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酒呑童子と宵闇の無能姫

プロローグ


「あぁ、気味の悪い顔だこと。」

ならば、見なければいい。

「魔術を使えないなんて、あり得ない。」

吐き捨てるように言うのは異母兄だ。

彼の言葉に魔力は、腐るほどあるけどねと心の中で呟いた。

「この間も魔力酔いで倒れたとか。発散できん魔力など、さっさと捨てればいいのに。母親の教育が悪かったのだな。」

お母様の悪口を言わないで。

「まぁ、おねーさまったら、こわぁーい!おかーさま、おねーさまがにらんだぁ!」

足音を立てて母親に飛び付く少女。私にとって妹だ。半分だけの繋がりしかないけど。

「まぁ、イングリットを睨むなんて!その闇夜のような目も気味悪いわ!」

さっと顔を伏せる。

「お前の顔の痣は、お前の母親が付けたに違いない!あいつは、そういう女だ!」

「まぁ、旦那様!これをこの家に置いておくと災いが来るのではなくて?」

お母様が、私に呪いをかけるはずがない。いい加減なこと言わないで!そう心の中で叫ぶ。

「反抗的な目だ!気にくわない!」

風魔術で生み出された塊が私の体を壁に叩きつけた。

「こんな単純な攻撃も防げないとは、本当に貴族の娘か?」

全身を打ち付けた。

「おとーさま、おねーさまのこと、イングリットは、きらーい、きたないもん。」

「そうだな、………はした金にしかならんだろうが、こいつを我が家から除籍し、真なる家族だけで暮らそうか。」

「父上、素晴らしい考えです!これ以上我が家にこれを置いておけば、呪いの影響が我々にも現れるかもしれません。」

「イングリット、おとーさま、すきー。」

暖かい家族の団欒。

私の父親を名乗るそいつは、ろくでなしだ。お母様と結婚する前から浮気して子をなしてたくずのくせに。

お金目当てでお母様を騙した男。

病床のお母様が嘆いていた。

子供には分からぬことだと思って愚痴を溢していたお母様。ごめんなさい。お母様の愚痴の意味も、お母様が死んだあとに私を襲う境遇も想像できてたよ。

こちとら、酸いも甘いも噛み分ける年頃女の記憶持ちだ、てやんでぇ!何処の時代の誰だったかは分からないけど、子供ではなかった!

けれど、冬の寒い日に目覚めたら、子供になっていた。

それも最悪家庭環境の。

何度殺したくなったか。

そういう思想に辿り着くと言うことは、前世は上品ではなかったのだろうと思う。


この世界には体内にある魔力を使って魔術と言う不思議な力を使う人達が沢山いて、その人達は貴族であることが多い。

魔力があっても魔術が使えない人は圧倒的に庶民に多いから魔術が使えることは貴族として当たり前のことで、私は確かに貴族の父母から生まれたけど魔術の使えない、魔術不適合の無能だった。5歳で行われる魔術適合及び属性検査で判明した。以後、下女扱いだ。魔術適性のある貴族の子供が生まれると自動的に親の給金から積み立てが行われる制度もあって父親と義母は私の存在を疎んでいた。庶民には所得に合わせた子供の将来への積み立てを国が立て替えている。かといって、魔術の適性がないからと言って差別することは法律で禁止されていると今は辞めてしまった執事さんが教えてくれた。まぁ、あの人達は、法律なんて無視してますけどね。

「魔術が使えないから、下女として置いても役に立ちませんし、他の使用人もこれに仕事を押し付けてサボろうとしてますのよ、ストレス発散にはよろしくても、いつ政府の方から、我が家の長女のことを聞かれるか分かりませんもの。」

「そうだな、………マイク!」

「はい、旦那様。」

部屋の隅で立っていた痩せた男が丁寧な礼をする。

「ドーロを呼べ。これを、そうだなぁ、10エースで買取りを依頼しろ。呪い持ちだから、大した金にはならんだろうが、何処かの酔狂者には売れるだろうとな。あと、これの戸籍を抜く。適当な死亡理由をつけておけ。児童積立金の解約も行えば何とか元は取れるだろう。」

気を失いながら私は、そんな会話を聞いていた。

どうせ、何処で生きたとしても、大して変わりはしない。

何処に行ったって、魔術の使えない私には地獄だろう。

はやく、お母様の所に行きたいなぁ。



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