オンラインゲーム
ある生真面目な青年が、紛争関連のテレビドキュメンタリーを見て思った。この世界がこのまま続くくらいなら、どこかで全部滅んでしまえばいいと。
あるいじめられているかわいそうな少年が、帰り道をひとりでとぼとぼ歩きながら思った。あいつらも、先生も、自分自身も、みんな消えてなくなってしまえばいいのにと。
とある別にブラックでもホワイトでもないいわゆる普通の企業に勤めている男性が、残業帰りの終電に揺られて、明日の業務の内容について考えながらふと思った。あした自然災害か何かで、会社がなくなっていればいいのにと。
ある瞬間、この地球上のうち一億人の人間が同時に思った。こんな世界、もういらない、と。
それが、この世界を見限った創造主の設定した終末のトリガーだった。
「だから何だって言うんだよ、めんどくせぇ」
地上で流行っているオンラインゲームが画面に映っている。その男は両手を慌ただしく動かして、仲間たちに支持を出しているが、どうやらそのうちのひとりが全く言うことを聞かないらしい。
「マジでこいつクソだな。死んだほうがいい」
「なら、殺してしまいましょうよマスター」
「住所調べるのめんどくせぇだろうが」
「この国に住んでいる人を皆殺しにすればいいのです。そうすれば、マスターに不敬を働いたそのものも死ぬことでしょう」
「おいおい。そんなことしたら、この最高にして最低のゲーム、リーグオブフールズができなくなっちまう」
「別にいいじゃないですか、マスター。そんな、マスターを愚弄する者たちが興じる下賤な遊びなど。そんなものたちとよりも私と肌を重ねるほうが……」
「なんで何億年も昔からある遊びを今更やらなくちゃならんのだ。俺は今、このゲームを極めると決めたんだ。この世を滅ぼすのはその後でいい」
「はぁ。マスターがそうおっしゃるのなら」
実際、この世がまだ滅んでいないのは、あるひとつのしょうもないゲームのおかげだった。もしこの男がこのゲームに飽きて、また別の夢中になれるようなゲームを探して、見つからなかったのなら、その時には人類すべてが息の根を止めるその時なのかもしれない。




