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旅の終わり……  作者: 方丈陽田
第二章:
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第二十話:超速レベリング法(但し、命の保証はしない)

 国内に入ったとはいえ、そういきなり景色が変わる筈もなく、暫くは殺風景な荒野が続くばかりであった。


 そんな景色に飽きてきたのか。

 ルセリは、思い出したようにツムギへと言葉を投げかけた。


「そういえば、あの警備隊の人たち、かなり強かったわよね~」

「まぁな~。かなり鍛えられてっからな~」


 戦いらしい戦いにはなっていたが、なんだかんだで彼らの繰り出す槍剣の刃は、ツムギの身体を傷付けていた。

 傷付く端から瞬時に治っていた為にダメージには繋がっていなかったが、それでも確かに刺さってはいたのだ。


 これまでの道中で、決して弱い訳ではない魔物たちと戦闘してきた。

 中には、ツムギの戦闘力にも身に宿す毒素にも恐れず、襲いかかってくる命知らずもいたが、鋭いはずの彼らの爪牙では傷付かなかったというのに、である。


「あれは武器が凄かったのかしら?

 それとも、本当に彼らが強いのかしら?」


 旧文明においては、単純な刃物はもはや戦場でほぼ使われない。

 宇宙船に乗っての艦隊戦は勿論の事、パワードスーツを纏った白兵戦でもあまり使われることはなかった。


 故に、ルセリは刃物への造詣が深くない。


 まじまじと観察できた訳でもない為、武器が凄いのか使い手が凄いのか、判別できないのだ。


「……まぁ、両方かな」


 少しだけ悩んで、ツムギは答える。


「連中の武具は、うちのドワーフがめったやたらと量産した物でな。

 そんじょそこらの物より、遥かに質が良い。

 とはいえ、まだ常識の範囲内なんだけどな。

 そいつで俺を貫けたのは、連中の腕だよ」

「へぇ。一般兵でそのレベルなのね。

 この時代も侮れないわ」


 ツムギの強度は大概に知ってる。

 彼ならば、生身で最新式のパワードスーツ部隊を壊滅させられるだろう。

 それを、ある程度の武器さえあれば傷付ける事ができるとは。


 地上でドンパチするしか出来ない原始文明と思っていたが、予想以上に厄介そうである。


 そうと見直して頷いていたルセリだが、そこにツムギの否定が入った。


「あー、感心しているところ、大変に悪いんだが……。

 ここだけだからな?

 平の兵隊でも俺に傷を付けられるのって」

「? そうなの?」

「そうなのよ」


 ルセリの言葉を繰り返しながら、彼は詳しい内情を語る。


「ほら、前にも言ったと思うんだけど、この国って、数年前に一度、滅んでるんだよね」

「ええ、聞いたわ。

 そして、生き延びた亡国の王族に協力して、あなた……たち? が国を取り戻したのよね」

「そそ。

 んで、国を取り戻したのは良いけど、また攻め込まれて滅びたくないじゃん?

 国を失う屈辱と悲惨さは、生き残った国民の誰もが身に染みて知ってる訳で」

「だから、鍛えたの?

 鍛えました強くなりました、って、そんな簡単な話じゃないでしょ」

「それが簡単な話なんだなー、今の時代的には」


 ルセリの眉をひそめての言葉に、ツムギはバカにするような笑みで否定を返した。


「どういう事よ?」

「ギフトだよ、ギフト。

 あれは、簡単に強くなる為の装置なんだよ。

 ギフトに付随するレベルって数値、どうしたら上げられるか、分かるか?」

「……ゲーム的概念だし、やっぱり経験値?

 敵を倒したら、かしら?」


 少し考えての言葉に、ツムギは指を鳴らして頷く。


「イエス。その通り。

 普通に生きていても経験値は溜まるんだがな。

 それで上がるのは、一生かけても精々で3、4レベル程度。

 じゃあ、それ以上にする為には?

 答えは簡単。戦うことさ」

「ふぅん……。

 あれ? 戦うだけで良いの?

 倒す必要性は?」

「よく気付いてくれました!

