俺と君の出会い1
ここから本編です!
『人は生きる意味を持って生活しています。生まれた時からその意味は決まってて、誰を愛するのか、また愛されるのか。誰を友とし、友情を育むのか。何が得意で、何が不得意か。その全ては生まれた時に決まるのです』
ぼんやり朝ごはんを食べてたら、TVからそんな話が聞こえてきた。俺八剣 星児は、その内容を聞いて、バカバカしいと鼻で笑った。だって、俺には何も無いんだから……
小学生の頃、友達は『星児が入ると、つまんないから入れてやんねー』と言っていきなり当時の俺を、突き放しそれ以降、遊ばなくなった。
父さんと母さんは、俺の前では仲の良い夫婦を演じてた。そして小学校卒業と共に親は離婚し、父さんは家を出ていった。
俺を育てる為、母さんは仕事を始めたから、家の事は俺がして母さんを支えなきゃと、思って頑張ってたが、高校入学する頃に、母さんは知らない男の人を連れてきた。
その時母さんは、今まで俺が見てきた母親の顔は無く、恋する乙女みたいに恥じらいながら『離婚して、働き始めて暫くしてから、ずっと私を支えてくれてたの』と、説明してきた。その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが壊れる音が聞こえ、今まで母さんを支えようと頑張ってた事が、馬鹿らしく思えてきたし、俺の知ってる母さんはもう居ないと思った。
俺の中の母さんがいなくなった日、俺の苗字が変わる事が決まった。その事を、離婚してからも月に数回会っていた父さんに伝えたら、『父さんと暮らすか?まぁ男二人でむさ苦しいけどな』と、苦笑しながら提案してくれた。だが俺は今更一緒には暮らせないと断った。残念そうにしてた父さんだったが、ある事を教えてくれた。俺はそれを聞いて、母さんにその事を確認し、事実だと知った日から、俺の中でルームシェアが始まった。
「そろそろ、学校行ってくるから」
ふと時計を見たら、登校する時間が来てたので、食器を片付けながら俺は、母さんにそう言った。
「はい、今日のお昼代ね」
そう言って母さんは、財布から千円札を1枚渡してきた。俺はそれを無言で受け取り玄関へ向かった。家を出る時、母さんは何気なしなのか、聞いてきた。
「毎日学食ばかりで、本当にお弁当作らなくていいの?」
「ああ、いらない」
俺はそれだけ言って家を出ようとしたら、慌てて母さんが話してきた。
「そういえば! 今日冬夜さんが、早く帰ってくるみたいだから、たまには家族で……」
「わるい、今日バイトだから」
「そ……そう、わかったわ。なら帰ってくるの……」
「賄いでるから、晩御飯いらない。てか、もう時間ないし行くね?」
「え、えぇ……気をつけて言ってらっしゃい」
俺は最後まで母さんの話を遮るように話、俺が母さん達に壁を作ってるのを知ってるから、辛そうな顔をしていたが、俺はそれを無視して家を出た。
俺の苗字が変わって、バイト代が入る迄の僅かな期間を除いて、俺は家族で食事するのを避けていた。
正直に言うと、あの人の顔を見たくないし、母さんの料理も食べたいとは思えないからだ。それが理由で、今も弁当は断り続けてる。
家を出て学校に向かってると、後ろから大きな声で呼ばれ、思いっきり背中を叩かれた。
「よう星児!」
「痛ってーな!強く叩きすぎなんだよ隆司!」
俺は睨みつけながら、文句を言った。俺と隆司の毎朝のやり取りは、大体ここから始まる。
「すまんすまん。つい星児を見つけたら、必ずやらなきゃ調子でないんだわ。 アレだ……そう! ルーフィン!」
「ふざけんな! てかルーフィンじゃ無くてルーティンな! もう、勉強教えてやんないからな?」
「それは勘弁してくれ! 星児が教えてくれないと俺、赤点生活まっしぐらだから!」
「少しは自分で勉強しろよ!」
俺達は、そんなくだらない事をワーワー言いながら楽しそうに登校した。五刀 隆司とは、高校に入ってから話すようになった。俺としては、昔の事もあるから隆司とは、表面上の付き合いしかしてない筈ないのに、未だに絡んでくる。どうせいつか突き放すなら、あんま話しかけてこないで欲しいとすら思う。
そんな事を思ってるくせに、人付き合いは上手く立ち振る舞う俺自身も、正直嫌いだ。こんな世界……何時でも無くなってしまえばいいのに、なんでみんな馬鹿みたいに生きてんだろ?……ああ、また沈んでく……思考がどんどん負の感情へ向って沈んでいってる……最初は、良い方へと考えたりして抗ってたけど、今はもうそれを受け入れてる。
綺麗な音や、見知った声すらノイズのように雑音に変わったく……ああ、今もずっと真横でノイズが響き、耳障りで鬱陶しい……
「お……せい……おい星児!聞いてるのか?」
「え? あ、ああごめん考え事してた」
ノイズに聞こえてた声が普通に聞こえてきた。俺は慌てて言い訳をして、その場をごまかした。
「大丈夫か?俺が聞ける内容なら愚痴ぐらい聞くぞ?」
「ありがとう隆司。でも大丈夫だから、今日何食べるか考えてただけだし」
「お前なぁ、朝から昼飯の事考えてるとか、朝飯ちゃんと食べてるのか?」
「食べてるんだけどなぁ?あはは……」
「なんだよそれ……まぁ、いっか」
俺は、そう言って少し笑った。 少し疑う様に俺を見てきた。適当仕返しすぎたか?
しかし隆司は、俺の話を信じてくれたみたいで、それ以上聞いてこず、俺達は学校に着き、教室へ向かった