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自分より弱い人に

 夢を見たので、聞いてください。


 中学生くらいの年齢だったと思います。私は近所の友人の家の前で、またそれとは別の友人と待ち合わせをしていました。仮にその友人をFとします。その友人とそこで待ち合わせしつつ、インターネットかわかりませんが、知り合いたちに「来たい人は来てもいいよ」と広く募って広めていたと思います。私はそこで待っていると、また違う友人の妹(Mとします)が最初に自転車できます。意外だな、と思いました。その子は大人しい子で、あまり外に出たがらない子だと思っていたからです。

  しばらくふたりでFや他の友達が来るのを待っていましたが、時間を過ぎてもなかなか来ません。仕方ないからふたりで遊ぼうかと言って動こうとしたときに、やっとFが来ました。FもMと一応顔見知りなので、私と同じように意外そうな顔をしながら受け入れてくれました。 

  それで行ったのは、温泉がついたレジャー施設で、私たち三人は館内着着替えて、何をしようかという話になりました。結局卓球をすることになって、無人の受付に名前と利用時間を書いて(短めの一時間を設定しました。まだ遊びたかったらもう一度戻って書きにくればいい、と思っていました)卓球場に向かいました。私はラケットを二人に譲り、ふたりはラリーをはじめましたが、持ってきた球の三つの内、ひとつはすでに穴が開いていて使い物にならず、二つ目はラリーをはじめてすぐにへこんでしまいました。私は「新しい球を持ってくる」と言って、壊れた二つの弾をもって、ひとり受付に戻りました。 言い忘れていましたが、卓球場にはもう一組グループがいて、少し奇抜な格好をした、背の高い、4.5人の男性グループで、声の大きい私の言ったことを繰り返してからかうようなことをしてきた男がその中に一人いました。私たち三人は気づきつつも無視していましたし、私も少し不快でしたが、学校にもそういうことをする馬鹿がいたので、特に苦労なくスルーしていました。他に嫌がらせをするようなそぶりもなかったですし。

  それで、私は受付に戻ろうとしますがちょっと迷ってしまって、別の受付の人に「卓球の球を交換したいんですけど」と尋ね「あぁそれは1,6階ですね。向こうの坂を下りたところの」と言われました。1,6階というのは聞いたことがなかったのですが、言われたとおりの道を行くと、中途半端な下り坂があって、確かに一階とも二階ともいえない高さの階があり、そこに卓球の無人受付がありました。私はそこに14:26分~15時:26分と書きましたが、さすがに一時間は少し短いかと思いました。上の欄には、あの男性たちのものと思われる時間があり12:○○~24:00と書いていました。確かに制限時間は書かれていないのだから、可能ではあるか、と思い、私も同じようにすぐ下に~24:00と書きましたが、ふと「では他の遊びたい人はどうなるのだろう?」「私たちはお金を払っていないが、お金を払った人が来たらどうなるのだろう」と考えて、やっぱりそれを消しゴムで消して、やはり一時間たったら(その時点で多分あと45分くらいだったと思います)一度戻ってきて、また別の遊びをするか三人で考えよう、と思いました。

  それで戻ってみると、ふたりが卓球していたはずの台が空です。私は不安になって、すぐ男性グループに「そこで卓球していたふたりを知りませんか」と聞きました。できるだけ敵意とか感情とかを見せないように気を付けて言いましたが、相変わらず私のことをからかっているのか私の言葉を繰り返す人もいます。 別の人が「嫌がる女の子を無理やり向こうに引っ張っていったぜ」と笑いながら答えました。他のものたちも、何を想像したのか、下卑た笑い声を出しました。私は「Fはそんなことをするやつじゃない」と思ったので「本当ですか?」と聞きました。「そんなに気になるなら見に行ってみろよ。面白いものが見れるかもしれないぜ」と言いました。私は「ありがとうございます」と頭を下げました。「ありがとうございます」と馬鹿にしたように後ろの奴が繰り返しました。

  それで、不良たちが教えてくれた路地裏みたいな狭くて目立たない小路に行くと、そのベンチに二人が座っていました。私を見てすぐにMが寄ってこようとしましたが、それより手前にいたFが遮るように私の前に立ち「良かった」と言いました。「この子が、あいつらが怖いっていうからここに隠れていたんだ」と。

  「何もなくてよかった」と言いつつ、怯えたような表情のMを見て、本当に何もなかったのか不安になりました。私は少しかがんでMの視点に合わせて「大丈夫だった?」と聞きました。Mは黙って下を向いていました。泣いてはいませんでしたが、とてもつらそうでした。

