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なんで私が追放なのよ!はぁ。もういいわ。私は助けを求めてきた剣士様と、私を守ってくれる精霊たちと一緒に行くから、勇者様 あなたはどうぞご自由に。  作者: 蒼井星空
第1章 なんで私が追放なのよ!

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第23話 勇者ざまぁ⑪アホの末路

 私は4体もの大精霊様達とともにロデリグ大陸に戻りました。

 当然、ディルクも一緒で、辿り着いた神殿ですぐにレオとも合流しました。


 数日ぶりだというのに暖かく抱擁してくれるレオに甘えておきました。

 レオはご機嫌です。


「凄まじい精霊様と契約したと聞いたが……」

「えぇ。なんと大精霊様達です。見ていてくださいね、レオ。なにが出て来ても私が無双して見せますから」

「男としては、少しは活躍させてもらえると嬉しいのだが……」

「頑張ってくださいね♡」

 ディルクが遠い目をしていますが、そんなことは気にせずレオと言葉を交わした後、私たちはアホ勇者パーティーを追って転移の魔道具で移動します。



 そうして平原に足を踏み入れたその時……


『これはなかなかだの……』

『ふむ。エメリアよ、心して行くのだ』

『大丈夫。お姉ちゃんには僕たちがついているから』

『心配はいらないが心の準備はしておくがいい』

 火と地の大精霊モルドゥカ様、光と木の大精霊ヴェルディア様、闇と風の大精霊ファムト様、地と冥の大精霊グラニテ様は、みなさんいつも通りですが、私は強大な魔力によるプレッシャーを受けています。


『今回は前の人間とはうって変わってとんでもないのが来たな……』

「なっ?」

 突如として上空に現れた気配。これまでは魔力のプレッシャーだけだったのに、突然出現しましたね。

 見上げるとそこには背に真黒な翼を生やした男……闇の魔力に包まれた上半身裸の筋骨隆々な男性が浮かんでいました。


 そしてその腕に頭を掴まれて垂れ下がっているのは……アホ勇者です。

 もう死んでいるのでしょうか?

 たいしたことない人間って言われてますがいいのでしょうか?意識があれば怒り狂っていそうなので、きっと気絶しているか死んでいますね。



「ライエル……」

 私としてはもう1欠片も心を動かされることのない人ですが、ディルクは反応を示してしまいました。


『これと知り合いなのか? 笑えるほど弱かったが』

 申し訳ないですがそれを掲げて侮辱されても誰も心を動かしてはあげられないのです。

 どうせ勝手に行動して、勝手に仲間を犠牲にして、勝手に負けたのでしょうから。

 せめて単身で突っ込めばよかったのに、あの様子では連れていかれた取り巻きは不運な副騎士団長もろとも全滅でしょうか?


『わかってはいたが、全く心が揺れなかったな……』

 黒い翼男さんすら呆れたような口調ですね。


「それにパーティー追放された人間としては、それがどうなろうと"ざまぁ"としか思えないのですよね。その取り巻きはどうしたのですか?」

 つい口が滑って応対してしまいました。


『私を目の前にして震えながら仲間を盾にして逃げようとする醜悪っぷりだったからな……。一緒にいた人間は適当に蹴散らしたが、運がよければ生きているのではないか?』

 ゴキリ……。


 あっ、首を折りましたね。

 ご愁傷さまでした。それならさっさとこの翼男を倒して副騎士団長だけでも救いましょう。

 


『では、はじめよう。お前たちは楽しめそうだ』

 翼男さんは私たちに向かって闇の魔力の塊を放ってきました。


 それをモルドゥカ様が防いでくれます。


『ほう、精霊か。この大陸の精霊は駆逐したのだが、渡ってきたのか……』

 翼男さんがなにやら呟いています……。


『駆逐とは言うではないか、ラエルバオル。お前程度の力でできるはずがないが、もし駆逐したと思ったのなら精霊たちの方からお前を避けたのだろうな』

 地と冥の大精霊グラニテ様はこの翼男さんをご存じのようです。そして、なにやら下に見ているようです。


『貴様はグラニテ……まさかこのような場所で見えるとはな……相手にとって不足はない』

 ラエルバオルと呼ばれた翼男さんの方はやる気満々です。



 えぇと、戦ってよろしいのでしょうか?


