キミとボクの話
神様なんていない。神様がいたらきっとボクは浪人せず志望大学にいけてたはずだ。
ボクは一浪して大学に合格した。合格したのはいいが、正直、一浪して入る価値がその大学にあるのかどうかはわからない。それならもう一浪して、もっと頭のいい大学に行くんだ。
「この間の受験の話なんだけど、大学には合格したんだ」
「そう、これであなたもしっかり大学生ね」
「もう一浪したい!!来年はバイトしないし、しっかり勉強して、もうワンランク上の公立大学目指すから!!」
「あなたね、そんな甘えた事いうなら、もうこの家から出ていってもらいます。今年のバイトで出来た貯金はいくら?」
「残り30万あるかないかだと思う」
「1円も貸しません、引越し業者、家具家電、家賃、賃貸仲介料とか諸々すべて、そこから出して、あなたには現実を知ってもらいます」
荷物まとめなさい!!と 母は叫ぶ。
ボクは、どうして?と思った。
結果として、すぐに新しい部屋の候補は見つかった。
駅前の不動産賃貸会社で、話を聞いてもらった。
賃貸仲介料は0円、家具家電は冷蔵庫や洗濯機は家賃に含まれる。間取は2DKで、家賃は、駅から徒歩10分以内で管理費込みで6万以内だと?少し安すぎるな。まぁ、いいや、今度の水曜日に内覧させてもらおう。
ちなみに、もちろん、壁が薄いで有名な会社が管理会社ではない。
内覧を済まし、ここを気に入った!!というか、ここに住まないと!!という謎の義務感から、内覧を終え、どうでした?と、不動産仲介会社に聞かれた時に、ここに住みます!!と言った。
それでは諸々の手続きをします。と言われた。
最速の引越し可能日時が来週の水曜日だった。話はトントン拍子に進み、引越し当日。荷物を運び終えた。
「いやぁ、初めての一人暮らし!!有意義に過ごすぞ!!」
「ねぇ、ねぇ」
「なんだよ、ボクは今日から一人暮らしなんだ、構わないで……く……れ……?」
え?確かに今、同年代くらいの女の子の声が聞こえた。そして、もちろん一人暮らしを始めたばかりなので、この部屋にはボク以外いるわけがないし、いても困る。確かに部屋の合鍵は一応、母に1本渡しているが……。
「誰だろう」
「私だよ」
「キミは?」
「いわゆる微精霊みたいな感じかな」
「微精霊……?キミはいったい……」
女の子の声は確かにはっきりとボクの脳内に聞こえる。明るい口調でキミは続ける。
「簡単に言えば……というか、キミが心配な両親の念が私を生み出してキミの元に届いて声が届くんだ、まぁおこがましい言い方すると、神様の一種だね」
「両親が……?いや、怒ってボクを実家から追い出したんだよ、そこまで心配してないはず」
「ふふっ、親の心子知らずだね!まぁ、キミにもう少し大人になってもらう為に、お母さんもお父さんもキミが一人暮らしするよう仕向けたんだろうね」
この微精霊の話はわかるようなわからないような……。
最初はこの微精霊が怖かったが悪意はないようで、2、3日、この部屋に住んでいると、微精霊も一緒にいる気配もするし、たまに両親の念を拾ってボクと会話してくれる。
それを感じると両親に見守られている感覚があり、だいぶ安心感があった。そして、時折、話しかけてくれるので一人暮らしもそこまで辛くない。
今後、この微精霊のキミとボクがどうなるかは、知っているのは神様だけであろうと思い、少し神様の存在も信じそうになってしまう。
そして、この後、微精霊のキミと人間のボクがどういう関係にもならないのはわかりきっている。
そもそも、両親の念からできた微精霊と、どうにかなるのは少し……、いや、すごく嫌だ。
でも、もし美少女の姿でこの微精霊のキミがボクの前に現れたら、どうなるかわからない。