功績ドロボウ、午後からゴルフ
(午前。得意先のオフィス。所長と森が訪問)
森「こちらが試算資料になります。ケース別に比較できるようにしてまして、グラフも……」
お客さん「おおっ!これは分かりやすいなぁ。色も見やすいし、細かい数値までちゃんと入ってる。いや〜、これ誰が作ったの?」
森「あっ、それは私が——」
所長(かぶせ気味に)「ああ、それ私がまとめました!」
森「……ん?」
お客さん「へぇ〜、やっぱ違うねぇ所長さんは。こういうセンス、なかなか真似できないよ。」
所長「いや〜、まあ、長年の経験ってやつですかねぇ。“見せ方”って大事なんですよ、うん。」
森(心の声)「いや、見てないやん。むしろ昨日“こんなカラフルいる?”って言ってたやん……」
──
(午後、事務所の給湯室。森・栄田・椎名が集まる)
森「……って言ったんですよ。“私がまとめました”って。」
椎名「いや、それもう“横取り”じゃなくて“乗っ取り”だよ。」
栄田「人の資料にちゃっかりマイネーム入れてるの、もはや“詐称”では……?」
森「あれ、昨日の夜10時まで残ってやってたんっすよ。所長なんて、“資料ってよりチラシっぽくない?”とか言ってたのに……」
椎名「朝には“センスです”って言い切ってたな。」
栄田「センスの“せ”も出してなかったくせに……」
(そこへコーヒー片手に所長が登場)
所長「おう、さっきのお客さん、大喜びだったな!資料、大成功だぞ。」
森「……ありがとうございます。」
所長「やっぱりね、こういうのは私の“勘”が光るんだよ。“森にやらせたら当たる”っていうね!」
椎名「いやそれ、完全に“当たり馬券だけ見せてくる競馬おじさん”ですよ。」
栄田「失敗したら“なんでこんな色使った?”って責められるパターンですね。」
所長「ま、そういう成果は全部“チームの手柄”ってことでね。私は裏方だからさ。」
森(小声)「裏方という名の主役面……」
椎名「まるで“監督が一番汗かいた顔して表彰台に立つ”スポーツ大会……」
所長(聞こえていない)「じゃ、午後はゴルフなんで。あとはよろしく!」
(颯爽と去っていく所長)
栄田「午後休……?なにその“ドヤ顔退勤”」
椎名「あれだよ、“他人のレポート提出して早退する学生”スタイル」
森「……いつか所長が“この資料、私は触ってません。全部森くんです”って言う未来、見てみたいわ。」
椎名「それ、一生に一回あるかないかの満月にカメが踊るくらいの確率じゃん」
栄田「都市伝説だよ、それ……“所長が人を褒めた”って噂レベル……」
(3人、呆れと笑いを共有しながらコーヒーをすする)
所長の“手柄吸収力”には、もはや尊敬すら覚える今日この頃。
だけど私たちは見てる。ちゃんと見てるから大丈夫。……たぶん。
明日もがんばれ、全国の森くんたち。