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17.5話 野球部Side


 校舎から離された第二グラウンド隅では、打球を飛ばす音が鳴り響いていた。白い球は恐ろしい速度でバットによって弾かれ、瞬く間に弧を描いて地面へと着弾する。それを気怠そうに声を上げる部員たちは、意図も容易くグローブへと収めている。


 そんな光景を繰り返すグラウンドにやってきた他校の演劇部。


 そこにいた女子生徒たちの登場は、彼らの退屈な練習に変化をもたらすことになった。


「――折ヶ嶺のやつ、なんで女子連れてきてんだよ。しかもなんか可愛くね」


 その日、軟式野球部の監督は休んでおり、部活自体も休みになっていたものの、暗黙の了解として自主練習が行われていた。


 その、義務のような自主練習に乗り気な部員はほとんどおらず、〝できるなら楽しく練習をしたい〟という思想が、打ち放題のバッティング練習と折ヶ嶺新太という都合の良い他校の生徒を呼び出してボール拾いをさせてやろうという嗜虐的内容を決定させる。


 謂わば、退屈しのぎの遊びに近い感覚。


 ただ、彼らにとって予想外だったのは、折ヶ嶺が女子生徒を連れてきたこと。


 しかも、彼女たちは彼らが自然と目で追ってしまうような女子生徒ばかりだった。



 ◆



「なぁ、女子にバッティングさせてやらね?」


 だから、誰からともなくそんな提案がだされたのは必然だったのかもしれない。


「たしかに、女子にボール拾いさせるわけにはいかないよなぁ」

「あんなの楽しくないしな。俺が女子だったら、次はもうぜってぇ来ねぇよ」


 そして、それに賛同する面々。


 そこには不純な下心が透けてみえたものの、誰もが考えるフリをしながら「そうだな」と頷く。


 その誰もが、彼女たちを一目見た瞬間から仲良くなりたいと思ってしまっていたからだ。


 そして、そうなってしまえば話は早かった。


「――なぁ、お前んとこの女子にバッティングさせてやるから連れてこいよ」


 その話に、折ヶ嶺はすぐに返答をしなかった。


「大丈夫だって。本気で投げたりしないから。それに、彼女たちもボール拾いより気持ちよくボール打つほうが絶対に楽しいだろ?」


 それに折ヶ嶺は黙ったまま。


「それにもともとの話通り、演劇するときは俺らが観に行くからさ。なぁ?」


 折ヶ嶺を囲う部員たちは、その問いに同意の声を上げた。


 彼は難色を示していたものの、その場における同調圧力に開きかけた口はやがて閉じる。


 なにより、演劇部のためという理由が、それを拒否できない状況に陥らせた。


「……一応、訊いてみるよ」


 だから、彼女たちが嫌がったらせめて回避できるようそう答えるしかない。


「連れてこれなかったら土下座な?」


 不意に誰かが言った言葉に、周囲は「それ酷すぎだろー」と笑いが起きた。和やかな雰囲気から察するに冗談らしかったものの、その雰囲気すら内輪ノリによるものなのか判断がつかず、外の人間である折ヶ嶺は笑っていいのか判断がつかない。


「つか、誰かカラオケとか誘えよ。成功したら練習を早めに切り上げようぜ?」

「言い出しっぺのお前が誘えよ。向こうは三人いるから枠三人だな」

「てか、あいつら戻って部活やるんじゃねえの?」

「お前はバカか。こんなことしてるんだから真面目に部活やってるわけねぇじゃん」


 そして、そんな折ヶ嶺など既に眼中にないかのように、彼らはその後の話で盛り上がり始めたのだ。




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