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「記憶の鎖」(Chain of Memories):妙×恵×清

#記念日にショートショートをNo.22『失われた呪い』(Lost Curse)

作者: しおね ゆこ

2019/8/16(金)盆明け 公開

【URL】

▶︎(https://ncode.syosetu.com/n2104id/)

▶︎(https://note.com/amioritumugi/n/na7633507ca3e)

【関連作品】

「記憶の鎖」シリーズ

息を深く吸い込む。

ドアに手をかける。

ゆっくりと、扉を横に引く。

思ったよりも、そこは明るかった。

「やあ、妙。」

ベッドの上に半身を起こし、恵兄が笑顔で私を見た。

「恵…兄…。」

口に出した途端、涙が一粒、床に落ちた。


恵兄の意識が戻った、と連絡があったのは、今朝のことだった。恵兄が倒れた日から、3日が経過していた。担当医の話によると、今回の発作はストレスによるものだという。勉強のしすぎが原因らしい。経過は良好で、今後、発作が起こる可能性は低いとのことだった。

自宅の仏壇の前で、手を合わせる。

「お兄ちゃん、恵兄を守ってくれてありがとう。」

あの時、流れた一粒の星は、清兄が届けてくれた、アリアドネの糸のようなものだったのかもしれない。そのくらい、星は優しく、あたたかく、強く確かに輝いていた。

「妙ー。恵くんのお見舞いに行くわよー。」

玄関から私を呼ぶ声が聞こえる。

「うん、今行く!」

そう答えて、もう一度お兄ちゃんを振り返る。

たくさん、伝えたい言葉が浮かぶ。たくさん、伝えたい思いがある。何て言えば良いのだろう、何を伝えればいいのだろう。数秒、写真の兄を見つめる。

いや、言葉では表せられない、言い尽くせないものなんだ、きっと。なんとなく、そう思った。清兄は今までもこれからも、私の兄だ。その事実は変わらない。失われていても、ここにいる。だから、大丈夫だ。未完成でも構わない。私は自分で歩いていける。

「妙ー置いていくわよ!」

お母さんの声が私を急かす。

「あ、待って!」

廊下を走る。恵兄に、伝えたいことがある。







すいくんに捧ぐ






しおね ゆこ

【登場人物】

○妙(たえ/Tae)

●恵(けい/Kei)

【バックグラウンドイメージ】

【補足】

◎タイトルについて

No.19『呪いの記憶』(Cursed Memories),No.20『記憶の上書き』(Overwritten Memories),No.21『上書きを無くして』(Lose Overwriting…),No.22『失われた呪い』(Lost Curse)には、タイトルに関連性があります。それぞれ「記憶」,「上書き」,「なくす」,「呪い」というワードが重なっており、「呪い」→「記憶」→「上書き」→「なくす」→「呪い」とあえてループをさせています。タイトルをループをさせた理由は、妙と恵に、ループというしがらみがある中でも生きられるような強い〝生きる意志〟を持ってほしいと考えたからです。「なくす」のみ「無」・「失」と2通りの漢字表記を用いた理由は、私はそれぞれ漢字に「無」は物質(固体)的・表面的,「失」は観念(気体)的・完全的な意味合いがあると考えており、その意味合いを含ませたかったからです。

◎本文最下部の文言について

本文最下部にある氏名は、私(著者)の児童期のクラスメイトの氏名です。この作品において、妙と恵2人に共通する大切な記憶に生きている清(清兄・清くん)の名前・雰囲気のモデルが本文最下部にある氏名の彼であり、この作品は小学校卒業の数年後に亡くなってしまった彼に哀悼の意を表する作品であるため、このような文言を記しました。また、初公開当時は文言の下に私(著者)の本名も記していましたが、「小説家になろう」にて公開するにあたり、便宜上、代替措置として、私(著者)のペンネームを記させていただいています。

【原案誕生時期】

公開時

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