招きをする。


マドレーヌ:(穏やかに、隣に座らせながら)

「……みんな、それぞれに話したみたいね」


ライアン:(驚いて)

「……知っていたんですか?」


マドレーヌ:(笑って)

「みんなが吹っ切れた顔をしてたから。

 ……私も、言っておこうかしら」


ライアン:(少し緊張して)

「……はい」


マドレーヌ:(静かに、穏やかに)

「……あなたのこと、好きよ。

 ただ——私の場合は少し複雑で。

 あなたに会って、夫を愛していたことと、

 新しい誰かを好きになれるということを、同時に知ったから。

 ……だから今は、まだ答えを出せない。

 あなたへの気持ちと、夫への気持ちを、ちゃんと整理してから。

 それまでは——お姉さんのままでいさせてほしい(苦笑)」


ライアン:(静かに、でも真剣に)

「……わかりました。

 マドレーヌ夫人のペースで、ちゃんと待ちます。

 ……でも、今言ってくれたこと。ちゃんと、受け取りました」


マドレーヌ:(少し目が潤んで、でも笑って)

「……ありがとう。

 ……あなたが来てよかった。本当に」


   〔BGM:ゆっくりとしたピアノ〕

   薔薇が、夕日の中で静かに揺れていた。


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【シーン④:ギャスパールの一言】

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夜。スタッフルーム。ギャスパールとライアんが二人。


ギャスパール:(コーヒーを飲みながら)

「……お前、最近、やけにすっきりした顔してるな」


ライアン:

「そうですか?」


ギャスパール:

「……みんなに向き合ったか?」


ライアン:(うなずいて)

「……少しずつ。正直に話してもらって、正直に答えて。

 誰かを傷つけていないか、まだ不安はあるけれど——

 逃げなかったことは、正しかったと思っています」


ギャスパール:(少し間があって)

「……お前、ちゃんと大人になったな」


ライアン:(苦笑いして)

「最初から二十歳ですよ」


ギャスパール:(笑いながら)

「年齢と大人は別だ。

 ……で、アデライド夫人には、ちゃんと言ったのか?」


ライアン:(少し驚いて)

「……わかってたんですか、やっぱり」


ギャスパール:(にやりと)

「最初から。……声のトーンって言っただろ」


ライアン:(少し赤くなって)

「……まだ、ちゃんとは。

 夫人も時間が必要だって言っていたから」


ギャスパール:(真剣な顔になって)

「……お前が待てるなら、待ってやれ。

 でもな、ライアン——人の心の準備ができた瞬間というのは、

 ふいに来るもんだ。

 その時に、ちゃんとそこにいてやれ。

 お前の言う通り、ただそこにいることが、できることだろ」


ライアン:(ぐっと来て、静かにうなずいて)

「……はい」


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「みんなが前を向いてくれている。

 それが嬉しくて、尊くて、なんか自分も頑張らないといけない気がした。

 ギャスパールさんの言葉——

 「準備ができた瞬間に、ちゃんとそこにいてやれ」。

 ……わかりました。待ちます。ちゃんと待ちます。

 でも待ちながら、ちゃんと今日も誰かの体を、心を、癒し続けていきます。

 それが、僕にできることだから」


次回予告:

「第22話! 残りのヒロインたちの告白と決断の回!

 ヴィオレット、エヴリン、クロエ、セレスティア、レティシア、エルミーヌ——

 それぞれの言葉と、それぞれの答え。

 『六つの花が咲く日』!」


                   【第21話 了】


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      第 22 話

 「六つの花が咲く日」


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【シーン①:図書室 (ヴィオレットの告白)】

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夕方の図書室。ヴィオレットが一冊の本をライアんに差し出す。

それは新しい詩集の試し刷り。表紙には「贈る詩 V・シャペル著」とある。


ヴィオレット:(静かに)

「……読んでください。最初の詩から」


ライアン:(開いて、一ページ目を読む)


詩の内容(ライアんの視点で読まれる):

「 温かな手が、冬の扉を叩く

  言葉もなく、ただそこにいる

  知らないうちに、氷が溶けていた

  誰かの春は、こんなふうに来るのかもしれない 」


ライアン:(顔を上げる。ヴィオレットが静かに見ている)


