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なんで私が追放なのよ!はぁ。もういいわ。私は助けを求めてきた剣士様と、私を守ってくれる精霊たちと一緒に行くから、勇者様 あなたはどうぞご自由に。  作者: 蒼井星空
第3章 ラオベルグラッド王国の復興

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第39話 キャッキャウフフな旅

「もう!なんでせっかくのエメリア様との華やかでちょっと恥ずかしい、キャッキャウフフな旅にクソ野郎がくっついてくるんですの?」

 メロディアレーゼ様……ツッコミどころしかないセリフを吐くのは辞めてほしいものです。

 ほら、ルクシオン様も困っているではないですか。


「……」

 ただ、あのやかましいルクシオン様を黙らせるなんて、さすがメロディアレーゼ様ですわね。


 もう私の心は無の境地でカーバンクルを抱っこしてひたすら撫でています……。



 

 さて、もうすぐギーフェンドに到着するころですわね。


 とりあえずレオの怪我は木の精霊様が塞いでくださっているので、私たちは馬車でここまでやってきました。

 メロディアレーゼ様が馬は嫌だと駄々をこねたからです。


「それにしても最初っから夜に突撃するとか、大丈夫でしょうか?」

 そんな私の不安はこれです。

 偵察もせずに?


「いいのですわ。そんな無骨なモンスターなんて、私の無属性魔法でイチコロなのですわ。ちゃっちゃと倒して、物陰でエメリア様と……うふふ♡」

 もう帰っていいでしょうか?

 この距離なら維持できるので、メロディアレーゼ様だけで行っていただくとか。


 私は視線でルクシオン様に助けを求めますが、無視です。

 もういいです。


「いたな。あれじゃないか?あの大きな黒い塊」

 目を閉じて私の視線を無視していたくせに、きっと薄目を開けていたのでしょうね。もうっ。


「いたっ!?」

 とりあえずルクシオン様の頭をはたきながら、私は馬車を降り、杖を構えます。


「あれですわね。間違いなく無属性のモンスターですわ。行け、"愛の結晶"!」

 メロディアレーゼ様の腕のまわりから灰色の魔力が渦のように放たれてモンスターに向かいます。

 教えてほしいのですが、どのあたりが"愛の結晶"なのでしょうか?


 その愛の結晶とやらがモンスターに当たると、なんと影の一部が崩れました。

 効いていますね。


 ふざけた態度で、ふざけた名前の魔法攻撃ですが、さすがです……。


「効いてますわ!」

「当たり前ですわ、エメリア様。わたくしの魔法であれを蹴散らしてやります」

『エヴェディアァアアァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????』

 えっ?


 なぜか黒い影のモンスターが恐らく私のことであろう名前を叫びながら影を伸ばしてきました。


「相手が悪かったですわね。ルクシオン様だけなら攻撃できたでしょうが、わたくしの前でエメリア様を攻撃することなど不可能ですわ!」

「おいっ、今まったく私は関係ないだろう!!」

 この方たちは真面目に戦うということができないのでしょうか?

 しかも、なぜ黒い影のモンスターが私の名前っぽいものを叫んでいるのでしょうか?

 疑問ばかりです。

 

 私は飛んで影を避けながらモンスターを観察します。

 騎士団員たちから聞いていたとおり赤く染まった大きな目と、青黒い牙を持つ、黒いモンスター。

 メロディアレーゼ様の言う通り、無属性の魔力を纏っていて、恐らく通常の魔法攻撃はあまり効きません。



 それがなぜ私の名を?

 思い当たる節がなく、困惑してしまいます。


「わたくしのエメリア様を攻撃するなんて、許せないですわね。死になさい、"愛の吐息"!」

 メロディアレーゼ様が唱えると、再び灰色の魔力が集まり、今度はそれが槍のような形を形成し、凄まじい勢いで魔物に向けて発射されました。それが20本ほど……。

 もう一度言いますが、どのあたりが"愛の吐息"なのでしょうか?


『グギャオォオオォォォオオオオオオオオオ!!!!!』

 モンスターはなんとか回避しようと身をひるがえすも、かわす余裕など与えない速度で発射されたそれはほぼすべてが命中して、モンスターを木っ端みじんにしてしまいました。


「ふぅ、見て頂けましたか、エメリア様?♡」

 そして私はモンスターが消え去った後の様子を凝視しようとしていたのに、抱き着いて来るこの変態を誰か止めてください。

 ちょっとそんなところを揉まないで!


「いたい!もうエメリア様の恥ずかしがり屋さん♡」

 モンスターは本当に消えたようです。

 再び何かが起き上がってきたりはしません。

 だから、メロディアレーゼ様、そんなところを触らないで!?


 

 はぁ、もういいでしょう。


「ねぇ~エメリア様♡」

「リターン」

「いや~~~~~~なんで~~~~~~~」

 ふぅ、戻ってくださいました。


「くっ、なんで私まで!!!」

 ふぅ、戻ってくださいました。


 

 私はカーバンクルを肩に乗せて周辺調査を始めます。

 しかし、何も見つかりません。


 あのような威容のモンスターに見覚えはありませんし、ましてかかわったことはないと思うのですが、不思議ですね……。


 もしかして魔王の率いていた魔族やモンスターの生き残りでしょうか?


 う~ん。

 もし無属性という珍しい属性の魔族やモンスターがいたらちゃんと覚えているのですが?



 あっ……


 アラグリア大陸にいた四天王ベッガスの手下とかだったら覚えていないかもしれません。


 でも、あの場所でも無属性なんて聞いたことがないのですよね……。



 謎は深まるばかりですが、とりあえず帰りましょう。


 レオが治ってますように。

読んでいただいてありがとうございます!


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この作品はカクヨム先行連載してます。

また、カクヨム側ではラブコメ要素を入れた現代ファンタジー作品(1,000ブクマ超え!)『リッチ様の探索者育成譚』も連載中です。
もしよければそちらも見て頂けると嬉しいです♪
よろしくお願いします!
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