表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

298/397

9-12

『────やぁ久しぶり。僕のこと、思い出してくれたみたいで嬉しいよ』


 カツン、という靴音と共に少年ヨアヒムの声がアーシュの頭の中で響いて。


『状況は分かってる。彼に力を示す、そのために光を使いたい。いいよ、僕の光を君に貸そ────』


「あ、ごめん。それはまた今度で」


 その声を遮り、アーシュがソードアーツを放ちながら言った。


『なぜ? 僕の力を貸して欲しいから僕を呼んだんじゃないのかな? 僕は君が無条件に好きだし、僕とお喋りしたいと言うんなら嬉しいけどね』


 アーシュに語りかけるヨアヒム。


「え、ごめん。なんて?」


 だがアーシュは意識のほとんどをサイラスに向けているため、彼の言葉は半分もアーシュの頭に入らない。


『君が好きだ。何して欲しい?』


 ヨアヒムが改めて簡潔に述べた。


「その力の使い方だけを教えて欲しいんだ」


『光を使うのなら僕の光も使った方が効率的だと思うけど?』


 その姿は見えないが、アーシュにはヨアヒムが首をかしげたのが気配で分かった。


『君が今その身に宿してるのは残滓ざんしに過ぎない。今の君の光では発動できて1度が限度だよ』


「でもヨアヒムの力を借りちゃったら、おれの力にならない」


 アーシュはサイラスの瞳をまっすぐに見つめて。


「おれ自身の力で認めてもらわなきゃいけないんだ。だからお願い」


『うん、分かった。いいよ、僕は人間のそういうところが好きなんだ。なら使いたい時に声をかけて欲しい。僕がサポートする。1度体験すれば任意で君も操れるようになると思う』


「ありがとう」


 アーシュはヨアヒムに答えると同時にソードアーツを発動する。


「ソードアーツ────」


 青い炎を灯した銀槍ぎんそう

帯電する双刃剣そうじんけん


 連続発動のため交互に使っていたソードアーツを同時に発動するアーシュ。

アーシュは両手に握るそれらの武器を投げ放って。


「『その刃、(ソード・)風とならん(ウィンド)』」


 ソードアーツを発動した状態で武具を射出。

加速する刃をさらにアーシュは意識でなぞって。

柄から刃先までを捉え、コントロールを得ると同時にさらなる加速を生む。


「『その刃、(ソード・)雨たらん(レイン)』!」


 投げ放つ剣を加速させる『その刃、(ソード・)風とならん(ウィンド)』。

遠隔による剣の射出と加速を行う上記の派生系『その刃、(ソード・)雨たらん(レイン)』。

2つの技を重ねる事で放たれた剣は上位技である

その刃、疾(ソード・)風とならん(ガスト)』と同等の威力が付与された。

風のうなりと共に急加速した刃がサイラスを襲う。


 右。

左。

走る視線。

猶予ゆうよ刹那せつな

一瞬の選択。

サイラスはこの戦いで自身に貸したかせを解く。


 左手の剣で槍を弾こうと。

だが有利属性の付与ができていない。

軌道はらした。

しかし同時にサイラスの剣が砕け散る。


 そして双刃剣そうじんけんの刃を打つ鎚頭づちあたま

その殴打は激しい火花と共に剣身けんしんを変形。

刃を柄と分離して無力化する。


 対人において最強とも言える武具の無力化。

サイラスはその行使をこの戦いで封じていた。


 サイラスはつちを振るうとすかさず上体をひねり、首を反らして。

片方の刃を失った双刃剣そうじんけんを回避した。

鼻先をかすめるように残された方の刃が過ぎ去る。


 サイラスは砕けた剣をすぐさま造り直そうと。

だがその一瞬をアーシュは狙っていた。


 得物は砕かれた。

あとは武具の鍛造たんぞうと研磨のかなめであるつちと一体となった砥剣とけんを封じる事ができたならと────


「ヨアヒム……!」


 アーシュが叫んだ。

それにこたえてアーシュの左腕にえられた手の感触。

同時にアーシュの左腕に幾何学きかがく的に走る光。

それはとても冷たく。

そしてけがれがなかった。

あらゆる不浄を寄せ付けない。

それほどまでに透徹とうてつした輝きがその腕から指先へと集中する。


 その光は弾けると一条の結晶となり、サイラスの砥剣とけんを捉えた。

研磨の刃とつちに触れた途端に青白い結晶がそれらを飲み込む。


「…………!」


 サイラスは花弁のように折り重なる結晶に飲まれた砥剣とけんを見て。

いで自身に覆い被さる大きな影に気付いた。

見上げた先には大きくうずを描く武具の山。

それらが一斉にサイラスの周囲に降り注ぐ。


 サイラスは身動きを完全に封じられた。

目だけで青白い結晶を見て。


「へー、それは俺も知らないな」


 いでアーシュへと視線を向ける。


 アーシュは激しく肩で息をして。

そのつややかな黒髪が頬や額に貼り付いていた。

流れる汗が額から頬、顎先へとしたたる。


星の使者(ゲーセリスィ)の……光?」


 2人の戦いを見守っていたラーヴァガルドが呟いて。

その声音こわねかすかに震えていた。

やりきった表情のアーシュに不安げな眼差しを向ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