ヴィオレット:(静かに、詩人の声で)

「……あなたのことを書きました。

 ずっと前から。

 あなたが来てから、書けるようになった言葉は、全部あなたへの詩です。

 ……これが、私の告白の仕方です」


ライアン:(詩集を胸に抱いて、真剣に)

「……ありがとうございます。

 この詩、一生大切にします。

 ただ——今、別の人への気持ちが先にあります。

 でも、夫人の言葉は、僕の人生の一部になりました。本当に」


ヴィオレット:(しばらく静かにいて、ふわっと微笑んで)

「……それで十分です。

 ……あなたへの詩は、これからも書き続けます。

 それが私の答えです」


ライアン:(目が熱くなって)

「……読み続けます」


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【シーン②:サロン中庭 (エヴリンの告白)】

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朝。エヴリンが中庭で歌っているところへライアんが現れる。

今回はライアんがわざと近くにいる——エヴリンが「一番に聴かせたい」と言ってくれたから。


エヴリンが歌を終えて振り返る。

ライアんがいることを知っていた。


エヴリン:(少し赤い顔で、でも笑って)

「……聴いてくれましたか?」


ライアン:(まっすぐに)

「はい。今日も、きれいでした」


エヴリン:(深呼吸して)

「……ライアンさん。好きです。

 歌を取り戻してくれた人だから——じゃなくて。

 あなた自身が、好きです」


ライアン:(真剣に向き合って)

「……ありがとうございます。

 エヴリン夫人の歌声は、僕の一番好きな音です。

 それは変わらない。

 でも——今、別の人への気持ちが先にあります。正直に言います」


エヴリン:(少し間があって、小さく笑って)

「……うん。わかってました、なんとなく。

 でも……言えてよかった。

 歌えるようになったから、気持ちも言えるようになった気がする」


ライアン:(胸がいっぱいになって)

「……それが、一番嬉しいです」


エヴリン:(少し照れながら)

「……また歌います。ライアンさんのために」


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【シーン③:施術室 (クロエの答え)】

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施術室。クロエが横になっている。


クロエ:(開口一番、穏やかに)

「……前に言った『好き』の話、覚えている?」


ライアン:

「はい。忘れていません」


クロエ:(くすっと笑って)

「……あれから少し考えたの。

 私のあなたへの好きは——『この感情を取り戻した喜び』も混じっていたと思う。

 だから純粋に恋かどうかは、まだわからない。

 でも……大切なことには変わりない。

 あなたが誰かを選んでも、私はここに来続けるわ。

 それが……私の答え」


ライアン:(施術しながら、穏やかに)

「……ありがとうございます」


クロエ:(少し茶目っ気を出して)

「ただし——あなたが私を選んだ場合の計算も、一応してあるわよ」


ライアン:(苦笑いして)

「……さすが、計算をやめないんですね」


クロエ:(扇で笑って)

「策士だもの。それが私よ」


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【シーン④:待合室 (セレスティア、レティシア、エルミーヌの三人)】

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待合室にセレスティア、レティシア、エルミーヌの三人が揃っている。


セレスティア:(ぽわっとした顔で)

「……私、ライアンに好きって言いたいんだけど、なんて言えばいいの?」


レティシア:(顔を赤くしながら)

「わ、わかるわけないわよ! 私も言えてないんだから!」


エルミーヌ:(ぽそっと)

「……私はもう言いました……」


レティシア:(ぎょっとして)

「え!? 言ったの!?」


エルミーヌ:(顔を赤くして)

「……言いました。埋まったけど」


セレスティア:(ぽかんとして)

「えーと、埋まった?」


エルミーヌ:(ぽそっと説明)「……タオルに」


レティシア:(呆然として、でも)

「……そ、そうなんだ……(自分も言わないとという気持ちがじわじわと)」


この日の午後——


レティシア:(施術室の後、廊下でライアんを呼び止めて)

「……ライアン。ちょっと来なさい」(ぐいっと腕を引いて)


施術室の前の廊下。二人きり。


レティシア:(真っ赤な顔で、でも真剣に)

「……す、好きよ!! 

