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7-3

「5つ以上の魔宮が1つになってる? 展開域や侵食域の兼ね合いで2つの魔宮を組み合わせるのも難しいはずだが。それが小さいものとなら難易度も下がるが、巨大な魔宮同士となると…………」


 ディアスがそう言うと、アーシュは首をかしげて。


「でも『魔毒の巨兵シュべルト・ズィーゲル』もたくさんの魔宮が組み合わさったものだよね? そのコアになってる魔結晶(アニマ)の塊は人と同じくらい大きかったって聞いたよ」


「『魔毒の巨兵シュベルト・ズィーゲル』か。懐かしい名だな」


 冒険者が呟いた。


「俺もあの戦いに参加したが、ありゃ反則だったな。まともに武器が使えねぇ。スペルアーツは効かねぇ。できんのは魔力を溜めてた得物でソードアーツを一回撃つだけ」


「結局、赤の勇者の一撃必殺頼りだったよな」


「いやいや、そうでもないだろ。あのばかでかい図体を止めた黄の勇者と、くそ硬い身体を削って核を露出させた白の勇者の助力あってこそだ」


 白の勇者の名前が出ると、誇らしげに笑うアーシュ。


「あん? なんで坊主がしたり顔なんだ?」


 冒険者が笑いながらくと、アーシュはディアスをちらりと横目見て。

いでまた、ふふんと得意気に笑う。


 ディアスはアーシュを見ると小さくため息を漏らした。


「……それで観測隊による報告は?」


「まだ観測の途中らしい」


 ディアスがくと冒険者の1人が答えて。


「なにせ巨大な魔宮がいくつも合わさったものだからな。観測が追い付かないらしい。あとは魔宮の外にも魔物を放出してるらしくて、それもまた観測を遅らせてるとか」


「観測も終わってない魔宮にこれだけの冒険者を向かわせてるのか。ギミックや魔物の特性次第でたくさんの犠牲者が出るぞ」


「何もこのまま突貫とっかんしようってわけじゃない。1度拠点を築き、観測の邪魔をしてる魔物どもを蹴散けちらして、観測が完了してから万全の用意をして攻略する手筈てはずと聞いてる」


「どうする? ディアス」


 エミリアがくと、キャサリンは首を左右に振って。


「私としては今度こそ寄り道しないで行きたいのだけれど?」


「ケケケ、俺様もやめといた方がいいと思うぜぇ?」


 アムドゥスがフードの中でディアスに耳打ちした。


「ああ、このまま行こう」


 ディアスが答える。


「大丈夫かな」


 エミリアが言うと周りの冒険者は笑い声をあげて。


「大丈夫だよ、お嬢ちゃん」


「こんだけの人数がいりゃなんとでもなる」


「冒険者としてのランクはまちまちだが、ステータスには覚えのある奴らばかりだからな。むしろ機会に今まで恵まれなった奴らにとっては昇格を狙ういいチャンスさ」


「むしろ嬢ちゃん達がついてくる方が心配だぜ」


「心配ありがとよ」


 冒険者達は心配そうなエミリアを安心させようと笑いかける。


「…………心配と言えば」


 冒険者の1人が思い出したように呟いて。


「なんでも青鏡の魔王の魔宮が急速に拡大したって話だったな」


 他の冒険者がうなずいた。


「一定の方向にだけ展開域を拡げて村を飲み込んだんだろ」


「村の人間はその前に避難してたって話だから良かったが」


「前にもこういう事があったな。あんときは赤蕀の魔王の魔宮だったか」


 冒険者の言葉にディアス達は顔を見合わせた。


「その村の名前は?」


「確か、────の村だ」


 ディアスの問いに冒険者が答えると、やはりなとディアスはうなずいて。

ディアスが目配せするとエミリアとアーシュもうなずく。


「その村は魔人をかくまって、さらには魔人堕ちを増やしてたとかって言われて公開処刑がされてたらしいが、結局濡れ衣だったんだったか」


「処刑を敢行かんこうしてたクロスブライトの当主は過去の魔宮攻略で片足を失って、心も病んでたとさ。それで何人も殺されたとか、たまったもんじゃねぇ」


「赤蕀の魔王の魔宮の方は赤の勇者が調査に行ったんだっけ」


「いや、調査には行ったがその前に打ち切られたって話だ」


 ディアスは目を細めて。


「そうか。あのあと結局調査はしなかったのか。俺のせいか、それとも────」


 ディアスは他の冒険者に聞こえないくらい小さな声で呟いた。


「打ち切り? なんでまた」


 冒険者の1人がたずねた。

それにこの話題を持ち出した冒険者は肩をすくめる。


「さぁな。赤の勇者にもしもの事があったら困るとかじゃないか?」


「今回の青鏡の魔王の魔宮の調査は?」


「それもしないとさ」


「魔王の魔宮の異常な拡大なんて大問題だろ。放っといていいのかよ」


「噂だとギルドの上の方からのお達しらしいぜ」


 ディアスはフードの中のアムドゥスを横目見て。


「おそらくあの結晶化の能力と魔王の魔宮の異常な展開域の拡大は関連がある。そしてその能力を使ったキールは上層部との繋がりがあった。上層部は魔宮の調査をさせないようにしてる。これをどう思う?」


 声をひそめてアムドゥスに問うディアス。


「ケケケ、俺様にくなよ。俺様は人間のあれこれには詳しくねぇ」


「ネバロが人間と繋がっていた素振りなんかは?」


「無かったな。そもそも俺様がネバロと契約してから、ネバロと接触した人間はお前さんとそのパーティーくらいだったはすだぜぇ」

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