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Song of Souls  作者: 日ノ丸浩一
プロローグ ーcollapseー
1/1

始まりの日

挿絵(By みてみん)



〜人暦568年〜 レイカ村 中央広場付近




「……!」



       ……?



「……君!」




       誰かの声がする。




「おい君!大丈夫か!?」




       これは、夢……?



そう思った矢先、体に大きな振動が加わる。

どうやら誰かが僕の両肩を揺らしているらしい。



「お、……ぁ」



自分の意志に反して、思うように声が出ない。

同時に全身を蝕むように纏わりつく火傷に気がついた。

言葉一つ話せそうにないのはそのせいか。

月の光が異様に眩しくて、思わず目を細める。



「……まだ息がある!おい救護班!

 大聖堂に運んでやってくれ!」



朧げだった視界も段々と鮮明になってきた。

そして目の前にいるであろう人物を見る。


金の短髪。眩いばかりに輝く白銀の鎧。

腰には一振りの長剣。身なりからして

ヴェルモンド王国の近衛騎士に間違いないだろう。


しかしどうして近衛騎士が、こんな辺境の土地に

来ているのか。そもそも自分は家にいたはず。

それが今、こうして地面に放り出されているのは何故か。

他の人たちはどこにいるのか。

妹ーーセナの姿も見当たらない。


疑問は尽きないまま僧侶姿の男女数人に

抱き抱えられた所で、僕はようやく状況を理解した。


見渡す限りの火、火、火。

中央広場にあったはずの巨大な噴水は見る陰もなく

破壊されており、建物はほとんどが焼け崩れている。

地面に生えている僅かな草花も瞬く間に火に包まれ、

炭と化していく。


村全体が、燃えている。


村のはずれにある大聖堂の中へ連れて行かれたかと

思うと、そのまま大聖堂の中央広間にある簡易ベッドの

上に寝かされる。流れるようにして僧侶たちが

回復魔術の詠唱を始める。


淡い緑色の光が傷口から湧き出ると共に、

火傷による痛みや体中の倦怠感が少しずつ引いていく。


数秒後、治癒が終わったのか足早に去っていく僧侶らを

横目に、まだ痛みの残る体をゆっくりと起こし、

辺りを見回す。


慌ただしく動く近衛騎士、僧侶達。

そして灰色の布地に金の刺繍がしてあるローブを

纏った人々もいた。王国の魔導士達だろうか。


つい先程までは……

穏やかな時間が流れていたというのに。

今となってはまるで生き地獄だ。



「な、にが、起こって」

「まだ寝ていないとダメだ!生存者の捜索は私達が

 しているから、君は大人しく……」



していなさい という声を聞く前に、僕は簡易ベッドから

飛び降りると衝動的に走り出していた。




「おい君!待ちなさい!!」




他の村人達が誰一人見当たらなかったのもあるが、

何よりセナが見当たらない事に不安が募った。


気力と体力を振り絞ってただただ走る。

草花だったものを踏みつけ、道を塞ぐ建物の残骸を

飛び越え、降りかかる火の粉を払い、

我が家のある方向へと向かう。




"この道を左に曲がれば、ログハウスがあるはず"




(以下回想)


僕と妹は、祖父のヴェンと祖母のマリアの四人で

暮らしていた。父と母は幼い頃に事故で亡くなり、

当時まだ幼かった僕と妹はレイカ村で暮らす

祖父と祖母の家に引き取られた。


両親を無くした僕たち兄妹を、村の人達は温かく迎え

入れてくれた。村の大人達に狩りや農業を教わったり、

日常で使える簡単な魔術を教えてもらったり。

毎日が驚きと発見の連続だった。




「ねぇねぇおにいちゃん!見て見て!

 わたし光の矢を曲げれるんだよ!」




そんな日々の中、セナには魔術の才能がある事が分かった。

習得に半年はかかると言われる、光の矢を放つ魔術

「セレスト・アロー」を僅か一日で習得したり。

水を創り出す魔術「水創造《アクア・ジーン》」で

常人の何十倍もの水を創り出し、畑を水没させたり。


村の大人達は、皆開いた口が塞がらない様子

だったのを今でもよく覚えている。それ以上に

本人が目をキラキラさせて一番驚いていた。


時が流れ自分が10歳、セナが8歳の頃、二人揃って

王都にある「アウステロリッツ魔術学院」に入学。

セナはエリートが集う特待生クラスの一年で、成績は

常に学院内トップ。学院の生徒達の中で魔術の腕を競う

「魔導祭」では、一年にして次々とライバルを破り、

圧倒的な強さで優勝してしまった。少なくとも自分が

在学してる間は学院一の有名人だった。


自分はというと、通常クラスの三年(10歳だったので

三年生のクラスに編入という形になった)で、成績も

下から数えた方が早いくらいだった。


セナが学院内でどんどん腕を上げ、有名になっていく。

最初は兄としただただ誇らしいだけだった。しかし日が

経つにつれて、妹と自分の間にある隔絶をまじまじと

見せつけられているかのような気持ちの方が

大きくなっていった。


恐らく、自分は妹が羨ましく妬ましいだけだった。

どうして僕じゃなくて妹がーー兄より優れた妹なんて

おかしいーーと考えてしまうことも多々あった。

そのせいで妹に対して、細かい事で怒ったり

冷たく当たってしまうことが多くなっていった。

セナは何一つ悪くないのに。


そんなことを考えている自分に嫌気が刺して。

セナに対する罪悪感を少しでも紛らわせたくて。

自分は剣の道に没頭するようになった。


魔術学院に通いながら、空いてる時間を見つけては村の

衛兵たちや祖父に剣を教えてもらっていた。それだけ

では満足できず夜中に黙々と剣の素振りをした。

村に定期的に魔物調査にやって来る地方の騎士に

手合わせをお願いする事もあった。


剣の腕前は、人並み以上には上達したと思う。

段々と年上の大人たちに勝てるようになってきて、

自分が妹に少しでも追いつけているような気がして

嬉しかった。


俺は剣、妹は魔術。今まで邪険に扱ってしまう事が

多かった自分だけど、これからは幼い頃のように

また仲良くやっていけるといいな……と



今回の出来事は、そう思っていた矢先だった。




(回想終)





四人で泣いて、笑って。怒って、怒られて。

沢山の思い出が詰まった小さなログハウス。

……本来そこにあるはずのものは、無惨にも焼け崩れ

建物としての原型を留めていなかった。




「……そ、んな」




希望が打ち砕かれた絶望と後悔で心が一杯になり、

その場で膝をつく。まだ妹に「ごめんなさい」の

一言すら言えていないというのに。ここまで育てて

くれた祖父と祖母にまだ恩返ししきれていないのに。



気力が一気に体から抜けていく。



もう立てそうになかった。




作者の日ノ丸浩一です!

この度は閲覧して頂き有難うございます!


小説書くモチベが無かったりあったり、

多忙だったり暇だったりで中々投稿できないことが

ありますが、ご了承頂けると幸いです


もし良ければゆっくり見ていってください

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