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旅の終わり……  作者: 方丈陽田
第二章:
80/81

失われた夢

遅くなった理由はね、固有名詞を考えていなかったからなんです。


舞台設定だとか、なんなら物語とかは割りと簡単に思い付くんですけど、固有名詞ばかりは苦手とです。

 マルグリット銀河核星系。

 そこには、かつての銀河帝国の中枢が置かれた重要な惑星の一つがある。


 クリスティン。

 それが、星の名前である。


 地表部の多くを水に覆われた海洋惑星であり、政治経済を担う省庁があると同時に、富裕層に向けたリゾート惑星という側面を持っている。


 そんな惑星の中で、海山と呼ばれる地形が存在する。

 山のように盛り上がった大地の頂点から、星の内部に蓄えた水が溢れ出す場所だ。

 水の湧出量もかなりの物だが、それを上回る広大な空間がある為、滝となって流れ落ちる縁部とは違い、中心部は驚くほどに静かに凪いでおり、鏡面の様な水の世界が作られている。


 そんな中心部に、一つの城が鎮座していた。


 白亜の城。

 実用性よりも芸術性を重視した造形をしており、汚れ一つ無い純白の姿は、鏡の如き湖面と合わせて、お伽噺の中に迷い込んだかのような気分を見る者に与える。


 クリスティン・フィーニス城。


 かつての政治部の省庁が入っていた総合庁舎であり、同時に有名な観光名所の一つである。

 かつては、だが。


 今となっては、この宇宙の何処にも存在はしていない。

 人神大戦の中で、白亜の巨城は、星もろともに宇宙の塵となってしまっていた。


 だがしかし、それはそこにある。


 何故なのか。


 答えは簡単だ。

 ここが夢の中だからである。


 フィーニス城は、省庁だったと同時に名所であり、それよりも以前は城の本質と言えるような、クリスティン星を治めていた王族の住まう場所であった。


 銀河帝国に吸収され、王権が変換された後も、王族は惑星の象徴的存在として、フィーニス城の王族専用のプライベートエリアに住んでいた。


 今になっても生き残っている王族が、安寧を夢見る故郷への想いが、この世界を形作っているのだ。


~~~~~


 クリスティン・フィーニス城の中に、足音が木霊する。

 美しい外見に劣らず、内装も精緻な装飾が施されており、外から見るだけでなく、中まで楽しむべき、と言われたかつての評価にも頷けるだろう。


 足音の主は、一人の女性だ。

 いや、この場合は一柱、と表現した方が正解だろう。


 それは、白い女性だ。

 肌も白く、髪も白く、纏う衣装も、全てが白い。


 女性にある色彩と言えば、黄金のような瞳だけだろう。

 女性らしい丸みのある均整の取れた肢体をしており、柔和な表情からは母性を感じさせる。


 ゆったりとした足取りで歩く彼女の名は、エリュシエル。

 しかし、その名を呼ぶ者は、もっと言えば知る者さえ少ない。


 彼女の存在を知る者は、誰もが別の呼び名を口にする。


 創造神、あるいは絶対神、と。


 神々の頂点であり、紛う事なき第一位階。

 加えて言えば、比喩でも何でもなく、間違いなくその頂点に位置している存在だ。


 当然、フィーニス城と直接的な関わりを持っている訳がない。

 普段は自らの領域に引き込もっており、表に出てくる事はまずないのだ。

 神界でさえもそうなのだから、下界にまで出てくる筈がない。


 故に、下界を映し出す夢も必然彼女のものではない。


 これは、彼女が神も人も含めて、唯一、友と認めた者の夢なのだ。


 久し振りの友人との語らいに、機嫌良さそうに鼻歌を奏でながら、エリュシエルは奥へと進んでいく。


 やがて、彼女は、所謂謁見の間へと辿り着く。

 巨大で重厚な扉へと細い指先でそっと触れれば、滑るように開いていく。


 歓迎されている、という訳でもない。


 その証拠に、ある程度扉が開いた所で、颶風にも思えてしまう強烈な殺意が叩き付けられる。

 そして、実際に殺傷力を持った攻撃も、それに遅れて飛んできた。


 大量の刃。


 そこに規則性はない。

 剣があり、刀があり、ナイフがあり、鋸があり、他にもどれ一つとして同じ形の無い、数多の刃がエリュシエルへと殺到した。


 エリュシエルは、それを前にして、しかし何もしない。

 微笑ましいと言わんばかりの笑みを浮かべて、そのまま歩を進めて室内へと入り込む。


 当たる。


 エリュシエルの細身へと刃がめり込み、そのまますり抜けて背後へと飛んでいった。


 背中に轟音がぶつかる。

 続けて、何かが崩れ落ちる音も。

 おそらく、大扉が攻撃を受けて崩壊したのだろう。

 もしかしたら、更に向こうにある廊下や壁も崩落しているかもしれない。


 それくらいの事は、出来て当然だ。

 何故ならば、それはかつての神殺しの攻撃なのだから。


 広く、高い、謁見の間。


 その最奥には、美しい玉座が置かれている。


 ゆったりと、気怠げに身を預けているのは、一人の女性。


 蒼銀の髪を長く伸ばしており、身に纏うは白と青を貴重とした優美なドレス。

 頭の上には銀細工のティアラを飾っており、まるで本物のお姫様のようである。

 尤も、殺意に満ち満ちた鋭い視線が、その印象の全てを台無しにしているが。


「人の夢の中に土足で入り込むとは……。斬られ足りないか」

「ふふっ、この私にその様な口を利く者は、宇宙広しと言えど、貴女だけですわ。ねぇ、ルナリア」


 女性の名は、ルナリア。

 夢の主であり、過去の英雄。

 そして、現在は第五位階の天使となってしまった、()()()()()である。

トラブルメイカーズと征罰衆の戦力設定の補足。


基本的には征罰衆の天使連中の方が強いです。

天使の持つ《征罰者》のギフトは、下界のギフト持ちに対する特効兵器なので、なんならエステリア一人でも幹部連中含めて殲滅できます。

但し、問題はツムギとアリアの二人です。

ツムギはギフトを所有していないので、《征罰者》のギフトが効果を発揮しないので、完全に地力勝負になってしまうクソ厄介な人物となります。

もっとヤバイのがアリアです。

彼女は下界の人間でありながら、同時に死神の神格を有する神であります。

なので、彼女が相手にする場合は《征罰者》の効果が反転してしまい、バフがかかるどころか、デバフ効果となってしまいます。


征罰衆の天敵と言えるでしょう、こいつら。

たからこそ、神殿から監視対象となっている訳ですが。

片や、訳分からん超技術で改造された人型超兵器。

片や、いつ本来の位置(第二位階最上位)に覚醒するかも分からない人神。


ヤベー連中よ。


これからは、そこにルセリも加わるのですが。

ギフトを持たない超文明の継承者とか、ヤベー奴まっしぐらです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回の神様みて死神さんそんなヤバかったんや...って実感しました
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