 プライドとかもう関係ない! 

 ずっと気づいてないし、天然で、おっちょこちょいで、

 でもいつも真剣で、ちゃんとそこにいてくれて……

 そういうのが全部好きで!! 以上!!」(顔を覆う)


ライアン:(驚きながら、でも真剣に)

「……ありがとうございます、レティシア夫人。

 その気持ち、ちゃんと受け取りました。

 正直に言います——今、別の人への気持ちが先にあります。

 でも夫人のこと、これからもずっと大切にします」


レティシア:(少し間があって)

「……そういうことは……わかってた。

 でも……やっぱり言わないと、嘘の自分のままだから。

 ……(小声で)ありがとう、ちゃんと受け取ってくれて」


ライアン:(穏やかに)

「……こちらこそ。勇気を出してくれて」


レティシア:(すっと背筋を伸ばして、また凛々しい顔で)

「……さっきのこと、覚えてなさいよ」


ライアン:(笑いながら)

「……忘れません、絶対に」


続いて、セレスティアが施術室の前で待っていた。


セレスティア:(ぽわっとした顔で、でも少し真剣に)

「……ライアン」


ライアン:

「はい」


セレスティア:(じっと見て、ゆっくり)

「……好きです。

 恋かどうかわからないけど……ライアンと一緒にいると、

 ごはんが美味しくて、空がきれいで……それが好きです」


ライアン:(真剣に受け取って)

「……ありがとうございます。

 セレスティア夫人のこと、いつも大切に思っています。

 ただ——今は、別の人への気持ちが先にあります」


セレスティア:(ぽわっとして、うんうんとうなずいて)

「……うん。わかった。

 でも私、ライアンのそばにいるのは変わらないから。

 ……一緒にごはん食べてね」


ライアン:(笑いながら、目が少し潤んで)

「……はい。いつでも」


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「……みんな、かっこよかった。本当に。

 一人ひとりが、自分の言葉で、自分の形で気持ちを話してくれて。

 誰一人、崩れなかった。泣いた人もいたけど、みんな前を向いていた。

 ……僕が情けなくなるくらい、みんなが強かった。

 あとは……アデライド夫人と、ちゃんと向き合うだけ。

 ギャスパールさんが言っていた。準備ができた瞬間に、ちゃんとそこにいろ、と。

 ……その瞬間が、もうすぐ来る気がしている」


次回予告:

「第23話! ライアンの母からの手紙が届く!

 サロン全員でのお別れパーティ(?)の噂が立ち、大騒動に!

 そして——アデライド夫人の「準備」が整う夜が来る。

 『手紙と、その夜の花』!」


                   【第22話 了】


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      第 23 話

 「手紙と、その夜の花」


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【シーン①:ライアンの部屋 朝 (母からの手紙)】

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朝。ライアんの部屋に手紙が届いている。

母からの手紙を、ベッドに腰かけながら開く。


ライアン:(手紙を読みながら、くすっと笑って)

「……野菜の豊作報告と……(続けて読んで、表情が柔らかくなって)」


手紙の内容ナレーション

「……ライアン、あなたがお仕事を頑張っているのは伝わっています。

 でも時々は自分のことも大切にしなさいね。

 誰かを癒す人が、自分の心を置いてきぼりにしてはいけないと、

 お母さんは思います。

 幸せになりなさい。あなたが笑っているのが、お母さんの一番の薬です」


ライアン:(手紙を胸に当てて、静かに目が潤んで)


ギャスパール:(ドア越しに)

「ライアン、朝の準備できてるぞ」


ライアン:(手紙を大切にたたんで)

「……はい、今行きます」


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【シーン②:サロン大広間 (謎のパーティ計画)】

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その日のサロン。なぜかヒロイン全員がこそこそしている。


ライアん、廊下を歩いていると——

前からエルミーヌとナタリーが大きな箱を運んでいるが、

ライアんの顔を見た瞬間に凍りついて、そのまま壁に張り付く。


ライアン:(きょとんとして)

