“あれ”に踊らされる税理士事務所
所長「おーい、栄田くん、“あれ”知らんか?」
栄田(瞬時にフリーズ)「……きた。“あれ”きた。朝から地雷踏んだ」
所長「この前、机の上に置いてた“大事なやつ”!」
椎名「所長、それ去年から毎月言ってます。“あれ”と“大事”は記憶喪失コンボなんで!」
栄田「そもそも“あれ”って、名詞ですらないですからね!?もう形容詞ですらない、もはや“気配”!」
所長「いや、白くてちょっと厚いやつで、印刷してあって……」
椎名「それ、コピー用紙です。“事務所にあるすべて”です!」
森(小声)「あの人、名詞を避けて生きてるのかしら…」
所長「椎名くん、“あれ”どうなってる?」
椎名「いや、“あれ”が何かわかんないと、どうにもなってないです。“未来に進めない”んですよ!」
森「僕たち、忙しいんですよ!午前は税務調査、午後は確定申告!“謎解き”してる場合じゃない!」
所長「まあまあ、そんな怒らんでも……ほれ、探すぞ……」
(みんなで捜索…)
所長「おっ、あったあった!これこれ!」
椎名「(嫌な予感)……え、まさかそれ……」
所長(得意満面で)「“ゴルフコンペの案内状”だった!」
(一同静止)
森「…………」
栄田「…………」
椎名「は?」
栄田「えっ!この1時間、何のための“捜索劇”だったんですか!?」
森「ていうか、業務に関係ないし」
椎名「もうこれ、“虚無”じゃん。“封筒に入った時間の無駄”!!」
栄田「税理士事務所の朝を返して!!」
所長「いや〜でも見つかってよかったなぁ!」
椎名「よくないです!ゼロ点です!むしろマイナス!」
森(真顔)「“あれ”は“あれ”でも、“いらんやつ”でしたね……」
栄田「次から“あれ”って言った瞬間、手当つけさせてもらいますからね!!」
所長の“あれ”は、業務を止める最強兵器。呼び出された職員たちは、ついに“無”を見た。
明日もまた、“あれ”がやってくる。時間泥棒の顔をして。




