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酒呑童子と宵闇の無能姫

2。


あの人達は、私が生きて教育を受けていることを知らなかった。もちろん、棄てられた立場の私としても教える義理はなかった。魔力注ぎによる税率引き下げ制度は少し後から付けられた特典だったから、がめつい彼らは、税金対策に私を利用できないまま放逐してしまったことを悔やんだらしく、公爵家に使用人として私がいることを知ると除籍取り下げを国に申請した。けれど既に私は除籍され、名前も侯爵夫人に新たに付けて貰ってて、とある家に養子に入ることが決定していたから無理だった。横槍があったことを知らされた時から、私の体にある痣が広がり始め、膿むようになった。少々高い塗り薬を塗って遅延魔術陣が施されたガーゼを貼り付けないと悪臭を放つため、就職するに辺り、人との接触が少ない職を探す必要があったけど、あの方や養い親が私の能力をかってくれて、城への就職を後押ししてくれた。試験は一発合格だった。学園に通わず試験に受かった平民は初めての快挙だとあの方も両親も誉めてくれた。けれど、呪い持ちと言うことで、希望の部署は望めず、私を閑職に追い込んだのは、あの方が長い放浪の旅に出ていて国に居なかったのも響いたのだろう。公爵家を出て新しい家族と暮らすようになっていた私には、元家族からの圧力には無力だった。あの人達が執着するのは私だけなので、今の両親に被害はないはず、ならばと家を出て職員寮に入った。元父親は私に呪いのせいで今の家族にも見捨てられたのだろうと言ってきた。顔も見たくなかった男の体が醜く膨らんでいることに内心笑ってやった。見捨てられたのならば拾ってやろうと言われたけど勿論断った。王立騎士団に所属している義兄も同じようなことを言ってきたけど関係ないと無視した。それに対する報復かな、今回の異動も………。元父親は、伯爵位を持っていて財務省の副大臣らしい。もう少しで大臣と言われていたらしいけど、前大臣が次代に指名したのは子爵家の嫡男だった。もちろん、元父のプライドは刺激され何故自分ではないのかと問い詰めた。別室で理由を告げようとした前大臣の言葉を遮り、朝の朝礼で自分が有利に立とうとしたみたいだけど、能力的にも魔力保有量も魔術の腕も人徳も元父親より遥かに上だと大臣自ら選出理由を言い、国王陛下も認めているとまで言われては引き下がるしかなかった。赤っ恥である。良い気味だと思ったら此方に矛先を向けてきたのには参った。


ここは、何か色々問題を起こした人がやって来る部署だ。元父もここに来ればいいのに。あ、うそです。あれが来るとかなり、めんどくさいから却下。とりあえず、財務省にいることが誇りみたいだから、そのままでお願いします。にしても、上司もそうだけど、皆が皆、人としてどうなの!と思う人格だと私は思っている。野放しにするには貴族社会のイメージを損ね、下手に出れば選民主義の貴族がバックにいるようで何かと強気な連中が多い。

私?私はそれほど愚か者達の被害は受けていない。どちらかと言えば避けられいる。何故かと言うと私が呪われているからだ。顔や体の至るところに痣と言うか、出来物がある。一部の出来物は年中膿んでいて、結構くちゃくて、大変である。今の家族に迎えられて、暫くした頃、薄くなりつつあった呪いの痣が濃く広がり始めたことがあった。私のことを実の娘のように接してくれる養い親は、知り合いを通じて王城にある魔術省呪術課を訪ねた。対応してくれた呪術師は、幼い頃から受けてきた呪いは根が深く、解くには膨大な魔力と時間が、そして費用がかかると言ってきた。その金額に私も養い親も絶句した。国家予算とまではいかないが、私達家族にとってはとてつもない金額だった。肩を落とす養父母に申し訳なく思った、けど嬉しくもあった。それだけ本気で考えてくれていたことに心が凪いだからだ。私を私のまま受け入れてくれる存在がいると言う安心感。心が落ち着くと、膿んでいる箇所の痛みが引いてくる気がした。強がりでも何でもなくて、こんな呪われた私を愛おしんでくれる人がいることが嬉しかった。呪いの専門家である呪術師の報酬はとてもじゃないけど私には払えない。呪いを解く時に下手こけば自分にも呪いの影響が出てくるそうだから、危険手当てが高いのだ。高位貴族であり、資産家と言われる元実家ならともかく、安月給の私には無理な話で、死ぬまでに『解呪預金』がどれ程になるかなんて、わからない。たぶん、私は呪われたまま死んでいくのだろう。けれど、死ぬ時には、私を呪った相手を呪いながら死んでやる!と決めていた。


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