ケチな所長は度が過ぎる
(事務所内。森が封筒に110円切手を貼っている)
所長「……おい森くん、それ何貼ってる?」
森「切手です。納付書を郵送しようと思って」
所長「……110円!?バカにならんよ、それは」
森「えっ」
所長「切手なんてな、昔は50円だったんだ。オレが新人だった頃は、年賀状も書き損じを消しゴムで消して再利用してたぞ!」
椎名(小声で)「……え、それ普通にダメなやつでは」
栄田「所長、それ、再利用っていうか相手に失礼ですよ…」
所長「いやいや、違う違う。当時はな、工夫ってのがあったんだよ。“どうすれば一円でも安く済むか”って、常に考えてた」
森「(いや、常識的に考えて……)」
所長「それを今の子たちはすぐ郵送だのなんだのって……あのな、“手渡し”ってのは信頼の第一歩なんだよ!」
椎名「でも所長、今どき、訪問されると迷惑って方も多いですけど……」
所長「そんなのは、こっちの“気持ち”が伝わってないからだよ。“こんにちは〜!納付書持ってきましたぁ!”って明るく言えば、“あらまぁありがとう”ってなるもんなんだ」
栄田「(どこの昭和だろ……)」
森「でも数、けっこうありますよ?今日だけで──」
所長「いちいち気にするな。それが仕事だから!」
椎名「所長はもちろん、手分けして一件くらい──」
所長「おいおい、俺は“管理職”だからな?“現場”は任せた!君たちを信頼してるんだよ」
(所長、偉そうに背もたれを倒してコーヒーをすする)
森「(でたっ!現場は任せた…信頼って……なんだろう)」
どこまでケチな所長なのでしょう。
考え方が飛びぬけている所長。
今日も職員は、疲労困憊です。