  私はFに、こう聞きました。

「あいつらが、君がMを無理やり連れて行ったと言っていたが」

「俺を疑うのか? そんなことするわけないだろ。○○(mの兄)と俺も友達なんだぜ」

「そうだよな。疑ってごめん」

「わかってるよ。俺だってお前の立場なら心配になるだろうし」

  私は実際、Mに何かあったら、○○に申し訳ないと感じました。

「今日はもう帰ろうか」と私は言いました。Fも「そうしよう」と言いました。 しかしMは「まだ遊びたい」と言いました。私とFは困って顔を見合わせました。もしFが乗り気なら、ふたりに合わせようと思っていたけれど、Fももう帰りたいならMに我慢してもらおうと思いました。

「でも今日は嫌なことがあったし、私たち三人とも普通の状態じゃないから、また今度にしよう」

「私、Tさん(私)とふたりで遊びたい」 と言いました。私は、確かにFのふるまいはMに対して冷たくて、優しくなかったと思いました。こんな暗い場所に連れ込むのは仕方ないとしても、通路側を塞ぐように座ったのも、私が来た時に真っ先に立ち止まって自分から話し始めたのも、仕方ないこととはいえ、少し配慮と優しさに欠けていたように思う。

「ねぇM。その気持ちは嬉しいけど、それを聞いたFは傷つくんじゃないかな。今は難しいと思うけど、そういうことを気遣えるようにならないと、僕も困ってしまう」 と、悩んだ末に正直に言いました。実際、そもそも最初に遊ぶ約束をしたのはFとだったし。

  他にもいろいろ言いたいことがあったけど「モラハラ」と言う言葉が頭の中で浮かんで、余計なことは言わないようにしようと思って口をつぐんだ。Fはため息をついて「その子ずっとそんな感じなんだよ。悪い子じゃないのはわかるけど、ちょっと自分勝手すぎる。まぁ俺は帰るよ。気遣ってとかじゃなくて、普通に疲れたから帰る」 と言いました。

「ごめんF。絶対あとで埋め合わせするから」

「今度かわいい女の子紹介してくれよ」

  かわいい女の子、と言われて知り合いを誰もイメージできなかったし、だいたい私の知り合いとFの知り合いは同じだったし、それをFもわかっていたと思うけど、多分漫画か何かを真似してそんなことを言ったのだと思った。今度何かご飯をご馳走しようと思った。

  Mは、ふたりきりになって露骨に嬉しそうにしたが、私はそれが少し嫌だった。少しくらい、Fに対して申し訳ない気持ちになってほしかったけど、多分この子はそんな風に他の人に気を遣えるだけの余裕がないのだな、と思った。

  Mはカラオケに行きたいというから、カラオケに行った。Mはすごく歌が上手くて、結局暗くなるまでふたりで遊んで、気づいたら私もとても楽しんでいました。帰り道、こんな会話をしました。

「楽しかったね」

「うん」

「今度は○○(Mの兄)も呼んで三人で遊ぼうか」

「いや!」

「え、なんで?」

「○○はいつも私に意地悪するし、ひどいこと言うから」

 多分私が知らないだけで、○○にもそういうところがあるのだろうと私は想像した。聞いてもいないのに、Mは自分が兄にされたこと、言われたことを私に話し始めた。どれもひとつひとつはかわいげのあるものだったが、確かに本人としてはつらいだろうなと思った。同時に、○○の気持ちもわからないでもなかった。Mは確かに不器用だし、無自覚に人を傷つけるようなところがある。しかもそれは言っても直らない。ずっと一緒に暮らしていると、そこに苛立って当たってしまうのは、自分にも妹がいるからよくわかった。

  最後にMはこう言いました。 「Tさんしか私に優しくしてくれない」と。

  またモラハラという言葉が頭に浮かんだけれど、それでも言わないといけないと思って私は立ち止まってこう言いました。

「みんなは知らないかもしれないけど、Mは、本当は……人に気を遣えるいい子だと思う。今は、つらいことや悲しいことがいっぱいあって落ち着いて人を見ることができていないんだと思う。だから、うまくいかないことがあっても仕方ないし、辛抱強く我慢するしかないことも多いと思うんだ。でも、ひとつ覚えておいてほしいことがあるんだ。自分より弱い人がいた時に、優しくするようにしなきゃいけない。どんなに賢くなっても、どんなに素敵な人になっても、結局人間にとって一番大切なことは、それだから。自分より弱い人に、ひどいことをしちゃいけない」

「うん。わかった」

  それで、私は家に帰っていろいろなことを考えているうちに、目が覚めました。 なんで最後にあんなことを言ったんだろう、と夢の中の自分に疑問を感じました。誰かに言われたことがあったか思い返しましたが、誰にも言われた覚えはなく、どこかで聞いたような言葉でもありませんでした。

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