「……何かあるんですか?」


エルミーヌ:(ぽそっと)

「……何もないです……(箱を背中に隠す)」


ナタリー:(箱を後ろに回しながら、顔が赤くて)

「何もないです!!」


ライアン:(苦笑いして)

「……そうですか」


リーゼが後ろから走ってきて——


リーゼ:

「ライアン様! 今日の午後は——(マドレーヌにぱっと口をふさがれる)」


マドレーヌ:(にっこりして)

「今日の午後は、ゆっくりしていてください。施術は午前で終わりですから」


ライアン:(ますますきょとんとして)

「……何かあるんですよね?」


全員(聞こえた人たち):「「「「「何もない!!」」」」」


ライアン:(諦めて)

「……わかりました、何もないんですね」


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【シーン③:ラッキースケベ⑲ 準備中の大混乱】

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午後。ライアんは部屋で休んでいる(つもり)。

一方、大広間では全員がデコレーションの準備で大混乱。


ナタリー:(ケーキを作りながら)

「背の飾りどこ!?」


セレスティア:(飾りを持って走りながら)

「ここです!——わっ!!」(転んで飾りが宙に舞う)


アンジェリカ:(飾りを取ろうとジャンプして、脚立ごと倒れてイザベルに激突)


イザベル:「痛!!」


レティシア:(テーブルクロスを広げようとして風で顔に被さる)

「んんっ!! みっ、見るな!!」(誰も見ていない)


エヴリン:(装飾用の花を並べながら、ハミングしている——わりと平和)


ヴィオレット:(一人だけ詩を書きながら)

「……嵐のような準備も、詩になりますね」


フランシーヌ:(凛々しくテーブルを運びながら、でも足元に散らばった飾りを踏んで)

「っ!!」(こけるが寸前で踏みとどまって)「……見た!?」(誰もいない)


オリアンヌ:(窓辺に植物の飾りを並べながら)

「このシダ類、室内でも生育できるか実験をかねて……」


マドレーヌ:(全員を見渡して、ふふっと笑いながら)

「……みんな、好きね、ライアンさんのことが」


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【シーン④:夜 サロン大広間 (サプライズパーティ)】

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夜。リーゼに呼ばれて大広間へ向かうライアん。

扉を開けると——


キャンドルの灯りに包まれた広間。

15人全員が、笑顔で待っている。


全員:「「「「「ライアン、いつもありがとう!!」」」」」


ライアン:(固まって、じわじわと目が潤んで)

「……え……これは……」


マドレーヌ:(代表して)

「あなたがここに来てから、みんなが変わった。

 それのお礼をしたくて」


ナタリー:(ケーキを持ってきて)

「特製バースデーケーキとは別の、感謝ケーキです!!」


ライアン:(笑いながら、目が真っ赤になって)

「……こういうの……ずるいですよ……」


イザベル:(笑いながら)

「泣くなよ!」


ライアン:(笑いながら泣きながら)

「泣いてないです!!」


全員:(笑い声)


その夜、サロンに笑い声と音楽と歌声が溢れた。

エヴリンが歌い、ライアんが拍手して、ナタリーの料理が並んで、

テレーズが「今夜の星は最高に輝いている」と言い、

オリアンヌが「この植物、夜に開花しますよ」と報告し、

アンジェリカがノートを取り続け、

セレスティアがケーキを大盛りで食べ、

レティシアがライアんと目が合って顔を赤くして、

フランシーヌが凛々しく乾杯をリードして、

エルミーヌが初めて全員の輪の中に入って笑っていた。


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【シーン⑤:パーティ後 (アデライドとの夜)】

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パーティが終わった深夜。

サロンの廊下。月明かり。

ライアんが片付けを終えて廊下に出ると——アデライドが窓の外を見ている。


ライアン:(静かに近づいて)

「……起きていたんですか?」


アデライド:(振り向かずに)

「……眠れなくて。あなたのことを考えていたから」


ライアン:(胸が跳ねるが、静かに隣に立つ)


アデライド:(窓の外の月を見ながら、静かに)

