金の匂いと態度スイッチ
(事務所内。午後2時過ぎ。森が書類を整理しながら、ぼそり)
森「所長、また“態度スイッチ”入ってたな…」
椎名「いや、あれ完全に“スイッチ”じゃなくて“変身”だろ。お金の匂いに敏感すぎる。」
栄田「昨日、B商店の奥さんが来た時、所長、すっごい目をそらしてたの見たんですけど…」
森「あー、あれね。『忙しいから、後でいいかな』って言ってたくせに、A建設の社長が来た途端、顔が花火みたいにパーッて明るくなったよ。」
椎名「いや、明るくなるのはいいとして、急に目の前で“これからもよろしくお願い致しますぅ〜”って、もう完全に“顧問料大好き”だろ。」
栄田「それ言うなら、昨日のC会社の社長が来てた時、所長が“ちょっとサービスしちゃおうかな?”って言ってたよ。いや、税理士事務所でサービスしようとするなよ、完全に営業モードになってる!」
(3人、一瞬の沈黙の後、大爆笑)
椎名「まじか、所長って“サービス精神旺盛”というか、“サービス料に敏感”だよね。」
森「それにしても、あの“低姿勢”はすごい。A建設の社長が来ると、もう腰が90度だよね。こっちが心配になるわ。」
栄田「いや、腰だけじゃない。昨日、A建設の社長に『お茶、おいしいですか?』って言ってたからね。まるでお茶の心配してるみたいに。」
椎名「それお茶じゃなくて、顧問料の心配だろって感じ。」
(全員、再び笑い声が止まらない)
森「ほんとに、所長ってさ、ギャップがすごいよね。お金が絡むと急にエネルギッシュになるけど、それ以外は“やる気無いダラダラおじさん”って感じ。」
栄田「あれ、でもたまに真顔で『うちは平等に、全てのお客さんに尽力しています』って言う時あるけど、正直、顧問料でしか顔が変わらないの、みんな気づいてるからね。」
椎名「所長的には、きっと心の中で“平等”って言ってるんだろうけど、実際には“お金の平等”だよね。」
森「いや、そもそも“平等”って言葉が所長にとっては“顧問料”と“売上”にしか関係ないもんね。平等って、お金を持ってるか持ってないかの違いって感じ。」
栄田「いや、所長は“お金で人を見てる”ってより、“お金に魂を売ってる”感じだよね。」
椎名「お金を持ってるお客さんには“神様”みたいな態度になるし、持ってないお客さんには“お前が悪い”みたいな感じだもんね。」
森「ま、そんな所長を見てる私たちは、ある意味『平常運転』って感じだよな。」
所長の“態度スイッチ”が引き起こす職場の騒動。お金の匂いがする瞬間、急に変わるその姿勢に職員たちは驚きながらも、どこか笑いを堪えきれない毎日。彼らにとって、所長の存在はある意味、平常運転の一部になっているのでした。