「昨日の俺」と今日の地雷
―金田税理士事務所・朝9時すぎ―
(所長、無言で出勤。ドアがドンッと閉まり、空気が一気に重たくなる)
森「うわ、あのドアの閉め方…絶対なんかあったでしょ。」
栄田「あれは“話しかけるな”の合図よ。今日、目すら合わせちゃダメなやつ。」
椎名「たぶんゴルフ中止、奥さんとケンカ、あと冷蔵庫のプリン消失事件の三連コンボ。」
(所長、資料をめくりながらピタッと止まる)
所長「森!これ、貸方と借方、逆じゃないか!こんな基本的なミスするなよ!」
森「えっ、それ…昨日、所長が電話で“そう直しとけ”って…」
所長「俺がそんなこと言った覚えはないな。“昨日の俺”のせいにするな!」
椎名(小声)「出た。“昨日の俺”は記憶から削除されるシステム。」
栄田「あれさ、どれだけ便利に使い回してんの。“昨日の俺”が毎回悪者。」
森「……すみません。次から気をつけます。」
所長「“次”なんて甘えたこと言うなよ!信用はな、一瞬で崩れるんだよ!」
(書類をバサッと机に叩きつけ、所長は別室へ)
椎名「…いや、その“信用”ってやつ、所長が毎週ぶっ壊してない?」
栄田「積み上げより崩しに定評あるからなぁ…あの人。」
森「“昨日の俺”って、マジで事務所公認のスケープゴートだよな…俺も使おうかな、“昨日の森がやりました”って。」
(奥から再び怒声)
所長「椎名くん!この資料の数字、合ってんのか!?」
椎名「あー、はいはい。“今日の俺”のターンきましたー。」
栄田「行ってらっしゃい。帰ってきたらラムネあるよ。」
森「盾と勇気も忘れずにな。」
(事務所に小さな笑いが広がる)
森(ため息まじりに)「……ま、今日も平常運転、だな。」
所長の不機嫌は天気予報より当たる。巻き込まれた森はお気の毒だけど、誰かが“地雷解除係”になるのもまた平常運転。
明日は“明日の所長”に期待しましょう…。




