シンプル
もっとシンプルに。もっと単純に。
私たちは疲れやすいから。私たちは愚かだから。
だからもっとシンプルに。もっと単純に。もっとパターンに当てはめて?
慎重になるのは、その対象を選ぶときだけでいい。そしてシンプルにしちゃいけないものは、触れなければいい。それだけでいい。
世界はそれだけで十分成り立つんだから。
複雑な自分を見て、どうしようもないって諦めないで。そうでしょ? もっとシンプルになれるなら、シンプルになろうよ。いらないでこぼこはそぎ落として。いらないものは切り落として。そうして、つるつるの表面をもって、一目見てそれだとわかるような姿になって。
だってそうでしょ? その方が美しいんだから。
まだそちら側に立っているの? そちら側には何もないよ。うん。君の言う通り、時代は君の側に傾きつつある。でも、あと何年かかるのかな? 数百年? 数千年? そのころには多分、人類は滅んでいるから、あるいは人類じゃなくなっているよ。
だから、シンプルで行こう。どちらかを選べるのなら、こっちを選ぶべきだ。こっちの方が難しそうに見えるだろう? うん。だからこそ、こちらの方に価値があるんだ。
いつだって、珍しくて、人の努力や意図が絡んだものの方が価値を持つんだ。だから、君はもっとシンプルになるために努力した方がいい。
うん。君のためを思って言っているんだよ。もし僕が僕のためだけに君に話すなら、君は複雑なままでいいって言って君を安心させるだろうけどね。なぜかって? その方が、僕の希少性は高まるんだから。
他の人たちみんな、この世界そのものも、複雑なままでいい。そうしたら、それよりずっとシンプルな僕らだけがみんなから愛されることができるじゃないか。そうだよ。もっとシンプルになろう。もっと愛されるために。もっと成功するために。
もっとシンプルにやろう。
君はこの世の底の底を見てきたんだろう? 疲れた目をしているね。そうさ。シンプルにやろう。この世は確かに複雑だ。複雑すぎると言ってもいい。でもその複雑さに価値なんてない。汚い部屋に入りたい人なんていないのと同じ。汚い部屋にいる人たちだって、他の人の汚い部屋には入りたくないんだ。ただ、自分が作り上げたものだから、それに愛着を持って掃除してないだけ。
ねぇ、愛着なんて捨てちゃいなよ。不潔なだけだから。君は複雑なまま生きてきたみたいだけど、生きづらいだろう? 苦しいだろう。何もかもがくだらなく見えるんじゃないかな?
寂しくて仕方がないんじゃないかな。誰も君には近づけなくて、君も心の中がそんなに散らかっていたら、誰にも近づけないだろう?
なぁ、ものごとを難しく考えるのはもうやめにしよう。君はもっとシンプルでいい。その結果として損をしたとしても、きっと複雑なままでいた時の損よりはずっと小さいだろうから。
つまらない人間になりたくないって思った? みんなそう思ったから、シンプルになったんだ。君は、みんなの努力を否定したかったから、シンプルになろうとしなかった。そして君の姿は、努力をする人たちよりもずっと醜くなった。そうさ。人間は、シンプル以上の存在には慣れない。神様ではないからね。
だから、シンプルになろう。大丈夫。シンプルになったって、君らしさは消えやしないよ。むしろ、それが際立つんだ。そうしてみんなが、君らしさを愛するようになる。心配しなくていい。だから、まずはその三つ目の目をつぶして、瞼を縫い付けよう。もう、二度とその目でものを見ることのないように。




