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8-10








「────今のところ追手はないようね」


 後ろの通路を振り返りながらキャサリンが言った。


「けけ、なんで追って来ないんだろ」


 エミリアが首をかしげて。


「あたしが壊した入口はいくらでも取り除けるし、コレクターの手下はともかくあのレベルの魔宮を展開する魔人なら魔宮を上書きしてすぐにでも道を作れると思うけど」


「まさか魔人だけじゃなくてコレクターの勢力までここで襲ってくるなんて誤算よね。でも案外共倒れになってくれたかも知れないわよ?」


「ケケケ、だといいがなぁ」


 ディアスの肩でアムドゥスが言った。


「先回りや待ち伏せがあると思うのが妥当だろうな」


 ディアスは先行し、刀剣蟲ラーミナを広く展開して周囲を警戒している。


 ディアス達は狭い通路を進んでいて。

先行するディアスに続いてアーシュを背負ったエミリア、キャサリンと並んでいた。

魔宮の床や壁面、天井は岩を切り出したかのようで、整えられた直線的な通路や部屋で構築されている。


 その道中を闊歩かっぽしていたのは岩石系の魔物。

その体表は硬質な岩石に覆われていたり、そもそもが岩の肉体を持っていて。

だがこの難易度の魔宮の魔物ではディアス達の相手にならず、容易く粉砕されてきた。

罠を兼ねたボスクラスのモンスターも容易く突破している。


「あの大木の魔宮は空で展開されたし、使役しえきする魔物も飛行能力があった。山を越えて先回りするなんて簡単だ。永久魔宮に誘導されたようなふしもある」


「そ、そうかしら」


 ディアスの言葉にキャサリンが苦笑いしながら首をかしげた。

それにディアスはうなずいて。


「俺達を襲う魔人は複数人である事が最近はほとんどだしな」


「ケケケ、あのレベルの魔人が襲ってきたのは初めてだがなぁ。総合的な能力はあの複合魔宮で戦った魔人に匹敵するぜぇ? それまでの魔人も別に弱かったわけじゃねぇし、あいつら全員がつるんでたとなるとなかなか厄介だ。まだまだ仲間がいるかも知れねぇ」


 アムドゥスはそう言うと肩をすくめる。


「これまでも、冒険者おれたちが思っていた以上に魔人は組織的に動いていたのかもな」


「やっぱりあの結晶の魔物もそうなのかな。魔王と他の魔人が繋がってるとか。でも、あいつ(・・・)もその力を使ったし………」 


 エミリアは『あいつ』と口にすると顔をしかめた。

エミリアを魔人堕ちにし、彼女にも彼女の村の人達にも残虐な行為を行った男。

その男の事を少しでも思い出すと、エミリアは激しい嫌悪感に襲われる。


 だがいでエミリアはふと思って。


「ねぇ、アムドゥス。そういえば魔王は単独で行動してるイメージだけど、魔王なんだから配下の魔人とかいたりしないの?」


「さぁなぁ。少なくともネバロは単独だったが。そもそも【魔王】なんて称号はあいつらが名乗ったもんじゃねぇ。人間が勝手につけて呼んでるだけだぜぇ? ケケケケケ」


 アムドゥスはエミリアの問いに答えると笑った。

 

「え、そうなの? じゃあもしかして他の魔人と基本的には変わりないって事?」


「ケケ、魔宮の規模や能力の多可たかなんかは確かに他の奴らとは一線を画してるが、他にそれ以外の魔人との違いなんざ…………」


 アムドゥスは翼で腕組みをすると首をひねる。


「そういや、何度か声が聞こえるって聞いた事があったかぁ?」


 アムドゥスの言葉に、ピクリとディアスが反応した。

肩にとまっているアムドゥスを横目見る。


「声?」


 エミリアがいた。


「やっぱり嬢ちゃんには聞こえねぇのか」


「うん。どんな声なの?」


「俺様も直接聞こえたわけじゃねぇし、ネバロとの話ん中で数回出てきただけだからよくは知らねぇが。魔宮を拡げろっていうような内容の声が延々、頭に響いてきてるとか」


「じゃあ魔王はその声に従って魔宮の拡大をしてるの?」


「それは分からねぇ。言うてその声が他の魔王にも聞こえてるかは知らねぇしなぁ。ただネバロはその声をわずらわしがってるように言ってたが、同時に嬉しそうにもしてたな」


 アムドゥスはそこで肩をすくめると続ける。


「まぁあいつらが魔宮の拡大を続けてる理由も俺様は知らねぇし、案外あいつら自身もなんで魔宮の拡大を続けるのか分からねぇのかもなぁ。ケケケケケ」


「そもそも魔人や魔宮の始まりが分かっていないのよね」


 キャサリンが言った。


「…………」


 キャサリンの言葉に沈黙するアムドゥス。


「アムドゥス?」


 エミリアはディアスの隣に並ぶと、目を細めて考え込むアムドゥスの顔を下から覗き込む。


「……いや、なんでもねぇ。何か思い出しそうな気がしたんだが、考えれば考えるほど分からなくなっちまう」


「アムドゥスは昔の記憶がないんだもんね」


「ああ、気付いたときには俺様はネバロと一緒にいた」


「けけけ、そういえば自分の事を額の眼で視ることはできないのかな?」


 エミリアはアムドゥスの額にある瞳を見て言った。


「試したことある?」

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