俺が言いたかったこと、先に書かれただけだ
所長「おーい、栄田くん。これ打っといてくれ。今度アパートの大家向けに講演するんだよ。俺の原稿な」
栄田(受け取りながら)「……これ、コピー用紙に雑誌の切り抜き貼っただけじゃないですか。しかもセロテープで。手作り感すごい」
森「あ、これ住宅業界の月刊誌じゃん。まさかの“貼り付け系原稿”来たわ〜」
椎名「え?ここに書いてある“筆者:一之瀬宏明”って、所長のペンネームじゃないですよね?」
所長(どっしり構えて)「たまたま俺が前から考えてたことと、まっっったく同じことを、先にあいつが書いただけだ!」
栄田「先に書いた時点で“所長のじゃない”んですよ、それ」
森「ていうか“考えてた”って、記事の日付2011年なんですけど」
椎名「14年前から考えてたって……記憶力が異次元ですね」
所長(机をトンと叩いて)「いいか!これはな、俺の思想に共鳴した者が、たまたま形にしてくれたもんなんだよ。いわば“共著”だ!」
栄田「共著者に一方的にされた一之瀬さんが気の毒です……」
椎名「ていうかその思想、完全に“読んで納得”しただけでは……?」
所長(さらに堂々と)「俺の講演はな、言葉じゃない、“想い”で伝えるんだよ!」
森「その“想い”を切り抜きで補ってどうするんですか……」
椎名「パワポに貼る画像も、Google画像検索のスクショでしたよね」
栄田「もはや“俺のものは俺のもの、人のものも俺のもの”のジャイアン精神……」
所長「当たり前だ!経営者はな、“発信力”が命なんだよ!言ったもん勝ち!お前らも見習え!」
椎名「……見習ったら炎上案件なんですけど」
所長の“原稿”は、いつだって誰かの言葉に後乗り。
でも威張りっぷりだけは、誰のものでもない、唯一無二のオリジナル。




