表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

374/397

11-24

 レオンハルトは処置を終えて。

その右腕は過去長期に渡って左腕として使用していた黒竜と同じものへと変わっていた。

黒い鱗に覆われた4本のあしゆびを握って開いてを繰り返し、調子を確かめる。


「右腕はあくまで応急措置じゃ。分かっとるじゃろうがここの魔物と渡り合うほどの能力はないからな」


「ああ、分かってる。剣を握れれば十分だ」


 ドクターの言葉に答えると、レオンハルトは無骨な大剣を手に取った。


「はっ。てめぇが剣使ったところでな」


 エドガーが鼻を鳴らして。


「石化の魔眼もさっきので潰れちまったみてぇだしよ」


 完全に眼球の様相を成していない、溶け崩れて固まった目を見て肩をすくめる。


「いや、眼ならまだある」


 そう言ってレオンハルトは顔の左半分を覆っていた包帯を引きちぎった。

その下には額に1つと頬から顎にかけて並ぶ3つの、計4つの瞳。

埋め込まれた魔物の目玉がばらばらに視線を走らせ、最後にエドガーを捉えて。

瞳孔どうこうが大きく開き、瞳の奥に強い光が灯る。


 その姿にカイルは絶句し、マールも口許(くちもと)に手を当てた。


「…………」


 エドガーは無言のまま、表情に嫌悪感をにじませる。


 フリードはレオンハルトを一瞥いちべつすると視線を切った。


 やはり顔が人の形から遠退くのはこれまでにない強い嫌悪感を与えて。


 驚嘆する。

侮蔑ぶべつする。

それを覚悟と受けとる。


 感じ方は三者三様だが、同時に彼らはそれが必要だったのだと納得していた。

現にレオンハルトは戦いを続けるために今、その無理やりに埋め込まれた魔物の瞳を必要としているのだ。


「えー、嫌です!」


 ただ1人。

フェリシアを除いて。


「さすがにそれは、気持ち悪いです!」


 気持ち悪い、と。

 最愛の妹の容赦ようしゃない言葉。

見開かれ。

すかさず4つの瞳がぎょろきょろと揺れて。

レオンハルトはたまらずそれらの瞳を伏せて表情をくもらせる。

ショックを隠せない。


「今ある両目が使えないならそっちに移植してくださいドクター!」 


「いやいや。それは無茶じゃよ。身体に馴染むのに時間がかかるんじゃ。今移植したら1、2回の使用で使いもんにならなくなるわい」


「ドクター!」


「いや」


「ドクター!」


「あのな」


「ドクター!」


「じゃから」


「ドクター!」


「……ふぅむ。どうするレオンハルト?」


()くなよ。分かってるだろ」


「もちろん。わたしの希望ですからね! 早くもとの、わたしの格好いいイケメンな勇者様に戻ってください!」


「いや、このまま行くぞ?」


「えー」


 フェリシアが嫌そうに顔をしかめた。

いでむぅ、と口を尖らせて半眼でめつける。


 だが結局フェリシアの希望は通らず。

パーティーは再びダンジョンの深部を目指した。


 フリード達は開けた広間へ。

敵の把握のためにカイルが『神秘を紐解く瞳(アナライズ)』を。

そしてフェリシアが四方に『再演魔象リピート』による『光弾魔象バレット』の一斉掃射。


 真っ黒な影でできた広間を光弾が走り抜け、広間を照らした。

照らした、のに。

そこにはところ狭しとうごめくろ

それら全てがうねりをあげる。


 あまりにも膨大な。

スキルによる観測を行うカイルはその処理が追い付かないほどの。


 すかさず。

その男が前に出た。

深紅の姿が黒に映えて。

腰の直剣の柄を握り、彼は跳び上がった宙空でぎ払うように抜剣ばっけんする。


 鞘とつばの隙間から一筋の光が漏れ出て。

キラリとまたたき。

いで抜き放たれる光刃の剣身けんしんから膨大な光が溢れ出した。


 加速する抜剣ばっけんは容易く音を置き去りに。

視界全てを光の一閃が飲み込んでから、とどろくような風切りの音が響き渡る。


「『その刃、(ソード・)雷電の化身なりて(サンダーボルト)』」


 赤の勇者フリードの呟きから1拍の間を開けて。

揺れる床と迫る轟音ごうおん

いで抜剣ばっけんの衝撃がフリード達も飲み込む。


 カイルとマールはフリードが前に出た瞬間にエドガーの体にしがみついていた。

荒れ狂う暴風のような衝撃を受けて飛ばされそうになったフェリシアとドクターをレオンハルトが掴んで。

そして吹き飛ばされてきたフリードの体をエドガーが受け止める。


「はは。ナイスキャッチ」


 乱雑な受け止め方にも笑って礼を述べるフリード。


「はっ。空中で使うと毎回吹っ飛んでくるからな」


 やれやれと息をつくエドガー。


「残りの数は? もう一振りいっとくか?」


 フリードは視線を下げてカイルにたずねた。


「残存数……50以上!」


「思ったより残ったな」


「むしろ一振りでそこまで減らせるのが凄いんですよ! おそらくその10倍以上いましたから」


「ははは」


 カイルが言うと、フリードは鋭い眼光のままほがらかに笑う。


「んじゃもう一発いきますか」


 フリードは3分の2ほどに短くなった光刃を確認すると言った。


「いや、残りは俺がやる」


 刃を鞘に納め、抜剣ばっけんの構えに移ろうとするフリードをレオンハルトが止めて。

前へ進み出ると、魔眼の力を発動する。


 その瞳から(ほとばし)る青と灰色の光。

発動の衝撃に首がガクンと後ろにけ反り、焦がすような熱と激痛が脳髄のうずいに突き刺さる。


「くぅ……っ!」

 

 苦悶くもんの声を漏らすレオンハルト。


 4つのバジリスクの眼がバラバラに視線を走らせた。

その石化の眼差し受けた影の魔物が次々と石化していく。


 石化の光を避けて迫り来る魔物を2つの視線で挟み撃ち。

幾度となく交差する閃光がついには広間に残った影の魔物全ての動きを、止めた。


「全滅を確認!」


 カイルが告げると、ドクターがすかさず自壊を始めようとするバジリスクの眼の補修を行う。


「『治癒魔象キュアー』」


 同時にフェリシアが回復のスペルアーツを使った。


「いいのか? 『再演魔象リピート』の式が上書きされるぞ」


 目から頭にかけて走る激痛が和らぐのを感じながら。

レオンハルトはフェリシアにいた。


「同じスペルアーツのリピートは倍々で数が増えていくので、途中でリセットをかけないと魔力の消費が大きくなりすぎます。ここらで1度リセットをしておきたかったのです。……もちろん黒の勇者様の痛みを少しでも癒してあげたいのが1番の理由ですが」


 少し照れたように頬を赤らめ、フェリシアはレオンハルトの顔を横目見る。


「ありがとう、フェリシア」


 最愛の兄からの心からの礼。

同時に彼から向けられるいとおしげな眼差し。

だけどその数、通常の倍。

フェリシアの顔に4つの目玉が視線を向けると、彼女の頬の紅潮は消えて。


「うー……」


思わず眉をひそめる。







 それからもフリード達は魔宮の攻略を続けて。

ついに影の魔宮の最奥さいおうへと、辿り着いた。

彼らの姿を影の中から赤い眼差しが睨む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