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非作家性
読者には背を向けた。
書くべきものを書くためにそれが必要だったから。
賞賛は惜しかった。
栄光も、金銭も。
信念を貫くためには己の楽しみさえ断ち切らねばならなかった。
もはや自己満足ですらない。
それは自らが定めた法であり、私の心に生ずる快の感情は、目的でも報酬でもなく天からの贈り物である。
荒野をひとり歩く。
ぼろぼろの靴を履いて。
私は作家ではない。
祈るように書き、刻むように置く。
書かれた物の価値をはかるのは私の仕事ではない。
だから私はいつでも黙って去るべきなのだ。