『ラエルバオルって、もしかして泣き虫精霊ラエルバオル???』

 闇と風の大精霊ファムト様がとんでもないことを言いだしました。

 えっ? あの強そうな方が泣き虫? しかも精霊?

 

『なんだと? 誰だ貴様は!?』

 明らかに泣き虫と言われた翼男さんが怒りだしました。

 私でも自信満々に出て来てカッコつけて振る舞ったにもかかわらず恥ずかしい過去を暴露されたら怒るかもしれないです。


『まさか僕たちを忘れたわけじゃないよね?そう言えばダーウェルドも連れていたようだし、間違いないよね~』

 モルドゥカ様も知っているのでしょうか?

 そう言えば魔族の四天王であるダーウェルドと戦った時にもなにか……いえ、そんな記憶はありません。特に何もなく私に力を貸していただけだったと思いますが?


『まさか……大精霊たちなのか……』

 なんと翼男さんが……えっ? 本当に知り合いなのですか? だとしたら泣き虫精霊確定でしょうか?


『なぜ……いや、そこにいる人間が精霊術師なのか……しかも大精霊を複数連れているだと?』

 翼男さんの視線が私を捕らえました。今にも射殺さんばかりの視線ですね。

 私は杖を構えます。



『ふ~ん、僕たちの前でエメリアと戦おうなんてビックリするよね~』

『ぐぉはっ……』

 そんな翼男さんをモルドゥカ様が殴りつけています……。


『そうだよね。僕のお姉ちゃんを怖がらせるなんて、許せないよ』

『ぐはぁ……』

 闇と風の大精霊ファムト様が黒っぽい球体の何かをぶつけます。

 翼男さんはあんなに濃い闇の魔力を纏っているにもかかわらず、ファムト様の闇の力でぶちやぶられたようです。

 落ちてきますね。


「リアを怖がらせたこと、俺だって許せんぞ!」

『なぁっ……』

 まぁ。レオも魔力を纏った剣を振って翼男のなんと翼を叩き斬りました……きゃーカッコいい♡♡♡

 いけません、思わず恋する乙女が出てきましたが……レオ、やはり強いですね。

 大精霊様に混じって見劣りしてませんよ?


『では止めは私が……』

『ぐはっ……』

 そして地と冥の大精霊グラニテ様が地面に落ちた翼男さんをそのまま地面に吸収して……えっと……えっ?終わりですか?


『我の出番がないのであるが……』

 たしかに、光と木の大精霊ヴェルディア様の出番はありませんでしたね……。


「あの翼男さんをみなさんご存じのようでしたが?」

 出番がなくて寂しそうなヴェルディア様に可愛く首をかしげながら聞いてみました。レオがそっと寄り添ってくれるのが嬉しいですね。



『ふむ……あれは、半精霊だったのだ。大精霊候補であったために、我らとは見知った仲である。精霊と魔族の間に生まれた子だった』

 なんと。精霊の中にはとても強い思いを抱えて具現化してしまい、生物の様に子をなすことが可能になるものが稀にいますが、大精霊を狙えるような子が生まれることはとても珍しいのです。


『闇の魔力が薄れていってるな。状況的にはあれが魔王とでも名乗っていたのではないかな?』

「はっ?」

 ヴェルディア様に話を聞いていたのに、割って入ってきたモルドゥカ様がとんでもないことを仰っています。

 あの翼男さんが魔王???


『間違いないだろうな。なに、良かったではないか。もとより力に驕っておったから矯正してやろうとしたのに逃げ出したあれの行方は気になっていたのだ。まさか魔王となって人を苦しめていたことには驚いたが、めでたく倒されて平和になったのであれば』

 いろいろと釈然としませんが、精霊の方々にとってはこの世界がどうなろうと本来知ったことではないのですから、上手く協力を得られてよかったと思うようにします。


 しかも、これで私たちは魔王を倒したパーティーです。

 アホ勇者の様に名誉だけにとどまらず、横暴なことをするつもりはありませんが、きっとレオの村の人たちは喜んでくれるでしょう。

 レオを王に立ててラオベルグラッド王国を再興させましょう。



『あっ……』

どうしたのでしょう、未来に想いを馳せているとグラニテ様がらしくないお声をあげられました。


その横で地面から真っ黒い魔力の塊が浮き上がって、飛び去っていきました……。

読んでいただいてありがとうございます!


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