表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

214/397

7-7

「気をつけろ! 魔人が紛れ込んでるぞ!」


 1人の冒険者が叫んで。

だがディアス達がその冒険者に目を向けると、その冒険者の目が赤く発光して見えた。

いで他の冒険者達にも視線を移すと、皆一様にその目に赤の光を灯している。


「くそ! 仲間がやられた!」


 冒険者の1人が血を流して倒れる冒険者を抱き起こして。


「よくも俺の仲間を! どこだ、どこにいる?!」


「そういうお前が魔人なんじゃないのか?!」


「なんだと!」


「見知らぬ冒険者がいないか探せ!」


「俺はこいつに見覚えがないぞ」


「俺も見覚えがない。こいつが魔人なんじゃないのか!」


 周囲の怒号は激しさを増していき、それに紛れて時折悲鳴が聞こえてきた。

断末魔をあげて倒れる冒険者。

ゆっくりと。

だが確実に冒険者はその数を減らしていく。


「『神秘を紐解く眼(アナライズ)』が使える者はいないか」


「…………ダメだ。『神秘を紐解く眼(アナライズ)』が使えない」


「私もだ。さっきから試しているが情報が得られない。この赤い視界のせいだ」


 ディアスはエミリア、アーシュ、キャサリンと共に他の冒険者から一定の距離を保って。


「アムドゥス」


 ディアスがアムドゥスに呼び掛けると、アムドゥスは首を左右に振る。


「すまねぇ、ブラザー。俺様の眼もダメだ。この広間いっぱいに視界を赤く染める幻覚が満たされてて、その情報が他の情報の全部を覆い隠してやがる」


「満たされてる?」


「ケケ。大抵の魔宮の幻覚は対象にかけるもんだし、それならそれを解除しちまえばいい。だが空間に幻覚が満たされてるとなると厄介だなぁ、ケケケ」


 ディアスは腰に差した剣を抜いた。

剣身けんしんが不確かに揺らめく妖しげな短剣。

その短剣は魔宮の幻覚によって赤く染まって見えて。

本来は青白く光を放っているはずの剣身けんしんが、今は赤い光を発しながら揺れている。


 ディアスは短剣を振るった。

空間に満たされているという幻覚そのものを斬ろうと。


「どうだ、アムドゥス」


 アムドゥスは額の瞳でディアスが刃を振るったところを観察。


「ケケ、一応斬れてはいたが……ダメだなぁ、これは。幻覚の一部は消えたが、周囲の幻覚が拡がってすぐに元通りになっちまった。周囲から均等に幻覚が拡がったから、流れを見て魔人やこの幻覚の起点を探すみたいな事もできねぇ」


「ディアス兄ちゃんの真白ノ刃匣(マシロノハゴウ)ならなんとかできるんじゃない?」


 アーシュが言った。


「この空間全てを無効化はできないだろうし、剣を召喚するには魔力が足りない」


「けけ。それに召喚するところを見られたら魔人だってバレちゃうしね」


 エミリアは素早く視線を切り、怪しい動きを見せている者がいないか探っている。


 その時、冒険者の1人が剣を掲げて。


「なぁ! ソードアーツを使って見せるのはどうだ?! これなら魔人かそうでないかが一目で分かるぞっ!」


 1人の冒険者が言った。


「ああ、確かにそれなら魔人を判別できる」


「なるほど」


「だが、いいのか……?」


「高難度の魔宮の攻略に来てるのに、そんな事でソードアーツを使う? 本気で言ってるのか!?」


「それが一番手っ取り早い手段のはずだ」


「本当にそうか? 冒険者側の戦力の消耗を狙った罠なんじゃ」


「ああ、罠に違いない。おそらくこいつが魔人だ」


「違う! 俺は魔人じゃない。むしろ否定的な奴らこそ魔人なんじゃないのか?! 正体がバレると困るから俺の意見を否定するんだろ!」


 ソードアーツを使う提案をした冒険者は、近くにいた否定的な冒険者に斬りかかった。

振り下ろされる刃。

襲われた冒険者はその刃を得物で受け止める。


「本性を現したな! 魔人!」


 襲われた冒険者は相手の刃を弾くと、相手に反撃に出た。

それを皮切りに至るところで冒険者同士の争いが始まって。

広間には怒号と剣戟けんげきの音が伝播でんぱしていく。


「そもそもソードアーツを使って魔人かどうかを見極めるなら、わしのような鍛造剣を得物にしとるやつが不利じゃろうが!」


「そもそも魔人は1人なのか? 複数なのか? そもそも本当に魔人はいるのか?!」


「でも確かに襲われた冒険者はいます」


「この赤い視界に染まった冒険者を見て、咄嗟とっさに斬りかかっちまったとかじゃないのか?」


 疑心暗鬼に陥る冒険者達。

そのうちの1人がふと、ディアス達に目を止めて。


「なぁ、あいつら怪しくないか?」


 冒険者はディアス達を剣で指して言った。


「だってそうだろ。あいつら、昨日の夜に合流した奴らだろ? それもあんな何もない荒野から。魔人が紛れ込んでるってのなら、真っ先に疑うべきはあいつらだ」


 その言葉に、他の冒険者もディアス達に疑惑の目を向ける。


「ケケケ、めんどくせぇ事になったなぁ。いっつもこんなんじゃねぇか」


 アムドゥスが言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