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旅の終わり……  作者: 方丈陽田
第二章:
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第五話:ルート設定

 キャンプの後始末を終えた二人は、これからの予定を決めるために言葉を交わす。


「さて、ひとまずうちのギルドに行くとして、問題というか、決めねばならない事がある」

「というか、先に神殿とやらに行かなくて良いの?

 挨拶に行くって言ってたじゃない」


 ルセリの指摘に、ツムギは遠い目をして青い空を見つめた。


「……俺、あそこ、嫌いなんだよ。

 行きたくねぇ。

 どうせ統括官殿も寝てるだろうし、しばらく放置してようぜ?

 後に回せる事は後に回さねぇと」

「そういう考え方、私はあんまり好きじゃないわね」


 ルセリが少し不満げに言うが、さほどの事ではないのか、それ以上の苦言はなかった。

 ツムギが補足するように語った内容に同意した事も、理由の一つだろうが。


「それに、あそこに行くのはメンドくせぇ」

「というと?」

「信仰用の神殿は普通に地上にあるんだが、征罰衆の拠点としての神殿は空の上にあるんだよ。

 世界中をぐるぐる回ってる」

「……空中要塞なのね。

 それは確かに、攻めにくいわ」


 かつての戦争でも、移動要塞の類いは猛威を振るっていた。

 攻撃に防衛に、兵站線に、八面六臂の大活躍である。


 その有効性を知るがゆえに、ルセリは眉を僅かに寄せながら゛面倒゛という言葉に頷いた。


「まぁ、喧嘩しに行く訳じゃないけども、探して乗り込むのは手間がかかる。

 よって、良い感じに頭上に来る日を待つのが吉。

 一年も待てば一回くらいは上に来るだろ」


 どうせ、相手は不老長寿の神や天使なのだ。

 一年程度の時間など、彼らの時間感覚では誤差にしかならない。


「まっ、そんな訳で、そっちの事は忘れて先にできる事からやりましょ」

「良いわ。その意見を採用してあげる」


 ルセリ自身も、心情的には神の関係者にあまり会いたくはない。

 よって、問題が無いというのならば、後回しにしても良いと考えた。


「それで、何か問題でもあるの?」


 話を当初の場所に戻して訊ねるルセリに、ツムギは頷いて答える。


「うむ。うちの国まで行く訳だが、ここからそれなりに離れてる」

「お散歩は好きだけど?」


 ほとんどの装備を壊されたが、それでも遊泳用簡易強化外皮は残っている。

 昨日までと同程度の移動速度は確保できるだろう。


 故に、簡単に受け入れるのだが、そうではない、と彼は首を横に振る。


「いや、距離の問題ではなく、ルートの問題でな。

 ここから向かうには、おおよそ三つのルートがある」

「聞きましょう」

「一つは、比較的安全なルート。但し遠回りだ。

 昨日までと同じくらいだと、大体一ヶ月くらいはかかる。

 一つは、それなりに近道だが、ちと危険な魔物の巣を通る。

 今のルセリだとちょいと不安かね?

 最後に、最短距離で安全も保障するんだが……嫌な思いをするルートだ。

 どれがいい?」

「最後がよく分からないわ。

 嫌な思いって、具体的にどんな気分なの?」

「……あー、神の気まぐれ?

 なんか、そういう感じな爪痕がすっごく残ってる場所を通るんだわ。

 害はないんだが……まぁ、神って輩の理不尽さを理解できる」

「でも、近いんでしょう?

 じゃあ、それにしましょう」


 ルセリは全く悩まなかった。

 即答で言う彼女に視線を合わせれば、肩を竦めて続ける。


「忘れた訳じゃないでしょ? 私たちは神々と全面戦争をしていたのよ?

 神の理不尽なんて、見飽きるほどに見てきたわよ。

 嫌な思い出が、今更一個や二個増えた所で、どうって事はないわ」

「それもそうか。んじゃ、決まり」


 立ち上がると、ツムギは南南東の方向を指差して宣言する。


「では、我が美しき故郷、ユグ・ナ・メイズ王国目指して、まずは死を忘れた国、ヘリツィア王国へ、しゅぱーつ!」

「おぉー!」


 死神と縁を切られた国、ヘリツィア王国。

 ひとまず、二人はそこへ向かう事になった。


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