「……ライアン。今夜、みんなの笑顔を見ていて……思ったことがある」


ライアン:

「……何ですか?」


アデライド:(ゆっくりと、確かな言葉で)

「……私は、あなたのそばにいたい。

 施術室ではなく。サロンの外でも。

 あなたが笑う場所に、いたい。

 ……これが、私の答えです」


ライアン:(息が止まって——でも確かに聞こえて)

「……アデライド夫人……」


アデライド:(初めて、ライアんの方を向いて、まっすぐに)

「……怖いです。まだ。

 でも——あなたが言ってくれた。ゆっくりでいい、と。

 だから……ゆっくり、一緒に歩きたいと思いました。

 ……ダメですか?」


ライアン:(目が熱くなって、でも笑顔で、まっすぐに)

「……ダメなわけないです。

 僕も、同じ気持ちです。ずっと」


アデライド:(少し間があって——ほんの少し、でも確かに、微笑んで)

「……ありがとう」


月明かりが二人を照らす。

廊下に、静かな温かさが広がっていた。


   〔BGM:バイオリンとピアノの穏やかな二重奏、静かにフェードイン〕


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【エンディング・次回予告】

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ナレーション(ライアン):

「アデライド夫人が、答えを言ってくれた。

 嬉しくて……月明かりがこんなにきれいに見えたのは初めてでした。

 母の言う通り、自分の幸せも、ちゃんと受け取れた気がします。

 でも……これはゴールじゃない。

 ここにいるみんな全員が大切で、その全員と、これからも歩いていく。

 アデライド夫人と一緒に、みんなと一緒に。

 それが、僕の答えです」


次回予告:

「最終話! 第24話!

 サロン・フルール、一年の締めくくりの式典。

 そして——ライアン、ソランジュ院長から大きな話が……。

 全てのヒロインへの、ライアンの最後の言葉。

 『癒しの手と、これからの日々』!」


                   【第23話 了】


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      第 24 話 【最終話】

 「癒しの手と、これからの日々」


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【シーン①:院長室 朝 (ソランジュからの話)】

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最終話の朝。ソランジュ院長がライアんを呼ぶ。

院長室。いつもより穏やかな空気。


ソランジュ:(静かに、でも嬉しそうに)

「ライアン。一年間、よく頑張りました」


ライアン:(少し驚いて)

「……もう一年になるんですね」


ソランジュ:

「そう。あなたが来て一年。

 今日は伝えたいことがあります。

 ……来月から、あなたを正式な施術師として登録します。

 見習いではなく、サロン・フルールの正式な一員として」


ライアン:(目を丸くして)

「え……! 本当ですか……!?」


ソランジュ:(うなずいて)

「それだけではない。

 あなたには、もう一つ、新しい役割をお願いしたい。

 このサロンには、外に出られない方々——病で療養中の貴族女性も多い。

 そうした方々への訪問施術を、あなたに担当してほしい。

 あなたの施術は、場所を選ばない。人の心に届く」


ライアン:(少し間があって、真剣に)

「……やります。ぜひ、やらせてください」


ソランジュ:(穏やかに微笑んで)

「……ありがとう、ライアン。

 あなたを採用して……本当に、良かった」


ライアン:(頭を下げながら、目が潤んで)

「……こちらこそ。ここに来られて、よかったです。

 ……本当に、よかった」


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【シーン②:年次式典 大広間 (全員集合)】

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午後。サロンの年次式典。

大広間に全員が集まっている。

ソランジュ院長の挨拶の後、ライアんの正式登録が発表される。


ソランジュ:

「本日より、ライアン・ソルベールを正式施術師として認定します」


拍手。

そしてヒロイン15人全員から、またもや一斉に声が上がる。


ナタリー:「おめでとう!!」

ソフィー:「ライアン!! お祝いケーキ食べよう!!」(ナタリー:「私が作った!!」)

イザベル:「相棒!! 祝い酒だ!!」

セレスティア:(ぽわっとした笑顔で拍手)

レティシア:(顔を赤くしながらも笑って)「よかったわね……(小声で)」

エルミーヌ:(輪の中で、小さく、でも確かに拍手している)

