所長のトーク耐性
所長「おい森っ!あの資料、まだかっ!」
森「はいっ、いま印刷中です!」
所長「ギリギリじゃないか!ワシは何度も言ったぞ、早めに準備しろと!」
栄田(小声)「あ、出た。“早めに”って昨日の帰り際に言ったつもりのやつでしょ…」
椎名「しかも“思ってただけ”で声に出してなかったやつな」
所長「昔のワシなんてなぁ!一晩で50枚の資料を手書きしたもんじゃ!それもペンがかすれてな…」
森(心の声)「出た、“伝説のカスれボールペン”」
所長「それを持って朝イチで顧問先に行って、途中で電車が止まってな…そこでワシがどうしたと思う?」
栄田「はいはい、走ったんですよね〜」
所長「そうじゃ!しかも革靴で!靴ズレで血を出しながらなっ!!」
椎名「その話、先月は“雪の中を裸足で走った”って言ってませんでした?」
森「もう、“わらじで富士山越えた”くらいの話になってきてる…」
栄田「そのうち“資料を口頭で空に読み上げて提出した”とか言い出しそう」
所長「なんだその態度は!ワシが若い頃はな、資料がなければ自分の体を差し出す覚悟で仕事をしてたもんじゃ!」
椎名「ブラック通り越して、もうダークマターの世界ですね…」
森「所長、資料できましたー!」
所長「ふんっ…まぁ、なんとか間に合ったか…まったく、最近の若いもんは…」
森(心の声)「はい、武勇伝エンディング入りました〜」
椎名「森さん、完全に聞き流してましたよね?」
森「長くなるとね、自然と“ノイズキャンセリング耳”になるの」
栄田「“聞き流し検定1級”ってところね」
椎名「俺ら、もう“所長トーク耐性協会”の有資格者ですから」
栄田「次の目標は、“共感したフリ”で切り抜ける検定2級ね」
(3人、にやっと笑う)
所長「おい!なにニヤニヤしてるんだ!真面目にやれっ!」
全員(心の声)「「「…また最初から再生されるのか?」」」
(微妙に目を合わせず、着席して作業を始める3人)
所長の話はループ仕様。耐えるほど強くなる職員たち。今日もまたひとつ、スルースキルに“伝説級”のバフがかかりました。




