表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

酒呑童子と宵闇の無能姫

長くなった。説明文多し!

1。


「転勤?………ですか?」

上司に言われた一言にあんぐりと口を開けた。

「期間は……、人事が決めるだろう、三日後に、第一駐屯地に行け、まったく、せいせいする。君のような呪い持ちと同じ空間でいることは苦痛だったからねぇ。だいたい、伯爵家から受けた恩義も返さず、王城に勤めるなと、恥を知りたまえ。」

口角を上げて軽い口調の上司にため息を吐きそうになったのをぐっと耐えた。

恩義?何に対する?

あー、棄ててもらったことには、一応感謝するべきか?

私とて好きで、この部署に来たわけではないんだ。その言葉を心の中で叫んだ。


オーヴェル帝国の王都の北の森の奥には、通称『大穴』と呼ばれる異次元と繋がる大穴が空いている。落ちた先は異次元、もしくは異空間に繋がっていると言われていて、時に、この世界では存在しない化け物が現れる。この間は、ベヒモスとか言う古い本にしか載ってないような巨大な亀みたいな魔物が現れて、結構な人に犠牲が出た。

でも、騎士団や王族の方々の活躍でベヒモスが討伐されたと思ったら、次は伝説級のドラゴンが現れて、私なんかは、『死んだ、この国は終わりだ』と思った。けれど、国王陛下や王妃陛下方の結界や、王立魔獣騎士団と殿下の活躍で被害は最小限に抑えられた。我が国の王族はすげぇなって、歓喜の声が上がったよ。でもって、私はその『大穴』の調査の下請けの下請けのような仕事をしている。一応学園も出て、文官として、王城に就職したけど、実家からの圧力や呪いのことで役所内でも閑職に回されている。何度か、大穴の調査をしている騎士団の補佐に行かされるかもと思っていたけど女と言うこともあって、危険な大穴付近ではなく、城内での資料作成とか、資料整理の超閑職に回されていた。


私は、魔力はあっても、それを魔術に還元できない。そういう人間は、この世界には五万といる。しかし、一部の特に貴族階級の人達にとっては、魔術を使えてなんぼ、ってことでまともな職には就けないのが定石だった。もうとっくに縁はきれているが、私の実家も貴族であるため、その家に生まれた魔術不適合者である私は彼らにとってサンドバッグ以外の何者でもなかった。

今の陛下が即位してからは、魔力の有無、魔術適性に関わらず、能力があれば出世出来る。たしか、今の宰相閣下が魔術不適合者で、優秀だけど恵まれない環境に居られたのを陛下が取り立てたとか。

魔術不適合者のパイオニアにそんなお偉いさんがいるから、私があの家に居たときと比べたら、住みやすさは格段に上がった。

それに追随する技術開発が進んだことも魔術不適合者地位向上に追い風となった。つまり、魔力保有量は多大なのに魔術の行使が出来ない、元父曰く、『穀潰し』の私達にも光が射したのだ。

国の魔術機関の超エリート様達が知恵と技術を集めて、この無駄にある魔力の使用方法について、某魔術を組み込んだ装置を生み出したのだ。大穴から流れてくる強い魔素(瘴気)の影響から国を守るための魔術結界に魔力を注ぐ装置を発明してくれたのだ。私のように魔力を魔術に還元できなくて、体の中に澱んでしまった魔力のせいで、『魔力酔い』を起こし、漏れでた魔力が大地に還るまで、日に何度も倒れているようなみそっかすが、魔力が澱み始めたら、その装置に魔力を注げばよいと言う渡りに船な装置。装置に刻印された魔術陣に触れると不要な魔力を即座に計算して吸い出してくれると言うのだ。エリート魔術師さんチームには、医学に精通した方々もいたようで、私のような患者の声も考えてくれたのだと嬉しかった。宰相閣下が中心となって行われた国家事業だった。国は常に結界魔石へ魔力を注いでくださっている王族への負担を減らせるから、お偉い魔術師さん達の発明はまさに一石二鳥の神業だった。結界魔石っていうのは、それぞれの国に1つしかない神様からの贈り物だと教えてもらった。常に大穴からの魔素と戦っている我が国には必須の魔石で本当なら砕いてそれぞれの地域に置きたい所なんだけど、とてつもなく硬く、大きく動かせない城の地下殿に鎮座しているのだという。結界魔石はオーヴェル帝国建国前から存在してて予知の聖女が今の陛下のご先祖に石を中心とした国を作れと言った。当時、一介の豪族に過ぎなかった若者が中心となって国を作り、力を得て帝国を築いた。けれど、うんと前に国の北側の森を治める精霊王がトチ狂って大穴を開けてしまった。厄災でしかない大穴を抱えながら国を治めるしかなかった王族の方々には頭が下がる。それが帝国に生きる民全ての(たぶん)総意だ。元親も魔術不適合者の私では家で下女の役が精一杯だ、国への貢献など出来ぬお前など死んでしまえと殴られたこと、忘れん!

装置が出来たと聞いたとき、役に立たない魔力が人々の役に立つなんて!どれ程嬉しかったか。しかも、定期的に寄付とばかりに装置へ魔力を流す行為は国への貢献とされ、税金が軽減されるのよ!色々規定があるけど、注いだ魔力量によって手当を希望出来たりする。特に庶民の中には、私みたいな魔術不適合者が多いから生活に大いに潤いを与えた。力注ぎの時に職を休む場合の雇い主への保証制度も確立している。こんな制度を作った国王陛下をはじめとした首脳陣はめっちゃ人気だ。私としては、この制度が始まった時には、既に家から除籍されてて、とりあえず家から出てて良かったと運の良さに安堵したものだ。穀潰しと罵られていたまま、この制度が明らかになってたら、私は魔力切れを起こすまでギリギリ働かされた上に、装置に魔力を注ぐことを強制されていただろう。私のような魔術不適合者は、体内の魔力が全体の60%を超え始めると体調不良を起こし始め、20%に近付くと身体機能が低下する。文献によると冬眠に近い状態になってしまうため、自分の体に蓄積する魔力属性の近くで体を休めると魔力の戻りは早いらしい。私は実家にいる時に魔力測定は行ったが魔術への還元が出来ないため属性検査は行わなかった。学園に入るに辺り検査をしたけど、呪いが邪魔して結果は曖昧だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