フランシーヌ:(凛々しく微笑んで)

テレーズ:(満足そうに)「星が告げていた通りね」

マドレーヌ:(穏やかに微笑んで手を叩いて)

クロエ:(扇の向こうで笑いながら)

ヴィオレット:(静かに微笑んで、手に詩のメモを持ったまま)

エヴリン:(少し涙目で笑顔で拍手)

アンジェリカ:(ノートに何か書きながら拍手、という器用なことをしている)

オリアンヌ:(植物図鑑を脇に置いて、ちゃんと両手で拍手している)

アデライド:(最後に——静かに、でも一番温かい目で、ライアんを見ている)


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【シーン③:最後のラッキースケベ⑳ 式典後の大混乱】

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式典後のお祝いの席。

ナタリーのお菓子が並び、エヴリンが歌い、賑やかな時間。


ライアんが一人でちょっと廊下に出て一息ついていると——

次々とヒロインたちが出てくる。


最初にセレスティアが「ライアン、ケーキ食べてないよ!」と引っ張り、

次にソフィーが反対の腕を引っ張り、

次にアンジェリカが「ここでも観察できます!」と後ろから押し、

そのままライアんが押し出される形で大広間に飛び込んで——


ソフィーとセレスティアとアンジェリカがドミノ式に倒れ、

ライアんがナタリーの大きなケーキに突進する形になって——


ドン!!


ケーキは無事(ナタリーが「ケーキを守る!!」と叫んで受け止めた)。


しかしライアんの顔にクリームが少しついて、


ナタリー:(ケーキを守りながら、ライアんの顔を見て)

「……顔についてる!!」(笑いながら)


全員:(どっと笑う)


リーゼ:(隅でにやにやしながら)

「……最後まで、ライアン様は変わらない……最高です……!(感動)」


ギャスパール:(遠くで腕を組みながら苦笑いして)

「……天然の怪物め……」


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【シーン④:夕暮れ サロンの庭 (一人ひとりとの時間)】

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式典後の夕暮れ。

ライアんが庭でゆっくりしていると、一人ずつ、ヒロインたちが通りかかっては短く言葉を交わす。


テレーズ:(通りかかりながら)

「星があなたの未来を輝かせています。これは外れません」

ライアン:「……楽しみにしています」


オリアンヌ:(植物の記録を持ちながら)

「今日、新しい種の発芽を確認しました。あなたに一番に教えたかった」

ライアン:「おめでとうございます!」


エルミーヌ:(ぽそっと、でも確かに)

「……また来週も来ます。来ていいですか」

ライアン:「いつでもどうぞ」(エルミーヌ、ほんのり笑って去る)


フランシーヌ:(凛々しく立ち止まって)

「……よかったわね、正式登録。……似合ってるわよ、施術師として」

ライアン:「ありがとうございます」


イザベル:(ぽんと肩を叩きながら)

「これからも相棒よろしくな!」

ライアン:「もちろんです!」


マドレーヌ:(優しく微笑んで)

「これからも、あなたのお姉さんでいさせてくださいね」

ライアン:(笑いながら)「……もちろんです(少し複雑な顔で)」


クロエ:(扇で笑いながら)

「次の計算、もう始めてるわよ。覚悟しておいて」

ライアン:「……覚悟します……」


ナタリー:(クッキーを差し出しながら)

「今日も差し入れ! これからもずっと続けます!!」

ライアン:「いつも本当にありがとうございます」


ソフィー:(元気よく)

「また市場行こう!! 次はぜんぶの屋台制覇するよ!!」

ライアン:「全部は……頑張ります!!」


ヴィオレット:(静かに近づいて)

「……詩、書けました。あなたへの新しいの。読んでもらえますか?」

ライアン:「もちろんです。楽しみにしています」


エヴリン:(少し恥ずかしそうに、でも笑顔で)

「……来週も歌います。また聴いてください」

ライアン:「必ず聴きます」


セレスティア:(ぽわっとした顔で)

「ライアン、ご飯一緒に食べようね……(うとうと)」

ライアン:「……夫人、寝てます?」(セレスティア:「……zzzz」)


