帰還の日
城下町に入ると普段と雰囲気が違っていた。
普段は人でごった返す中央通りはがらんと閑散していた。まばらにいる人はどの人も足早に歩いていて、用事だけ済まして帰ろう、なんて雰囲気がある。
建物を見ると中に人はいるようで、窓から通りを覗いている人もいた。
そして何より驚いたのが街を闊歩する騎士達の人数だ。
しかも、どの騎士達も一様に険しい顔で足早に動いていて、何かの厳戒態勢だというのは見て取れた。
「なんなんだ?一体、、、」
そこの騎士達に話を聞いても良かったのだが皆見たことない騎士ばかりで話しかけるのに躊躇わらた。
「皆、俺と同じように地方から招集された人たちかな?」
状況を知るため、城の騎士団の詰所へ急いで向かう事にした。
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「兄さん!」
都合の良いことに、詰所にはゴールドナイトの兄がいた。
「パブロか、よく戻ってきたな」
「元気そうだな。良かった。」
「は、はい、ありがとうございます。あの、それよりも兄さん、一体この物々しい雰囲気はなんなんです?」
「ああ、、、。」
口篭る兄。
何か、良くないことが起きているのは明白だった。
そして、、、
パブロ「父が、王を殺害、、、??」
兄「、、、そうだ。そして王女を誘拐して逃亡。」
パブロ「ばかな!ありえない!あの父が!?」
兄「、、、事実だ。多数の目撃者がいて、証言が皆一致している。」
パブロ「そ、そんな、、、、」
兄「信じられない気持ちは分かる。、、俺にもまだ信じられない気持ちは残っている。だが、しかし、多くの人が見ている。これだけ証人がいるとなると、、、、」
パブロ「、、、、、、、」
兄「とにかく俺たちは父を捕まえなくてはいけない。このままでは俺たち家族も連座で捕らえられて極刑は避けられないだろう、、、それほどの大罪だ」
パブロ「、、、、、、、、、」
兄「全ては父を捕まえなくてからだ。母やお前を死なせるわけにはいかない。」
パブロ「、、、、、、、、、、」
兄「、、、万に、万に一つだが、、もし、父が何かの魔術で操られていたとしたら、、、、せめて、そうであれば、、、、その可能性に賭けるしかないだろ、俺たちは」
パブロ「、、、分かり、ました。」
兄「よし。じゃあお前は俺に付いて来い。城下町の外まで探索の範囲を広げるぞ」
パブロ「はい。」
兄「ところでパブロ、父から何かを聞いていたりはしないか?」
パブロ「え、、、いえ、何も、、、」
兄「、、、、そうか、、、」
それきり、兄との会話は途切れてしまった。
、、、父との会話など一切無かった。だって最後に交わした言葉はノースグレイブへの派遣の通達の時のあれだけだ。
あれが、最後の会話に、なってしまうんだろうか、、、、
騎馬施設へ行き馬に乗る。
兄「行くぞ!犯人を見つけ次第狼煙を上げろ!一対一で決して戦いを挑むな!相手は最強のゴールドナイトだ!応援が来るまで耐えるんだ!分かったな!」
「「「おう!」」」
小隊を組んだ兄が号令をかけると自分を含めた騎士4枚が声を揃えて答える。
兄「行くぞ!!!!!」
兄の掛け声と共に馬に鞭を振るう。
荒々しいこの騎馬隊は一体となり城下町の外へと向かう。
パブロ「父さん、、、、」
騎士を辞めるという話をしようと思っていた頭はすっかり消えていた、、、、
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数時間後、、、辺りはすっかり真っ暗になっていた。
兄「今日はここまでにしよう。、、、明日は、森にまで探索の範囲を広げてみよう」
小隊を解散して、兄と共に自宅へ戻ってきた。
久しぶり実家だ。
しかし。
、、、疲れた、、、、
久々に戻ってきたというのにその嬉しさは微塵も感じられなかった。
×××「パブロかい?」
パブロ「、、、、母さん?」
母「よく戻ってきたね、パブロ。元気そうで良かった。でも、ごめんね、こんなに状況になってしまって、、。」
パブロ「良いんだよ、母さん。母さんのせいじゃない。、、、それに、きっと何かの間違いなんだ」
母「パブロ、、、、」
パブロ「俺は、そう思うよ。だって真面目実直、王家忠誠を誓った騎士の中の騎士だよ、父さんは。きっと何か理由があるんだよ」
母「そう、、、だね、、、、」
母は、元気が無く、少しやつれているように見えた。父の犯した罪による世間の風当たりは母にダメージを与えているようだった。
体調の優れなさそうな母を寝かしつけて居間へ戻る。
兄の姿は無かった。
仕事を、、、しているのだろうか、、、。
ふとテーブルを見ると自分用に料理が準備されていた。
(母さん、かな?疲れているだろうに、、、)
ぐううううううう、、、
と、タイミング良く腹の虫が鳴く。
(そういえば朝を食べてから何も食べてなかったな、、、)
準備されてる料理に手をつける
俺の好きな料理だ。久々の母さんの味。
美味しいのは分かっている、、、口に運ぶ、、、うん、美味し、、、
「お、、、」
「おえぇえええーー!!!」
げほっっっげほっげほっ!
な、なんだ?腐っている!?
とてもじゃないが食べられたものではない。母さんがそんなもの用意する筈がないが、どういう事なんだ?
み、水、、、、
口直しに水を飲、、、
「おえええええええ!!」
思わず床に水を吐き出す
げほっげほっげほっ
なんだ?なんだ?なんだ?
水が、、腐っている?
飲めたものじゃない。
一体、何が起きているんだ??
事情を聞こうにも兄さんはいない。
と、とにかく、何か、、、飲みたい、、、
缶詰、、、缶詰なら、、、、
足元の戸棚から桃の缶詰を取り出して缶を開ける。
パコッ
、、、おそるおそる舐めてみる。
ぺろっ、、、、
、、、、、
お、美味しい。、、、これは、大丈夫なようだ。思わずむしゃぶりつく。
、、、、。
、、、、。
、、、、ふう、、、。
缶詰を他に三つほど平らげたところで
喉と腹が満たされ、少し落ち着きを取り戻した。
しかし、一体なにが起きているんだ???なにか、、、父の件と無関係とは思えなかった。
明日、母と兄に聞いてみよう。
自室に行き、、、疲れがあったのか、、、着替えもせずにそのままベッドに倒れ込む。
はあ、はあ、、つ、疲、れた、、、、、、
意識はすぐに眠気に包まれる
全ては明日だ。
とりあえず今日は寝よう、、、
そして意識は瞬く間に暗闇の中に落ちていった、、、、