父
崖の割れ目の中は六畳間ほどの空間になっていた。
ランプが壁に掛かっていて。ほんのり明るかった。
部屋の隅には簡素なベッドがあり、そこに、父がいた、、、、、。
パブロ「と、、父さん!!」
父「ぱ、パブロ、、、か、、、、?」
パブロ「と、父さん、どうして、、、」
王の殺害という凶行の訳を聞こうとした、その時、父の体が血だらけになっているのが分かった。
シーツが真っ赤に染まっていた、、
パブロ「と、父さん、、、」
一体何があったのか。父さんほどの人物をここまで傷付けられる者は誰なのか?
王女を誘拐したのではなかったのか?何故ここにいるのか、
そして、助かる様な傷に見えなかったこと、、、、
その全てが頭を駆け巡る。
色々、ありすぎだ、、、、
涙が、、、出てきた。
兄も死に、母も死に、父も、、、、
父も、きっと助からない。
一体、この数日に何があったのか、、、
何故、こんな目に会うのか、、、
何故、、、、、
父「ごふっ、、、ぱ、パブロか?目が、、、、見えん。答えて、、、、くれ」
パブロ「父さん!僕です!パブロです!一体、どうして、、、こんな、、、うっ、、、うっ、、、」
父「そ、そう、、、か。パ、、、ブロ、、、時、、、間、、、が無い。簡潔に、、、、、、、、
お、、。王女と共に、、、、精霊の力を、、集める、のだ。、、、、、よ、良いな?」
パブロ「な、、何言ってるんだよ、父さん、、、分からないよ、、、」
父「こ、これを、お前に、、、、」
父は俺の言葉など聞いていかなかった。
何かを、伝えなくてはと、それだけに必死になっているのは感じ取れた。
だから、父の話を黙って聞くことにした。
、、、王女は黙って、じっとこちらを見ている。
パブロ「これは、、、、?」
ふるふると、震える父の手に握られていた短剣を両手で貰い受ける。
その短剣は父の血で真っ赤に染まっていた。
父「良いか、、これが、あまのむら、、く、、、だ、、、、これで、、、、お前が、、、、」
断片しか聞こえない。
「父さん!」
手を握る、、、父の手には力が感じられなかった。
父「お前なら、、、、我が、息子、、、お前、、、なら、、、、、、」
父の目から涙が溢れる。
父「頼んだ、、、ぞ、、、」
パブロ「父さん?」
パブロ「父さん!?」
×××「おやおや、そこにありましたか、天叢雲剣」
父の言葉が途切れたと同時に、1人の男が部屋のさらに奥から出てきた。
その顔は
知った顔だった。
×××「探しましたよ、王女?」
サウスウインド城の政務大臣、ガレスベイル、様、、、、?
大臣「全く、私すら知らぬ通路があったとは、、、」
大臣はゆっくりとこちらへ歩いてくる
、、、普段と少し違うのは口元が、頬まで裂けていて、そしてそこから大きな牙が、、見え、、、、、ること、、、
大臣「外は逃げたと見せかけて、内から逃げるとはね、くっくっく」
ゆっくりと近づいてくる
「やってくれるものだ、くくくくく」
その、言い知れぬ威圧感に
大臣「なかなか手を焼かせて」
体が、、、動かない、、、、
大臣「くれる」
大臣の目が俺の目を捕える
瞬間、王女が俺の手を
王女様「逃げますよ!」
引いて走り出す!
大臣「逃がすか!!!!」
地面を蹴り上げ、疾風となって俺に襲いかかる、、、が!!!!
がきん!!!!!!!
大臣「なっ、、、、」
死んだと思われた父が、疾風となった大臣をその体で受け止めていた。
父「にげろ!!!パブロ!!!!」
国一番の騎士としての誇りだろう。
この人は命を賭けて、守ろうとしていた。
いつも、、、、いつも!!!
大臣「この!死に損ないが!!!!」
ぐしゃあっ
鮮血が、部屋全体に、
降り注いだ、、、、、、、、
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