アンジェリカ:(ノートを持ちながら)

「引き続き観察させてもらいます! 来年も!!」

ライアン:「……覚悟します……」


レティシア:(最後に、少し赤い顔で、ツンとしながら)

「……来週もちゃんと施術してよね。手を抜いたら承知しないから」

ライアン:(笑いながら)「はい、精一杯やります」

レティシア:(去りかけて、小さく振り返って)「……ね、また来るから」

ライアン:「……待っています」


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【最終シーン:薔薇の庭 夕暮れ (ライアンとアデライド)】

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全員が去った後。

庭に残ったライアんと、アデライドが二人。

夕日が庭を染めている。白薔薇が揺れている。


アデライド:(隣に来て、静かに立って)

「……みんな、それぞれね」


ライアン:(笑って)

「はい。みんな違う。みんな大切だ、と思います」


アデライド:(少し間があって)

「……あなたは、みんなの話を聴いて、それでもちゃんとここにいる。

 ……それが……あなたらしくて、好きです」


ライアン:(アデライドを見て)

「……ありがとうございます。

 アデライド夫人が、そう言ってくれると……何より嬉しい」


アデライド:(夕日を見ながら、静かに)

「……ライアン。一つだけ、お願いがあります」


ライアン:

「何ですか?」


アデライド:(ゆっくりと、でも確かな声で)

「……今度の休日、また街を歩きませんか。

 花屋に、また行きたい。

 ……今度は、私が一輪を選びます」


ライアン:(胸がいっぱいになって、笑いながら)

「……もちろんです。

 ……喜んで」


アデライド:(ほんの少し——でも確かに、笑って)


夕日の中、白薔薇がゆっくりと揺れる。

遠くから、エヴリンの歌声が流れてくる。

そしてナタリーが「ライアンさーん! 夕ご飯できましたよー!!」と叫んでいる。


ライアン:(苦笑いして)

「……行かないと」


アデライド:(一緒に歩き出しながら、静かに)

「……ええ。行きましょう」


二人、並んで歩き出す。

その後ろで白薔薇が、夕日の中に輝いていた。


   〔BGM:オープニングテーマが、優しいアレンジで流れ始める〕


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【エンディング映像】

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 サロン・フルールの窓に、暖かな光。


 キッチンでナタリーとライアんがケーキを作っている。

 中庭でエヴリンが歌い、エルミーヌが隅っこで聴いている。

 図書室でヴィオレットが詩を書き、ライアんがそれを読んでいる。

 森でオリアンヌが植物を採集し、ライアんがずぼっとはまっている。

 練習場でイザベルがライアんに木剣を持たせて特訓している。

 厨房でフランシーヌが雷の音に耳を澄まして(でも毅然としている)。

 テレーズが星図を広げ、マドレーヌが紅茶を淹れている。

 クロエが扇の向こうで笑い、レティシアが真っ赤な顔でそっぽを向いている。

 セレスティアがライアんの腕の中でうとうとしていて、

 ソフィーがその隣でクッキーを頬張って、

 アンジェリカがノートを取り続けている。


 そして——白薔薇の庭で、アデライドが静かに微笑んでいる。


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【最終ナレーション】

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ナレーション(ライアン):

「一年前、廊下で迷子になった日のことを思い出します。

 あの時、アデライド夫人が案内してくれなかったら——

 サロン・フルールにちゃんとたどり着けたかどうか。


 みなさんは、それぞれに悲しみを持っていて、

 それぞれに強くて、それぞれに優しかった。

 僕はただ、手を差し出しただけだけど……

 みなさんが、その手を取って前に進んでくれた。


 施術師として間違えたことも、天然でご迷惑をかけたことも、

 何度も何度も廊下でぶつかったことも——

 全部が、今の僕の宝物です。


 母に言われました。

 誰かを癒す人が、自分の心を置いてきぼりにしてはいけない、と。

 今は……ちゃんとわかります。

 誰かの傍にいることが、僕自身の癒しだと。


 これからもここにいます。

 サロン・フルールで。みなさんの傍に。

 この手が温かい限り、ずっと。


 ……では、今日の施術を始めましょうか」


   〔BGM:最後まで穏やかに、温かく、フェードアウト〕


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         【第24話(最終話) 了】

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                        Fin.