 ないんだなー、これが」


 ケラケラと、彼は嘲る。


「勿論、倒してしまうのが一番だが、必ずしも倒すことは必要じゃない。

 圧倒的格上に対して、命懸けで本気で挑みかかる、それだけで経験値はポンポン得られる」

「そ、そんな簡単なの?

 でも、それじゃあ、どこの国でもやれるんじゃ……」

「無理だよ。

 死ぬ寸前の瀕死まで追い込むんだし。

 それに、圧倒的格上ってのも、中々いねぇ」


 このレベリングは、手加減を知る協力的な圧倒的格上と、死を恐れぬ覚悟と、瀕死者さえ五体満足で回復させられる医者の三役が揃って、初めて実践できる手法だ。


 この中で、特に圧倒的格上というのが厄介極まりない。


 なにせ、対象との間に、十倍以上のレベル差がないと、獲得できる経験値量がガクリと落ちるのだ。

 いくつもの実験を経て、その計算式は証明されている。


 そして、人の生きるこの緑の大陸において、最高レベルは基本的に100レベルまでである。

 それ以上は発生しないように、神々の手で設定されている。


 故に、この手法が使えるのは、10レベルまでという事になってしまう。

 安全で安心な形で行うならば、だが。


 外側の大陸ならば、より強力な魔物たちがゴロゴロといるが、基本的に言葉の通じない魔物、しかも単純に考えて十倍は強い魔物を相手にして、生き残れる筈がない。


 よって、この手法はあまり知られていないし、知っていても誰も挑戦しないのだ。


 誰も、自殺なんてしたくないから。


「俺たちは、レベル上限が取っ払われた外側の大陸からの生還者がごろごろといるからな。

 レベルが普通に高いんだよ」

「……成程ね。

 そんなあなたたちが協力すれば、簡単に強くなれる、と」

「まっ、血反吐はぶちまける事にはなるけどな!」


 協力者の方はともかく、挑戦者の方は命懸けで一歩間違えれば死にかねない程の死線に挑まなければならない。

 そうでなければ、どれ程の格上が相手であっても、経験値は得られない。


 効率的なレベリング法ではあるが、安全で簡単なレベリング法ではない、と、ツムギは快活に笑い飛ばした。


「差し入れだぞー、とか、なんかムシャクシャした、とか、なんか適当な理由付けては襲いかかってな。

 おかげで、連中のレベルがメキメキ上がっていくのよ」

「なんて酷い……。

 でも、まっ、亡国になるよりはマシか」

「そゆ事。

 兵隊どもからも、文句なんて出やしない。

 国を失うことに比べたら、ずっとずっとマシだって理解して受け入れてくれてる」


 国土及び国力では、小国に分類されるユグ・ナ・メイズ王国。


 だが、保有する軍事力に限っては、世界を敵に回せるほどに強力な、超軍事国家である。


 超人たちが根を張り続ける限り、そして亡国の痛みを人々が覚えている限り、その力は維持され続ける事だろう。

己の遅筆の所為ですけども、中々、他キャラクターが出てこないので、今後登場予定のキャラ紹介でもしていこうかと。

決して、イメージ像が造れるようになったのが楽しい訳では……。

その内、纏めてキャラクター紹介を最初にぶちこもうと思います。



名前:アリア・アマディール

種族:人間→死体→半神人

所有ギフト:《資格者》→《死神代行》

ギフト説明:浄魂、紡魂、転魂、言魂、恵魂、破魂の六種を宿した、本物の神の権能。代償として、冥府と輪廻の管理を行わなければならない。支払わなければ、権能を剥奪された上で、永劫の苦痛を受ける事となる。


プロフィール:冒険者ギルド『騒動の種(トラブルメイカーズ)』の創始者の一人にして、ギルドマスター。不運に振り回された不幸な村娘……だったのだが、一度死んだ影響か、あるいは代行とはいえ神になった所為か、かなり物怖じしない性格となってしまっている。一見すると清楚で儚げな外見をしているが、実は拳系の武闘派である。こき使っているアンデッドたちに、度々ストライキや反乱を起こされては、その度に殴り倒して鎮圧している。



挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 死神の…拳を使う武闘派…?? 魂やらなんやらぐっちゃぐっちゃになりそう笑
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