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酒呑童子と宵闇の無能姫

5。


「今日からお世話になるルチア・パルクールです。ご覧の通り、呪われてますが、皆様には影響はございませんので、雑用その他諸々お申し付け下さい。」

2週間かけてやって来ました第一駐屯地。

正直、既にボロボロだったけど、出来るだけ明るく言ってみた。


あの事件から3ヶ月経っていた。

一時死亡説が出ていたフィンのお兄さんも、クロノス様も無事だと聞いて安心できた。今まであまり表に出てこなかった第三王子殿下が大活躍したと聞いた。本当に我が帝国の王族は凄い。

第一駐屯地に派遣されていた半数の騎士や事務方の半分に犠牲が出たとフィンからの手紙で知った。

今回の魔獣襲来事件の犠牲者への追悼式が行われる数日前に駐屯地へと向かうよう上司に言われた。

派遣命令が出てから用意はしていたので準備は粗方出来ていた。

犠牲者の数も補う必要があったため、今回はいつもの派遣よりも人数が多く、覚悟も必要とのことで任命されても拒否権が与えられた。勿論、私には拒否権はなかった。聞かれなかったし?派遣される人達には送別激励会が行われ、王立魔獣騎士団の護衛付きで駐屯地に向かうことになっていた。私は、辻馬車を乗り継いで、禁足地とされる大穴の森に通じる門からは歩きでしたけど?

門から駐屯地まで3日、フィンが持たせてくれた魔術瓶と給料でかった最小サイズのマジックバックで保存できたパンのお陰で生きてたどり着けた。目の前にいる駐屯地の隊長が目を見開いていた。

「女!なんでや!女が駐屯地に派遣されてくんねん!」

隊長の一人が叫ぶ。

大穴から漏れ出る瘴気は、防御出来ないと人体、及び精神に影響する。事務方も本来なら防御に長けた騎士や修行を積んだ魔術師が派遣されてくる。女性で大穴に派遣される騎士や魔術師はいるが、余程の覚悟と実力がないと派遣が許されない。そんな場所に文官でしかない女性、しかも、魔力は豊富でも魔術不適合者だ。無茶苦茶だと派遣先の騎士は驚いた。

「呪い持ちだと、瘴気が防げるんでしょうか、」

ちょっと疑問だったので聞いてみた。

「そんな、アホな。」

と言われた。西の方のなまりのある兄ちゃんだなと思った。

「にしても、ただの文官やで!ありえんわ!」

なんやかんやと騒がしい騎士達。

「嬢ちゃん、とにかく来てしまったのは仕方ない。すぐ帰れるようにしてやるからな。」

第一駐屯地の隊長が言う。

彼は襲来の時の生き残りで事後処理の責任者であった。

魔獣騎士団の護衛で辿り着いた部隊は既に到着して5日になるけど聞いていた人数が一人足りなかった。門からの連絡が来た時もまさかと疑ったが、普通の騎士なら半日もあれば辿り着くはずが来ないので引き返したのだと思っていた。しかも、現れたのがボロボロだけど女ってことで隊長は言葉を失くしていた。

「ありがとうございます。けど、精一杯、仕事します!」

そう言った私に隊長さんが一つの魔石をくれた。

浄化魔術が刻まれているらしい。

森には池や湧き水はあるみたいだけど、なんと言っても大穴の近くなので何が起こるか分からないため、浄化魔術は必須だそう、でもって魔力保有量の少ない隊員もいるため、浄化魔石は常備されているとのことだった。ありがたい、助かりました。

何処まで、元父親に抗えるのか分からないが、新しい場所で精一杯抗ってやる。

ともあれ、大穴付近で行われている調査内容の纏め、天幕内の掃除、洗濯、そして調理を率先して行った。

魔獣との戦闘で浴びた魔獣の血の汚れは不思議と魔術や魔石の浄化が効かない。そこで、魔石から出した水と石鹸での手荒いが基本となる。そんなこと経験してみないと分からないことだった。騎士の中でも見習いや下っ端の者がやっていたことを引き受けた。呪い持ちだけど、たった一人の女だった私を皆さんは大事に扱ってくれた。

「すまねぇな、雑用ばっかさせてよ。」

「いいえ、こちらに派遣されるはずもない私ですから、期限がくるまで、精一杯働きます。」

調査の指揮をしているのは、第二王子でもあったあの方。ベヒモスもカオスドラゴンも討伐後は必要な材料を採取した後は、大穴に遺骸を落として終了となる。遺骸が何処に行くのかは分かっていない。

「クロノス………ティガー隊長はここに来られること、あるんですか?」

先の戦いで大怪我を負ったと耳にした時は肝が冷えたけど、今も精力的に国内を走り回ってる。

「たまに来られるが、あの襲来後は来てないな。」

ちょっと残念に思ったけど、あの方の活躍を耳にする度嬉しくなる。

私は、駐屯地で家政婦業務以外も行っている。どの駐屯地にも、魔力を結界に変換させる装置の小型が設置してあって、私は毎日魔力を注ぐことも日課にした。それだけでも助かっていると言われた。

今までの部署よりもよっぽどやりがいがあった。

今はもう会うことのないあの方に誇れるような生き方をするんだ。


と、考えていたこともありました。

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