            「癒しの手、貴族の心」

            ~未亡人サロンのマッサージ師~


              全24話 完結


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【エピローグ 一年後の短編:各ヒロインその後】

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◆ アデライド・ヴァルモン

 ライアんと並んで街を歩くことが習慣になった。

 白薔薇を毎週一輪、部屋に飾っている。

 心が開いたからか、外交の場でも以前より温かな言葉を使うようになったと評判。


◆ セレスティア・ランベール

 相変わらずドジっ子だが、施術台から一人で降りられるようになった(大進歩)。

 サロンに来るたびにライアんと何か食べるのが定番に。


◆ イザベル・ダルクール

 剣術の師範として若い貴族女性に剣を教え始めた。

 ライアんへの施術は今も「体の問題だからな」と言い張っている(みんなわかってる)。


◆ エルミーヌ・ソワレ

 一人で受付でリーゼと話せるようになった。

 今は週に一度、自分からサロンに来るようになった(そしてまたどこかに埋まる)。


◆ クロエ・ドゥ・ベルナール

 計算を続けているが、ライアんの前では時々素になることを認めた。

 「まだ計算中」と言いながら、差し入れのお菓子を持ってくる。


◆ レティシア・フォルティエ

 「まだ諦めたわけじゃないから」が口癖になった。

 でも確かに、笑顔が増えた。手編みのハンカチは今も「買ったやつ」と言い張っている。


◆ ヴィオレット・シャペル

 第二詩集が王都でベストセラーになった。

 ライアんへの詩は今も書き続けており、「全部あなたが原材料」と言われた。


◆ ソフィー・グラティエ

 市場の全屋台制覇を目指して現在14軒目。

 「残り3軒!」と元気に報告してくれる。


◆ マドレーヌ・コルネイユ

 少しずつ、新しい気持ちと夫への気持ちを整理中。

 今日もみんなのお姉さんとして穏やかに笑っている。


◆ アンジェリカ・ドゥモン

 「ライアン観察ノート」が第三冊目に突入した。

 本人は「研究です」と言っているが、最近ノートのタイトルが「恋の研究」になっている。


◆ エヴリン・マルソー

 サロンで毎月小さなコンサートを開くようになった。

 ライアんが毎回一番前で聴いていることを、とても嬉しそうにしている。


◆ フランシーヌ・ピエロン

 雷の日は今でも少し苦手。

 でも一人で毛布を持っていけるようになった(時々廊下に出るのは内緒)。


◆ テレーズ・モリエール

 予言の的中率は相変わらず五割前後。

 でも「星は常に正しい」は変わらない。夫への想いを持ちながら、前を向いている。


◆ ナタリー・デュボワ

 差し入れは今も毎週続いている。

 「世界一」と言ってくれたライアんに、毎回新しいレシピを試している。


◆ オリアンヌ・ブランシュ

 植物採集に毎回ライアんを誘う。毎回二人とも何かに落ちる。

 「これも研究の一環」と言っているが、採集道具の中にハンカチが増えた。


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          【Vol.4(第19話〜第24話) 完】

         【全24話 完全台本 全4巻 完結】

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 ◆ 登場人物一覧(最終確認)

  主人公:ライアン・ソルベール(20歳 施術師)

  ヒロイン:アデライド、セレスティア、イザベル、エルミーヌ、クロエ、

      レティシア、ヴィオレット、ソフィー、マドレーヌ、アンジェリカ、

      エヴリン、フランシーヌ、テレーズ、ナタリー、オリアンヌ(15名)

  サブキャラ:ソランジュ院長、ギャスパール、リーゼ


 ◆ ラッキースケベカウント:全20回

 ◆ 感動シーン:各話1〜2回

 ◆ ヒロイン全員の告白:完了

 ◆ 主人公の成長:見習い→正式施術師 達成

 ◆ サロン・フルール:存続確定


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             ご愛読ありがとうございました

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読んで頂きありがとうございます。

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